P4Aシナリオ番外編   作:三化月

1 / 3
『Persona4 THE ANIMATION』24・25話のパラレルストーリー。

足立との戦いが始まり、堂島さんがついにペルソナ能力に目覚める!
そして特捜隊と合流し、最終的に堂島さんが足立を諭すお話です。

このお話の後、『足立裁判 ~テレビの中の真実~』に続いていきます。


「足立の更生?そいつは俺の役目に決まってるだろうが!」

○タイトル

『Persone4 the ANIMATION』

 黒バックに白文字のみで。

 

○愛家・店前

 雪の降る中、三人並んで立つ悠、陽介、直斗。

直斗「……必ずいるはずなんです。全ての条件を満たす人物が、この町のどこかに。……小西さんと山野アナの二人と何らかの接点があって、僕たちの行動をある程度継続的に把握することが出来て、先輩の自宅に怪しまれずに近付けた人物が」

悠「全ての条件を満たす人物……」

 そう言って空を見上げる悠。

 空は、霧と雪が混じり合って霞んでいる。

直斗「もう一度みんなで、情報を整理した方が良さそうですね」

 直斗、愛家店内へ戻らんと半身を翻す。

 と、悠が何かを悟ったような表情で呟く。

悠「悪いけど、俺は病院に戻る」

直斗「……分かりました。菜々子ちゃん、お大事に」

 愛家店内へ戻る直斗。

 そして、悠と陽介は真剣な表情で歩き出す……。

 

○病院・エレベーター内

 上昇するエレベーター内の悠と陽介。

悠「天城をはじめ、行方不明になった人間は、みんな宅配業者を装った生田目に襲われてテレビに入れられた」

陽介「ああ。玄関からピンポーンって、犯人が来たんだよな」

悠「けど、久保美津雄だけは、行方不明になった時のことをこう供述している。……自首しに行った警察の取調室で意識を失ったと」

陽介「え?」

 

○同・4階病棟の廊下

 エレベーターの扉が開き、悠と陽介が話しながら出てくる。

陽介「自首……。そうだったのか」

悠「おじさんに確めた。久保の証言は誰もまともに取り合わなかったらしい。ただその時、久保の取り調べをしたのが……」

 と、二人の目の前に足立が現れる。

足立「あれ? 君たちどうしたの」

 足立をジッと見つめる悠と陽介。

足立「なに怖い顔しちゃって……。菜々子ちゃんの病室、こっちじゃないよ?」

 と、そこへ遼太郎が現れる。

遼太郎「おい足立」

足立「ど、堂島さん! こんなとこで、何やってんですか!」

遼太郎「(悠と陽介に気付き)ん? お前ら……」

足立「ダメですよ。安静にしてないと」

遼太郎「足立、生田目はどうした?」

足立「とっくに搬送しましたよ。報告しようと思って探してたんですが……」

遼太郎「(身を乗り出し)搬送した!? おい! 誰がいいと言った! 奴にはまだ聞きたいことが残ってんだ!!」

足立「か……勘弁してくださいよ」

 足立、たじろいで一歩下がる。

遼太郎「最初の二件の殺しが引っ掛かる。ヤツは動機もイマイチだし、アリバイも固かったはずだ」

足立「ま~た『刑事のカン』ですかあ? でももう搬送しちゃったし、僕に迫られても困りますよ……。君たちもさ、いい加減もう帰ってよ、警察の仕事のジャマになるからさあ」

 足立の言葉に、悠と陽介の方を見遣る遼太郎。

遼太郎「お前らは何してんだ?」

悠「足立さんに話があります」

遼太郎「足立にだと?」

陽介「山野アナが消えた時のこと、詳しく教えてくれませんか?」

足立「え? ああ、マスコミが宿まで押しかけてきたから身辺警護に行ったけど、……よく覚えてないよ」

陽介「小西先輩に会ったことは?」

足立「ああ、そりゃあ遺体の第一発見者だからね。……一、二回? ちょっと話を聞いたっけ」

 少し冷や汗気味の足立。

悠「脅迫状のこと、何か分かりましたか?」

足立「脅迫状? あー、いやあ……、どうだったかなあ……」

 とぼける足立。

遼太郎「おい! 鑑識と組んで調べるようにって、お前に渡したろ! 忘れたのか!?」

足立「は、はは。すいません……。あの後すぐ堂島さん事故ったりして、慌しくなったもんで、つい……」

 苦笑いする足立。

 と、周囲の疑惑の目が足立に突き刺さる。

足立「……何なの? この雰囲気は、もう! ……じゃ、僕は戻りますよ。署に戻って報告しなきゃならないんで!」

 そう言って、三人の間を割ってエレベーターの方へと歩きかける足立。

 と、目の前に千枝、雪子、完二、りせ、そして直斗が立ちはだかっていた。

足立「…………!!」

 驚く足立。

 そして、直斗が一歩前に出る。

直斗「僕からも質問があります」

足立「……え?」

直斗「最初に殺された二人は、生田目の仕業じゃないとはっきり分かったんです」

 直斗の言葉に、思わず息を呑む足立。

直斗「別の誰かが殺したと。……足立さん、知りませんか?」

足立「な、何を言ってるのか……、意味がよく……」

 すかさず完二が足立に走り寄る。

完二「テメェなんじゃねーかって言ってんだよ!」

足立「な……、そ、そんなの……」

 皆が足立に注目する。

足立「そんなの、生田目が全部入れたに決まってるだろ!!」

 絶句する全員。

千枝「今……、なんて……?」

遼太郎「(足立に近付き)入れたって何だ? お前、手口について何か知ってるのか?」

 そう言って足立を睨む遼太郎。

直斗「足立さん、僕は過去のあなたの言動がずっと引っ掛かっていた。それが何なのか、今ようやく分かりました。……堂島さんの事故現場で、僕が生田目の日記を読んだ時のこと、覚えていますか?」

