遊戯王ARC-V LDS 進化の翼   作:ユアシアン

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Phase2 進化の翼、エボルート召喚 B

 とある建物の一室。

 そこは壁には壁紙の代わりに巨大なモニターがそれぞれ入り口以外の3面に存在し、薄暗いこの部屋を蛍光灯や電球の代わりに照らしており、何人もの人間がせわしなくその壁のモニターと自身が立ち向かっているモニターを見比べながらキーボードを動かしている。

 『レオ・コーポレーション・オペレータールーム』

 その名の通り、大企業レオ・コーポレーション内の何処かに存在するオペレータールームだ。

 舞網市内のデュエルの内容、デュエリストの強さなどを全てを把握するため、24時間365日、常に監視するために造られた空間である。

 そしてその日、そこで事件は起こった。

 

「市内臨海地区――いえ、LDS内に、高レベルの『召喚反応』を確認!」

 

 突如、アラームが室内に響き渡り、同時にオペレーターがモニターの内容を解析しながら告げる。

 その報告にいち早く反応したのは、ルーム内の中心に居座った男だった。

 

「何だと!? 召喚方法は何だ!」

「…………解析結果、出ます!」

 

 オペレーターの声と共にモニターに映し出される、男が問うた召喚方法。 そこには、

 

『EVOLOOT』

 

 そう、映されていた。

 それを見た男の顔が元々驚愕に染まっていたその色をさらに濃くする。

 

「エ……エボルート……だと!? なんだその召喚方は……」

「いかがなさいますか?」

「……っ! 社長に報告しろ! 今すぐにだ!」

 

 立ち上がってしまうほど興奮した様子で、男はそうオペレーターに指示をする。 「はいっ!」という返事を聞くと共に男は再度席に座り、両手で組んだブリッジで顔を支えながら誰かに聞かせることなく呟く。

 

「また新しい召喚法だというのか……? バカな……つい先日、『今までにない召喚法が発見されたばかり』だと言うのに……っ」

 

 

 

『……………………………』

 

 ブルトガングが完全に姿を現した時、会場はしん……と静寂に包まれていた。 何がなんだかわからないと言った所だろう。 僕自身もそうなのだから仕方だない。

 十数秒そんな状態が続いただろうか。 最初に静寂を破ったのは、一門さんだった。

 

「……な、なによ……。 フン! よく解らないけど、そのモンスターの攻撃力もたかだか2500。 レビュアタンを倒せる攻撃力じゃないわ!」

「いいえ、倒せます! 僕はブルトガングの効果を発動! 1ターンに一度、メインフェイズ時に、墓地に存在するドラゴン族のドラグニティを1体選択し、このカードに装備します。 僕は『ドラグニティ-ブランディストック』を装備!」

 

 ブルトガングの左腕にライトシアンの色をしたランスのようなガントレットが装着される。

 よし、準備完了!

 

「バトルに入ります! ブルトガングで、レビュアタンに攻撃!!」

「……!? まさか、そのモンスターにもゲイボルグと同じような効果が!?」

「いいえ……パンプ能力は持っていません。 でも、それでもいいんです! 行け、ブルトガング!!」

 

 ミリトゥムの時よりも大きくなった翼を羽ばたかせ、レビュアタンに向かって滑空する。

 それを見た一門さんは、ニヤリと笑った

 

「……なるほど。 今度こそ自棄になったのね……いいわ、完全に終わらせてあげる! レビュアタン、返り討ちにしてやりなさい!」

 

 レビュアタンが虚空へ手をかざす。 すると、その手を中心に幾つもの幾何学的な紋様が描かれた魔法陣が出現し、それがすぐさま真っ赤に発光する。

 

「カオス・エデン!!!」

 

 そして、その魔法陣から無数の紅い光の矢がブルトガングに放たれた。 弾幕となったそれらは、無情に無残にブルトガングの体を

 

「な!? 何よ……これ……」

 

 貫かなかった。

 ブルトガングはその弾幕の隙間を、体を捻りながら縫うようにすり抜け、尚もレビュアタンに向かって行っている。 

 普通モンスター同士の戦闘が行われた場合、時間稼ぎのために逃げることはあっても対峙しながら避けるなんてことはまず無い。 ありえない光景に一門さんがわなわなと震えるのも無理は無かった。

 だけどこれは必然の事!

