やはり俺のVRMMOは間違っている。REMAKE!   作:あぽくりふ

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2話 そして彼は仲間を得る。

 

 

 

 

SAOがデスゲームと化して、三日ほど経過した。

 

「はぁ......」

 

俺は溜め息を吐きながら《ストライク》を放つ。たった二日間で数百回は放ったソードスキルは、俺が脳裏に描いた未来像と寸分の違いもなく空を貫きながら進み、《フレンジーボア》を木っ端微塵に砕いた。

もはや恒例となっている「ぷぎー」という声を聞きながら、俺はひゅんひゅんと槍を振り払う。

 

「ここもそろそろ限界か......」

 

現在の俺のレベルは7。さすがにこれ以上、Lv1の《フレンジーボア》でレベル上げをするには限界だろう。むしろここまで上がったこと自体が驚きだった。

 

―――茅場晶彦によって、SAOがデスゲームとなったことを告知されて30分ほどで、俺は行動を開始した。さすがに、あの事実を受け入れ、これからどう行動するのかに半刻ほどかかったが―――その後、俺がとった行動は迅速だった。

そう―――1日かけて、《フレンジーボア》の行動パターン、弱点を完璧に暗記したのだ。実際には《フレンジーボア》だけでなくよくわからん蛇っぽいのや兎に角が生えたやつも検証したのだが。結局は《フレンジーボア》が一番でかいし楽だ、ということで残る二日間はひたすらイノシシ殺すマンになったのである。

 

―――《デスゲーム》。それはすなわちゲームオーバー=死を意味する。ならば、警戒はするにこしたことはない。もはやなにひとつ信じられないこの世界では―――石橋を叩いて渡るのではなく、石橋を砕いてぶっ壊してもう一度作り直す、くらいの気概でなければ足りない。

もはやこの世界はただのゲームではないのだ。できる警戒すらせずに死んだ......なんてアホらしすぎる。笑い話にもならない。

 

「............くそったれ」

 

無謀にも、レベルを上げずに突貫すれば死ぬ。だからと言って、過剰に臆病になって、《はじまりの街》に引き込もっていたのでは―――Lv1では、いざという時に弱すぎる。

そもそも街が安全だ、という保証はどこにもないのだ。茅場晶彦は『この世界をコントロールできる唯一の人間』だ。故に、奴の気紛れひとつでこの安全神話―――《アンチクリミナルコード有効圏内》は消滅しかねない。そうなればMobが侵入してきた際に、この街に引き込もっている奴等は軒並み殺されるだけだろう。

もはや―――信じられるものなど、自分以外に存在しないのだ。

 

「......行くか」

 

早々に次の街へ行く決断をした俺は、一度《はじまりの街》に戻るべきか―――と考えるが、別に戻ってもメリットがないことに気付いた。

食料―――ただし味もなにもない薄っぺらいパン―――もあるのだ。後はやたらアイテムストレージに詰まっている《ボアの肉》を焼けば充分だろう。もちろん火打石は購入済みだ。

そうして俺は槍を片手に、次の街へと歩き始めるのだった。

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

《はじまりの街》を出て、3時間ほど経っただろうか。

 

「ふむ」

「ピギィ!?」

 

俺はニワトリっぽいMobに向かって、ひたすら《ボアの小牙》を投げるという、地味な作業を行っていた。

......端から見ればニワトリになにかを投げて遊んでいる変態だが、俺だってやりたくてやってるわけではない。―――これは、投剣スキルの訓練も兼ねて行っている、《検証》である。やっていること自体は簡単で、ひたすら地味だ。

ただ《ボアの小牙》を投げてニワトリに当て、それによって減少したHPの幅を測定しているだけ。だが、これによって《シングルシュート》の練習ができるのに加えてMobの弱点を探ることもできる―――つまり一石二鳥であった。

 

「おーい」

 

―――2投目。外れ。戦闘態勢(アクティブ)になったニワトリが予想以上に速い。

 

「おーい」

 

―――3投目。命中。翼に当たったがあまり削れていない。

 

「おい......」

 

―――4投目。命中。鶏冠(トサカ)に当たったが、かなり削れている。あ、ピヨった。トサカが弱点なのか......ふむ。

 

「このオイラを無視しようとはいい度胸だナ......!」

 

―――5投目......

 

「させるか!」

「おぉう!?」

 

いきなり目の前に短剣(ダガー)が突き刺さり、俺は仰天して飛び上がる。アイエエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?

驚愕しながら振り向くと、そこにいたのは―――ローブを纏った、俺より頭1つか2つは低いプレイヤーだった。

 

「......どちら様で?」

 

俺は警戒しつつ槍を手に取る。この俺の背後を取るとは......

 

「いや、何回か声かけたんだけどナ」

「ナチュラルに心読んでんじゃねえよ。サトリかテメェは」

 

呆れたように肩をすくめるローブにそう返し、俺は内心でいかんな、と自分を戒めた。声かけられても気付かないとか、俺どんだけニワトリ狩りに夢中になってたんだよ。

 

「......で、何の用だ?」

「いや、ちょっと助言してやろうと思ってナ」

 

す、とローブのプレイヤーは、俺のポーチを指す。

―――正確には、ポーチから少しはみ出ている、メモ帳を。

 

「それ、意味ないぞ?」

「はい?」

 

俺は目をぱちくりさせた。何言ってんだこいつ。

 

「いや、さっきオニーサンは投剣使ってたケド、あれ《貫通属性》だから、《斬撃属性》とは別物だゼ?その槍でアレを突くんなら別だけどナ」

「なん......だと......?」

 