 

○回想~事故現場~

 倒れる遼太郎の傍で跪く足立。

 その傍らで、直斗が発見した生田目の日記を見て口を開く。

直斗「未遂で終わった三件目以降の被害もちゃんと書かれている。そして、諸岡先生の住所は書いていない」

足立「(嬉々とした表情で)すごい、そりゃ決まりだよ!」

 

○病院・四階病棟の廊下

直斗「何が決まりなんですか? おかしいじゃないですか」

悠「あの時警察は、まだ事件に未遂のケースがあったなんて知りもしなかった。なのに直斗が読み上げた名前に、異論が出ないのは不自然だ」

 直斗と悠の言葉に固まる足立。

悠「……答えて下さい。足立さん」

足立「し……、知らないよ! 忙しいって言ってるでしょ!!」

 皆を掻き分けて走り去る足立。

遼太郎「オイ足立!!」

 足立を追って走る特捜隊の面々。

 

○同・突き当たりの病室

 扉が開き、追ってきた全員が入ってくる。

 しかし、そこは真っ暗で誰もいない。

陽介「……こっちに逃げたよな?」

遼太郎「チキショウ、どこ行きやがった! ウッ……、クソ!!」

 身体の痛みで倒れかける遼太郎。

 それを悠が支える。

悠「おじさん……、あとは俺たちが」

 キリッとした表情の悠の腕の中、崩れ落ちる遼太郎……。

 

○アイキャッチ

 

○同・遼太郎の病室

 ベッドで横になっている遼太郎。

 ピクッと全身を揺らして目を覚ます。

遼太郎「……ウッ!」

 痛みに耐えつつ上半身を起こす遼太郎。

遼太郎「足立……、アイツめ……」

 首を振りながら先程の問答を思い起こす遼太郎。

 そして足立の言葉を繰り返す。

遼太郎「……全部生田目が入れた……って言ったな。入れたってのは……」

 遼太郎の脳裏に、かつて取調室で悠から聞いたあの話が過ぎる。

 

○回想~稲羽署の取調室~

 机を挟んで向かい合う遼太郎と悠。

悠「俺たちは、事件に関わっています。……俺たちは、誘拐された人たちを助けてるんです。テレビの中に行って」

遼太郎「んん? テレビの中だと?」

悠「……そこには、シャドウという敵がいて、俺たちはペルソナを使って……」

 

○病院・遼太郎の病室

遼太郎「テレビの中……、ペルソナ……」

 考え込む遼太郎。

遼太郎「まさかそんなこと……」

 ベッドから這い出て、室内のテレビに近付く。

 そして、若干震えながら右手でモニターに触れる。

遼太郎「……だよな。こんなとこに入れるわけ……」

 と、その時、モニターに触れた右手から何かが流れ込んできた!

遼太郎「な……何!?」

 そして、モニターが鈍く光ったかと思うと、そこにノイズ混じりで足立の姿が映った!

遼太郎「あ……だち?」

 モニターには、薄暗く判別しづらい部屋に足立と山野真由美が映っていた。

 

○テレビの中・天城屋旅館を模した空間

 旅館のロビーのような場所で、足立と山野真由美が向かい合っている。

真由美「あなた誰なの? こんなとこに呼び出して」

足立「あなたが不倫してるとかって……。ウソですよね? あんなの」

真由美「……あなたに関係ないでしょ!」

足立「否定しないんだ。……目ェかけてやってたのに、こんな下らない女だったなんてな」

 醜く歪む足立の顔。

 

○病院・遼太郎の病室

 モニターを見て顔をしかめる遼太郎。

遼太郎「こ……、これは」

 

○テレビの中・天城屋旅館を模した空間

真由美「人を呼ぶわよ!」

足立「あーうるさいうるさい! 黙れ!! ……あんたさぁ、一度怖い思いとかして、頭冷やした方がいいよ」

 足立、そう言って真由美に掴みかかり、大型テレビにその身体を押し付けた。

 と、モニターに溶け込むように真由美の全身がテレビの中へ!

真由美「キャアーーーーッ!!」

 足立、テレビから一歩下がって笑い出す。

足立「は、ははは……、すごいな。完全に入っちゃえるんだ!」

 

○病院・遼太郎の病室

遼太郎「なん……だと」

 冷や汗をながし、モニターに食い入る遼太郎。

 

○テレビの中・稲羽署の取調室を模した空間

 椅子から立ち上がる小西早紀。

早紀「何ですかこれ! 事情聴取の続きじゃあ……」

足立「お前、生田目と遊んだんだろ?」

早紀「私、そんなこと……」

足立「(先に顔を近付けて)まあ大丈夫だって。僕の言うことを聞いたら、内緒にしておくから」

早紀「う……」

 ペチン!

