遊戯王ARC-V LDS 進化の翼   作:ユアシアン

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Phase3 王と進化と契約書 B

「私のターン、ドロー。 まず私は永続魔法《地獄門の契約書》を発動。 このカードの説明はもう要らないな。 私はこの効果により《DDナイト・ハウリング》を手札に加える。 そして次に、《魔神王の契約書》発動」

 

 新しい契約書! 次のは一体どんな効果が……?

 

「《魔神王の契約書》の効果により、私は1ターンに1度だけ《融合》のカードを使わずに手札・フィールド・墓地からの除外を利用して悪魔族及び『DD』モンスターの融合召喚を行うことが出来るようになった」

「融合を使わずに……!?」

 

 しかも素材の範囲が広すぎる! 恐らくあれも1000ライフの代償があるのだろうけど、きっと社長は払う気など更々無いはずだ。

 

魔神王の契約書

永続魔法

『魔神王の契約書』の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分メインフェイズに発動できる。自分の手札・フィールドから、悪魔族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。『DD』融合モンスターを融合召喚する場合、自分の墓地のモンスターを除外して融合素材とする事もできる。

(2):自分スタンバイフェイズに発動する。自分は1000ダメージを受ける。

 

「私はこの効果により、墓地の《DDバフォメット》と、《DDD疾風王アレクサンダー》で除外融合! 風を統べし王よ、異型の魔物の力を取り込み、新たな王と生まれ変わらん!」」

 

 王と獣が交わった瞬間、それらを飲み込んだ渦は産声の様に光を放つ。

 再び行われる融合召喚。 テムジン以外にもまだいるという事?

 

「融合召喚! 出でよ! 神の威光伝えし王! レベル7、《DDD神託王ダルク》!!」

 

 光の中から舞い出たのは、マントのような黒い翼を背に生やし、白に金色のアクセントを含んだ流麗な鎧に身を包んだ女騎士――いや、天命の王。

 

DDD神託王ダルク

闇属性 悪魔族 レベル7

攻撃力2800

融合

 

「さらに、『DD』モンスターが特殊召喚されたのでテムジンの効果を発動。 墓地の『DD』モンスターを選択し、特殊召喚する。 私は《DDD怒涛王アレクサンダー》を特殊召喚!!」

「うえっ!?」

 

 レベル制限無しの蘇生効果!? どうりで他の2体と比べてステータスが低いと思ったわけだ! というかそっか、『DDD』って『DD』モンスターに含まれるんだ……まぁ当然か。

 なんて考えてる間に、テムジンが天に向けて剣を掲げる。 すると、その隣にボオゥ!! 天井を貫かんばかりの勢いで巨大な火柱が立った。 そしてそれを長剣で斬り裂いて姿を出すのは、先程倒したばかりの嵐の王――疾風王アレクサンダー!

 

「王が、再び3体……」

「いや、まだだ」

「え……」

 

 そんな、まさかこれ以上を……!?

 

「私は手札から速攻魔法――《異次元からの埋葬》を発動。 ゲームから除外されているモンスターカードを3枚まで選択し、そのカードを私の墓地に戻す。 私はスワラルスライム、ナイトハウリング、バフォメットを墓地へ戻し、先程『契約書』の効果で手札に加えた《DDナイト・ハウリング》を通常召喚し、ナイト・ハウリング召喚時効果により墓地の《DDリリス》を特殊召喚する!」

 

 またリリスとナイト・ハウリングが並んだ……。 くっ! こうなったら……いや、まだダメだ。 リバースカードを使うのは今じゃない! 

 リバースカード発動のボタンへと伸びかけていた手を思いっきり握ることでそれを中断させる。

 

「リリスの効果で墓地の《DDナイト・ハウリング》を手札に戻す。 ……では行くぞ。 私はレベル4の《DDリリス》に、レベル3、《DDナイト・ハウリング》をチューニング! 闇を切り裂く咆哮、天頂に輝く死の星へと轟かせ、裁きの王を地上へ誘え!」

 

 アレクサンダーと同じく当然レベルは7! だけど同じ王を出す感じじゃない。 今度は何を――――?

