遊戯王ARC-V LDS 進化の翼   作:ユアシアン

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このタイミングで言うのもなんですが、
ブルトガングの容姿は、ヴァジュランダがそのままネクロスした姿を思い浮かべてもらえれば大体あっています。


Phase3 王と進化と契約書 A

 赤馬零児。

 彼が自身で言ったとおり、大企業レオ・コーポレーションの二代目の社長であり、同時にこのLDSの経営者。 デュエリストとしても、最年少でジュニアユース、ユース選手権を制覇し、そのままプロデュエリストへと昇格した実力者。

 その人を見てまず最初に思ったことは、「何故この人がここに?」ということだった。

 いや、LDSの責任者がここに視察に来ることは別におかしくはない。 より正確には、

 

「初めまして、天辻遊雅です。 赤馬社長の御高名は予てから……ですが、あの、社長が僕に何か御用でしょうか?」

 

 そう、赤馬社長は僕を「きみ」というような曖昧な言葉は使わず、個人名を出して僕に声を掛けた。 つまり僕個人に用があるという事になる。 しかし、LDSの経営者が実戦部隊の『トップクラス』や『制服組』ではなく、ただのジュニアユースの生徒の僕に何の用だろう? ましてや僕は刀堂さん達のような塾内でも優秀な生徒と言うわけではない。 ただのそこら辺の一般生徒と変わらない僕に用があるとはとても思えない。

 いや、一点だけあった。

 

「そうは言いながら、何故声を掛けられたのかは既に解っている顔だな」

 

 見透かされていたようだ。

 ならば、あえてこちらから確認する。

 

「エボルート召喚の事でしょうか」

「その通りだ」

 

 即答で返ってきた。

 ここで僕は、何故赤馬理事長が僕にエボルート召喚に対して聞いてこなかったのかを理解した。

 必要なかったのだ。 既に報告は受けていて、告げるべき相手にその情報は受け渡していたのだから。

 

「話が早くて助かる。 では単刀直入に聞かせてもらおう」

 

 何を……何を言われる……?

 僕が警戒している中、赤馬社長は眼鏡のブリッジを中指で少しだけ押し上げながら、更にこう続けた。

 

「私とデュエルをしてくれないだろうか」

「………………は?」

 

 あ、やば、ちょっと失礼仕った。

 行き成り予想外過ぎる事を言われたので頭がテンパって思わず零してしまった。

 というか、え待って、今ってエボルート召喚について聞き出す流れじゃないの!? な、何でデュエル!?

 

「……君はどうやらすぐに顔に出るタイプのようだ。 何故デュエルを申し込まれたのか理解できないと見える」

「えっ!? あ、す、すみま、あいや、申し訳ございません!」

 

 う、うわぁ、そんなに顔に出ていたなんて……! 失礼な態度をとってしまった上にそんな子供みたいな……うぅ恥ずかしいぃ……。

 非礼を謝罪すると同時に恥を隠すように頭を下げる。

 

「いや、謝る事はない。 それにそこまで硬くなることも。 デュエルにおいて表情がコロコロ変わるのは、相手にとって心理的な情報を公開してしまう事にも繋がるが、普段そうしているのは私としては人間的に好ましく思う」 

「あ……ありがとうございます」

 

 うぅ……フォローされてしまった。 死ぬほど恥ずかしい……。

 しかし、僕の非礼に対して機嫌を損ねるどころか、表情こそ変わらないものの穏やかな声でそうフォローしてくださるその姿勢は、まさに上に立つ者として器が完成しているように見えた。 あの、僕とそんなに歳変わらない筈ですよね?

 

「では、私がデュエルを申し込んだ理由を述べよう。 まず、恐らく君は私がエボルート召喚について聞いてくるのだと思ったかもしれないが、あのデュエルの後、直ぐに私の所に報告が入った。 聞いた事もない新しい召喚法が感知されたと」

「やっぱり……」

「ほう……その辺りは理解していたということか。 中々に頭が回るようだ。 実を言うと理事長からは即刻回収すべきとも言われた。 解析しすぐさまLDSのカリキュラムに取り込みたいと思ったのだろう」

「ッ!」

 

 社長のその言葉を聴いた時、僕は背筋が凍った。

 回収。 つまり、カードを没収……ッ!?