 頬をはたかれた足立が一歩下がる。

足立「イヤなんだ。……それなら僕にも考えがあるけど!」

 足立、そう言いながら早紀の頭を掴んでテレビのモニターに押し付ける。

早紀「ああああ! いや~~~ん!!」

 テレビの中に落とされる早紀。

足立「何が女子高生だ。世の中クソだな」

 足立、テレビの中に自分の頭だけを突っ込む。

足立「泣いて許しを請え! そしたら出してやる」

 モニターから頭を抜く足立。

足立「な~んてな。こんなヤバそうなとこ、誰が入るかって」

 

○病院・遼太郎の病室

 テレビの縁を両手で掴み、ワナワナと震える遼太郎。

遼太郎「足立……、貴様……」

 怒り、喪失感、疑念、後悔と様々な感情が遼太郎の中に渦巻き、額に脂汗が流れる。

 と、突然遼太郎の身体に電撃を受けたようなショックが走り、ガクッとその場に跪く。

遼太郎「ウグッ……!!」

 身体の傷に思いがけない痛みが加わり、苦悶の表情の遼太郎。

 その間、モニターでは引き続き足立が持論を展開していた。

足立「……都会でエリートになるはずがこんな田舎町に飛ばされて、でも代わりにこんな面白い力を手に入れたワケ」

 足立の言葉に、陽介が怒りで身を震わせる。

陽介「テメェ、許せねー!!」

足立「おいおい、僕の身にもなってくれよ。テレビの中が危険だとか知らなかったし、殺す気なんてなかったんだ。真由美もあのガキも、どうせ自分の方から生田目をたぶらかしたに決まってる。自業自得さあ。……僕、なんか悪いことしてる?」

陽介「うるせぇ!!」

 陽介、足立に殴りかかるが、その姿はスッと消えてまた別の場所に現れる。

 その様子を見ていた遼太郎が、ギュッと拳を握り締める。

遼太郎「クッソ! アイツがこんなことを……」

 思わずモニターに映る足立の胸ぐらを掴まんとテレビに手を遣る遼太郎。

 と、その手がスッとモニターに溶け込んだ!

遼太郎「……なっ!?」

 驚いて手を引っこ抜く遼太郎。

 しかし、その手とテレビをジッと見つめ、再度モニターへ手を伸ばす。

 波紋を広げながらモニターに溶け込む遼太郎の手。

遼太郎「まさかこんな……、しかし現実に……」

 現実主義の遼太郎には受け入れ難い事実だった。

 しかし、現に自分の手がテレビのモニターに溶け込んでいる。

 これはつまり、テレビの中に入れるってことなのか?

遼太郎「……分からん。だが、理屈はどうあれアイツらはテレビの中にいる。俺も……、俺も入れるってことか?」

 テレビの前に立ちはだかる遼太郎。

 と、身体中の痛みが何故か嘘のように消えていた。

遼太郎「フフ……。何だか妙な力がついちまったようだな。誰の仕業だが知らねーが、これで俺も捜査に加われるってことだよな? なら話は早い。……足立、お前を許すわけには!!」

 そう言って、遼太郎が徐にテレビのモニターへ飛び込む!

 

○稲羽市駅前商店街

 ますます霧が濃くなっていく現実世界。

 道端で騒ぐ市民たち。

 そこには、あいかの姿も。

 ふと上空を見つめるあいか。

 空の彼方で、何か黒い点が小さく光る。

あいか「……あ」

 あいかの表情が引き締まる。

 

○アイキャッチ

 

○テレビの中・生田目の部屋を模した空間

 足立に電話をかけている生田目。

足立「へぇ……。あの二人の死にそんな法則がねぇ。それで、今度はそのヘンな番組に映った和服の女の子が殺される、と。……生田目さんさぁ、そんな話、信じる人いると思うの?」

生田目「本当なんです! 何とか保護を……!!」

足立「あのねぇ、テレビがどうとかって、そんな夢みたいな話で警察がいちいち動くワケないでしょ? ……面白い話だけどさ」

生田目「そんな……」

 落胆する生田目。

足立「そうだ。そんなに助けたいのならさ、ご自分でやったら? 例えばさ、どこか誰にも見つからない場所にかくまっておくとかさぁ」

生田目「誰にも見つからない場所……」

足立「助けてあげればいいじゃない。……今度こそ」

 ニヤリと笑う足立、悠、陽介、クマの方へ振り返る。

足立「……すげーだろ? 誤解しちゃった生田目が、よりによって僕に電話してきちゃうんだから。僕はちょーっと背中を押してあげただけ。生田目はまんまと勘違いしてくれちゃって、お前らが救えば救うほど、誘拐を繰り返す。お互い善意なのにイタチごっこの繰り返し。……ハハ、最高」

 そう言いながらその場を去る足立。

 それを追いかけようとした悠、陽介、クマの前にシャドウが立ちはだかる!