 

「シンクロ召喚! 降臨せよ! レベル7、《天刑王ブラック・ハイランダー》!!」

 

 光の中から黒いマントをたなびかせて現れたのは、黒金の鎧を身に纏い、命を刈り取らんばかりに巨大な鎌を持った神裁の王。

 

天刑王ブラック・ハイランダー

闇属性 悪魔族 レベル7

攻撃力2800

シンクロ

 

 マズイ! あのモンスターは知っている! アレは僕のデッキの最大の天敵だ!

 僕は先程止めた手で、今度は躊躇わずリバースカードを発動させる。

 

「その召喚に対し、僕は《リビングデッドの呼び声》を発動!」

「? このタイミングで……?」

 

 召喚に対し召喚用の永続罠の発動したことに対して、赤馬社長は怪訝な表情を見せた。 そりゃそうだ。 僕だってこのタイミングで発動するために伏せていた訳ではないのだから。

 でもここで発動しなければ僕の負けは確定してしまう! だったら躊躇は無い!

 

「僕はその効果で《ドラグニティ-ミリトゥム》を特殊召喚し、この召喚の処理終了後、《ゴッドバードアタック》発動!! ミリトゥムをリリースし、フィールド上のカードを2枚破壊します! 狙うのはダルク、それとハイランダー!!」

 

 現れてすぐさまミリトゥムの体が真っ赤に燃える。 瞬間、一本の炎の矢となって、ダルクとハイランダーの体を鎧や武器ごと貫いた。

 危なかった……。

 

「ほう……ハイランダーの効果を知っていたのか」

「はい。 ハイランダーの効果は、お互いにシンクロ召喚が出来なくなる効果と、相手の装備カードを破壊して400ダメージを与えると言うもの。 どちらもドラグニティにとっては生命線を立たれるに等しい効果です」

「なるほど……スペルスピードの関係上、ハイランダーが効果を使った時ではどちらか一枚しか発動できない。 なのでまずは召喚に対して発動し、その後で《ゴッドバードアタック》を発動したわけか。 面白い使い方だ」

「ふぇ!? あ、ありがとうございます……!」

 

 わ、わぁ! い、今のって褒められたんだよね!? プロからお褒めの言葉を貰っちゃったー! 

 思わず顔がにやけてしまう。

 

「だがそれはともかく」

 

 しかし、褒めるだけでは終わらないようだ。

 

「ヴァジュランダにはきちんと退場を願っておこう。 バトルだ。 疾風王アレクサンダーでヴァジュランダを攻撃!」

「! 相打ち覚悟で!?」

 

 お互いの攻撃力は2500。 同じ攻撃力同士では、共倒れとなる!

 

「ウィンディ・スライサー!!」

 

 居合抜きの要領でアレクサンダーの剣から放たれた真空刃は、龍の身体を容易く斬り裂く。 しかしその間際に竜騎士が放った矛もまた、嵐の王の身体を貫いた。

 2体のモンスターは光の粒子となって爆散する。

 でも、まだ終わらない!

 

「次だ。 テムジンでダイレクトアタック!!」

 

 テムジンが剣を構え、そこから炎が灯る。 マズイ……ッ! 今の僕には身を守るカードが一枚も無い!

 

「ファイアー・ストローク!!」

 

 炎の王の剣テニスのフォアハンドのような形で放たれた火炎弾は、容赦なく僕の体に放たれた。

 

「ぐっ!!」

 

 しかし、これはリアルソリッドビジョンではない。 その攻撃は僕の体に干渉すること無くすり抜け、後ろで爆炎となってこの空間を数瞬だけ明るく照らした。

 

Yu-ga

LP 4000→2000

 

「私はカードを一枚セットし、ターンエンド。 では君のターンだ天辻遊雅。 もう一度君の実力を見させてもらおう」

 

Reiji

LP 2900

手札 1

モンスター 1

魔法・罠 3

 

 ……やっぱり、強い! 本当に危ないところだった。 後一瞬でも遅かったら間違いなく僕は負けていた。

 僕の手札は現在一枚。 次のドローで逆転のカードを引かない限り、恐らくそのまま負ける。

 でも、そんなの嫌だ! まだ始まったばかりじゃないか! こんなに凄い人とのデュエル、まだ全力を出し切れていないのに、負けたくなんてない。 

 そうだ。 負けたくない!

