やはり俺のVRMMOは間違っている。REMAKE!   作:あぽくりふ

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Twitterとやらを始めてみました。マイページに載せてます。よければドゾー。


では2話です。




2話

 

 

「25層、ね」

 

俺はぽつりと呟く。目の前にあるのはアルゴから届いたメールだった。相変わらず仕事が早い。

......なかなか因縁のある層だが、それにしても上がってくるのが早い。恐らくキリトが効率の良いレベリングでガンガン上げているのだろう。

それ自体は歓迎すべきことなのかもしれない。《攻略組》が増えれば、それだけ負担は減るということだ。すなわち、攻略のスピードも上がる。しかし―――

 

「......なんだかなあ」

 

だがそれに問題がないかと問われれば、答えは否だ。レベリングによって急激にレベルが上がったとしても、それは技術が高まるわけではない。このSAOはVRMMOというジャンルのゲームなのだ、一昔前の平面のRPGとは話が違う。

レベルだけでも、技術(プレイヤースキル)だけでも駄目。この二つが合わさって初めて強さに直結するのがVRMMOというジャンルだった。

 

「ぎゅびいいい!」

「ん......もう湧いたのか」

 

そんな事を考えていると、目の前でポリゴンが形成されると同時にカピバラもどきが襲いかかってくる。それを冷静にステップで回避し、地面に突き刺しておいた槍を引き抜いた。

 

「シッ―――」

「ぎゅぶ」

 

もう何千回何万回と繰り返してきた動作で槍を突く。槍は寸分違わずカピバラもどきの額を穿ち、その体はポリゴンへと分解されていった。

......まあ、悪い槍ではない。だがやはり《ブラックライトニング》には劣ると思わざるを得ない。早々にユキノから渡された槍に乗り換えたいのはやまやまだが、今こうやってレベルを上げて筋力値(STR)に振っているのもそれの要求筋力値が馬鹿みたいに高いからだ。もともと敏捷値(AGI)よりのバランスタイプであるため、要求筋力値に届くまであと5はレベルを上げる必要がある。強ければ、やはりそれだけの資格を必要とするのだろうか。

 

「《短槍》もそれなりに上がってきたしな......」

 

《短槍》及び《隠蔽》は使う頻度が多いせいか、もう900に届きつつある。《索敵》と《軽業》もそれなりに上がってきていた。《体術》はまずそこまで使わないため、あまり上がっていない。長柄武器(ポールアーム)オンリーというのもアレだし、そろそろ次のレベル50くらいで補助武器(サブウェポン)用のスキルを取るべきだろうか。......いや、《体術》を伸ばすべきなのか?なら籠手等の武装が必要となってくるが。

 

―――と、そこまで考えた所で異様な音を耳が捉えた。Mobが湧く音でも、草原フィールド特有の草の葉が擦れあう音でもない雑音(ノイズ)。ランダムに思えても規則正しいシステムによって作られた音ではなく、人の手(プレイヤー)によって生み出された音だ。

......PKの前例もある。俺は最悪の展開を一瞬想起し、《索敵》を発動させながら槍を構える。だが隠れる気はなさそうなためPKの可能性は低いだろう。

 

俺は安堵するも、やはり最低限の警戒は必要だと判断して身の丈ほどもある巨大なイネ科植物群の向こうを見据える。そして、やがてそれをかき分けて現れたのは―――

 

「......グール?」

「誰がグールだ」

 

白いワンピースを着た、年端もいかない少女だった。

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

「で、だ。お前何処から来たんだ?」

「わかりません」

「仲間はどうした?というか武器なしでどうやってここまで来たんだ?」

「わかりません」

「......名前は?」

「わかりません」

 

全部わかんねえのかよ。

俺は頬をひきつらせて目の前の少女を見やる。漆のように艶やかな黒髪に人形のように整った美貌。それに加えて丈の短い白いワンピースに無表情を合わせて、何処か退廃的な美しさを醸し出していた。別に俺はロリコンではないので何ともないが、その手の嗜好を持つ輩ならば手を出してもおかしくない。......もう10年ほど年を重ねていれば、間違いなく美女になっているだろう。

 

「......少し落ち着いて思い出せ。名前と、仲間と、何処から来たかだ」

「............うーん、名前ですか」

 

少女がすっとこちらに視線を向ける。だが目が合った直後、俺は悪寒を感じて無意識のうちに一歩下がった。―――あまりにも無機質すぎる視線。それはまるで、その目の向こうにいるのは人ではないようで。