陽介「悠! ここは俺たちに任せろ!」

悠「分かった! 頼む!!」

 ジライヤとキントキドウジがシャドウに立ち向かう。

 そして、悠が足立を追う。

 

○同・赤黒い空間

 テレビの世界に飛び込んだ遼太郎が宙空に浮かんでいる。

遼太郎「こ……、ここは!?」

 眼下には、タケミカヅチやスクナヒコナを操りシャドウと戦う完二と直斗、トモエ、コノハナサクヤ、ヒミコを操ってシャドウと戦う千枝と雪子とりせ、そしてジライヤとキンドキドウジを操ってシャドウと戦う陽介とクマの姿が一望できた。

遼太郎「アイツら……。あれが……ペルソナか?」

 と、どこからか足立の声が聞こえてくる。

足立「お前らだっていずれ分かるさ。どこまで行っても、つまんねー現実がさ。……正直、もう要らないんだよ。世界が飲み込まれて、人間がシャドウに変わる……。今怖がってるだけの連中ほど本当はそう望んでる。なら、それを導いてやるのが僕の役目だ」

完二「勝手な理屈を、つけんなー!!」

直斗「そんなに消えたいなら、お前一人で消えればいい!!」

足立「……いきがるだけのガキはヤダねぇ。不安で大声出したい気持ちは分かるよ? けど、こっちは実際そうだったっていう経験談でモノを言ってるんだよ」

 遥か上空で、遼太郎は皆の会話を黙って聞いている。

足立「人間が皆一様にシャドウになる。目を塞がれて生き続ける。それって、今の現実と何が違う? いや、むしろずっと楽になるはずだ。……どんな奴だって、せいぜい80年とかしたら終わるんだし。……だったら、シャドウになればもっと楽だ。何も抑圧しなくていいし、見ないフリどころか見なくていい」

陽介「誰もそんなこと望んでねー!!」

 厳しい表情で皆の話を聞き続ける遼太郎。

 と、別の地帯で対峙する悠と足立の姿を見つける。

遼太郎「む……」

 悠と足立のいる方向へ身体を移動させる遼太郎。

 

○同・堂島家のリビングを模した空間

 向かい合う悠と足立。

悠「久保をテレビに入れたのも、足立さんなんだな?」

足立「アイツはね、早々に自首して来たんだよ。まだ犯人の目星もつかなかった頃だ。けど、よくあるイタズラと決め付けられて、厄介払い同然で僕の所へ通されてきたんだ。まさか進んで罪を被りたがる奴が出るなんて、想像してなかったよねぇ。……でも、もしマジで犯人なら事件解決ってオチになりかねない。そうなれば生田目が救済をやめちまう。そりゃ駄目だ、ゲームが冷める。だから、周りに帰らせましたって言って、とっさの思いつきでテレビに入れたんだ。……我ながらいい案だったよねぇ」

 足立の言葉に、上空で鬼の形相になる遼太郎。

悠「ゲームが冷める……。そんな理由で……」

足立「そういうの人生で大事だろ? けど、お前らはまたまたウザく邪魔してくれたよねぇ。おかげで久保のやつ、逮捕されてまんまと真犯人扱い。遺体の真似方とかあんなお粗末だったのに……。ま、でも生田目は救うの止めなくて、結果オーライだったけどね。生田目のやつ、救う事に酔ってたのかね? バカなやつだよね~」

 ここまで黙って聞いていた遼太郎がギュッと拳を握り締めると、その身体がスーッと地上に向かって飛んだ。

 そして、悠と足立の目の前に降り立つ。

悠「お……、おじさん!!」

足立「……ど、堂島……さん!? 何で!?」

 驚く悠と足立。

遼太郎「俺もワケが分からん。だが、テレビん中へ入ってこれたのは事実だ。そして、お前らがどういう力を持ってるのかも大体分かった。だが、一つだけ分からんことがある。……足立、お前どうしてこんなことを」

 そう言いながら足立を睨む遼太郎。

 一瞬怯むも、もはや開き直るしかないと悟った足立はサバサバと答える。

足立「……理由ですか? 別にありませんよ、そんなの」

遼太郎「何ィ?」

足立「ただ僕には出来たし、面白いから。……悪いのはこの世界でしょ? 実際、みんなこの世界に殺されたんですから。ここは人々の意思が反映される世界。ってことは、犯人は堂島さんや悠君も入れて、外の連中みんなじゃないですか?」

遼太郎「ふざけるなよ、お前!」

 足立、遼太郎を敢えて無視するかのように悠に近付いて話す。

足立「……君ら学生でしょ? こんなことより勉強した方がいいんじゃないのぉ? 真面目に勉強していい大学入って、いい会社に勤めて可愛いお嫁さん貰ってさあ。……何、必死に無駄なことやってんの? 他にやる事ないんだろ? 揃いも揃って寂しい奴らだねぇ……」

悠「寂しいのはどっちだ」

足立「クソ生意気なガキが! ……俺たちの手で犯人見つけようぜ!とか言って毎日だらだらジュネスに集まって推理ごっこしてさあ。恥ずかしくないの、君ら歳いくつよ? あははははははは! ヤバイヤバイ、腹痛い……」

 腹を抱えて笑う足立。

 その足立にツカツカと歩み寄った遼太郎が、足立の胸ぐらを掴む。

遼太郎「貴様何がおかしい! 自分のやったことが、分かってんのか!?」

足立「(すました顔で)だって頑張ったって無駄じゃないですか」

遼太郎「何だと?」

足立「現実に目を向けたって、嫌なことばっかで変えようがない。変えようないこと考えるなんて、メンドくさいだけですよ」

遼太郎「お前……」

 さらに足立の胸ぐらを掴む手に力を加える遼太郎だったが、それを足立が嫌って払いのける。

足立「……メンドくさいことなんてまっぴらですよ。だったら、信じたことだけ信じて生きてった方がいい。だってその方が楽でしょ? 楽に生きられりゃ、それでいいじゃないですか」