 例え相手が、僕なんかでは足元にすら及ばない相手でも、僕は勝ちたい! 僕のデッキ、僕のこの思いに応えて!

 デッキに添える左手に力を込め、

 

「僕のターン――――」

 

 引き抜く!

 

「ドロー!!」

 

 願いを込めたドロー。 引いたカードは――

 

「! 僕は《テラ・フォーミング》を発動します! このカードの効果により、デッキからフィールド魔法――《竜の渓谷》を手札に加えます!」

「ほう……ここで引いてきたか」

 

テラ・フォーミング

通常魔法

(1):デッキからフィールド魔法カード1枚を手札に加える。

 

 良かった。 キーカードを引けた! ありがとう、僕のデッキ。 答えてくれた僕の相棒達に心から感謝する。

 だけど、問題はここからだった。

 

「引いたは良いが、私の記憶が正しければいささかカードが足りないように思えるな」

 

 そう。 フィールド魔法を引けたは良い。 でも、今僕の手札にあるのは装備されている時に効果を発動出来るファランクスのみ。 あのカードを出すにはカードが足りない。

 そこで、一つの可能性を僕は考える。 実は書庫で調べ物をしている時に、ある召喚法を見てもしやと思った事なのだが…………当然、試したことはまだ無い。 出来るかどうかすら非常に怪しい。 それに、失敗は許されない。

 でも――

 

「大丈夫です! 僕は今加えた《竜の渓谷》を発動!」

「何……?」

 

 やれるだけやってみる! もう恐れたりなんかするもんか!

 辺りが無骨なコートから夕日の眩しい渓谷へと変わって行く。 スタンディングデュエルならフィールド魔法は問題なく使えるのだ。

 

「1ターンに1度、手札を1枚捨てる事で、デッキからレベル4以下の『ドラグニティ』モンスター1体を手札に加えます! 僕は手札の《ドラグニティ-ファランクス》を墓地に捨て、デッキから《ドラグニティ-ドゥクス》を手札に! そしてそのまま召喚!」

 

 僕のフィールドに現れるのは、大幣を持った鳥人の指揮官――《ドラグニティ-ドゥクス》!

 

ドラグニティ-ドゥクス

風属性 鳥獣族 レベル4

攻撃力1500

 

「更にドゥクスの効果発動! このカードの召喚に成功した時、墓地のレベル3以下の『ドラグニティ』と名のついたドラゴン族モンスター1体を選択し、装備カード扱いとしてこのカードに装備できます! 僕は今墓地に送ったファランクスを選択し、装備!」

「ファランクス……次もまたシンクロ召喚か?」

 

 赤馬社長は眼鏡のブリッジを押さえながらそう問い質して来る。 もしかしたら、微かにでも不満を感じているのかもしれない。 

 だけど、

 

「いいえ! 今度こそお見せします! 僕の新たな切り札を!」

 

 諦めない事だけじゃない。 試したことない事をやってみる。 それだって、進化する為に必要なことだ!

 

「何? だが君の手札にはもうフィールド魔法は無い。 あのモンスターの召喚にはフィールド魔法が――――! まさか……」

 

 社長も気付かれたようだ。

 さぁ、確証の無い可能性に賭けろ、僕!

 

「僕は、進化条件を満たした《ドラグニティ-ドゥクス》を進化対象に選択し、場のフィールド魔法――《竜の渓谷》を進化素材に選択して、コンストラクション!!」

 

 瞬間、空の夕雲突き抜けて、光の柱がドゥクスに降り注いだ。

 ドゥクスは光の中で姿を変え、緋色の鎧を身に纏って行く。

 

「疾風の速度で宙を駆け、その名をもって、抗うものを討ち伏せよ!」

 

 僕が書庫で調べていた召喚法。 それは、『融合召喚』。

 手札かフィールドに存在する指定されたカードを素材として上級モンスターを召喚するそれは、エボルート召喚に通ずるものがあると思った。 だからこう考えたのだ。

 

 融合召喚のように、手札からも召喚を行えるなら、エボルート召喚も、場からの召喚を行えるはずだと。

 

 そしてそれは成功した。 さぁ、飛べ! 僕の竜騎士!

