「どうしてあんたみたいな何の力も無い奴が此処にいるのよ?」
目の前にはいるのは、荒ぶる妖精たちから私を助けてくれた恩人。
でも、私の知っている巫女さんは腋なんて出ていなかったと思う。う~ん、まぁ、似合ってるとは思うよ?
「この赤い霧がさ、嫌だったから止めてくれないかお願いに来たんだ」
それにしても助かった。もし、あの時助けてもらえなかったら私は消していた。消しちゃうのはあんまり好きじゃないから、その後たぶん落ち込む。
うむうむ、そうならなくて良かったです。
「変わった奴。あんた、名前は?」
おっ、またまたチャンスがやってきた。
ん~でもなぁ、同じセリフを使いまわすのはあまりよろしくない。できればあのセリフはここぞと言う場面で使いたいのだ。
ふむ、仕方無い。普通に名乗らせてもらおう。
「私は浅葱だよ。君は?」
「博麗霊夢よ。それにしても、よく此処まで来られたわね。此処に来る途中だって危なかったでしょ?」
うん、色々と凄かった。
血走った目をした妖精なぞもうトラウマでしかない。アイツらマジ怖い。
「戦うことは苦手だから、一生懸命逃げてたんだ」
「戦えないのにどうして来たのよ……危ないから帰りなさい。って言いたいところだけど……一人で帰ったら余計危ないか」
あら、随分と心配してくれるのね。でも、私はやらなきゃいけないことがあるしなぁ。帰るわけにはいかない。
ん~、霊夢は何をしに来たのかな? ちょっと表情は硬いけれど優しい人。そんな人は好きだ。
「そうね……浅葱、あんた飛べる?」
飛ぶ?
ん~……
うん?
「ダメそうね……」
「ちょ、ちょっと待ってね。思い出すから」
うん、そうだ。
確か私は飛べる。
飛んだことがあるはず。遠い昔のことだけど、空に浮かぶ綺麗好きなアイツらの住む場所まで飛ぼうとしたことがあった。まぁ、直ぐ諦めちゃったんだけどさ。
そっか……そうか。私は飛べたんだ。ぽてぽてぺたぺた歩くだけじゃない。ふよふよと浮くことができたんだ。
昔のことをなんとか思い出し、空への想いを馳せる。
瞬間――身体が浮いた。
おお、懐かしい。そっかそう言えばこんな感覚だったね。
そんなことすら私は忘れていたのか……う~ん、ま、仕方無いね。
「できた!」
「はいはい、おめでとう。それじゃあ私の後をついて来て。たぶんそっちの方が安全だと思うから」
なんと、そんなことまでしてくれるのですか? そりゃあ助かるよ。
「ふふっ、ありがとう」
「っ……どういたしまして」
私がお礼の言葉をかけると、霊夢はそっぽを向いた。ちょいと愛嬌は少ないらしいけれど優しくて良い子だと思う。
ありがとう。素敵な巫女さん。
――――――――
「霊夢は何の用事があって此処へ来たの?」
「私も浅葱と一緒よ。この鬱陶しい霧を止めさせに来たの」
ふよふよと浮きながら、襲いかかってくる妖精を片っ端から蹴散らしていく霊夢。
さ、最近の巫女さんは強いんだね……いいなぁ、私も霊力とかがあればそんなことができたのになぁ。残念ながら霊力や妖力は皆無なのです。
「あら、霊夢もそうなんだ。さっき会った白黒の人もそう言っていたよ」
「ああ、それはたぶん魔理沙のことだと思う」
ほう、あの人は魔理沙と言うのか。ふふっ、可愛らしい名前だね。ま、私の名前の方がちょっとだけ素敵だけど。
そんな普通の会話を霊夢としている時、ピリっと何かを感じた。
うん? なんだ?
「ちょと待って霊夢」
「どうしたのよ?」
ピリピリと感じた先にはこの建物の下へと続く階段。
このピリピリの原因は、この先なのかな?
