夢の続きは幻想郷で【完結】   作:puc119

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肆話

 

 

「お前か? この鬱陶しい霧を出しているのは」

「えっ、いや私じゃないよ? 私はこの赤いのを止めてもらおうとお願いに来たんだもの」

 

 全く……何を言いますか。

 私は普通の霧の方が好きです。だって赤い霧って不気味じゃん。

 

「……いや、私が聞いているのはお前じゃなくてだな」

 

 あら? そうなの? むぅ、名前を呼んでくれないせいでどうにもややこしいじゃないか。ほらほら、だからやっぱり名前を名乗った方が良いんじゃない?

 

「私でもないわよ。これはお嬢様がやったこと。お嬢様は日光が苦手だから」

 

 そんな声を出したのは、いつの間にか現れた新しい人。この人のせいで私は名乗ることができなかった。召使みたいな格好をしているけれど、何者だろうか?

 

 はぁ、名乗りたかったなぁ。良い名前なんだけどなぁ……

 

「んじゃあ、そのお嬢様って奴を呼んできてくれよ」

「呼ぶわけないでしょ? 私は貴方たち侵入者を追い出しに来たのだから」

 

 うん? もしかして、その侵入者って私も含まれているの?

 えー、でも私はちゃんと美鈴から許可をもらったはず。むぅ、そのことは伝わっていなかったのかい?

 

 それにしても、追い出すだなんて随分とまぁ、物騒じゃあないか。私は物騒なことも好きじゃない。そんな穏やかな性格なんだ。

 

「なるほど、つまりお前を倒せばそのお嬢様に会えるってことか」

「貴方じゃ無理よ。貴方はお嬢様には会えないわ。それこそ――時間を止めてでも貴方を止めるから」

 

 瞬間。世界が灰色に変わった。

 

 あらぁ、今度は灰色か。

 う~ん、赤い色はちょっと目に優しくなかったけれど、これもこれでちょっと嫌だな。白と黒のだけじゃあ味気ない。やはり世界に色は必要だ。

 

 てか、白黒の少女が固まってしまったけれど、どうしたのだろう? さっきまであんなに元気が良かったのにね。

 君の色的には、こっちの世界方が似合ってそうじゃん。私はちょいと遠慮したいところだけどさ、

 

 

「……ど、どうして?」

 

 

 カラン――と何かの金属が床に落ちる音がした。

 

 音のした方を見ると、其処には一本のナイフ。おぅ、また物騒な物を……

 

「何故、貴女は動けるの?」

 

 ……? いや、そんなことを聞かれても、なんだろうか。動くな死ねって意味かな?

 そりゃあ、アレだ……今にも泣きそうだ。

 

 私が何をしたと言うのだ。

 

「時間は止めた。今は私だけの世界なはず……それなのにどうして?」

 

 うん? ああ、なるほどそう言うことか。時間の止まった世界など初めてのことだったから、わからなかったよ。

 

 時間を止める、ねぇ。なんとも、まぁ――悲しい能力だ。

 

 だって、時間の止まってしまった世界には君しかいないのでしょ? それは一人ぽっちの世界。そんな悲しい世界は嫌だなぁ。

 

「どうしてと言われても、私の時間は私のものだもん。君のものじゃあない」

 

 時間を止めるのは君の勝手。でも止めるのなら、私の知らないところでやってもらいたい。私が知っているところでやられると、私もこの寂しい世界へ行かなきゃいけなくなる。それは遠慮したいなぁ。

 別に私の時間を奪うことに文句はないけれど、この世界には来たくない。例え赤く染まっていようが、私はいつのも世界の方が好きだ。

 

「貴女は……何者なの?」

 

 おっ、お。これはアレだ名乗るチャンスじゃないか。

 

 ふふん、耳の穴掻っ穿って聞くが良い。この私の素敵な名前を。

 

 

 

 

「私は浅葱。遠い遠い昔に捨てられた、ただの穢れだよ」

 

 

 

 

 決まったぁ! 完璧に決まったね。

 

 ヤバい今の私、超カッコイイ。今まで五本の指には入るほどのかっこ良さだったね!

 

 誰かビデオとか撮っていてくれないかな? ああ、ダメか。この世界は寂しい世界だったね。それじゃあ、仕方が無い。

 うんうん、けれども私は満足だ。

 

「……妖怪なのですか?」

「いんや、そんな存在じゃあない。かと言って人間でも神でも妖精でもない。私は私だよ」

 

 妖怪みたく強い力なんてないし、人間みたく賢くもない、神のように尊くもなければ妖精のように華やかでもない。私は穢れだもの。汚く濁った物の集まった穢れでしかない。

 

「……そんな貴女が何故、此処に?」

「白黒の子と同じだよ。この赤い霧を止めてもらえないかお願いに来たんだ。私は戦うことが苦手だから、そうやってお願いすることしかできない」

 

 だから断られるとちょっと困っちゃう。

 せめて赤くするのは二日に一回とかにしてくれれば良いんだけど……ダメですか?