 

「エボルート召喚! 舞い踊れ! レベル7、《ドラグニティセイバー-ブルトガング!》」

 

 光の柱から姿を表すのは、緋色の龍の鎧を纏いし女騎士。 その名は遍歴の騎士が持つ誇り高き剣。

 

ドラグニティセイバー-ブルトガング

風属性 ドラゴン族 レベル7

攻撃力2500

エボルート

 

 で、出来た……。

 半信半疑の賭けだったが、本当に出来るなんて……。 だが召喚成功の証拠として、今間違いなくブルトガングは僕の前に存在している。

 それでも自分やっておきながらだが、興奮が止まらない。

 

「素晴らしい……こんなにも早くエボルート召喚の新たなる可能性を見出すとは………………」

 

 赤馬社長からそんな言葉が聞こえた。 それは、僕に投げかけたと言うよりは、感極まって思わず漏れた感想の様だった。 その証拠に今の赤馬社長の表情は、一見これまでと変わらぬ様に見えるが、よく見てみると、まるで憧れの何かを見る少年の様な、一言で言えば失礼だが年相応な表情をしている。

 あんな表情もするんだ……赤馬社長。 あれ、でも……。

 赤馬社長の表情は、少しずつそれはどことなくだが、警戒を含んだそれに変わって行く。 どうしたのかな? 何かあったのだろうか? ……いや、今は止めておこう。 今の僕がやらなければならない事は、社長に全力を出して戦いきる事なのだ。

 今は気にしないで突き進むのみ!

 

「ブルトガングの効果を発動! 1ターンに一度、墓地に存在するドラゴン族の『ドラグニティ』を1体選択し、このカードに装備します。 僕は《ドラグニティ-ブランディストック》を装備!」

 

 ブルトガングの左腕にランスの刀身が備わったライトシアンのガントレットが装着される。

 

「これにより、ブルトガングは2回の攻撃が可能となりました! バトルに入ります! ブルトガングで、烈火王テムジンに攻撃!」

 

 ブルトガングが翼を羽ばたかせ、低空飛行でテムジンに向かう。

 

「………………」

 

 赤馬社長は動かない。 つまり罠は無い!

 テムジンが放った火炎弾を剣で切り裂き、盾を蹴り弾き、がら空きになった胸を袈裟斬りで抉った。

 そして倒した炎の王には目もくれず、そのまま赤馬社長に剣先を向け、

 

「2回目の攻撃でダイレクトアタック! ブリング・オブ・テンペスティア!!」

 

 振り上げて放たれる剣圧の竜巻が、赤馬社長を飲み込んだ。

 やった! 通った! これで僕の――――

 

Reiji

2900→400

 

 勝……ち…………………………え?

 残りライフ、400……? そ、そんな……どうして? テムジンとブルトガングの攻撃力差は500! そして赤馬社長にブルトガングの攻撃が通ったのなら、合計3000で僕の勝ちのはず!

 

「一体……何が?」

 

 赤馬社長はやはり何かカードを発動させていた? だけど、赤馬社長の周囲を見渡しても、どこにもカードが発動された形跡は無い。 前のターンで赤馬社長が伏せたカードは使われていないという事だ。

 そして、混乱する僕に

 

 

「私は何もしていない」

 

 

 そう、当人から答えが投げかけられた。

 

「え……?」

 

 訳が解らず、呆けた返事で返す僕。 それに対し赤馬社長は腕を組み、憮然とした態度で再び答えだした。

-

「私は何もカードを発動させてはいない。 更に言えばテムジンにも戦闘に関する効果は持ち合わせてはいない。 強いて言うなら破壊された時、墓地の『契約書』カードを1枚手札に加えることくらいだ。 ちなみにその効果で私は《地獄門の契約書》を手札に加えさせてもらった」

 

 そ、そうだったんだ……チンギス・ハン色々と面倒な効果持っているなぁ……い、いやそんなことより!