 ブルトガングを失う。 そう自覚し僕の視線は段々と下に下がっていく。 しかし赤馬社長は、また僕の表情を見て心情を察したのか、「だが」と首を横に振った。

 

「回収の件は私の方から断固拒否した」

「え?」

「デュエルの映像を見させてもらったが、君はエボルート召喚を行う直前、どこか自信が無さそうな表情をし、その後決心したというような表情をしていた。 恐らく、君自身もあの召喚法を行うのは初めてだったのではないだろうか」

「っ!?」

 

 すごい……ここまで読み取られるなんて……。

 自分の心理状態を事細かに把握されるなど、恐ろしい以外の何者でもない。 だけど僕はそれ以上に、目の前の青年――いや、まだ年齢的には少年であろうその人間に尊敬の念を覚える。

 

「やはりそうか。 やはり回収の件を拒否して正解だったようだ」

「? どういうことでしょうか?」

 

 もはや表情を読み取られることに関しては驚かない。 むしろ普通に言葉を返している自分に驚いている。

 

「エボルート召喚をこの世界で一番最初に行ったのは間違いなく君だ。 それは同時にこの世界で最もエボルート召喚の事を把握しているのは君だという事になる。 ならばそれは此方で回収してしまうよりも、君の手で実践で使い続けてもらい、新たなる道を築いてもらった方が効率的だと思った」

「効率的……ですか」

 

 そう思われなければ回収されていたかもしれないと言う事だろう。

 複雑な気持ちではあるが、今は心の中で胸を撫で下ろす。

 

「あぁ。 そして話を戻すと、私がデュエルを申す込む理由は……いや、もう言わなくても君なら理解出来ているか」

 

 社長は目を伏せてそう言葉を切る。 どうやら僕に答えてみろと促しているようだ。

 んー……、当たっているかどうか怖いけど……社長は続ける気が無さそうなので、とりあえず口に出してみる。

 

「……えっと、僕とデュエルをすることによってエボルート召喚を間近で見、力量も測ってみる……そこで及第点以上なら、量産、商品化を図ってみる……と言ったところでしょうか?」

 

 相手が相手なので失礼の無い様(遅い気もするが)、考えながら答えていったため、たどたどしくなってしまうが、その間赤馬社長は特にリアクションを示さなかった。

 しかし答え終わった後、社長は閉じていた目を開き、まっすぐに僕を見下ろした。

 

「ほう……思っていた以上だったな。 9割方正解だ」

「9割……?」

「いや、気にしないでくれ。 さて、一応私が言うべき点は全て述べたつもりだが……もう一度質問させてもらう。私とデュエルをしてくれないだろうか?」

「……………………」

 

 眼鏡の奥からこちらを射抜いてくる眼光に、僕は僅かに目を逸らして口を紡ぐ。 別に、赤馬社長に対して臆しているわけではない。

 考えたのだ。 赤馬社長のこの申し出に。

 実はこれ、かなり意地悪な内容なのだ。 まず、相手の立場を考えてみて欲しい。 僕の目の前に立つこの赤馬零児と言う人間は、このLDSの経営者。 理事長と比べても考え方によってはそちらよりも逆らえない相手だ。 機嫌を悪くしてしまったらどうなるか分かったものじゃない。

 そして次に、この人が何を求めているかを考える。 簡単だ。彼が求めているのはエボルート召喚の詳細。 赤馬社長は実際にデュエルしてその強さを知りたいと仰って来ているのに、それを断ったらどうなる。 デュエル以外でエボルート召喚を知る手段。 そんなの僕から取り上げてしまうのが一番早い。 正に効率的だ。

 社長本人は回収しないで僕にそのまま使わせた方が良いと言っていたが、それは今回も含め実戦でのデータを取りたいという意味だろう。 端的に言えば、僕は貴方の意思に協力的だという意思を見せねばならない。

 つまりこの状況、僕には断る権利は無いに等しいのだ。

 ならば当然、僕の答えは――

 

「わかりました。 そのデュエル、お受けします」

「そうか。 礼を言わせて頂く。 では、地下のデュエルコートへ行こう。 貸し切ってある」

「……わかりました」

 

 赤馬社長はそう言いながら踵を返してエレベータの方へ向かっていく。 僕もそれに着いていった。

 貸し切ってある。 ということは、最初から僕がデュエルを受けることすら見透かしていたようだ。 その用意周到さに心の中で苦笑う。

 ちなみにこのデュエル。 受けた理由は断れなかったという点だけじゃない。 自分の為でもあった。

 赤馬社長はプロデュエリスト。 そんな人間とデュエルできる機会なんてそうそう無い。 経験を積むと言う意味でもこのデュエルは受けておくべきだ。

 それに、エボルート召喚を再び試せる良い機会でもある。 相手にとって不足は無い。 僕の方が不足しているくらいだ。

 つまるところ、僕には断る権利云々の前に、断る理由すらなかったのだ。

 だが、

 