 

「......そうだ、名前だ。冷静になって思い出せ」

 

そんな悪寒を振り払い、少女に言葉を投げ掛ける。とりあえずは現状把握が優先だ。

 

「............ゆい」

「ユイ、か?」

「多分、そんな気がします」

「曖昧だな」

 

俺ははぁ、と息を吐いて立ち上がる。俺はともかく、ろくな防具や武器もないこの少女がまともに戦えるとは思えない。早急にこのエリアから離れる必要がある。

 

「んじゃ、とりあえずここから出るぞ」

「......?」

 

そう言って少女に手を差し伸べる。だが当の本人―――ユイはその手を興味深そうに見るだけで、全く動こうとしない。

 

「......はぁ。さっさと行くぞ」

「ぁ......」

 

再度溜め息を吐いてユイの手を取ると、俺は歩き出す。これからこの少女の仲間探しをしなければならないと考えると、少しばかり憂鬱だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゅびぃ!」

「邪魔だっつーの」

 

わらわらと藪の中から現れるカピバラもどきを槍で貫く。石突きを掬い上げるように腹に叩きこみ、浮いた所で続く斬撃を叩きこむとようやく青い欠片となって砕け散った。

 

「......おおー。凄いですねーグールさん」

「だから俺はグールじゃねえよ」

 

完全な棒読み口調で手を叩くユイ。ここまで来て一つわかったことがあるが、当然と言うべきなのか人を一人庇いながら戦うのは非常に難易度が高い。具体的に言えば、精神的にかなり疲れる。しかもこいつ回避しようともしないし。

 

「んー......じゃあ、グールのおにーさん?」

「どっちにしろグールは外れないんだな......」

 

目か。目が悪いのか。

 

「じゃあロリコンのおにーさんで」

「なにさらっと犯罪者予備軍にしてんだよ」

 

そう返すと、ユイは驚いたかのように目を少し見開いた。ちなみにそれ以外は完全に無表情である。

 

「......驚きですね。今まで私と会った人たちは悉くロリコンになったというのに」

「なんだその妙な自負は」

「私、美少女ですから」

「自分で言ってりゃ世話ねえな!」

 

「まあ、嘘なんですけどねー」と言いながら少女はとことことついてくる。......が、それを見て俺はとある事実に気付いた。

 

「お前さ、なんで履いてないんだ?」

「ニーソを、ですか?」

「そうそう......って違ぇよ!なんでニーソの話になるんだよその前に靴だろうが!」

 

あかん。こいつと話してると色々と崩壊する。

 

「次にお前は『ほんとなんなんだこのロリ』、と言う!」

「ほんとなんなんだこのロリ......はっ!」

 

思わず釣られてしまった。というか、

 

「なんでお前そのネタ知ってんの?」

「はて。なんででしょうね」

 

こてん、とユイは首を傾げた。これ、結構昔の漫画のネタなんだが......。それを読んでる俺も大概だけども。

 

「じゃあ、おにーさんの靴下さい」

「いや、明らかにサイズ合わねえだろ。お前が履けるような靴持ってねえし」

「......ちっ」

「ねえ、今お前舌打ちした?舌打ちしたよね?」

「いえいえ、別に『このロリコン使えねえな』とか思ってませんよ」

「絶対思ってるだろ。あと俺はロリコンじゃねえからな」

「ダウトです。おにーさんの腐りきった視線からはてーそーの危機を感じます」

「......俺、お前になんかしたっけ?なんで初対面のロリにそんなこと言われなきゃいけないの?」

「いえ、その方が嬉しいのかなと」

「Mじゃねえよ!?」

 

俺は奇妙な疲労感とともに肩を落とす。ほんとなんなんだコイツ。最近の小学生はみんなコイツみたいなのか?......なにそれこわい。

 

「まあおにーさんがMだろうがNだろうがどうでもよくてですね」

「Nってなんだよ」

人に非ず(Not human)

「どんだけ俺をグール扱いしたいんだよ!」

 

駄目だ。いちいちツッコミいれてたらキリがない。

 

「......で、だ。お前、本当に仲間のこととか覚えてないのか?」

「はい。完全に完璧に全壁に記憶が一切合切ありません。気が付いたらあの森にいて、三歩歩いた先にグールがいました」

「俺のことかよ......にしても、記憶喪失ねえ」

 