 

「ブルトガングの効果! それは、レベル4以下のドラゴン族『ドラグニティ』モンスターを装備した状態で戦闘した場合、1ターンに1度だけ、ダメージ計算を行わないで相手モンスターを破壊します!!」

「!? じゃあレビュアタンは……!」

「もちろん攻撃力が高くても破壊されます!」

 

ドラグニティセイバー-ブルトガング

エボルート・効果モンスター

星7/風属性/ドラゴン族/攻2500/守2000

「ドラグニティ」カードを装備した「ドラグニティ」モンスター1体←フィールド魔法カード1枚

(1):1ターンに一度、自分のメインフェイズ時に発動する事ができる。

自分の墓地のドラゴン族の「ドラグニティ」モンスター1体を選択し、

そのモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する。

(2):このモンスターは装備したドラゴン族の「ドラグニティ」モンスターによって以下の効果を得る。

●レベル4以下:1ターンに一度、このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。

●レベル5以上:このモンスターは相手のカード効果を受けない。

(3)このモンスターが相手によってフィールド上から離れた時、このモンスターが装備していたドラゴン族の「ドラグニティ」モンスターの数だけ相手フィールド上のカードを破壊する。

 

 そしてついにブルトガングがレビュアタンの懐にまで到達する。 今にも切り裂ける位置だ。

 レビュアタンは苦し紛れにレイジオンと同じように手に紅い光を灯らせて拳を振るうが、ブルトガングはそれを身を屈めて回避した。 空振ったレビュアタンは完全に無防備な状態となる。

 そしてそのまま足をばねにして飛び上がり、手に持つ剣でレビュアタンを下から上へと真っ二つに切り裂いた。

 

「レビュアタン、撃破!!」

 

 真っ二つになった『魔轟神』は、そのまま光の粒子となって爆散する。

 

「……クッ……だけどここでレビュアタンの効果で、私は墓地から『魔轟神獣キャシー』、『魔轟神獣ケルベラル』、『魔轟神レイヴン』を加える!」

 

 その爆風に堪えながらスカートを押させる一門さんは、歯噛みしながらもレビュアタンの効果を使ってサルベージを行った。

 でも――

 

「それは使わせない!! ブランディストックを装備しているモンスターは、1ターンに二回攻撃が出来ます!!」

「……なんですって!? それ、じゃあ……」

 

 一門さんの顔が段々と青ざめていく。

 今の彼女の場に、カードは1枚たりとて存在しない。

 

「このデュエル……僕の勝ちです! ブルトガングで、一門さんに直接攻撃!!」

 

 ブルトガングが水平に剣を構える。 その切っ先は、目標(一門さん)に向けられていた。

 

「……そ、そんな……い、いや……」

「ブリング・オブ・テンペスティア!!!」

 

 そして、砂を巻き上げるようにその剣を振り上げ、その剣圧が竜巻となって一門さんへと放たれる。

 

「……ひっ……や、刃様……やい、き、きゃあああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 竜巻に飲み込まれた一門さんは、悲鳴を上げながらその身を宙に投げ出され、そのまま森の奥地へと姿を消していった。

 

Nana

LP 2200→0

 

Winner

Yu-ga

 

トラックのクラクションにも似たデュエル終了のブザーが鳴ると共に、リアルソリッドビジョンによって変えられていた辺りの情景は光の粒子となって元のセンターコートへと、夜明けのまばゆい朝日はまるで時間が急速に動いたかのように、お昼時の爽やかな青色へと変わっていく。

 

『…………………………』

 

 異様なほど、静かだった。

 センターコートでのデュエルが終わったのにも拘らず歓声ではなく、どよどよと、どう反応したらいいのかというようなざわめき声が聞こえる。

 

「……勝った……の……?」

 

 いまいち実感が沸かない。 どうやって自分が勝ったのかも、どこか朧気だ。 でも、間違いない!