「その前に赤馬社長。 落としてしまった本を拾ってもいいでしょうか?」

「……手伝おう」

 

 4,5冊あったので少々手間となると思って聞いてみたら、半分くらい持ってくださった。

 どうやら結構良い人みたいだ。

 

 

 

 赤馬社長とエレベーターで地下の階層まで降りる。 扉が開くと、そこはクッション付きの長椅子が隅にある控え室のような所だった。

 あ、あれ……? 地下のデュエルコートのある階層にこんな所あったっけ? しばらく行ってないけど、記憶では非常に長い廊下があって、その左右にいくつものデュエルコートが並んでいるような構造だったはずだ。

 

「こっちだ。 本はここに置いておくといい」

 

 社長が長椅子に僕の借りた本を置いてから控え室の奥の方へと進んでいく。 そちらには大きな扉があり、会長はその扉に備わっているリーダーにポケットから取り出したカードを翳す。 ピピッと無機質な音が鳴ると、扉は微かなモーター音と共に左右に開いた。

 僕も長椅子に本を置いてから社長と共にその中へ入る。 するとそこは、普段僕が目にしているデュエルコートがあった。 

 しかし、辺りを見回すとそれは話が違った。 壁は何のコーティングも施されてない鉄板が張り巡らされていて、無機質なのはもとより、他のコートと比べると無骨な雰囲気がある。

 そしてなにより、入り口側から見て右側の壁。 そこの1階分だけ上の所に横長の曇りガラスが備わっていて、そこから自分たちを見下ろす人影が複数あった。 

 

「驚いただろうか」

 

 僕が壁を見上げている最中に後ろから声が掛る。 振り返るとそこには既にデュエルディスクを装着した赤馬社長がいた。 え、いつの間に!?

 

「ここは私がカードの実験を行うために作った施設だ。 他のコートではまだ残っている塾生に見られてしまう可能性があるので、ここでデュエルをしてもらう。 今回のデュエルは出来るだけ人の目に入れたくはないのでね。 それと、今回はスタンディングデュエルでやらせてもらう。 アクションカードの補助を使うことのないそのままの強さを見てみたいのでね」

「わかりました。 ですが、一つだけ質問させてもらっても宜しいでしょうか?」

「……何かな?」

 

 社長は表情を変えずに聞き返してきた。 よかった、答えてもらえるようだ。

 

「このデュエルですが、勝敗によるペナルティや報酬などはあったりするのでしょうか?」

「いや、そのようなことは無い。 君は気にせず全力で私を相手にしてくれるだけで良い」

「そうですか……」

 

 よかった。 一門さんとのデュエルの時のようなことは無さそうで。

 

「だが」

 

 と、安心して胸を撫で下ろそうとしたその瞬間、事務的ながらも温厚な雰囲気のあった今までとはうって変わった冷ややかな声が僕を突き刺した。

 ビクン! と思わず顔を跳ね上げるような勢いで社長の顔を見上げる。

 僕を見下ろす社長の顔は。 やはり表面上は今までとそう変わらない、しかし目の奥は理事長――赤馬日美香と似たような冷徹な何かがあった。

 

「必ず全力で来てもらう。 もし君が油断によってこのデュエルで全力を出さない、もしくは私にとって期待以下の実力だった場合、他の者にエボルート召喚のテスターを任せたいと言う気持ちにはなるだろう」

「……安心してください。 実力はともかく、僕は全身全霊の力を込めて赤馬社長に挑むつもりです」

「そうか、それは失礼した。 失言を謝罪しよう」

「い、いえ! 御気になさらず!」

 

 赤馬社長が頭を下げようとしたのでそれはちょっと遠慮してもらう。 気にして頂けるのはありがたいけど、さすがにここの経営者の方に頭を下げられるのは申し訳がない。

 

「ではデュエルを始めよう。 定位置に着いてくれ」

「はい!」

 

 言われた通りに僕は社長とは反対側のコートのエンドゾーンへと移動し、ディスクを右腕に装着する。 社長も定位置に着いた。

 

『DUEL MODE ON STANDBY』

 

 そのままディスクのモードを切り替えてからオートシャッフルを起動させ、終わると同時にお互いにデッキからカードを五枚抜き、構える。

 

「では行くぞ」

「いつでも!」

 

 さっき社長は、僕が社長の期待以下だった場合、「他の者にエボルート召喚のテスターを任せたいと言う気持ちにはなるだろう」と言っていたが、 気持ちだけはなく実際に変更するだろう。 だけど今はそんなことは意識しない。 プロデュエリストでもありLDSの経営者でもある赤馬社長とのデュエルに、僕は今、ワクワクしている。 とんでもなく強い相手だというのは間違いない。 でも例え勝てない相手だろうと、自分でも宣言したとおり、全力を尽くす!