遼太郎「お前……、それでも刑事か!?」

足立「……刑事。……刑事ねぇ。堂島さんには悪いですけど、僕が警察入ったのは本物の銃が撃てるから、それだけですよ?」

遼太郎「……な」

足立「でも正直大失敗。周りはバカばっかでさあ、退屈で辛い現実ってのを肌で感じましたよ。……みんなね、こんな世界認めてないんですよ。ただ否定する方法がないから、耐えて生きてるだけ。うまくやれる奴は初めから決まってるんです。『才能』ってチケットを持ってるんだ。そうじゃない奴は自分が違うって事実を見ずに人生終わっちゃう。仮に気付いても絶望だけ。ゲームオーバーだ。だったらこんな現実、無いほうが良くないですか?」

遼太郎「……現実は、ゲームじゃねぇ!」

足立「ゲームですよ! みんな勝ちたいから色んなアイテム買ったり経験値稼いだりして頑張る。でもどーしても越えられない壁に気付いちゃったらもうおしまい。クリア出来る奴と出来ない奴に分かれて、負け組は現実の流れに呑まれていってしまう。だからと言って、勝った方も本当に勝ったワケじゃない。勝ったような気になって自己満足に浸ってるだけですよ」

 足立、そう言って二人に背を向ける。

 と、そこへシャドウを撃退した陽介、クマ、千枝、雪子、りせ、完二、そして直斗がやってくる。

陽介「ど……、堂島さん!?」

千枝「……え、何で!?」

 遼太郎の姿に驚く特捜隊の面々。

 足立、その特捜隊の面々を顎で見渡す。

足立「へぇ~、よくここまで来られたねぇ。褒めてあげるよ」

完二「うるせぇ!!」

 思わず怒鳴る完二。

 そして、直斗が一歩前へ出る。

直斗「……足立さん。あなたの理屈は、全部子供以下の単なるワガママだ!」

足立「ああ?」

直斗「人は一人じゃ生きられない。社会と折り合うことを投げたら、生き辛いに決まっている!」

雪子「そうよ! 生きるのも面倒、死ぬのもイヤ! 人であることすら放棄しようとしている。そんなの、ダダこねてるだけじゃない!」

陽介「はっきり言っとくぜ。お前は選ばれたのでも何でもない。ただのくだらねぇ犯罪者だ!」

 次々と足立に罵声を浴びせかける特捜隊の面々。

 足立の顔色が変わり、徐に口を開く。

遼太郎・足立「「……ガキは黙ってろ!!」」

 足立と同時に、なんと遼太郎も同じセリフを陽介たちに返す。

悠「……お、……おじさん」

遼太郎「お前らはまだケツの青いガキだ。だからコイツの理屈など到底理解できんだろう。だが今はそれでいい。そうでなけりゃ、ガキの値打ちなんてねぇからな!」

 と、遼太郎の全身が黄金色に輝き始め、上空からヒラヒラと一枚のカードが舞い落ちてくる。

 それは『法王』のカード。

 カードは、遼太郎が広げた右の掌に落ちて粒子化する。

陽介「あ……あれは!!」

悠「まさか……!?」

 そして、上空からひと筋の白い光が差し込み、遼太郎の身体を貫く!

 

○ベルベット・ルーム

 机上の『法王』のカードを眺めながら、マーガレットが呟く。

マーガレット「今、法王の力が目覚めました。彼自身が法であるとともに、慈悲の象徴でもある法王」

 そして、懐から何やら鍵のようなものを取り出し、法王のカードに添える。

 すると、カードが白い光に包まれる!

マーガレット「そして、今までとある少女に密かに宿らせていたもう一つの観察眼である『現実』を、今彼に移しました。この二つの力により、彼は彼自身の中にあるペルソナを呼び出すことが出来るでしょう。それをどう使うかは、まさに自らが法である彼自身が……決めること」

 

○テレビの中・堂島家のリビングを模した空間

 遼太郎の全身が、今度は白いオーラに包まれている。

遼太郎「……相変わらずよく分からんが、どうやら俺も、お前たちと同じような力を手に入れたようだ」

悠「おじさん……」

遼太郎「足立ィ! お前の性根を、改めて叩き直してやる!!」

 足立、遼太郎の言葉にあからさまに嫌味な舌打ちをする。

足立「……う、うるさいうるさい!! 堂島さんに……、堂島さんに俺の何が分かんだああああっ!!」

 と、足立の全身が黒い霧に覆われる。

足立「……マガツイザナギ!!」

 マガツイザカギを召喚する足立。

 そして、それに呼応するように遼太郎が叫ぶ。

遼太郎「お前を裁くのは、俺だ! ……ペルソナ!!」

 そう叫ぶや、遼太郎の身体から黄金のペルソナが現出!

 それは、人型だが頭部は龍の造型をした雄々しい姿だった!

悠「あれは……!!」

 りせが、すかさずヒミコのレーダーで遼太郎のペルソナを解析する。

 レーダーに映る「コウリュウ」「カッコいい」「強そう」の文字。

りせ「コウリュウだって! 凄い堂島さん! カッコ良すぎ!!」

 特捜隊の面々が見つめる中、コウリュウとマガツイザナギがぶつかり合う!