 

「な、なら……どうして……!」

「私ではなく。 君が発動していたと言うことだ。 そのモンスターの効果、今一度確認してみてはどうかな」

「僕? ………………ッ!!」

 

 一瞬何を言われているのか解らなかったが、その直後に理解する。 それは、ブルトガングの効果の一つ。

 

(2):このモンスターは装備したドラゴン族の『ドラグニティ』モンスターによって以下の効果を得る。

●レベル4以下:1ターンに一度、このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。

●レベル5以上:このモンスターは相手のカード効果を受けない。

 

 レベル4以下のドラグニティを装備している状態で戦闘を行った場合、攻撃力に関係なく相手モンスターを破壊するというもの。 それも、ダメージ計算を行わないで。 それはつまり、

 

「強制、効果……!」

「やはりそうか。 その効果は誘発効果であり強制効果。 相手の攻撃力の方がどれだけ高くても一方的に倒すことの出来る強力な効果だが、低かった場合はライフポイントを削ることが出来なくなるデメリットにもなるという訳だ」

 

 『する効果』と『できる効果』と言うものがある。 例えば『相手モンスターとバトルをする時に攻撃力を500アップできる』という効果があったとする。 その場合、攻撃力を上げるも上げないもプレイヤー次第だが、それが『相手モンスターとバトルをする時に攻撃力を500アップする』という効果だった場合、そのバトルの時そのモンスターの攻撃力は必ずアップせねばならない。 というよりほぼ自動的に行われる。

 つまり、ブルトガングのダメージ計算を行わず戦闘をしたモンスターを破壊するという効果は、テムジンを攻撃した際、強制的に発動されていたのだ。

 

「ッ――――! ターン、エンドです……」

 

Yu-ga

LP2000

手札 0

モンスター 1

魔法・罠 1

 

 何て事だ……まだ使い始めで理解しきれていなかったとはいえ、根拠のない勝利に浮かれたなんて。 自分の愚かさに歯噛みする。 油断……していたのか?

 でも、自分の出来得る限りの全力は尽くした。 それに、赤馬社長のライフは残り400。 次のターン凌げば、必ず勝てる! だけどやはり、あと一歩届かなかった事実には歯噛みせざるを得なかった。

 が、

 

「君は」

 

 目の前のこの男に対してそんな事を思えている時点で、やはり僕は完全に油断していたのだろう。

 

「もしやブルトガングの強制誘発効果がなければ私に勝てていたと、そう思っているのではないだろうか」

「えっ……いや、そんな――――っ!」

 

 いや、否定は出来ない。

 あと一歩。 なんて考えはつまりそういうことに繋がるのだ。

 そして、

 

「いや、そう思うことはかまわない。 惜しかった。 そう悔しく思い、次につなげようとする姿勢は決して悪い事ではない。 ……だが、よもやこのカードのことを忘れてはいないだろうかと思ってね」

 

 赤馬社長のすぐ傍で、畳返しの様に直立するカードが一枚。 それは――――

 

契約(リース)……洗浄(ロンダリング)……!」 

「そうだ。 このカードの効果によりは私は2枚の契約書の破壊する事で、2枚のドロー、そしてライフを2000回復する」

 

Reiji

400→2400

 

 風前の灯だった赤馬社長のライフが再び勢いよく燃え上がる。 この程度の傷は、かすり傷に等しいと言わんばかりに。

 この時、僕は直感的にこう思った。

 

 届かない。

 

 適わないのではなく、届かない。 いや、届かないのだから適う訳が無い。 あと一歩だなんておこがましい。 そんなのはただの蜃気楼だった。

 自然と、僕は足を一歩、後ろに運んでいた。

 

「では私のターン、ドロー。 まずは《地獄門の契約書》を発動。 この効果により《DDスワラル・スライム》を手札に加える。 そしてそのままスワラル・スライムの効果を発動し、手札の《DDバフォメット》と手札融合! 自在に形を変える神秘の渦よ。 異形の神を包み込み、今一つとなりて再び新たな王を生み出さん!」

 

 また、融合……! 

 僕が警戒する中、融合召喚によって発生する渦の中からまず最初に顔を出したのは、見覚えのある赤い刀身だった。

 まさか!

 

「融合召喚! 再誕せよ! レベル6、《DDD烈火王テムジン》!!」 

 

 に、2枚目のテムジン! 複数積んでいたのか!