 

「「デュエル!!!」」

 

 お互いのデュエリストによるゴングが、広くないデュエルコートに響いた。

 

Yu-ga

LP 4000

VS

Reiji

LP 4000

 

「先攻後攻は君が選ぶが良い」

「解りました。 では、後攻を貰います!」

「ほう……了解した」

 

 スタミナのないドラグニティでは一枚のドローが貴重だ。 それに、社長がどんなデッキを使うのかを見てみたい。 罠カードなどのリスクは背負うが、覚悟の上だ!

 社長が右手を手札に添えた。 来る!

 

「では私のターン。 私は永続魔法《地獄門の契約書》を発動」

 

 契約書……? なんだろう、初めて聞くカードだ。

 

「このカードは1ターンに1度、デッキから『DD』と名のついたモンスター1体を手札に加える」

「レベルの制限のないサーチカード!?」

 

 カテゴリー限定とは言え、範囲が広すぎません!? しかも毎ターン!?

 

「勿論それ相応の対価はある。 私はこの契約により、次のスタンバイフェイズから1000ポイントのダメージを受けることとなった」

 

地獄門の契約書 

永続魔法

「地獄門の契約書」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分メインフェイズに発動できる。デッキから『DD』モンスター1体を手札に加える。

(2):自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

「私は《DDスワラル・スライム 》を手札に加える。 そしてそのまま《DDスワラル・スライム 》の効果を発動。 1ターンに1度、『DDD』融合モンスターカードによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを手札から墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。 私は《DDリリス》を選択!」

 

 い、いきなり融合カードを使わずの融合召喚……! それに『DD』って、聞いたことないカテゴリーだ。

 

「自在に形を変える神秘の渦よ。 闇夜に誘う妖婦を包み込み、今こそ新たな王を生み出さん!」

 

 一瞬だけ現れるいくつもの突起を生やしたスライムと、赤い薔薇を擬人化させたようなモンスター。 2体の異なるモンスターが渦を巻いてひとつとなる。

 そして、その渦中より姿を現したのは、真紅の盾と剣を携え、同じ色の鎧を身に纏ったモンスター。

 

「融合召喚! 生誕せよ! レベル6、《DDD烈火王テムジン》!!」

 

DDD烈火王テムジン

炎属性 悪魔族 レベル6

攻撃力2000

融合

 

 炎の王は赤馬社長の前に降り立つと、まるで彼を守るように盾を前にして構えた。

 赤馬社長は融合召喚を得意とするのだろうか……? シンクロだったらちょっと嬉しかったなぁと果てしなくどうでもいい事を考える。

 だが、その期待はこちらとしては意外すぎる形で叶えられる事となる。

 

「私はここでチューナーモンスター――《DDナイト・ハウリング》を通常召喚」

 

 王の隣に現れたのは、なんと形容していいのかわからない獣の口だけのようなモンスター。 ってちょっと待って、チューナー!?

 

DDナイト・ハウリング

闇属性 悪魔族 レベル3

攻撃力300

チューナー

 

「《DDナイト・ハウリング》の効果を発動。 このカードが召喚に成功した時、墓地の『DD』モンスター1体を特殊召喚する。 私は《DDリリス》を特殊召喚!」

 

 ハウリングの効果によりリリスがフィールドへ登場する。 薄く微笑みながらスカートを象った茎の下半身を押さえて礼をする姿は、まるで貴族の令嬢のようだった。

 

DDリリス

闇属性 悪魔族 レベル4

攻撃力100→0

 

「ただし、この効果で特殊召喚されたモンスターは攻撃力が0となり、破壊された時に私は1000ポイントのダメージを受けるが――破壊をさせなければ問題はない! 私はレベル4の《DDリリス》に、レベル3、《DDナイト・ハウリング》をチューニング!」

 

 う、嘘……まさか、本当に!?

 

「闇を切り裂く咆哮よ。 疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!」

 

 輪と球。 2種の光が1つになるように交わり、そこからまさに新たな王が姿を現す。 レベルは……7!