 

○アイキャッチ

 

○テレビの中・堂島家のリビングを模した空間

 頭上でコウリュウとマガツイザナギが殴り合う中、遼太郎と足立も互いに頬を腫らし合う。

遼太郎「足立ィ! てめぇ腐っても刑事だろーが! 市民を守る刑事が、何故あんなことをしたーーっ!?」

足立「そんなコタァどーでもいいんですよ! ……俺の人生、こんなはずじゃなかった! こんなはずじゃああああっ!!」

 マガツイザナギが、コウリュウの首を締めにかかる。

遼太郎「……甘ったれんじゃねー!! (コウリュウがマガツイザナギを突き飛ばし)俺たち人間は、みんな毎日現実と戦ってるんだ! 理想に叶わんことがあっても、不条理に嘆くことがあっても、俺たちは戦いを止めちゃいけねーんだよ!!」

 口から血を流しながら尻餅をつく足立。

足立「そんなの理想論ですよ。人間なんてそんなに強くない! イヤなことからは逃げてればいいんですよ! ……世間なんてそんなもんだ。自分が満足できればいい。そーいうもんでしょ? 連続殺人の犯人は生田目。それが世間の真実なら、それでいいんですよ!!」

 コウリュウに向かって、大きなフォームで鉾を振り下ろすマガツイザナギ。

 と、コウリュウはその鉾を左腕の鱗鎧でガードし、同時に遼太郎が足立に顔を近付ける。

遼太郎「真犯人はお前だ。それが真実だろーが!」

足立「だからってどーなるんです? 群がる先が変わるだけで、世間の真実は変わりはしない」

遼太郎「確かにそうかもしれん。だがな足立、それこそ見せかけの真実だ!」

足立「そーですよ? 見せかけでいいんですよ世の中なんて! メンドくさい理屈なんてクソ喰らえだ!!」

 マガツイザナギが鉾を振り回す。

遼太郎「……同感だな」

 コウリュウの右手の爪が長く伸び、マガツイザナギの鉾を遮る。

足立「な……!?」

遼太郎「俺だってメンドくせぇ理屈なんてクソ喰らえだ。……現実生きるってのはなあ、理屈じゃねーんだ! どんな結果が出ようが、どんなに血ヘド吐こうが、テメェをしっかり持ってりゃあ地に足つけて生きていける! その権利はなあ、誰にだってあるんだよ!! もちろん、お前にもな!!」

 コウリュウ、右腕を大きく振りかぶって、長く鋭い爪でマガツイザナギをひと突き!

足立「ぎゃああああああああああ!!」

 マガツイザナギの身体に電撃が迸り、足立が激痛に苦しむ!

 そして……、マガツイザナギがシュウシュウと消滅していく。

 ペルソナを失い、足立が蹲って身体を震わせる。

足立「……くそっ! ……何だよ、つまんねぇ……」

 と、ゴロリと仰向けに寝転び、諦観した表情になる足立。

足立「まぁいいや……。どうせもうすぐアッチの世界はなくなる。戻るとこなんか……ないし」

 遼太郎が足立に歩み寄る。

遼太郎「足立……、お前……」

足立「ああ……、メンドくさいなあ……」

 足立、拳銃を自分のこめかみに当てる。

遼太郎「オイ足立! やめろ!!」

 走り出す遼太郎。

 しかし、足立が引き金を引く直前、その身体が宙に浮き、真っ黒な霧に包まれる!

 そして、眼前に現れたのは巨大なレンズのようなシャドウ・アメノサギリ!

アメノサギリ「コノ男ノ役目ハ、終ワッタ」

遼太郎「何だと!?」

 遼太郎の周りに、特捜隊の面々も走り寄る。

アメノサギリ「人間ヲ悉クシャドウニスルタメ、コノ男ニハ虚無ヲ担当サセタ。ソノ効果ハ想定通リ。私ガ秩序トシテ君臨スル土台ハ出来上ガッタ。モウ、用無シダ」

 宙に浮いた足立の身体にモザイクが入り始め、その色彩を失っていく。

悠「ダメだ! 足立さんが危ない!!」

遼太郎「何ィ!?」

悠「ここで精神力が途絶えてしまったら……、足立さんも犠牲者と同じように……!!」

遼太郎「つまり、山野真由美や小西早紀と同じように、この世界のバケモンに殺されて元の世界へ戻っちまうってワケか。……クソ!」

 足立の周囲の黒い霧が、徐々にその円周を縮めていく。

悠「おじさん! ここは俺たちに任せて、足立さんを!!」

遼太郎「よし分かった! 頼んだぞ!!」

 遼太郎、そう言ってジャンプし、宙に浮いた足立の胴体に掴みかかる!

 そして、そのまま黒い霧が二人を覆い尽くし、その場から消えた……。

 

○同・真っ暗な異空間

 何もない真っ暗な空間。

 そこに足立の身体が浮かび、川を流れるようにどこかへ進んでいく。

 と、四方八方から様々なシャドウが現れる。

 足立に攻撃を仕掛けるシャドウたち!

 しかし、寸前でコウリュウの鋭い爪先がそれを阻む!