俺は思わずがっくりと項垂れた。え、なにそれ知らないんですけど。貫通と斬撃?じゃあ打撃属性とかもあんのかよ。

―――そうして俺がorzのポーズをしていると、ローブが慌てたように声をかけてきた。

 

「い、いや、別にオニーサンの努力もあながち無駄じゃないんじゃないか?弱点自体は同じこともよくあるし......」

 

うん、そうか。そうだよな。無駄ではないよな。そう信じないと俺の中の何かが決壊しそう。そう内心で呟いていると―――ふと、ローブのプレイヤーは呟いた。

 

「......これ、オニーサンが作ったのか?」

「あん?......ああ」

 

膝を払いながら立ち上がると、ローブはしげしげと俺のメモ帳を見つめていた。

いつのまに......と思ったが、どうやら俺がorzポーズをした時に落ちたようだった。メモ帳をぺらぺらと捲りながら、ローブは「ほう」と呟く。

 

「ふぅン......ねえ、オニーサンさ。オイラに雇われない?」

「はあ?」

 

突然よくわからないことを言い出したローブ。俺が怪訝な顔をしていると、目の前のプレイヤーは、ぱさり、とローブを外す。

 

「オイラはアルゴ。《鼠》のアルゴだ」

 

今後ともよろしく。

 

そう言って―――頬に鼠の髭のようなペイントをした、金髪の少女(・・)はニッと笑うのだった。

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

「で、雇うってのはどういうことだ?」

「ンー、オイラって、βテスターだったんだよネ」

 

少女―――アルゴは先導するように前を歩きながらそう言った。だろうな、と俺は頷く。―――そうでなければ、Mobの湧きにくい道など知っているはずもない。

 

「よく覚えてるな」

「オイラって生まれつき暗記が得意なんだよ。一度覚えた道は、だいたい忘れない」

 

ひょいひょいと森の中を進む少女―――アルゴを追いながら、俺は周囲を見回す。時折兎のようなMobが遠目に見える他は、全くMobが見当たらない。

最初「安全な道を教えてやンよ」と言われたときは半信半疑だったが―――本当に安全なようだ。

 

「ほら、アレが次の村さ」

「おお......」

 

家々が見えてきたところで、アルゴはスピードを落とした。俺は同じように速度を落としながらも、槍を握り締めた。

 

「オニーサンってさ、かなり臆病だよね」

 

その様子を見ていたのか、呆れたようにアルゴが呟いた。

 

「うるせえ。これはデスゲームだぞ?できる警戒はしとくにこしたことはない」

 

そう返す一方で、こんな細かいところまで気付くとはな―――と、俺は感心すると同時に警戒を一段階引き上げる。

 

「じゃあ、なんでオイラにのこのこついてきたのさ?」

「リスクとリターンを比べた結果だ。もしお前が俺を罠に掛けようとしていたとしても、Lv7もありゃ逃走くらいはできる」

 

そう言うと、アルゴは溜め息を吐きながら「臆病だな」と呟いた。うるせえ。

 

「......で、雇うっつーのはどういうことだ?」

 

俺は脱線しかけていた話を戻す。

 

「あー、何処まで話したっけ......そうそう、オイラ、情報屋をやろうって考えているんだ」

「ほう」

 

情報屋―――確かに、βテスターとしての経験を生かすのだとすれば悪くない選択肢だ。むしろ賢いとすら言えるだろう。

 

「でも、さすがに一人でやるのは手が回りそうになくてネ......そこでオニーサンに目を付けたんだヨ」

「はあ......なんで俺なんだ?」

 

そう俺が尋ねると、アルゴは振り返ってニッと笑い―――「あのメモ帳さ」と答えた。

 

「すごく読みやすかったからね、アレ。絵も上手かったし。だから、オニーサンにはオイラの集めた情報を纏めて欲しいンだ」

「......そうか」

 

俺が肩をすくめると、アルゴは「あ、あとは......」と続ける。

 

「用心棒的な役割かナ。情報屋って職業柄色々言われそうだし、ネ。だけど情報屋の相棒がバカだとダメだろ?」

 

成る程、と俺は頷いた。ある程度強そうで、さらにある程度頭が回る奴を探していたというわけか。

......情報屋の用心棒。確かに、悪くない。現時点におけるベストかもしれない。

 

「......報酬は?」

「儲けの半分。いつやめるかも自由。どう?」

 

俺はどうだろうか、と思考回路を回転させる。―――こいつは、信じられるのか?

 

「............」

 

いや―――そうじゃない。「信じられるか?」と考え始めれば、そもそも全てが信じられなくなる。そうなれば堂々巡りだ。―――信じる必要性など、ないのだ。

 

「―――いいだろう。お前の用心棒、受けてやる」

「契約成立だナ」

 

俺とアルゴは薄く笑いあった。

―――信じる必要性などない。半信半疑でいいのだ。そもそも「信じる」という行為そのものが、自分勝手で利己的で、一方的に依存する行為なのだ。全てを信じる必要などない。お互いの利益のために利用しあうだけの関係。

―――それで、充分だ。

 

 

 

「......ところで、オニーサンの名前ってなんて言うんだ?」

「本当に今更だな......ハチマンだよ」

「ハチマン......ハチマン......うん、ハッチでいいか。よし、行くぞハッチ!」

「みなしごハッチみてえに呼ぶんじゃねえよ......」

 

そんなこんなで―――俺は利用し、利用されるような関係を。

 

完全には信じられないが―――ある程度なら信用してもいい、《仲間》を得ることになるのだった。

 

 

 

 






今回はアルゴも関わってきます。ストーリーも色々違うのよ。
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