 

「シンクロ召喚! 生誕せよ! レベル7、《DDD疾風王アレクサンダー》!!」

 

 緑のマントを翻して吹き荒れる風と共に舞い降り立ったのは、長剣を手に持ち、テムジンと比べると鋭利な鎧で身を包んだ嵐の王。

 

DDD疾風王アレクサンダー

風属性 悪魔族 レベル7

攻撃力2500

シンクロ

 

 す、すごい……シンクロ召喚は僕だってマスターするのにかなり苦労したのに、こんな片手間みたいな感じにシンクロ召喚が出来るなんて……!

 まだ1ターン目だと言うのに力の違いを思い知らされる。 だけど、今抱いている感情は畏怖よりも、尊敬の念の方が強かった。

 だが、

 

「まだだ」

「え?」

 

 赤馬零児はここでは終わらなかった。

 まさか…………!?

 

「私はテムジンの効果を発動。 自分フィールドにこのカード以外の『DD』モンスターが特殊召喚された場合、自分の墓地の「DD」モンスター1体を特殊召喚することが出来る。 私は《DDリリス》を特殊召喚!」

 

 2体の王に囲まれる形で、薔薇の令嬢が姿を現す。

 

「そのままリリスの効果発動。 このカードの召喚・特殊召喚に成功した場合、1ターンに1度、自分の墓地の『DD』モンスター1体を選択し、手札に加える。 私は《DDナイト・ハウリング》を手札に加える」

 

 リリスの効果はさっきは使っていなかった。 それにスライムではなくナイトハウリングを選んだ理由は何だ? 

 

「更に私は、墓地の《DDスワラル・スライム 》の効果を発動」

「!? 墓地から!?」

「このモンスターを除外する事で、手札から「DD」モンスター1体を特殊召喚することが出来る。 私は《DDバフォメット 》を特殊召喚!」

 

 光と共にフィールドにスライムが現れる。 しかしそれはすぐさま形を崩し、粘土の様に少しずつ形を整えて行く。最終的にそれは、背中に白い羽毛の翼を生やし、右腕が2本、1本の左腕の肘から下は蝙蝠の翼という異型の獣へと変わった。

 

DDバフォメット

闇属性 悪魔族 レベル4

攻撃力1400

 

 ここまで来ると流石に予想できてくる。 リリスとバフォメットのレベルは……4!

 

「私はレベル4の《DDバフォメット》と《DDリリス》でオーバーレイ!2体の悪魔族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

 リリスとバフォメットが暗礁色の光へと姿を変え、それらは突如現れた光の渦の中に吸い込まれていく。

 

「この世の全てを統べるため、今世界の頂きに降臨せよ!」

 

 その瞬間、光は爆発的な発光を見せ、その中から更なる王が顔を出す。

 

「エクシーズ召喚! 生誕せよ! ランク4、《DDD怒涛王シーザー》!!」

 

 身の丈以上の大剣を勝ち鬨の様に振り掲げて2体の王と並び立つのは、無骨ながらも美しい藍色の鎧を身に纏った荒波の王。

 

DDD怒涛王シーザー

水属性 悪魔族 ランク4

攻撃力2400

エクシーズ

 

「う、そ……」

 

 炎、風、水。 それぞれを司る3体の王が並ぶその光景に、僕は圧倒され、自然とそう零していた。

 融合、シンクロ、エクシーズ。 どれもただ扱うだけならまだしも、使いこなすのはかなりの技術がいるのに、それらをあんなにも容易く、しかも1ターンの間のみで行うなんて……。

 

「最後に私は《闇の誘惑》を発動。 デッキからカードを2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体をゲームから除外する」

 

闇の誘惑

通常魔法

自分のデッキからカードを2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体をゲームから除外する。

手札に闇属性モンスターがない場合、手札を全て墓地へ送る。

 

「ドロー。 ……では私は《DDナイト・ハウリング》を除外。 そしてカードを2枚セットし、ターンエンドだ」

 

 そして手札情報まで無くされ、更に手札こそ無くなったものの、カードを伏せることにより迎撃の体勢まで整えた。

 

Reiji

LP 4000

手札 0

モンスター 3

魔法・罠 3

 

 なんだこれ。

 

 まだ最初の1ターン目で、僕自身は何もされてないというのに、ここまで打ち拉がされてしまうなんて。

 すごい……凄すぎる……。今の僕では到底出来ない。 その赤馬社長との力量差に、僕は戦慄した。

 

「さあ天辻遊雅、君のターンだ。 君の実力を私に見せてくれ」

 

 でも、

 

「はい!」

 

 それは臆する理由にはならない。

 今僕は、この圧倒的な力量差の相手にどこまで立ち向かえるのかを試したいと思っている。

 もしかしたら、エボルート召喚を手に入れて調子に乗っているのかもしれない。 今の自分は誰にも負けないと奢っているのかもしれない。

 でも良いじゃないか!