 

「……勝ったんだ……!」

 

 そう、噛み締めながら再び零す。

 するとどこからか、パチ……パチ……と、手を叩く音が小さく聞こえてくる。 それは、段々と大きくなって行き、最終的には大喝采へと変わっていく。

 そうだ、僕は

 

「――――――勝ったんだ!!」

 

 大空を仰ぎながら、やっと実感できた自分の勝利をコートに響かせる。 それに木霊するかのように、客席からも『ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』と、歓声が上がった。

 

「勝った! 勝ったんだ! 勝ちましたぁ!!」

 

 体中からこみ上げて来る喜びを堪えきれず、小躍りするように客席を沿って走りながら手を振る僕。

 あぁ……一体どれくらいぶりだろうか。 デュエルで勝つことがこんなにも嬉しいなんて感じるのは。

 それは、ここ最近全く勝てていなかったからというだけじゃない。 何て言えばいいか……こう、初めて勝ったような、そんな感覚に近い。

 とにかく、すごく……凄く嬉しい!!

 

「勝ったあああああああああああああああああああああ!!!」

 

 もはや堪えることを一切せず、自分の体の底から力を出して思いっきり勝ち鬨を上げる。

 そんな勝利の美酒を味わえた形で、ある種僕の人生を賭けたデュエルはこうして幕を下ろした。

 

 

 

「「遊雅!!」」

 

 センターコートを出てバッタリ鉢合わせた人達に、まるで長期入院からの退院を歓迎するかのような声を掛けられた。

 

「こ、光津さん!? それに、刀堂さん! と……志島さん……でしたよね」

「あ、ああ……」

 

 あれ、なんだ? 志島さん呼びかけるや否や顔を赤くして目を逸らしたぞ……?

 

「遊雅!」

「あ、はいって、うわっぷ!?」

 

 志島さんに対して怪訝に思っている最中、再び呼びかけられると同時に、光津さんに抱きしめられた。

 な、何!? いきなりどうしたのていうか柔らか!?

 僕の身長が低いせいで光津さんの身体にすっぽり覆われる形になった。

 

「……こ、光津さん?」 

「よかった……本当……負けちゃうんじゃないかって、心配したんだから……っ!」

「光津さん……」

 

 昨日もそうだったけど、こんなにも心配してもらって、本当に嬉しく思う。 

 「ありがとうございます」と言って、勝ったご褒美としてちょっとだけこのままでいようかなぁと思春期全力な事を思ったその時、

 

「でも……」

「?」

 

 あれ? なんだか寒気が……こんなにも温もりで一杯なのに。

 

「私があげたカードを全く使わないのはどういうことかしらぁッ!!!」

「いぎ、いたたたたたたたたたたたたたたた!!?」

 

 光津さんの僕を抱きしめる力が恐ろしいほどに強くなった。

 痛!? でも柔かい、それでもやっぱり痛い! 痛柔らかい!!

 自分の中でも意味が解らない造語を作ってしまったいやそんなことはどうでも良い! は、早く言い訳をしなければ、頭がつぶれる!

 

「ち、ちがうんです光津さん! 使いたかったんですけど、手札に来なか――」

「嘘つくんじゃないわよ! 最初っから手札にあったじゃない」

 

 凄い、結構上の方の席だったのに見えてたんですね光津さ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!! 頭がああああああああああああああ!!!

 

「いや、あの、嘘じゃないんです! 使いたかったんですけど、キーカードが来なくって!!」

「それでもブラフには使えるカードだったでしょうがあああああああッ!!!」

「あ、確かにギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

「おいおい、じゃれるのもその辺にしてやれよ」

 

 頭の中がメキメキ鳴り始めた所で、刀堂さんから制止の声が掛かる。 ナイスです刀堂さん! 