 

「次だ! 私は《DDナイト・ハウリング》を通常召喚し、ナイト・ハウリングの召喚時効果により《DDリリス》を特殊召喚! さらにリリスの効果でもう一枚の《DDナイト・ハウリング》を手札に加える」

「ま、また!?」

 

 また。 と言うのはナイト・ハウリングとリリスの組み合わせもそうだが、ナイト・ハウリングのサルベージに対してもだった。 ていうかこれループしてますよね。 毎ターンシンクロ召喚できる事になってますよね!?

 

「そして、私はレベル4の《DDリリス》に、レベル3、《DDナイト・ハウリング》をチューニング!」

 

 う……やっぱり……! 今度は何が来る?

 

「闇を切り裂く咆哮よ。 疾風の速さを得て再び王の産声上げよ!」

 

 2種の光が交わった瞬間、嵐のような風が巻き上がる。 これは、まさか……!

 

「シンクロ召喚! 再誕せよ! レベル7、《DDD疾風王アレクサンダー》!!」」

 

 アレクサンダー! あれもまだあったんだ! それに、この流れは!

 

「シンクロ召喚は特殊召喚。 よって、テムジンの効果により、墓地の《DDバフォメット》を特殊召喚。 同時にその特殊召喚に対してアレクサンダーの効果発動。 墓地にいるもう1体のバフォメットを特殊召喚」

 

 まるで、それぞれの使い魔であるかの様に、異型の魔物が2体の王の傍らに1体ずつ現れる。

 バフォメットのレベルは4。 それが2体と言うことは――――

 

「ここで私はバフォメットの効果を発動」

「え」

 

 エクシーズ召喚を行わない……? 一体、何を?

 

「安心したまえ天辻遊雅。 エクシーズ召喚はする。 だがその前に準備があるのだよ。 その為のバフォメットだ。 このモンスターは1ターンに1度、自身以外の『DD』モンスター1体のレベルを1から8までの何れかに変更することができる。 私はその効果を使い、テムジンとアレクサンダーのレベルを8に変更する!」

 

DDD烈火王テムジン

レベル6→8

 

DDD疾風王アレクサンダー

レベル7→8

 

 2体の王を同じレベルに揃えた? まさか……!

 

「では、行くぞ。 まずはレベル4の《DDバフォメット》2体でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

 光の渦の中に吸い込まれていく2つの暗礁色の光。 それらが交じり合って生まれる爆光の中から出現するのは、

 

「この世の全てを統べるため、今世界の頂きに降臨せよ!」

 

 無骨で巨大な剣を携えた、荒波の王。

 

「エクシーズ召喚! 再誕せよ! ランク4、《DDD怒涛王シーザー》!!」

「くっ……!」

 

 また、3種の王が揃った。 でも今度は……!

 

「まだ終わらない! 私はレベル8となった《DDD烈火王テムジン》と《DDD疾風王アレクサンダー》でオーバーレイ! 2体の『DD』モンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

 2体の王が赤と緑の光へと姿を変え、光の渦の中へ吸い込まれていく。 ここまでは今までのそう変わらない。

 

「2つの太陽が昇るとき、新たな世界の地平が開かれる!」

 

 だが、今度出てくるものは、これまでと比べ物にならないことが感じ取れる!

 

「エクシーズ召喚! 現れ出よ! ランク8、《DDD双暁王カリ・ユガ》!!」

 

 煌く爆光から現れるのは、赤と黒の法衣のような物を身に包み、その巨躯を巨大な玉座に身を任せた紅暁の王。

 

DDD双暁王カリ・ユガ

闇属性 悪魔族 ランク8

攻撃力3500

エクシーズ

 

 攻撃力3500! あれが、赤馬社長の切り札……? でも、大丈夫だ。 臆することは無い。 いくら攻撃力が高くても、ブルトガングは一度だけなら問答無用で叩く伏せられる!

