夢の続きは幻想郷で【完結】   作:puc119

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参話

 

 

 待つことは別に嫌いじゃない。今までだって待つことは何度もあったから。

 

 とは言っても、せっかく待ったのに相手が現れないと言うのは嫌いだ。だってそれじゃあ待っていた意味がないもん。でも、今回は大丈夫。相手はいてくれるのだから。

 そんなことが少しだけ嬉しかった。

 

 はぁ、それにしてもホントに赤いねぇ。真っ赤だよ。いつからこの世界は赤くなっちゃったのかなぁ。もしかしたら私が起きた日からかもしれないし、私が寝てしまった日からかもしれない。

 けれども、それは私にはわからない。寝ていたもんね。仕方無いね。

 

「貴女は何と言う名前なのですか?」

 

 うん? 名前?

 ああ、私の名前か。

 

「ん~……ちょっと待ってね。今考えるから」

「えっ? 考える?」

 

 名前、名前かぁ……そう言えばなんて呼ばれていたかな。

 一番しっくりくる名前は“穢れ”だけど、それはちょっとやだなぁ。もっとカッコイイ名前や可愛らしい名前が良い。

 はてさて、こりゃあ困っちゃうね。

 

「う~ん……ああ、そうだ。君はなんて言う名前なのかな?」

 

 一緒に太極拳までやった仲だと言うのに、名前を聞いていなかったね。記憶力の残念な私だから忘れちゃうかもしれないけれど、起きているうちくらいは覚えていられると思う。

 たぶん……

 

「私は紅美鈴です。今はこの紅魔館で門番をやらせていただいております」

 

 あら素敵な名前ですね。いいなぁ、私もそんな素敵な名前が良い。

 そかそか、この建物は紅魔館って言うのか。そっちはちょっと怖い名前だね。

 

 う~ん、名前どうしよう。

 何か名前を思いつく手助けになるものはないかと、周りを見回してはみたが、やっぱり世界は赤いっきりで何の手助けにもならなかった。

 赤色はちょっと強いから嫌なんだよなぁ。かと言って緑じゃ味気ないし……それなら青? いや、確かに青色は好きだけどそれはやめておこう。私は変態じゃないのだから。

 

 う~ん……よしっ、決めたぞ。

 

「ふふん、私の名前を発表しよう」

「えっ、あ、はい。どうぞ」

 

 

「浅葱。それを私の名前にするよ。緑より青く、青より淡いそんな色。どう?」

 

「はい、素敵な名前だと思いますよ」

 

 そう言って美鈴は可愛らしく笑った。

 ふふん、そうでしょう。そうでしょう。何せ私が考えた名前なのだから、素敵でないはずがない。

 

 浅葱、浅葱……ふふっ、良い響きじゃあないか。うむ、今回の名前はこれにしよう。寝てしまったら忘れてしまうかもしれないけれど、覚えていたらまたこの名前にしよう。それほどに気に入ったのだ。

 

 

 

 

 素敵な名前が決まり嬉しくなってしまったのか、それからのことはよく覚えていない。美鈴といくらかの会話をしたとは思うけれど、どんな話をしたのかなぁ。

 まぁ、仕方無いね。嬉しかったんだもの。

 

「さて浅葱さん。そろそろお嬢様も起きたと思いますよ」

 

 だから私がはっきりと覚えているのは、そんな言葉くらいだった。

 ふと、周りを見ると確かに暗くなっている。ありゃあ、こんなに時間が経っていたのかぁ。むぅ、時が流れるのは早いものだねぇ。私みたいなのんびり者じゃあ追いつけやしない。

 

「そかそか、もうそんな時間だったんだね。うん、それじゃあ私はちょっと行ってくるよ」

 

 素敵な名前が決まったことで、正直赤い霧のことは頭から消えかかっていたけれど、そうだそうだ。私はこの赤いのを止めてもらうために来たんだ。なんてなんとか思い出すことができた。だから美鈴には感謝です。

 

「はい、わかりました。それで、ですね……今日はちょっと騒がしくなると思いますので、どうかお気を付けてください」

 

 うん? 騒がしくなるの? ふふん、でも大丈夫さ。私は騒がしいのも好きなのだ。お祭りとか素敵だよね。うむうむ、そりゃあなんとも楽しみだ。

 きっと、お嬢様はお祭りが好きなのだろう。ふふっ、可愛らしい人じゃあないか。その人も美鈴みたく優しい人なら嬉しいなぁ。

 

