遊戯王ARC-V LDS 進化の翼   作:ユアシアン

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Phase4 輝石VS龍騎 私はあなたを認めない! エピローグ

 30分程話し込んだだろうか。

 そこそこの時間が過ぎたのもあって、お互いのトレイに乗っていた飲食物はもう殆ど無い。 

 あるのは光津さんが手に取っているカップに入った紅茶のみで、それも今彼女がを音を立てずに飲み干し、ソーサーの上にカチャ……と置かれた。

 光津さんは満足したのか、ごちそうさまの変わりのように一息つく。

 そして一言。

 

「だというのにあなたあの時の出来事の直後に負けたわよね。 それもよりによって自分より下位の生徒に」

「その節はどうもすみませんでした」

 

 思い出話が終わった途端に痛い話を繰り出された僕はデーブルに手をついて頭を下げる。 足は正座してないが殆ど土下座の格好になってると思う。

 あのデュエルの次の日、コース内部戦でふっつうに負けたのだ。 いい勝負はしていたんだけど……。

 それを聞いたときの光津さんの形相たるや、《マンジュ・ゴッド》すら《センジュ・ゴッド》に見えるくらいに恐ろしい形相をしていた。 失礼極まりないが、正直あまり思い出したくないレベルだ。

 

「いいわよもう、過ぎた事だしね。 ホラこっちのほうが恥かしくなるから顔を上げなさい」

 

 とはいえ光津さんは過去の事を引き摺る人ではない。 もう怒ってないのは僕だってわかっている。 頭を下げたのも冗談半分だった。 念のため半分本気だったけど。

 「はい」と軽い返事をして、僕は言われた通りに顔を上げた。

 光津さんは頬杖を着いて、

 

「まぁ、ここ最近まで9連敗までいていたのは流石に頭来たけど、昨日えっと……そっちのコースの一門さん、だっけ? 結構強い相手だったんでしょう? そんな相手に勝ったんだから、今度こそ負けるなんて許さないわよ!」

「き、肝に銘じておきます……」

 

 実を言うとあの後赤馬社長とのデュエルで負けてしまったのだけど……ま、まぁ公式戦じゃないし、ノーカンだよね! というかそれ以上にその事を言ったら僕自身がどうなるか解ったものじゃない。 考えるだけで恐ろしい。

 

「それに、今あなた勝率5割ちょうどだったでしょう? 早いとこ6割にしないと、大会に出られないわよ?」

「うっ……」

 

 さらに痛いところを突かれて言葉に詰まった。

 光津さんの言う大会と言うのは、今度開催される『舞網チャンピオンシップ』の事だ。

 舞網市に存在する全てのデュエルスクール及び各国の関連デュエルスクールが集結する大きな大会で、参加する生徒は所属する塾の看板となって戦い、そこで良い成績を残せたら今の『ジュニアユース』から『ユース』昇格の近道になる。

 

「参加したいと思ってはいるんですけど……」

 

 僕だってプロを目指す一デュエリスト。 参加したくないわけではない。

 しかし、その参加資格は『年内の公式戦の数が50を超えていて且つ勝率6割以上』の者に限られている。 今の僕の戦績は23勝23敗。 光津さんの言う通りちょうど5割なうえにまだ50戦すら行っていない体たらくだ。

 自分の現状を振り返った結果。 参加の道のりだけでもやたら遠く感じて陰鬱な気分になりかける。

 それが顔か体勢に出ていたのか、「こら猫背にならない」と光津さんが僕の両肩を掴んで整えさせた。 しかし、身体はともかく顔は微妙に俯いてしまう。

 

「大会の登録締め切りまで時間はまだあるんだし、この先のデュエルを全勝すればいいでしょ。 簡単な話じゃない」

 

 そう光津さんは簡単に言ってくれるが、この先のデュエルを全勝だなんて当然簡単な訳がない。

 エボルート召喚を知り、いくら手数が増えたからとは言え、いきなりポーンと勝率が上がるなんてことはないと思う。 何度も言うように僕の勝率はたった5割で、実力だってLDSの中じゃ真ん中より下だろう。 例え出場できたとしても、到底大会で良い成績を残せるだなんて思えない。

 …………だけど、

 

「……そう、ですよね」

 

 それは諦める理由にはならない。

 参加できなかったとしても、結果なんて残せなかったとしても、それでも頑張るしかないんだ。

 ゆっくりと顔を上げる。 光津さんは、その言葉を待っていたとばかりに微笑んでいた。  

 

「ふふっ……やっぱりいい顔になったわよ。 あなた」

「そ、そうですか?」

「ええ、保障するわ。 なんていうか、デュエリストの顔になってる」

「……それって褒められているんですか?」

 

 それはつまり今の今まではデュエリストとしての顔つきをしていなかったという事だろうか。 それはそれで微妙に傷つくのですが……。

 「まぁそれより」と、光津さんは僕の疑問を流す様に話題をすり替えに入った。

 

「勝率上げるならやっぱりまずは数をこなさなきゃね。 どう遊雅? 何なら今日の講義が終わったら私とデュエルしない?」

「え、今日ですか?」

「ええ。 時間も限られてるから早めにこなした方が良いし、なによりあなたのエボルート召喚。 私も相手してみたいと思っていたところだし」

 

 光津さんはそう口端を釣り上げて「それにそろそろリベンジもしたいしね」と付け加える。

 なるほど、それは僕としても魅力的な提案だ。 断らない理由はない。

 