 光津さんも「ったく、次はちゃんと使いなさいよね」と言ってようやく開放てくれた。 「はい、すみませんでした」と返してから刀堂さんの方を向く。

 

「へっ、良いツラになってんじゃねぇか。 あのデュエルの中で、掴んだみてぇだな」

「はい! 刀堂さん、光津さん、本当にありがとうございました! おかげで、大切なことに気付けました!」

「いいってことよ! なっ!」

「ええ。 ここで負けてまた私の顔に泥を塗られても嫌だったし、なによりリベンジ出来なくなっては困るわ」

 

 刀堂さんに賛同しながら含んだ笑みを僕に見せる光津さん。 あ、これ多分近いうちにデュエル申し込まれるな。

 なら、僕も相応の返事をしておこう!

 

「リベンジなら、いつでも良いですよ! 今度も僕が勝ちますから!」

「っ!? へぇ……言うようになったじゃない。 流石は私のライバルね」

「えへへ……あ、そうだ。 刀堂さん。 一つ良いですか?」

「おう、なんだ?」

 

 そういえば一つ聞きたいことがあったんだった。

 当人には申し訳ないが、ちょっと興味本位で聞いてみよう。

 

「刀堂さんと一門さんってどういう関係なんですか?」

「あん? 一門? いや別にこれと言ったもんはねぇが……」

「え? 何にもないんですか?」

「んー……前にデュエルを1回だけやった位だなぁ。 かなり強かったと思うが……どうしたんだよいきなり」

「いえ……なんでもないです」

 

 可哀想に一門さん。 全くもって脈なさそうですよこれ。

 しかも更に追い討ちをかけるように(本人に自覚無し)、「あ、それよりよ」と続ける刀堂さん。

 それよりと来たかぁ。 興味すらもってないですね刀堂さん。 まぁ今度機会があったら一門さんの方から刀堂さんとなにがあったのか聞いてみよう。

 

「お前、最後に見せた召喚法。 アレ何なんだ? シンクロでも融合でも、エクシーズでもなかったろ?」

「あー、アレですか……」

 

 やっぱりそれ聞いてきますよねぇ……うーん、何て説明しよう。 僕自身でもあまり解ってない事ばかりなので説明の仕様がないんだよなぁ。

 

「えっとそれが……解らないんです」

 

 説明しようがないからと言って嘘をつくわけにもいかず、素直にそう答えた。

 

「あん? 解らないって――」

「わ、解らないとはどういうことだ!」

「え、わっ、し、志島さん!?」

 

 刀堂さんの言葉を遮って、いきなりもの凄い勢いで志島さんが詰め寄って来た。 

 な、何!? 何でそんなものすごい形相なの!?

 

「答えてくれ! 僕は、あの召喚法を見て初めてエクシーズ召喚を見たときと同じ位感動した。 とても美しいと。 だからあの召喚法を知りたいんだ。 頼む、教えてくれ天辻遊雅!!」

「ひゃうっ!? え、えっと…………」

 

 ガシッと両肩を掴まれあと数cmで鼻先がくっ付きそうな位迫ってくる志島さん。 うーん、教えてあげたいのは山々だけど、むしろ僕の方が教えてほしいくらいなので、そう言われても困ってしまう。

 どうしたものだろう……と目線を泳がせながら悩んでいると、ふと志島さんが離れた――というよりは引き剥がされた。 光津さんに。

 

「うおっ!?」

「コラ北斗。 遊雅はデュエルの後で疲れているんだから、その位にしてあげなさい」

「ま、真澄!? し、しかし、僕はどうしてもあの召喚法を……!」

「そんなの講義が終わった後でも大丈夫でしょ? 今は休憩が先決! あ、そうだ。 遊雅、お昼まだよね? カフェに行きましょ。 せっかくだし、お祝いとして奢ってあげるわよ」

「え! 良いんですか!? わーい!」

 

 女性に奢って貰うなんてちょっと気が引けるけど、お祝いと言われては遠慮よりも嬉しさが優先されてしまう。 年甲斐もなく(10代前半)両手を挙げて喜んでしまった。

 