 美鈴と別れの挨拶を交わし、騒がしさに胸を膨らませ私は赤い建物の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

「わーっ、ごめん。ごめんなさい。ちょ、ちょっと待ってね。直ぐに行くから。ちょっと通りかかっただけだから」

 

 こりゃあ、困ったぞ。

 なんでかは全くわからないけれど、恐ろしい数の妖精に襲われてしまった。意味がわからない。

 

 確かに、私は騒がしいのは好きだ。好きなんだけど……こう言うのじゃないんだよなぁ。

 

 うきうき気分で赤い建物の中へ入り、うおーでけー。とか思いながらぽてぽてと歩いていたら急に襲われた。

 建物は外も赤かったように、中も真っ赤でやっぱり目には優しくない。でも、そんなことは良いのだ。今は小さな問題。とにかく今は、襲いかかってくる妖精たちから逃げないと。

 目の色を変え一対一など糞喰らえとでも言わんばかりに、人海戦術を用いて物量でのゴリ押し。仲間の妖弾を受け消えていく妖精ですらいる始末。

 

 とんでもない所へ来ちゃったなぁ。

 

 妖精などと言えば可愛らしいけれども、血走った目をして集団で襲いかかってくる様など恐怖でしかない。妖精怖いよ、妖精。

 

 そもそも、どうしてこの妖精たちはこんなにも気性が荒いのだ? 彼らは自然そのものなはず。確かに多少のいたずらをすることはあるが、此処まで過激ないたずらは知らない。てか、これもういたずらとか言うレベルじゃないよね。

 

 う~ん、やっぱりあの赤い霧が原因なのかな? 自然に影響されやすい彼らだ。其処に不自然な力が加わってしまえば、彼らも何かしらの影響を受けるのだろう。

 さてさて、考え事をしている場合じゃないのだ。とは言ってもなぁ……どうすれば良いんだろう。

 

 わーわー叫びながら一生懸命妖精たちから逃げている時だった。ぶっとい光の柱が私のすぐ上駆け抜けていった。

 

 なに? 何事ですか? うわーん、さっきから何なのさ此処。

 

 光の柱へ飲み込まれていった妖精たちは皆消滅。まぁ、でも直ぐに復活するだろう。妖精だし。

 

「おや、また新しい顔じゃないか。お前も此処の住民なのか?」

 

 声をかけられた。

 この理不尽な現実に半泣きになりながら其方の方を向くと、其処には箒に跨り白黒の服を来た少女が浮いていた。

 

「ううん、私は違うよ。この赤い霧を止めてもらおうと来ただけ」

 

 ふむ、どうやらこの少女はこの建物の住民ではないらしい。う~ん、じゃあ何をしに来たのだろうか?

 大きな黒い帽子、白色のエプロン。金色の髪。そして、箒。

 

 これらからわかること。思い当たることは――

 

 

「ははーん、さては君、掃除をしに来たな?」

「いや、違うけど……」

 

 違ったらしい。

 う~ん、そうなると本当に何をしに来たのかわからない。

 

「んじゃあ、君は何をしに来たのさ?」

「私もお前と同じよう、この赤い霧を止めに来たんだよ」

 

 あら、あらあら。そうでしたか。なんと、そんなことがあるのか。

 そりゃあ、なんとも嬉しいね。

 

「おおー、そりゃあ凄い。私もこの赤い霧を止めてもらいたくて来たんだよ!」

「いや、うん。それはさっき聞いたぜ?」

 

 ――変わった奴だなぁ。

 

 そんな声が聞こえた。

 う~ん、どうだろうか。私は変わらない奴だと思うけれど……皆は変わっていっても私だけは変わらないのだ。

 

「お前。名前は?」

 

 はい、よくぞ聞いてくれました。

 それを待っていたんです。

 

 ふふん、聞かれたのなら仕方無い。私の名前を教えてあげよう。この素晴らしい名前を君に刻み込んであげよう。

 

 大きく息を吸い、気合を入れる。

 

「私の名前は「はぁ、貴方たちね。侵入者と言うのは。まったく……掃除が進まないじゃない」

 

 わた、私の名前は……

 

 浅葱って言います……

 

 良い名前だと思うんだけどなぁ。

 

 

 はてさて、何だか急に人が増えてきちゃったね。

 

 

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