「う~ん、たぶんそっちは関係ないと思うわよ?」
うん、私もそう思う。そう思うけどこの感覚は……いや、ちょっと違うか。確かに似ていなくもないけれど、気にするほどじゃない。
ただ少しだけ不安定なだけか。
「ああ、ごめん。たぶん大丈夫だ」
「そう、それなら進むわよ」
ごめんね、止めちゃって。けれどもきっと、この先にあるものと関わらなきゃいけない日が来るんだろうなぁ。慣れるまで辛いもんね。自分の中に大きなものがあるとさ。
「見つけた」
それは建物外にいた。丸く赤い月を背に大きな黒い羽を広げて。
ああ、外にいたんだね。そりゃあいくら建物の中を探し回ってもいないはずだよ。でも霊夢、よくわかったね。たぶん私だけだったら見つけることはできなかっただろう。
「そう……咲夜でも止められなかったのね」
「咲夜? まぁ、それは良いとして……あんたでしょ? この鬱陶しい霧を出しているのは」
私には相手の妖力の強さとかそう言うのはわからないけれど、確かにこの黒い羽の人は強そうだ。
お願い、聞いてくれるかなぁ
「太陽がね。鬱陶しいのよ。アイツのせいで昼間は碌に外へ出られないもの」
「吸血鬼なんだから昼間はおとなしく寝てなさいよ」
あら、吸血鬼さんでしたか。
なるほどそれなら、美鈴の言っていた夜を支配するってのもなんとなく納得できる。吸血鬼かぁ、きっとすごく強いんだろうなぁ。
う~ん、それにしてもなんとも会話に参加し辛いね。どうにも穏やかな雰囲気じゃないし。かと言って私じゃ戦うことなんてできない。
今は見てるしかないのかな。
「はぁ、最近は血の気の多い人間が増えたわね。血は多いに越したことはないけれど、なかなか鬱陶しい」
「うだうだ、言ってないでさっさとかかってきなさいよ」
ああ、困った。これはきっと戦う流れだ。そうなると私は応援することしかできない。
ガンバレー霊夢ー。
「ふふっ、終わらせるねぇ……満ちた月は妖力を高めてくれる。それにこんなにも月が紅いのだし、少しだけ遊んであげるわ」
「ホント……面倒ね。危なくなるから浅葱は隠れていて」
神罰――吸血鬼さんの声が静かに響く。
こりゃあ、永い夜になりそうだなんて他人ごとのように思った。
てか、なんでこの人たち極々自然な流れで戦ってるんだろう……
さてさて、私は早く隠れないとだ。
――――――――
「……貴方、本当に人間なの?」
「そうに決まっているでしょ」
……巻き込まれないよう隠れて見ていたけれど、霊夢さん本当に強いです。
吸血鬼さんが放った恐ろしい量の妖弾をほいほい躱して、速く的確な霊弾を吸血鬼さんへ放つ。
そんな霊夢の姿は飲み込まれるほど綺麗で、見蕩れる程に格好良かった。いいなぁ、私もあんな風になりたかったなぁ。
昔は人間が妖怪に勝つなんてほとんど無理なことだったけれど、今はそうでもないんだね。まぁ、殺し合いをしているわけじゃないみたいだから、あの頃と事情は違いそうだけど。
「ほら、私が勝ったんだからさっさとこの霧を消しなさいよ」
おぅ、何と言う物理的交渉。私じゃ絶対にできないことだ。私にももう少し違う力があればなぁ。
それにしても私は何のために来たんだろ……これなら霊夢一人いれば解決できたじゃん。ま、まぁ、無事解決できたみたいだし良しとしよう。それに素敵な戦いも見ることができたんだ。それは決して悪いことじゃない。
「それがねぇ……今直ぐに消すことはできないのよ。だから自然に消えるのを待つしかないわ」
「はぁ? 何よそれ。その自然に消えるのってどれくらいかかるの?」
あらぁ、そうなの? そりゃあ大変だ。
でも、そんなこともあるよね。私も昔、ちょっとわーってやったらその辺りの土地を殺してしまったことがあるもん。あの時は焦ったなぁ。直そうと思っても私じゃ直せなかったし。
「そうねぇ、一ヶ月あれば消えるんじゃないかしら?」
「長い! そんなに長かったら人里だって困るじゃない」
一ヶ月かぁ。私の時は浄化するのに何千年もかかったっけかなぁ。半泣きで一生懸命草花の種を蒔いたりしたけど蒔いた端から枯れていった。流石に泣いた。
「そんなことを言われても、出しちゃったものは出しちゃったもの」
うんうん、そんなこともあるよね。仕方無いのだ。
「早く消さないとまた人里で私がサボっているって噂が流れるじゃない」
あら、それはよろしくない。霊夢みたいな優しい人が不幸になるのはダメなのだ。
うん、それじゃあ此処は私が頑張ろう。このまま帰っちゃったら本当に何をしに来たのかわからないし。
「ねぇ、霊夢」
「あっ、浅葱。無事だった? 怪我とかはない?」
「うん、大丈夫だよ。この霧をさ、消せば良いの?」
「まぁ、そうだけど……困ったわね。一ヶ月もかかるんじゃ流石にマズいもの」
霊夢には沢山お世話になった。正直、人里がどうなろうが私は知らないが、霊夢が困るのはちょっとマズい。それに、私もこの霧は好きじゃないし。
「吸血鬼さん。この霧を消しちゃっても良いかな?」
「……別に良いけど、貴方にそれができるの?」
うむ、消しても良いんだね。それならやらせてもらおう。
「ふふん、まぁ此処はこの浅葱さんに任せなさい。そう言うのは得意なのだ」
「不安しかないわね……」
失礼な。こんな私だけど本当に消すことは得意なんだ。
……消すことだけは、だけどさ。
「ちょ、ちょっと何をするのよ? 浅葱」
小さな小さな恩返しだよ。私にはこれくらいしかできない。だからこれくらいはやらせてもらうんだ。
まん丸の赤い月の方へ少しだけ近づく。
高い場所から下の景色を見てみると、何処も彼処も赤だらけ。上には赤い月、下には赤い霧と赤い建物。
さあて、それじゃあ――
「いただきます」
優しい霊夢さんも素敵です
異変の後は楽しい宴会
宴会と言えば美味しいお酒
お酒は楽しみですね