「お、マジか! 気前良いな真澄!」

「ふむ。 そういうことなら僕も同行しよう」

「何言ってんの。 私が遊雅に奢る分、貴方たちが私に奢るのよ」

「「金持ちの癖にケチ臭ェ!!」」

「あはは……」  

 

 その場の流れでおこぼれに預かろうとする男二人を一喝する光津さん。

 そんな3人の仲良し漫才に少々苦味を含んだ笑い声を零してしまう。 本来なら、主席という自分が見上げるような位置にいるこの3人が、こんなにも普通の少年少女のような姿を自分に見せている。 それは微笑ましくもあって、ちょっとだけ、驕りかも知れないけど誇らしくもあった。

 

「まったく。 ホラ遊雅行くわよ。 早く行かないと次の講義の時間までゆっくり出来ないわ」

「あ、はい!」

「ったくしょうがねえな、俺も遊雅の分を出すって気持ちで奢ってやるか! 北斗、ちゃんと金出せよ」

「くっ……仕方ない……ならば天辻遊雅! 奢ってやる分、あの召喚法の事きっちり教えてもらうからな!!」

「ダメよ。 その前にまず今日のデュエルの反省をするんだから。 良いわね、遊雅」

「はい!」

「何ィッ!!?」

 

 こんな人たちと、これからも切磋琢磨してデュエルの腕を磨いていける。 それがとても嬉しくて、今回のデュエルで得たものは本当に多いのだと再度実感した。

 ただ、志島さんには本当に申し訳ないが、僕があの召喚に対して教えてあげられることは本当に少ない。 

 だけど唯一つ、志島さんに対しても、これから聞かれるであろう人たちに対しても教えられることが一つだけある。

 それは――

 

 この召喚法の名前が、『エボルート召喚』だということだ。

 

 

 

 時刻は午後17時。

 あの後、志島さんだけではなく色んな人に質問攻めされたり、もみくちゃにされたり、同じコースの人たちからは祝いの言葉を貰ったりしながら、なんとか今日のカリキュラムを終えた。 その後、知ってはいるだろうが赤馬理事長のところへ赴き、勝敗の報告と今後の方針を窺った。

 すると赤馬理事長はあまり良い顔はしなかったが、僕のコースの変更は取り止めにして下さった。 よかったよかった。 ……まぁ、その際に「一門菜奈……まったく、失望したわ……」なんて声がチラッと聞こえたけど、いい加減そろそろ本当に可哀想過ぎるから聞き違いであったことを願うばかりだ。

 そんな感じに理事長室を後にした僕は、今日のデュエルの復習と反省、それと無いとは承知でエボルート召喚に関する資料を探しに、書庫に来ている。

 しかし、それも一通り終わったので(もちろん資料はなかった)、今はデスクの一角で頬杖しながら、今日のデュエルの勝因となったカードを見つめていた。

 

「一体、何でこんなカードが僕のディスクに入ってたんだろう……」

 

 『ドラグニティセイバー-ブルトガング』。

 今日のデュエルは、このカードのおかげで一門さんに勝てた。 しかし逆を言えば、いつの間にか入っていた全く見知らぬこのカードがなければ、一門さんに負けていた事になる。 それはつまり、本来の僕の力だけでは、一門さんに勝てなかったという事だ。

 だけどそれでも、今日だけは勝たなければならなかったのだ。 それが例え、自分のではないかもしれない力であっても、どうしても。

 

「ありがとう……って言うべきなのかな」

 

 身勝手ながらも、このカードにそうお礼を言いたい。

 僕は心の中で、このカードにありったけの感謝の思いを込めて、傷付けない様に抱きしめる。 なんだか私物化しているような気がするが、まぁ今は良いだろう。

 それよりも、二つ気になる事がある。 一つは赤馬理事長のことだ。

 

 何故理事長は、エボルート召喚に対して何も聞いてこなかったのだろう。

 

 デュエルを見ていなかったのだろうか? いや、もし見ていなかったとしても、デュエルが終わってからもう既に3時間以上は経っている。 その間全く理事長へ連絡が行ってないなんて事は流石に無いと思う。