「いいですね! じゃあ早速コート使用の申請を……」

 

 この時期は大会が近いこともあってコートは予約をしておかないと使えない事が多い。 なので、メールで予約を入れようとディスクを手に取った。

 その時、

 

『メールを、ドロー! メールを、ドロー!』

「わっ、メール?」

 

 ビックリする位ジャストなタイミングでメールの着信画面が映る。 タップして確認してみると……

 

「兄さんからだ」

「兄さん……って、アイツか…………なんて言ってるの?」

「え~っと、『遊雅! 新しいデッキを構築したから今すぐにコートに来い! 俺様のスペシャルでファンタスティックなデッキの力を見せてやる!!』……だそうです」

 

 へ~、兄さんデッキ新しくしたんだ。 前のデッキかなり気に入ってたみたいだったけど、それはバラしちゃったのかな。

 

「……それってデュエルをしろってことなの? それとも見て評価しろってことなの?」

「多分前者ですかね。 プラスで作ったデッキの自慢かと」

「身内に対してもそんな感じなのね、アイツ……」

 

 光津さんはげんなりした感じでそう言う。 心底うんざりているのが見て取れるが、気持ちはわかるので僕もつい苦笑してしまう。

 それにしても困った。 この後講義があるので今すぐは無理だし、終わった後は光津さんとデュエルの予定が既に入った。 兄さんのデッキは見たいし相手もしてあげたいけど、でもそれは光津さんに失礼だし、でも行かなかったら兄さん機嫌損ねそうだし…………うううううううぅぅぅぅ………………

 

「良いわよ、行って」

「え?」

 

 心の中で悩んでいたら、意外な言葉が飛んできたので思考が中断され、呆けた声を出してしまう。

 

「また顔に出ていたわよ、相手をしてあげたいって」

「え、あ……うう……」

 

 またもや表情を読み取られたようだ。 自分の学習能力の無さがあまりに恥ずかしすぎて小さく唸るしかない。

 

「ご飯の件といい本当にすみません……今度絶対に埋め合わせをします!」

「いいわよ。 ご飯は私が勝手にやったことだし、デュエルの方もまた今度相手をしてくれればそれでいいわ」

「あ、ありがとうございます! ええとじゃあ、『了解! でも講義があるから、後でね。 ごめんね><』……よし、送信っと」

 

 送信完了とメッセージが画面に表示されるのを確認してから、ディスクをテーブルの上に置く。

 新しいデッキかぁ……どんなのなんだろう……? ふふっ、楽しみだな~♪

 

「…………凄く嬉しそうね」

「うぇ!?」

 

 し、しまった! また顔に出ていたようだ。 目を向けると、光津さんはまるで公園で平然といちゃつくカップルを見るような目でこちらを見ていた。

 ま、まずい! 機嫌を損ねかけている可能性が出てきた!

 

「え、えぇっと…………あ! トレイ下げますね!」

 

 せめてちょっとだけでも気を回そうと、僕は光津さんのトレイと自分のトレイを持ち上げる。 いきなりだったからか、「え? あ、あぁうんありがと」とちょっと戸惑いながらのお礼の言葉が聞こえた。

 よ、よし、微妙にごまかす感じになっちゃったけど、ほんの少しは挽回できたかな?

 そのまま僕は「いえいえー」と返しながらそそくさと返却口の方へ向かう。

 

「私はアイツに負けた訳か……」

 

 その際、もう一つ何か光津さんが呟いた様に思えたが、流石にもう離れてしまったせいであまりよくは聞こえなかった。 どことなく不満そうな響きがしたけど…………やっぱり、今度なにか埋め合わせをしようかな。

 食べ終わった食器を返却口に戻しながら、僕はそう決める。

 

 

 

 そして昼休みが終わり、僕と光津さんはそれぞれの教室へと向かった。

 講義が終わった後、僕は兄さんの元へ向かうのだが、その時に僕は後悔することになる。

 

 

 

 行くなら講義を受けずに、すぐさま兄さんの元へ向かっておけば良かったと。

 




いつも読んでくださりありがとうございます。ユアシアンです。

さて、ついに今回で4話が終わったわけですが……。
ぶっちゃけ反省が多すぎます……。

デュエルの内容的に言えば、やっぱりダイヤさんは出したかったと思っています。
そもそもラピスラズリを出したのが間違いだったんですよね。まだ出てないし、そのせいでダイヤさんを出してしまえば一瞬で遊雅が負けてしまうという事態を作ってしまいました……。

物語的な部分では、今回はゆっくりとしたほのぼのとした、嵐の前のひと時みたいなものを描きたくって、んじゃあなにかこうかなぁと思って書いたのが二人の馴れ初めでした。
ただこれ、今書く話じゃなかったなぁと、後半くらいを書いている時に気づきました。この話はもっと後に書くべきだよなぁと……。
なんなら北斗とのお話かくべきだったかもと後悔しています(ハブ受けてる状態だし)。

……愚痴を言ってしまい申し訳ないです。
今回の反省を踏まえつつ、今後はもっと良いものを書けるように精進したいと思います。

次回でついにARC-V本編とつながり始めます!どうぞお楽しみに!
それでは、皆様の感想、評価、アドバイスなどを心からお待ちしております。もし少しでも気に入ってくださった場合は、お気に入り登録をしていただけると励みになります!

失礼します!
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