 

「行きます! 僕のターン……」

 

 昂ぶってしまった自分の気持ちは抑えられない。

 このデュエル、全力で挑んで、全力で楽しむ!!

 

「ドロー!!」

 

 後攻から開始されるドローフェイズ。 デッキから引き抜いたカードを、確認する。

 よし、良いカードだ。

 

「僕は《ドラグニティ-パルチザン》を召喚します!」

 

 僕のターンの最初に登場するのは、一門さんの時も立役者の一枚であった金色の幅広な刃が備わった兜を被った紫色の子龍。

 

ドラグニティ-パルチザン

風属性 ドラゴン族 レベル2

攻撃力1200

チューナー

 

「そのままパルチザンの効果を発動! このモンスターの召喚に成功した時、手札から『ドラグニティ』と名の付いた鳥獣族モンスターを1体特殊召喚し、その特殊召喚したモンスターにパルチザンを装備させます! 僕はレベル4の《ドラグニティ-ミリトゥム》を特殊召喚し、パルチザンを装備!」

 

 パルチザンが光を帯び、一瞬にしてその姿は幅広の刀身を持った一本の長槍へと変わる。 そしてそれを女の鳥剣士――《ドラグニティ-ミリトゥム》が手に取った。

 

ドラグニティ-ミリトゥム

風属性 鳥獣族 レベル4

攻撃力1700

 

 ここまではお昼の時のデュエルと同じ。

 

「ほう……早速来るか」

 

 赤馬社長が微に口角を上げて腕を組む。 もしかして相当楽しみにしてくださっているのだろうか。

 だとしたら――

 

「ごめんなさい赤馬社長! 僕が今からするのはエボルート召喚ではありません!」

「何?」

「ミリトゥムの効果を発動!! 1ターンに1度、魔法・罠ゾーンに存在する『ドラグニティ』モンスター1体を選択し、特殊召喚します! 僕はパルチザンを選択して特殊召喚!!」

 

 ミリトゥムが金色の槍を手から離すと、それはもとの小竜へと姿を戻した。

 チューナーとそれ以外のモンスターが並んだ。 だとすれば、する事は一つ!

 

「そして僕は、レベル4の《ドラグニティ-ミリトゥム》に、レベル2《ドラグニティ-パルチザン》をチューニング!!」

 

 もしかしたら、落胆されるかもしれない。 だけどそれでも、今僕はこっちを選びたい!

 2体のモンスターが姿を変えた4つの光球、2つの光輪が交じり合う。

 

「緋色の軌跡描く竜騎士よ、その名の如く、(いかずち)の速さで敵を討て!!」

 

 たとえ新しい力を手に入れたとしても、僕の切り札はそれだけじゃない。 僕が繰り出す最初の切り札、それは――

 

「シンクロ召喚!! 舞い駆けろ! レベル6、《ドラグニティナイト-ヴァジュランダ》!!」

 

 光の中から飛び上がるように姿を出したのは、緋色の鎧を纏った胴長の龍と鳥人の竜騎士。 僕の最強の矛――《ドラグニティナイト-ヴァジュランダ》!!

 

ドラグニティナイト-ヴァジュランダ

風属性 ドラゴン族 レベル6

攻撃力1900

シンクロ

 

「ヴァジュランダの効果発動! シンクロ召喚に成功した時、墓地のレベル3以下のドラゴン族『ドラグニティ』モンスター1体を選択して、ヴァジュランダに装備します! 僕はシンクロ素材にしたパルチザンを装備!!」

 

 ヴァジュランダの左手に、槍となったパルチザンが握られる。 これで一応準備は出来た。 でもまだだ! 赤馬社長に対抗するには、もう一段やらなければ!

 

「さらに僕はヴァジュランダに、《ドラグニティの神槍》を装備!」

 

 ヴァジュランダが元から装備していた右手側の槍の形状が変化する。 柄は伸縮し、何枚もの翼が鍔の変わりに生え刀身は肥大化。 最終的にそれは、剣とも取れる矛となった。

 

「《ドラグニティの神槍》の効果は2つ。 1つは、装備したモンスター攻撃力を、レベルの分だけ100ポイントアップし、罠カードの効果を受けないようにします」

 

ドラグニティナイト-ヴァジュランダ

攻撃力1900→2500

 

 これでヴァジュランダの攻撃はほぼ阻止されなくなった。だけど更に一段!

