「……ねえ、ロヴィ兄?」
「あ?何だよ」
「これは、一体どういうこと?」
登校してきたあたしが教室に入ってすぐに思ったことは、
それだけだった。まわりの友達が挨拶をしてくれたけど、
それに応えるよりも先にこの状況をつくり出したであろう
兄たちに一刻も早く教えてもらいたかった。
「何でFクラスのみんながAクラスに集まってんの?」
「じゃ…いや、ルート先生が提案してきたんだよ。
『Aクラスと合同で授業をやらないか』ってな」
なるほど。ルートさんが、ね。
「Aクラスのみんなからの許可は?」
「貰ってる。一応な」
あくびをしながら答える兄。
絶対面倒だとか思ってるでしょ。
「どうせ、すぐに返事してくれなかっただろうから
図書券あたり用意するとでも言ったんでしょ?」
ロヴィ兄たちの立場上、図書券ぐらいならいくらでも用意できるもんね
学園長もきっとそういうことでこんな無茶なことを了承したんだろうし。
「そういうことだ。
……ほら、お前の友達が手招きしてんぞ。
さっさと行って来い。」
まだ言いたいことはあったけど仕方ない。諦めて、
ロヴィ兄の視線をたどると、愛子が笑顔で手招きをしていた。
きっと、アキ君のことだろうなぁ……
そんなことを思いながら愛子たちのもとへ向かうと、
やっぱり、アキ君の事だった。
「よかったねぇ、愛しのアキ君と一緒に授業が受けられるみたいで♪」
「そういう愛子も、康ちゃんと一緒に授業受けられて良かったね」
「いやいや、夢衣?べ、別にあたしはムッツリーニ君のこと
なんてなんとも思ってないよ」
そんなに必死だと逆に怪しいと思うって。
というか、愛子がムッツリーニ君のことが好きなのはみんな知ってるわよ
この子、そのこと知らないのかしら?
まあ、こんな感じでいつものメンバーで喋っていると、
HRの始まりを知らせるチャイムが鳴り響いた。
どうやら、HRは自分たちのクラスでやるらしく
Fクラスのみんなは渋々自分の教室に帰っていった。
アキ君、お願いだからせめて変な発言だけはしないでよね……
この前の国語のテストで
”焼け石に( )”
何が入るか問われた問題で( )の中に“タコ”って……
( )に入るのは水だよ……。
これの理由を聞いたら、
『最近塩水だけだから、タコが食べたいなと思って……』って言われたし
流石にヒドイ答えが返ってきたから家でご飯食べて行けって言って、
一ヶ月ぐらいウチに泊まらせてご飯食べさせたんだっけ。
それ以来最低でも一日一食は食べてるみたいだし。
よかった……のかな?
「じゃ、ホームルーム始めるぞ~」
まあ、大丈夫……だよね。
アキ君もちゃんと一般常識は分かってるはずだから