物理的に傷害を受けて記憶喪失になるなら聞いたことがあるが、精神的なショックで記憶喪失というのもあるのだろうか。

 

「......というか、お前の喋りって全然ガキらしくないよな」

 

同年代を相手している気すらする。するとそれを聞いたユイは馬鹿にするように肩をすくめた。無表情で。

 

「そんなこと言われましても......今時の子供はこんなものですよ」

「マジで?」

「嘘です」

「............」

 

思わず殴りたくなった俺はおかしくないと思う。

 

「それよりおにーさん、緊急事態です」

「?」

 

いつになく真剣な顔をして、ユイは言った。

 

「おなかすきました」

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

「なんですかこれ、ちょー美味です」

「うん、わかったから落ち着いて食え」

 

ラーメンにがっつく少女の横で溜め息を吐く。店主のNPCが厳めしい顔付きで麺を茹でるのを見ながら、俺は疑問を口にした。

 

「お前さ......七味かけすぎじゃねえか?」

「そうですかね?」

 

麻婆拉麺(マーボーラーメン)とかいうゲテモノに一面七味まみれになるまでかけた赤い物体X。それを平然と啜るユイは間違いなく味覚がおかしい。

 

「それ、辛くねえの?」

「適度に辛味が効いてて美味しいです」

 

何処が適度だ。

その言葉を飲み込み、俺は自分のラーメンを啜る。まあ人には好みというものがあるし、現実とは違って肉体面でフィードバックがこないVRならばゲテモノに手を出すのもありなのかもしれない。......だとしても、さすがに辛すぎだと思うが。タイトルをもしつけるとするならば、『煉獄~狂気と苦痛の狭間で~』とか似合いそうな気がする。

 

「......あのさ。一つ聞きたいことがあるんだが、いいか?」

「どうぞー。ラーメン奢ってもらいましたし、なんでも一つ答えてあげましょう」

 

......それはもはやラーメンじゃない気がするが、まあいい。

ちらりと左を見れば、そこにいるのは白いワンピースを着た美少女。そんな彼女を見ながら、俺は口をは開いた。

 

「―――お前さ。なんでカーソルが表示されないんだ?」

 

全身の感覚を尖らせ、少女の反応の全てを逃さないよう凝視する。

―――そうして数瞬の間の後、ユイは箸を置いて微笑した。

 

「あれ、わかってたんですね。てっきり気付いてないものかと」

「アホか。一番最初に確認するとこだろうが」

 

案外頭が回るんですね、と少女は呟く。聞こえてんぞ。

 

「......ふむ。申し訳ありませんが、それの質問に関しては今は(・・)答えられません」

「おい」

「―――ですから、少しアドバイスしてあげましょう」

 

なに?と俺は眉をひそめた。

 

「本来は肩入れする気はなかったんですけどねえ......まあよくして貰いましたし、恩を返すということで」

「おま、何を言って―――」

「既に種はおにーさんの中にあります。未だ発芽に至っていないのはおにーさんの願いが不確定だから。願望が定まれば、自然と芽吹くはずです」

「はぁ......?」

 

何を言っているのかさっぱりわからない。そんな俺を見て、ユイはくすりと笑った。

 

「いずれわかりますよ。それは謂わば鏡、所有者の渇望を忠実に映す醜悪な鏡像。おにーさんの望む『無限』がそのまま反映されるでしょう」

「頼む。日本語で喋ってくれ」

「そのままの意味です。......ああ、あと一つありました」

 

ぽん、とユイが手を打つ。

 

「PoH、でしたっけ。あの人の動向には注意したほうがいいですね」

「なっ......」

「今は黒の剣士の近くにいるようですよ」

 

そう言うが早いか、ユイはカウンターの席から飛び降りる。そのまますたすたと歩き去る背中を慌てて追った。

 

「おい、待っ......」

「じゃ、また何処かで会いましょう。願わくばおにーさんが生き残らんことを」

 

そう囁くように言うと同時に、視界が明滅するようにぶれる。そして気付けばユイの姿はかき消えていた。

俺は一瞬唖然としたものの、すぐに店を出て周囲を見回す。だがあの少女の姿はどこにも見当たらない。謎の少女は意味のわからない言葉を残して、影のように消え去っていた。

 

「.........一体なんだってんだよ」

 

通りすがりのプレイヤー達の好奇の視線を受けながら、俺は茫然と呟くのだった。

 

 

 




最近リメイク前に比べて随分とガイルものが増えたような気がします。嬉しいような寂しいような.....。
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