やはり俺のVRMMOは間違っている。REMAKE! 作:あぽくりふ
キングクリムゾンしますヽ(・∀・)ノ
「う......おおおおおおおッッッ!!!」
力のあらん限り吼え、キリトが剣を突き出す。
そして全体重が乗った一撃がボスの胸を穿ち―――轟くような爆砕音とともに、その体が砕け散った。同時に目の前で閃く《Congratulation!》の文字。俺は深く息を吐き、地面に膝をついた。
やっと。ようやく。ついに―――
「勝ったぞぉぉぉぉお!!」
クラインが叫び、攻略組全体が勝鬨の声を上げる。ようやく終わったという事実に張り詰めていた緊張の糸がぷつりと切れ、俺は立ち上がる気力も沸かず座っていた。
......3時間。3時間である。
ボスの一撃を死ぬ気で防いでからも戦闘は延々と続き、時折死にかけながらもようやく勝った。......そして、実際死者も出ている。
5本の体力ゲージのうち、ラスト一本になったボスの攻撃によって九人が死んだ。ラスト一本になった途端、ボスがバーサーク状態になったのだ。もはや手当たり次第にソードスキルを乱発するボスは手のつけようがなく、それに巻き込まれた前線部隊のメンバーが瞬く間に九人ポリゴンとなって砕け散った。実に呆気なく死ぬその様子は俺を唖然とさせたが、それでもまだマシな部類だったのだろう。
あの後俺とユキノが
......よく考えたら、もしあれが僅かでもタイミングがずれていれば俺は死者の仲間入りをしていたに違いない。我ながらかなりの博打を打ったものだ。
「はぁ......」
勝った。それ自体は歓迎すべきことだろう。―――だが、代償はあった。
「......リズベットに殺されそうだな」
俺は深々と溜め息を吐き、手の中で半分の長さになってしまった槍を見つめた。
正直、泣きたい。+12まで強化したレア武器がおじゃんである。リズベットにどう罵倒されるのだろうか。多分再生もできないだろうし、キレるだろうことは明白だ。
「―――お疲れのようね」
「ああ......」
背後からかけられた声に、俺は億劫ながらも振り返る。予想通り、そこにいたのはユキノだった。......若干疲労の色が見えるものの、立っていること自体が驚きだ。攻略組の面子のほとんどはへたりこんでいるというのに、大した精神力だ、と俺は密かに感心した。
「最後の最後で壊れたわね、それ」
「ああ......酷使しすぎたな」
......投げたり刺したり色々したが、やはり一番耐久値を削ることになったのは《イージス》だろう。唯一の防御技でもあるあのソードスキルは、真正面から攻撃を受け止めるという性質上かなり耐久値を消耗する。
―――と。そんな俺の考えを読んだのか、ユキノは目を伏せた。
「......そう。なら、私が―――」
「いや、いらん。あれは俺が勝手にやったことだし、そういうのはいいから」
というよりはむしろ、こいつに借りを作りたくないのが大きい。
「......はぁ。安心なさい。別に、もうあなたを脅す気はないわ」
「............は?」
俺は思わず唖然とした。え、こいつどうしちゃったの?
「お前、頭で打ったのか?」
「こっちの世界で頭を打っても現実にはなんら影響はないわよ」
ユキノは溜め息を吐く。
「あなたがどう思っているのか知らないけど......私はこのゲームをクリアするためなら多少強引な手も容認するわ。だけど、恩人を脅迫するほど恩知らずでもないのよ」
「はぁ......」
そのよくわからん価値観に納得しつつ、俺は頷いた。脅さないって言うならそれに越したことはない。毎回毎回こんな戦いをしていては命がいくつあっても足りない。
「脅迫はしなくても勧誘はするのだけれど」
「おい」
俺が半眼を向けると、ユキノは肩をすくめた。
「まあ、どちらにしろあなたも参加せざるを得ないでしょうね」
「はぁ?」
俺は眉をひそめる。すると、ユキノはすっと視線を横へ動かす。それ追えば、そこには勝利と仲間の死に慟哭するキバオウ達がいた。
「あなたは力を証明した。それも攻略組の中でもトップクラスに入る力を、ね。この攻略で少なくないプレイヤーが死んだことであなたの価値はさらに上がっているわ」
「俺はレアアイテムかなんかかよ......」
思わずげんなりする。だが、ユキノはそれに頷いた。
「あながち間違ってはいないかもしれないわね。希少価値、という点では同じようなものでしょう。十中八九派閥争いのようなものに巻き込まれるわね」
「マジかよ......」
