宜しければ確認していただけたらと思います。
LDS内部カフェ。
現時刻は12時過ぎ。 午前中のカリキュラムを終え、お腹の空いた生徒たちの殆どは安価で定食の出る食堂、もしくはお弁当を持って来ているならグループで休憩所やフリーデュエルのスペースのどれかに行ってお昼を食べる時刻だ。 しかしそんな中、意外にもここに来る生徒はあまり多くない。
理由はいたって単純で、ここは食堂ほど安くはないし、何より量がそちらと比べると圧倒的に少ないからだ。 それに加えてワンオーダー制なのでお弁当の持ち込みも原則NG。
しかしそのおかげでこのカフェは静かだし、人が少ないなら人目もあまり気にしないで済む。 僕以外の人も、デュエルディスクを見てインターネットをしているか読書をしているかの二択だ。
そんなわけで、
「うにゃーーーーーーーーーー」
と、こんな感じに寝起きの猫のように、のびーっと出来るのだ。 疲労のせいで身体が固まってるのか背中が小気味良くパキパキ鳴る。
午後もたっぷり授業は取ってるし、その後は書庫で自己学習、もしくはエボルート召喚の練習だってしたい。 昨日は色々とあってやっぱり疲れたし帰った後もたくさん調べ物もしたし、正直寝不足気味だ。 でもこんな静かな所で1時間近く眠れる。 午後に備える環境としては最適だ。
漂うコーヒーの香りは飲めば眠くなくなるというのに嗅ぐだけなら寧ろ安眠へと誘ってくれる。 今回は何時もの甘々なコーヒーではなくお水とサンドイッチを2つ頼んだだけなので、問題なく眠れる。
僕はそのままテーブルに突っ伏して目を閉じ、眠りの体制に入った。
嗚呼、素晴らしき午後の一時。
「あら、遊雅。 こんな所で突っ伏してたら行儀が悪いわよ。 起きなさい」
さようなら素晴らしき午後の一時。 時間にしておよそ1分弱。 えらく短命だったなぁ……蝉の成虫だってこの1万倍は生きるのに。
僕は僕の名前を呼ぶ聞き慣れた声に反応して目を開けて身体を起こす。 見上げると、そこには褐色の美少女、光津真澄さんがおられた。
「……なんで泣きそうな顔してるのよ」
「いえ、何でもないんです。 お気になさらず……」
安眠を妨害されたからといって、いくら何でもあなたのせいで眠れなかったからですなんて言えない。
光津さんは「そう?」と言って僕の向かいに座った。 もはや当然とでも言わんばかりに断りの言葉すらなかった。
「というか、なんであなたいつもお昼はここなのよ? 刃はいつも食堂に行ってるのに」
「んー、やっぱり静かなのが良いっていうのと、僕はあまりたくさんは食べられないからですねえ。 それに刀堂さんと一緒に行くと、食堂の人は僕の分まで多めに入れるんですよね……」
「ああ……」
僕が述べた理由に対して、光津さんは同意と同情が混じったようなニュアンスのリアクションを見せた。 やはり光津さんも刀堂さんの食欲を知っているのだろう。
刀堂さんは小柄ながらも、食べる量は凄まじい。 正直何処に入っているのか不思議なレベルだ。 大盛りの定食を3つも平らげるのば序の口。 一緒に外でごはんを食べに行った際、大食いのチャレンジで完食しなかったところは見た事が無い。 しかもその後ではしごして他のお店もチャレンジをする事もあるのだから尋常じゃない。
あ、もちろん僕はデザートを食べながら見学してました。
「まぁそんなわけで、いつもここを選んじゃうんです」
「なるほどね……でもサンドイッチだけじゃ午後もたないでしょ。 これも食べなさい」
そんな僕を気遣ってくれたのか、光津さんは自分のトレイに乗ってる2枚のお皿の一つをこちらのトレイに置いた。 それには、形の良い目玉焼きと程良い焦げ目のついたソーセージグリルが数本乗っていた。
「え、でもこれ光津さんのじゃ……」
「良いのよ。それに元々あなたのために頼んだんだから」
「え?」
僕の、為に……?