 じゃあ何でだろう? 泳がされてる? それこそ何の為に? さっさと事情と詳細を聞いた方が、情報を得ると言う意味では得策なはずだ。

 ちなみに僕の方から伝えなかった理由は、もしかしたら没収されるかもしれないと思ったからだ。 本当に完全に私物扱いですねこれ。

 それと、こっちの方が重要なのだが、二つ目。

 

『エボルート召喚』とは、何なのか。

 

 志島さんにも伝えたように、使っておきながら変な話だが、僕はこの召喚法に対して全く理解出来ていない。 あの時は書かれているテキストを参考にとっさにやってみたら偶然上手くいっただけで、実は他の召喚コースの召喚法以上に仕組みが理解出来ていないのだ。

 

「まぁ、これは練習あるのみかな」

 

 シンクロ召喚だってマスターするのには時間を用いた。 教えてもらえる相手がいないのが厳しいところだけど、それでも練習していけばマスター出来る筈だ! なのでまずは刀堂さんか光津さん当たりに練習相手になってもらおう!

 自分の中でそう決定付け、ディスクを鞄の中にしまい、椅子を机の中に入れ、いくつかの書物を持ち出して書庫を出る。

 その時だった。

 

「君が、天辻遊雅君かな?」

 

 低いながらも若々しくて凛とした声が僕に掛けられた。 方向は真正面。 本を持っているせいで微妙に俯いていた姿勢を正してそちらを向くが、相手の身長が高いせいか僕の身長が低すぎるせいか、まだ胸元しか見えなかった。 なのでもうちょっとだけ目線を上げて、相手の顔を確認してみる。

 

 そこで僕は思わず本を落としてしまった。

 

 オーバーリアクションに様に思えるかもしれないが、僕の反応は全くもって正しいものだと言い切れる。

 そこに居たのは、赤い縁の眼鏡を賭けた銀髪の青年。 異様なほど長い赤い色のカシミアマフラーを首に巻き、紺色のロンTに白のチノパンを身に包むその体は、細身にも拘らず儚げさは微塵も感じられない。 スラリと長い脚の先は、素足で白のシューズを履いており、当人の拘りの様なものを感じさせる。 全体的には簡素だが、カジュアルに纏められて身だしなみは整えているといった印象を受ける。 立場相応ながらも年齢相応でもあると言った感じだろうか。

 そう、僕に声を掛けたこの人は――

 

「初めましてになるだろう。 レオ・コーポレーション代表取締役、赤馬零児(あかばれいじ)と言う。 以後お見知り置き願いたい」

 




そんなわけで初お披露目の『エボルート召喚』でした。
ちょっと今回ではどういうやり方かわかり辛いかとは思いますが、次話あたりで説明できる時があるかと思います。
ちなみにエボルートでは進化という意味にはなりません。
進化という意味のevolutionと、起源という意味のrootを合わせた造語です。そのまま読んだらエボルーツになる気もするけどそれだとちょっと微妙のごろ悪いので;

ブルトガングというのはディートリヒ伝説に登場する剣の名前です(FFやってる人は知ってる?)。神話に出てくる剣とは違い、凄まじい力は持っていません(日本刀における銘みたいなものです)。
ドラグニティセイバーの名前はここら辺から頂戴していきたいと思います。

決闘者の方々はピンと来たかもしれませんが、ブルトガングは一見強そうに見えますが、実は結構穴だらけです。戦闘ではとくにそうで、リクルーターとか戦闘破壊で効果が発動するタイプにはめっぽう弱いです(ダメージ計算しないし、破壊は最初の戦闘だけなので)。後何より装備している時のみに効果を得るので、サイクロンとかされるとそのターンはバニラになる可能性が高いです。大嵐とか止めてくださいレベル。

とまぁこんかいはそんな感じで、次回もまたよろしくお願いします!

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ごめん赤馬社長。 まじめに書いたんだけどなんかネタっぽくなっちゃって。
あとLDSメンバーとの会話のやっつけ感どうにかしたい……
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