遼太郎「……足立! オイ足立!!」

 次々と攻撃してくるシャドウたちを、コウリュウが切り裂いていく。

遼太郎「足立! しっかりしやがれ!!」

 足立の胸ぐらを掴み、往復ビンタをかます遼太郎。

 と、ゆっくりと目を開く足立。

足立「……堂島……さん」

 気が付いた足立、その場に正座するような姿勢になる。

 そして遼太郎は、その前で胡坐をかく。

 その周囲では、コウリュウが延々とシャドウと戦っている。

遼太郎「足立。俺はな、お前のことを家族同様に思ってきたつもりだぞ?」

足立「嘘ですよ。……それは、悠君のことでしょ?」

遼太郎「もちろんアイツもそうだ。だが、お前は別の意味で家族だった」

足立「…………」

遼太郎「都会からこんな田舎町に左遷されて、そりゃいい気持ちはしなかったろう。しかしな、刑事が働く場所は、どんなところだって変わりゃしない」

足立「刑事になったのは、本物の銃を撃ちたかったからだって……言ったでしょ?」

遼太郎「バカが。そんなもの、本心じゃないことは分かってる。本当に銃を撃ちたいだけなら、早々にぶっ放してクビになってるだろうよ」

足立「…………」

遼太郎「お前は要領がいいんだか悪いんだか分からんからな。俺みたいな古いデカ体質は嫌うクセに、うまく立ち回ろうって気もさらさらないように感じたよ」

足立「それは……、もう何もかもどうでもよくなってたからですよ。きっと」

遼太郎「どうでもいい……か。そうだな。長い人生、そういう気持ちになることもある。だが、人生だって捨てたもんじゃねーぞ?」

足立「そう……ですか? ……いや、僕にはもうそういうふうには考えられないですよ」

遼太郎「そいつが虚無感ってヤツだな。そこにつけこまれて、お前は妙な力を植え付けられたんだ」

足立「そうでしょうね。その結果が……コレですから……、もうどうしようも……」

遼太郎「バカヤロウ。そんなもん、心の持ちようだ。俺だって、千里を亡くしてからは長い間心が欠けた状態だったよ」

足立「今は……違うんですか?」

遼太郎「恥ずかしい話だが、悠にガツンと言われちまったな。菜々子のことも、もっと考えてやれって」

足立「……悠君は、みんなに好かれてて……、いいコなんですね」

遼太郎「フッ。でもな、最初は何考えてんのか、ホント分からん奴だったんだぞ? 話ベタっつーか、まあ俺も人のことは言えんが」

足立「僕は……、やっぱり彼に嫉妬してたんでしょうね……」

遼太郎「なら、それを自分にぶつければいい。俺がそうだったように、自分をちゃんと見直せば、足りないものは見えてくる」

足立「……もう、僕には遅いですよ」

遼太郎「足立よ、そんなことはないぞ。……人間、やり直すのに『遅い』って時はないんだ」

足立「…………」

遼太郎「悪いことをしたら償う。それで赦されるのもまた人間だ。お前にもまだ、チャンスはある」

足立「チャンスなんて……ないですよ」

遼太郎「そんなことはない。……もちろん、今回の事件を裁判で立証することは困難だろう。お前に償う気があっても、思うように事は運ばんかもしれん。だがな、償うってのは何も法の裁きだけじゃねぇ。一番大事なのは気持ちだ。そこに気持ちがあれば、また生きる道ってもんはきっと見えてくる!」

足立「……堂島……さん」

 周囲のシャドウたちが、コウリュウによって殲滅される。

 そして、闇の中で流れる二人の行く先に、ポツンと光が見えてきた。

遼太郎「そら、出口が近いぞ。……さ~て、どんな罪状にしてやるかな」

足立「まあ、せいぜい始末書レベルですかね」

 いたずらな笑みを浮かべる足立。

 遼太郎、腕組みして真剣に頭を悩ます。

遼太郎「むう……。こいつは本当に厄介だぞ」

 そして、二人はテレビの世界から脱出していく……。

 

○同・最後の戦闘空間

 悠が絆の力で合体召喚したルシファーが、アメノサギリに最後の一撃を与える。

 眩い光とともに、その巨大な形が壊れるアメノサギリ。

 無数のテレビモニターだった外側が砕け、心臓部とも言える眼だけが残った。

 そして、光に包まれた悠が地面に着地。

悠「……終わった……のか」

 空に浮かぶアメノサギリの眼を見上げる悠。

アメノサギリ「人ノ可能性ヲ、オ前タチハ示シタ。我ガ望ミハ人ノ望ミ。人ガ望ム限リ、私ハイツデモ現レヨウ。……新タナ可能性ノ、子ラヨ」

 ゆっくりと瞼を閉じるアメノサギリ。

 そして、その姿を消していく……。

 

○病院・集中治療室

 ベッドに寝ている菜々子。

 まだ人工呼吸器を付けている状態。

 

○同・廊下

 ペルソナ能力で怪我が回復した遼太郎が、早足で菜々子の病室へ向かう。

 と、一人の看護士とすれ違う。

看護士「堂島さん! 寝てなきゃダメじゃな……、ええっ!?」

 どこも痛くなさげな遼太郎に驚く看護士。

遼太郎「ああ、もう大丈夫だ」

 そう言って立ち去る遼太郎。

看護士「そんな……」

 

○同・集中治療室

 ドアを静かに開け、遼太郎が中に入る。

遼太郎「菜々子……」

 ベッドの横の椅子に座る遼太郎。

 と、菜々子が目を覚ます。

菜々子「……おとう……さん」

遼太郎「ああ。ここにいるぞ」

菜々子「菜々子……、夢、見たよ。……お兄ちゃんたちがね、悪い人とかやっつけて……、みんなを助けてくれたの。……でね、そこにお父さんも……いたよ」

遼太郎「(笑って)そうか……」

 