 

「わかったわ……どうぞ先へお進みください」

「あら? 進んでも良いの?」

 

 進ませてもらえるのなら嬉しいけれど、本当に大丈夫だろうか? 馬鹿め! 実は嘘でしたー。とか言って後ろからナイフで刺されたりしたらたまったものじゃない。

 

「貴女から力は一切感じないもの。だからお嬢様に危害を加えることもないはず。それに……どうしてか私は貴女と戦いたくはないのよ」

 

 ふむふむ、なるほどねぇ。うむ、さっぱりわからん。どう言う意味だろう……

 けれども、まぁ、進ませてもらえるのならそのお言葉に甘えよう。私だって戦いたくない。てか、どうやって戦えば良いのかわからん。

 

「う~ん、わかったよ。それじゃあ私は行かせてもらうね。ああ、時間のことだけど私が見ていなければ好きに止められると思うよ」

 

 私の見えない所でやられたらどう仕様も無いしね。ようはバレなければ問題ないのだ。

 

 さてさて、それじゃあ先へ進もうか。そろそろこの灰色の世界とも、さよならしなければいけなくなるが、名残惜しさなど欠片も無い。やっぱり私は色のある世界が好きなのだ。

 

 でも、あの赤ばっかの世界もちょっと飽きてきたんだよなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 時間を操る少女と別れて少々。

 

「あーもう、ごめんよ、ごめんよぅ。すぐ行くからちょっとだけだから」

 

 またあの妖精たちの攻撃が始まった。色のある世界には戻ってくれた。戻ってくれたのになぁ……

 どうにかなりませんかねぇ。いくら妖精の攻撃とは言え、当たれば痛い。痛いのは嫌いだ。しかし、逃げても逃げても妖精は追いかけてくる。私も白黒の子みたいなぶっとい光を出せれば良いけれど、私は光を出すことはできない。困っちゃうね。

 さらに、赤くしている人が何処にいるのかなんてわからない。一生懸命ぽてぽてぱたぱた逃げて建物の中を走り回っているけれど、ちょいと広すぎやしませんか? 外から見たときは此処まで広くは見えなかったんだけどなぁ。

 

 正直もう帰りたい。

 でも帰り道もわかんない。

 ツンだ、デレない。

 

 おっかしいなぁ、こんな予定じゃなかったのに。本当ならちょっとお願いして、赤くするのを止めてもらってそれで元に戻った世界を楽しむ予定だったのに……う~ん、なかなか上手くいかないものだねぇ。

 

 う~ん……ホント困っちゃったねぇ。

 

 

 止まらない攻撃。

 

 見えない現実。

 

 知らない常識。

 

 読めない空気。

 

 わからない未来。

 

 

 うん、もう……いいかな。

 

 これじゃあ、いつまで経って先へ進めない。どんなに逃げようが妖精は追いかけてくるし、どんなに走り回ろうが、赤くしている人は見つからない。

 戦うのは苦手だ。だって痛いもの。私も相手も。それは嫌だ。

 

 でも、もういいんだ。少しだけ……ちょっとだけ止まってもらおう。今ばかりは消えてもらおう。だってそうでもしないと、この妖精たちは止まらない。私が止めてしまえば、いくら妖精でも復活できないかもしれない。

 でも、もういい。言ってダメだった。逃げてもダメだった。それなら仕方無いんだ。

 

 走るのを止め、後ろを振り返る。

 宙を浮かびながら、鮮やかな妖弾を放ちながら近づいて来る十数匹の妖精。

 

 

 それじゃ――消えてもらおうか。

 

 

 そう思った時だった。

 大量の御札やら針やらが飛んできて、私へ襲いかかろうとしていた妖精を蹴散らした。

 

 めちゃくちゃ驚いた。

 

 うわぁっ! こ、今度は何事ですか?

 

 

「妖精に襲われていたみたいだけど、あんた大丈夫?」

 

 御札やら針やらを飛ばした人は、そんな優しい言葉を私へかけてくれた。

 いえいえ、大丈夫じゃなかったんです。もう少しで危ないところだったんです。ありがとう、君は優しい人なのね。優しい人は私も好きだよ。

 

 私を助けた優しい人は、黒髪に頭には大きな赤いリボン。そして紅白のちょっと変わった巫女服のような物を着ていた。

 

 でも、その服大丈夫? 腋出てるよ?

 

 

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