うへぇ、と俺を顔をしかめる。というか、派閥争いとかあるのかよ。心底めんどくさい。。
「お前もその派閥とやらに所属してんのかよ?」
「ええ、未来形でね」
「......《
そう問うとユキノはかぶりを振り、そしてこちらを小馬鹿にするのように柳眉を跳ね上げた。若干うざい。
「あら。どうして私が他の派閥に入らないといけないのかしら?普通逆じゃなくて?」
「なんだその超上から目線......ってことは、お前ギルドでも作るのか」
「残念。少し違うわ」
そこで一度切り、ユキノは言い放った。
「―――ギルドを乗っ取るのよ」
「―――うん。お前、頭だいじょぶか?」
すぱーん、と俺の頭に鞘が叩きつけられる。ユキノは今日一番の笑顔を浮かべながら唇を開く。
「輪切りにするわよ?」
「なにそれこわい」
システム的には無理だろうが、マジに斬られそうで怖い。豆腐で防げるだろうか。というか、斬鉄剣って豆腐で防げたりするのかしらん。
「いや、でも常識的に考えて無理だろ。ギルドリーダーとかどうすんだよ」
「......そうね。《ギルドMTD》って知ってるかしら」
「知ってるもなにも、《軍》は一番有名だろう......って、お前まさか」
首肯するユキノを見て、俺は唖然とした。
ギルドMTD。
それは現在最も規模が大きい、というか巨大すぎる組織の名前だ。約3000を越える中層プレイヤーや商業プレイヤーが所属する超巨大ギルドだが、その正式名称は《ギルドMMOトゥデイ》である。なんでも、《MMOトゥデイ》という名前の日本最大のゲーム攻略掲示板の管理人がギルドリーダーを務めているらしい、というのは聞いたことがあった。
―――だが、今やこのギルドは崩壊寸前だったはずだ。
多人数でモンスター狩りを行い、危険を極力減らした上で安定した収入を得てそれを均等に配分する、という理想を抱いて作られた《ギルドMTD》だったが、やはりと言うべきか。案の定得たアイテムの秘匿が横行し、粛正、反発が相次ぎ、もはや崩壊寸前だった。
ああいう組織は、厳密な規律と罰則、そして強力なリーダーシップが必要なのだ。当然と言えば当然であり、なにより《ギルドMTD》―――通称《軍》はあまりにも巨大にすぎた。
「......《軍》を乗っ取るとか、正気の沙汰じゃねえぞ」
《軍》はもはやギルドとかいう規模ではない。3000人の集団組織を運営するのはおそらく至難の業であり、また内部も当然ながら一枚岩ではないだろう。内部抗争を制して《軍》を掌握するなど、不可能に近い。
「もうすでにシンカーさんとはコンタクトを取ってるわ。幹部格の幾人かは取り込んでるし、派閥を形成するのは簡単でしょうね」
「......お前、なにやったんだ?」
「あら。少し頼みごとをしただけよ」
脅迫じゃないですかやだー。
こいつ、実は人の上に立ちたいだけじゃねえの?なんか産まれる時代を間違えてる気がするんだが。戦国時代の人間だぞこいつ。
「私と一緒に来れば、《軍》を乗っ取った暁にはナンバーツーにしてあげるわよ?」
......うん。なんか「世界の半分をやろうではないか」って魔王に言われてる気分だわ。シチュエーション的にあながち間違ってなくないか?
「そうね。じゃあ考え方を変えましょう。私が《軍》を乗っ取ったとしたら、どうなると思う?」
「......少なくとも、俺に優しくない世界になりそうだな」
あかん。第二次世界大戦時のドイツしか思い浮かばない。我がナチスの科学力は世界一ィィィイイイイイ!出来んことはないィィィイイイイイ!
「でしょうね。なら、私を止めるためには一緒に来るしかないわ」
「......これって脅迫じゃないのか?」
「違うわ。勧誘よ」
ユキノは不敵に笑った。
「―――私と共に来て、《軍》を支えなさい。頂点を見せて上げるわよ」
まさに天上天下唯我独尊。傲岸不遜とはこいつのためにある言葉ではないだろうか。
「傲慢だな」
「いいえ、ただの事実よ」
―――だが、嫌いではない。
「......俺はお前が嫌いだよ」
「ええ、それでいいわ。私が間違えた時は、躊躇なく私を斬りなさい。それがあなたの役割よ」
「そうかい」
「―――精々背中に気を付けるんだな、ユキノ」
「私を誰だと思っての発言かしらね?ハチマン」
――――――――――――――――――
・25層フロアボス《
......
......レイド参加プレイヤー数・36名
......死亡者・9名(+5)
......
というわけで、1章終了です。次は内政編に..........なりません。ええ。多分。めいびー。