○同・廊下

 戦いを終えた悠たち特捜隊の面々が、集中治療室に向かって歩く。

 と、集中治療室から遼太郎が出てくる。

悠「おじさん! 足立さんは……」

遼太郎「ああ、大丈夫だ。アイツは俺がきっと更生させる」

 遼太郎の言葉に、ホッと胸を撫で下ろす全員。

遼太郎「で、あのデッカいのはやっつけられたのか?」

悠「はい。……いや、でも消滅したというわけではなさそうです。結局アレは、人の可能性を試していたのかもしれません」

陽介「人が望む限り、また現れる……とか言ってたな」

直斗「アレは、僕たち人間が『視ること』によって何を感じるか、どんな可能性を生み出せるかを観察していたのだと思います。……今回は、僕たちがアレの感知し得る可能性を超えることができたので引き揚げましたが、今後また、人がネガティブに偏っていけば出現するかもしれませんね」

遼太郎「ネガティブ……か。足立は、まさにそういう心の隙をつかれちまったってことなんだろうな……」

 神妙な表情となる全員。

完二「油断したら、人間はシャドウになっちまう……ってことを、アレが教えてくれたのかもしんねースね」

 的を射た言葉を放った完二に、皆の視線が一斉に集まる。

完二「……な、なんスか!?」

りせ「完二のクセに、カッコ良すぎだってば!」

完二「うっせい!」

 和やかに笑い合う全員。

悠「……ところでおじさん、菜々子の具合は?」

遼太郎「ああ、順調に回復してる。……まあ年内は無理だろうが、春までには退院できるだろう」

雪子「良かった……」

 胸に手を当てて安堵する雪子。

千枝「じゃあ、いっちょお祝いに肉でも食べに行きますか!」

陽介「お前はお祝いじゃなくても、いっつもそれじゃねーか」

千枝「うっさいわね!」

 千枝、陽介に肘打ちを食らわす。

陽介「うぐっ! ……お前な」

遼太郎「ハッハッハッハッハッ!!」

 バカ笑いの遼太郎に、皆もつられて笑う。

 と、背後から看護士の声が。

看護士「ちょっとあなたたち! 病院では静かに!」

 ハッとする全員。

遼太郎「すみません……」

 遼太郎を中心に、看護士に頭を下げる全員。

 

○同・集中治療室

 眠っている菜々子。

 その表情には、僅かに笑みが……。

 

○カレンダー画面

 三月二十一日を示す。

 

○八十稲羽駅

 桜の花びらが舞う田舎駅。

 エンディング曲『Never More』をバックにエンドロール。

 笑顔で立っている悠。

 その前には、悠を見送りに来た仲間たちの姿。

陽介「……いよいよだな」

りせ「う……、ああ~~~~ん!」

完二「って、泣くのはえーだろ」

りせ「だって……」

 涙声のりせ。

 つられるように、菜々子も涙目になっていく。

菜々子「……お兄ちゃん。やだ、いなくなっちゃうなんて……」

 菜々子、泣きながら悠にしがみつく。

菜々子「菜々子……、将来お兄ちゃんと結婚する!」

 菜々子の言葉に驚く全員。

悠「(笑顔で)菜々子……」

遼太郎「ハッハッハッ。悠だったら歓迎だ。……言っとくが、未成年の内は許さんぞ」

悠「(菜々子の目線までしゃがんで)泣かないって、約束したろ?」

菜々子「……うん」

 菜々子、遼太郎のもとへと走り、その腰元にしがみつく。

遼太郎「部屋はあのままにしておく。お前も、俺の家族だ」

悠「ありがとうございます。……後のことは、よろしくお願いします」

 悠、そう言って遼太郎に頭を下げる。

 引き締まった表情で、軽く頷く遼太郎。

 そして、悠は続いて仲間の方へ目を移していく。

 陽介、千枝、雪子、完二、りせ、クマ(人間体)、直斗と見渡し、ニッコリ微笑む悠。

クマ「センセー! クマも帰るクマよ。これからはクマがあの場所を守るクマ!」

悠「ああ」

 と、列車到着のアナウンスが聞こえてくる。

陽介「そろそろ……時間、だよな」

悠「ああ。……行こうか!」

 列車に乗り込む悠。

 そして発車する列車。

 皆がホームを走る。

 列車の窓を開けて手を振る悠。

 皆、にこやかに悠を見送る。

 

○列車の中

 悠が窓の外を眺める。

 その表情は実に満足げだ。

 そして、手元には仲間の象徴である眼鏡が……。

 

○八十稲羽駅

 泣きじゃくる菜々子の頭を撫でる遼太郎。

遼太郎「(ありがとうな、悠。俺も、またとない経験をさせてもらったよ。……もうあの力を使うことはないだろうが、これからも俺がこの町を守っていくから、安心してくれ。……問題は、足立の公判なんだがなあ)」

 ちょっぴり苦笑いの遼太郎。

 思わず、菜々子の頭をポンポンと軽く叩く。

菜々子「……どうかしたの? お父さん」

遼太郎「あ、いや。何でもない。……そうだ菜々子。帰りに、ジュネス寄ってくか!」

菜々子「わあい! 菜々子、ジュネス大好き!!」

 涙を拭い、ニッコリ笑う菜々子。

 そして、笑い合う二人……。

 

○サブタイトル

『The rebirth of Adachi is decided on my duty!』

 

○Fin.

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。