呆けた反応を見せた僕に、光津さんは小さくため息を吐いた。
「あなた、いつもその位しか食べてないでしょ? お小遣いが少ないのかどうか知らないけど、背も低いし身体も細いし甘いものばかり摂取するし、そんな食生活じゃ心配になるのよ」
「あ……」
まさかそこまで心配してくださっていたなんて……。
その心遣いにが、あまりにも予想外で、そして嬉しくて、一瞬固まってしまった。 本当、優しくて、心が温まる。
でも……
「……ごめんなさい光津さん。 それを食べる事は出来ないんです……」
光津さんの行為を無碍にする失礼なのは解ってる。 だけど僕は、そう言う事しかできなかった。
俯いて貰ったお皿を見るしかない僕に、光津さんはしかし、怒るでもなく腕を組んで嘆息漏らした。
「その感じ、お腹が一杯でもう入りきらないとか、そういう感じじゃなさそうね。 まさか、卵アレルギーとか? だとしたらごめんなさ――」
「ち、ちがうんです! そうじゃなくて……」
光津さんの気遣いの言葉を遮って言葉を出そうとするも途中で途切れてしまう。
しかし光津さんは、一瞬だけ驚いた反応を見せたものの、気分を害した様子を見せることもなく、僕の次の言葉を待つように、僕の目を見据えていた。
「えっと…………」
最初、言おうかどうか迷ったが、その光津さんの姿勢に僕は言葉を選びつつも答えることに決めた。
「……確かに、お腹が一杯とかでも、食べ物に対するアレルギーとかがある訳じゃないです。 ただ……」
「ただ?」
「……食事中にごめんなさい。 戻しちゃうんです」
「え?」
どういうことかわからないという表情を見せる光津さん。
まぁ、そうですよね。
「簡単に言うと、一定量以上食べる事が出来ないんです。 時間を置けばまた食べることは出来るんですけど、これ以上はどうしても、胃が受け付けないんです」
「…………なるほどね。 どおりで昨日も奢りと言ったのにサンドイッチ一袋とケーキ一個しか食べていなかったわけだわ。 ……でも一応、ちゃんと食べることは出来るみたいだし、拒食症ってわけでは無さそうね」
一度ボクの言った返答を飲み込んでから、きちんと向き合って答えてくれる光津さん。
「はい。 でも、それ以外は何の問題もないんです。 あまり頼りたくはないですけど、サプリメントとかなら飲めますし、授業にも影響が出たことはないんです」
「まぁ、確かに座学はトップだし、身体能力だってかなりものよね。 良い見方をすれば、コスパが良いのかしら?」
なるほど、前向きに見ればそういう見解も出来るのか。
それにしても、座学はともかく身体能力の方も褒められると流石にちょっとむず痒くなる。
そ、そんなにかな? 確かにこの前、走り高跳びで2M跳んだ時は皆に驚かれたけど、もうちょっと飛んだ人もいた気がするし……そこまででもない気がするなぁ……
そんな風に数日前のことを思い出していると、光津さんは僕と話しているうちに食べるの忘れていたのか、ここでようやく自分が持ってきていたサンドイッチの封を開けた。
「まぁとりあえず、事情は解ったわ。 余計なお世話をしてごめんなさいね」
「そ、そんな! むしろこっちの方こそごめんなさい! せっかく頼んでもらったのに……あ、お代は――」
「いいわよ。 そんなにお小遣いに困ってはいないわ。 それに私、今日の午後は身体を使う授業ばかりだし、たくさん食べておいて損はないしね」
そういってハムとレタスを挟んだサンドイッチを口にする光津さん。
うーん、今更だけど食べる姿もどこか品があるなぁ……やっぱり良い所のお嬢様なんだ。
住む所が全然違うなぁとは思わないけど。 なんとなくそういう感想を抱いた。 かなり姉御肌なところがある人だから、たまに忘れるけど……
「……そんなに見つめられていると食べ辛いんだけど」
まずい、見つめ過ぎていた。
ジト目ながらも少し頬を赤めている光津さん。 流石に気恥ずかしかったのだろう。
微妙にこっちも気恥ずかしくなってしまう。
「ご、ごめんなさい! えっと……光津さんはやっぱり綺麗で優しいなぁって……」
「…………………………は、ハァッ!!?」
あ、正直に言い過ぎた。 いきなりそんなことを言われたのに驚いたのか、光津さんは顔を真っ赤にして人目もはばからず素っ頓狂な声を上げる。
「い、いや、ごめんなさい! えっと、初めて会ったときは、その……こういう風に仲良くなれるなんて、思っていなかったので…………正直当初は、怖い人と思ってたので……」
「あなた小心者に見えて普通にズバズバと物言うわよね……」
「ご、ごめんなさい……」
「いいわよ。 影でグチグチ言われているよりずっと良いわ。 それに、今振り返ると私もそう思うしね。 ホント、よくここまで仲良くやれていると思うわ」
口角をわずかに上げてカップに口をつける光津さんはどこか上機嫌そうにも見える。 快く思われているのなら僕としても嬉しい。
光津さんと初めて会ったのは僕が入塾して1年くらい経った頃。 だからおよそ半年前と言うことになる。
そんなわけでユアシアンです。いつも読んでいただきありがとうございます。
UA数が1万を超えました!ほんとうにありがとうございます!
喜びの言葉は活動報告に載せましたのでよろしければ見てください!
さて前回気になるところで終わりましたが、今回は過去の話です。
遊雅と真澄の馴れ初め(?)の話ですね。
後に真澄との間に重要な話を書きたいので、
その話をするためには過去の話くらい一個くらい作っとかなきゃなーと思って書きました。
というか回想は3人称視点で書いていますが、正直難しいです。
真澄の1人称にしておけばよかったと後悔しています。
でも遊雅以外では基本的に3人称で書かないとと何故か思っていたので、今回は頑張りたいと思います。
次回からデュエルです!
できるだけ前後編で終わらせたいところ。
それでは、皆様の感想、評価、アドバイス等を心からお待ちしております。
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