 

「そして、《ドラグニティの神槍》のもう1つの効果発動!1ターンに1度、メインフェイズにデッキからドラゴン族の『ドラグニティ』チューナー1体を選択し、神槍を装備しているモンスターに装備カード扱いとして装備します! 僕はレベル1の、《ドラグニティ-ブランディストック》を装備!!」

 

 神槍の刀身が、ブランディストックの兜と同じ形状に変化する。 ……なんかバランス悪いけど、まぁ良いや。

 

ドラグニティの神槍

装備魔法

『ドラグニティ』モンスターにのみ装備可能。

《ドラグニティの神槍》の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):装備モンスターは、攻撃力が装備モンスターのレベル×100アップし、

罠カードの効果を受けない。

(2):自分メインフェイズにこの効果を発動できる。

デッキからドラゴン族の『ドラグニティ』チューナー1体を選び、

このカードの装備モンスターに装備カード扱いとして装備する。

 

「ほう……装備カードを3つも……」

 

 そう、社長が僅かに感心したような一言を吐いた。 もしかしたら、多少なりとも意表を突いたのかもしれない。 えへへ……ちょっとしてやったりな気持ちになってしまう。

 それじゃあラスト!最後のもう一段!

 

「ヴァジュランダの効果発動! 1ターンに1度、装備しているカードを1枚墓地へ送る事で、このカードの現在の攻撃力を2倍にします! 僕はパルチザンを墓地へ!」

「ヴァジュランダの攻撃力は現在2500……という事は」

「攻撃力は5000です!!」

 

ドラグニティナイト-ヴァジュランダ

攻撃力2500→5000

 

「また、ブランディストックを装備したモンスターは、バトルフェイズに2回攻撃が出来ます!」

「なるほど、つまり1ターンキルの成立という事か」

 

 赤馬社長は既に気付いていたようだ。そう、社長のモンスターの攻撃力はそれぞれ2000、2500、2400。

 攻撃力5000のヴァジュランダならば、どのモンスターを攻撃しても2回のそれで4000というライフは削り切れるのだ。

 更に神槍の効果で罠も怖くない。少なくとも返り討ちの目にあう事は無い。

 完璧だ。何も恐れる事は無い!

 

「その通りです! ヴァジュランダで、まずはアレクサンダーを攻撃!!」

 

 ヴァジュランダが飛翔しながら後退し、ある程度の高さまで行くと、今度は弓を引き絞るように、胴長の体を逸らした。

 そして次の瞬間!

 

「ブリッツァー・ソニック!!!」

 

 雷光の如き煌めく光が見えた時、既にヴァジュランダが槍でアレクサンダーを貫いた後だった。

 嵐の王は爆風となり、その身を散らす。

 

Reiji

4000→2500

 

「よし!」

 

 攻撃は通った! ヴァジュランダの攻撃は止められない! このデュエル、僕の勝ちだ!!

 

「これで決めます! 怒濤王シーザーに、こうげ――――っ?」

 

 待て。 何かおかしい。 

 そう違和感に気付いた時、僕は攻撃宣言を無意識に中断していた。

 一瞬前を振り返る。 今、赤馬社長のライフポイントはいくつだった?

 ディスクで社長のライフポイントを確認する。 だが、そこには、見間違いではなく2500と表示されていた。

 

「な、何で……?」

 

 ヴァジュランダとテムジンの攻撃力の差は2500。 なら赤馬社長の残りライフは1500の筈だ。

 見たところヴァジュランダ攻撃力は変わっていないようだ。 だとすれば……――

 

「気付いたようだな」

 

 赤馬社長から声が投げ掛けられる。 どうやら、僕の考えは当たったようだ。

 

「私は君の攻撃宣言と同時に永続罠――《戦乙女の契約書》を発動していた。 このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、私のフィールドの悪魔族モンスターの攻撃力は、君のターンの間1000アップする」

「っ!?」

 

DDD烈火王テムジン

攻撃力2000→3000

 

DDD怒濤王シーザー

攻撃力2400→3400

 

 盲点だった……確かに今のヴァジュランダは罠の効果を受けない。 だけど相手が自分のモンスターに対して発動する類のものであった場合は干渉することは出来ない。

 アレクサンダーの攻撃力も、あのカードで3500にまで上げていたのか。

 

「その代わり、このカードも《地獄門の契約書》同様、私のスタンバイフェイズに契約料として1000ポイントのライフの支払いを要求されるが」

 