 だが、そんなに甘い相手ではないという事も、解ってはいた。

 

「カリ・ユガの1つ目の効果を発動。 このカードのエクシーズ召喚に成功したターン、このカード以外のフィールドのカードの効果は発動できず、無効化される」

「な!? そんな!」

 

 つまり、ブルトガングの破壊効果は当然無効。

 だが、

 

「……でも、それもフィールドにいる時のみです! ブルトガングは相手によって墓地へ送られた時、そのときに装備していたドラゴン族『ドラグニティ』モンスターの数だけ相手カードを破壊します! 例え効果を無効にされても、墓地からの発動は無効に出来ない。 カリ・ユガがブルトガングを戦闘破壊しても、その効果でシーザーを破壊すれば――」

「残念だがこのターンで決着だ。 カリ・ユガの効果を発動。 オーバーレイユニットを一つ使い、フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する!」

「っ!?」

 

 カリ・ユガの周囲を天体の様に漂っていた光玉が一つ王の体に吸収される。 すると、まず赤馬社長の契約書が破壊され、その直後にブルトガングが装備していたブランディストックのガントレットが砕け散った。

 これで……――――

 

「これでチェックだ。 バトルフェイズ、カリ・ユガでブルトガングを攻撃」

 

 カリ・ユガの左腕に、黒と紫二色の電気の帯が纏う。

 …………くっ! ダメだ、考えても伏せも手札もないし、墓地で発動する類のカードも無い! 思わずアクションカードを求めて周囲を見回してしまったが、スタンディングデュエルにそんなものは存在しない。

 

「ツインブレイクショット!!」

 

 そして放たれる二閃の電撃。 1つは弾いたものの、2つ目の電撃にブルトガングの体は刺し貫かれてしまった。

 

Yu-ga

LP2000→1000

 

「そしてチェックメイトだ。 シーザーで直接攻撃」

 

 荒波の王が携える大剣を振りかざして跳躍する。

 なにか……思いついてッ! 

 

「タイダル・クラッシュ!!」

 

 しかし、そんな願いを打ち砕くかのように、シーザーの大剣が僕の眼前目掛けて振り下ろされた。 シーザーが地面を打ち砕くと同時に、津波が起こり、僕の身体を飲み込んだ。

 

Yu-ga

LP1000→0

 

WINNER

Reiji

 

「負けちゃった…………」

 

 ソリッドビジョンが消え行く中、津波の時に思わず尻餅を着いていた僕は俯きながらそう零していた。

 全力で立ち向かったつもりだが、まるで全然歯が立たなかった。 エボルート召喚を使っても、あと一歩どころか、勝つにはあまりにも程遠かった。

 悔しくて、僅かに歯を噛む。

 

「大丈夫かね?」

 

 不意に頭上から声が掛かる。 見上げると、当然の事ながら赤馬社長の顔があって、手を差し伸べられていた。 その顔は無表情ながらも穏やかで、落ちた本を拾ってくれた時の顔と似ていた。

 気恥ずかしさに少々顔が熱くなったが、気遣いを無碍にするのも失礼なので、またもやお尻で踏んづけていた髪を横に流してから、「ありがとうございます」と社長の手を取って起き上がらせて貰った。 本当に紳士な人だ。

 

「さて、結果としては君の負けとなった訳だが……」

 

 早速切り出さられる勝敗結果。

 「私の勝ちだ」じゃなくて「君の負け」かぁ……。 僕の実力とエボルート召喚を試す為のデュエルだったので、そう言われても仕方ないしのだが、勝負にすらなっていなかったと言われているようで、やっぱり悔しい。 もちろん赤馬社長はそんな風には微塵も無いだろうけども。

 ……仕方ない。 腹を括ろう。

 僕は全力を出して、全力で楽しみ、完敗した。 凄く残念ではあるし、悔やしくはあるが、割かしスッキリした精神ではいる。 やれることはやったんだ。

 僕はディスクのエクストラデッキのハッチを開き、ブルトガングのカードを抜くと、それを赤馬社長に「どうぞ」と言って頭を下げながら両手で差し出す。

 すると、

 

「……何のつもりだろうか、これは?」

 

 意外な返事が返ってきた。 思わず顔を見上げる。 無言でスっと受け取られると思っていたのに、まさかそんな言葉が来るとは思わなかった。

 

「え? えっと……結果としては僕が負けた訳で……それに、まるで歯が立たなかったわけですし……」

 

 頭の中を必死に整理して、慎重に言葉を選んで自分がカードを差し出した理由を連ねる。

 しかし、

 