戦乙女の契約書

永続罠

「戦乙女の契約書」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):手札から『DD』カードまたは『契約書』カードを1枚墓地へ送り、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

(2):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分フィールドの悪魔族モンスターの攻撃力は、相手ターンの間1000アップする。

(3):自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

「っ! 攻撃を続行します! 2撃目! シーザーを攻撃!」

 

 シーザーがヴァジュランダ目掛けてその大剣を振り下ろす。 しかし、ヴァジュランダはそれを身を捻って回避し、そのまま勢いを乗せてパルチザンをシーザーの腹部目掛けて投げつけ、それは鎧など存在しないかのように荒波の王の身体を容易く貫いた。

 

Reiji

2500→900

 

「破壊されたシーザーの効果。 このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、デッキから『契約書』カード1枚を手札に加える事ができる。 私は《地獄門の契約書》を手札に加える」

 

 さっきのサーチカード! 面倒なものを手札に入れられてしまった。

 

「メインフェイズ2! 僕はカードを2枚伏せて、ターンエンドです! それと同時に、ヴァジュランダの攻撃力は元に戻ります」

 

ドラグニティナイト-ヴァジュランダ

攻撃力5000→2500

 

Yu-ga

LP 4000

手札 1

モンスター 1

魔法・罠 4

 

 一気に赤馬社長のライフを削る事はできたけど、思わぬカードの効果によって0には出来なかった。

 相手が相手なだけに流石は赤馬社長だと感心する。 だかしかし、やはり一歩及ばず悔しいと言う感情も間違いなくある。 そして、次はどんなことをしてくるのかと言う楽しみも。

 だけど、気がかりな点がある。 あの『契約書』カードについてだ。

 スタンバイフェイズになった瞬間、ライフポイントを1000も支払わねばならないその代償。 1枚でももう終わってしまう数値なのにそれが2枚。 一体どうするのか。

 もやもやとしたものが拭えぬまま、赤馬社長のターンが始まる。 だが、なんとなくわかる。

 赤馬社長は、こんな凡ミスで負けることはないだろうと。

 

「では君のエンドフェイズに、私は《契約洗浄》を発動する」

「っ!」

 

 やっぱり、対策は立てていたんだ!

 

「まずは私のフィールドに存在している『契約書』カードを全て破壊!」

「え!?」

 

 僕が驚くのもつかの間。 社長の魔法&罠ゾーンにある2枚の『契約書』カードは共にバラバラに砕け散った。

 あれらのカードが破壊されたということは、社長のライフの支払いは無くなったという事に。

 

「更に、破壊した『契約書』私はデッキからカードをドローし」

「えぇ!?」

「最後にそのドローした枚数分だけ1000ポイントライフを回復する」

「ええええええええええええええ!!?」

 

契約洗浄

通常罠

(1):自分の魔法&罠ゾーンの『契約書』カードを全て破壊する。

破壊した数だけ自分はデッキからドローする。

その後、自分はドローした数×1000LP回復する。

 

Reiji

900→2900

 

 ひ、ひどい! 何その効果!? 契約を一方的に破棄したどころか更にふんだくった!

 ロンダリングって名前の時点で良い予感はしなかったけど、もはや破棄どころの騒ぎですらない。

 

「……なにやら相当驚いているようだが、企業の間ではよくあることだ。 覚えておくと良い」

「そ、そうなんですか……」

 

 そう言った赤馬社長からは微塵も気疲れを感じられない。 どうやら本当に当たり前の事のようだ。

 なんて言ったら良いのか判らず、引き気味にそう返してしまう。

 とまぁ色々と凄い一枚だったけど、次のターンからは赤馬社長も攻撃に出る。 頭を切り替えなければ。

 0だった手札は今は3枚。 万全の体制での反撃が来る!

 

 




いつもより早めにストックが出来たので投稿しました!やった!

赤馬社長の口調ってこんなんだっけ……難しすぎる……。
『DD』ってめっちゃ面白いですね!これ作ってみたいなぁ。
でも地獄門の契約書メッチャ高いんでしたっけ?おのれ永続魔法の癖に生意気な!

ちなみにお気付きかもしれませんが、カードに対するカギ括弧を変更しました!
後々2話辺りのも編集したいと思います。

それと、初めて活動報告なるものを書いてみました!たいしたことは書いていないですが、もしよろしければ!

それでは、皆様の感想、評価、アドバイスなどを心からお待ちしております!
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……なんかどっかのファミ通文庫みたいなサブタイになったのは御気になさらず
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