「君が負けたからカードを貰うなど、私は一言も言っていないつもりだが?」

「え?」

「私が言ったのは君が全力を出さない。 もしくは及第点以下だった場合、他の人間に任せたくなると言う自分の希望だけだ。 例え及第点以下だったとしても、そのカードを頂くなんてことは言っていない。 それにそれはアンティだ」

「で、ですが――!」

「それに、私は君が私にまるで歯が立っていなかったとは思っていない。 正直なところを言えば詰めが甘い所もあるようだが、こちらも追い込まれていた時もあった。 総じて、及第点以上の実力を持っていたと思っている。 なにより、君は全力だったのだろう?」

「あ…………」

 

 そんなところまで見抜かれていたなんて……いや、見ていて下さっていたなんて。

 本当に、恐れ入る人だ。

 

「手を抜いていなかったのは君の目を見ていれば解る。 最後まで負けるまいという意思の篭った目つきは、全力を出していなければ出来ないものだ」

「じゃ、じゃあ……!」

「エボルート召喚の実践は、君に任せたいと思う。 だがもし宜しければ、たまにでいいのでエボルート召喚についてのレポートを出してもらいたい。 構わないかな?」

 

 レポート。 おそらく、実際に使ってみての感想やそのカードを交えての戦略等を書けということだろうか。 その位だったらお安い御用だ! 僕としても、この召喚法を独り占めする気は無い。 商品化に向けて僕のレポートが参考となるのなら嬉しい限りだ。

 

「わかりました! その役目、喜んでお受け致します!」

 

 僕の快い返事を聞いて、赤馬社長は微かに口角を上げる。

 

「感謝する。 こちらはこちらで今回のデュエルで得たデータを参考に研究を進めるとしよう。 では、上まで送ろう。 ついてきたまえ」

 

 そう言ってマフラーを翻して出口へと向かう赤馬社長。 それについて行くのに、僕はワンテンポ遅れた。

 何故なら、いろんな感情がこの短時間で僕の体の中を駆け巡ったからだ。 負けた悔しさ。 褒められた照れ臭さ。任された誇らしさ。そして、これからもこの召喚を使っていけるうれしさ。

 そのどれもが強い感情で、抑えないと大声を出してしまいそうだった。 身体が熱くて、感情の爆発を抑える全身が痺れる。 多分、顔はにやけている

 それらを全て堪えきった後、僕は強くハッキリとした声で、

 

「はい!!」

 

 そう答え、赤馬社長の後を追おうとする。

 その時だった。

 

「っ!」

 

 唐突に、ピリッと頭に電気が走ったような痛みを感じた。 思わずこめかみに手を当てる。

 なんだろ……疲れかな?

 大きな出来事がたくさんあったせいかもしれない。 デュエルも2回やったし、多分そうだろう。 家に帰ったら1回休もうかな。

 とにかくあまり深くは考えず、僕は再び社長の後を追うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も読んで頂きありがとうございます。ユアシアンです。

ドラグ二ティでDDに勝てるわけないじゃん!(涙目
いやホントどうやったら勝てるの……

さて、今回でエボルート召喚の新たな可能性が見出されました!
それは、『進化素材は手札でも場からでも選べる』という事。
ただし、今後どこで説明すればいいのかわからないので今回で説明しますと、
『進化対象は場からでしか選択できない』ということです。条件ってのもあるのでw

これホント融合召喚のパチモンだよなぁ……(ぼそっ

ちなみに遊雅はブルトガングは墓地に送られたら~とか何とか言いましたが、カリ・ユガに効果によって効果そのものが無効になっているので発動すらできないと思うのですがどうなのでしょう……まぁそうであろうがなかろうが装備破壊したんで同じなんですけどね!

そんなわけでPhase3は若干尻切れトンボ感で終了……と言いたいところですが、
実はエピローグが残っています!
短いしデュエルもありませんが、物語において重要な回ですので次回もぜひ読んで頂ければと思います。

では、皆様の感想、評価、アドバイスなどを心からお待ちしております。
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「さぁ、飛べ! 僕の竜騎士!」の後に「ライド!」って言いたくなった貴方。
貴方なんかデュエリストじゃない!ただのファイターよ!
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