やはり俺のVRMMOは間違っている。REMAKE!   作:あぽくりふ

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8話 どうしようもなく彼は巻き込まれる。

 

 

 

「―――フッ!」

「ブモ......」

 

放たれる一閃が半人半牛(ミノタウロス)の喉を食い破り、そのHPを消し飛ばす。だがそれで終わらない。そのままの勢いで後方に伸びた短槍は、俺の背後にいたトーラス族の胴に食い込む。そしてそのまま止まる―――かと思いきや、一瞬の拮抗の直後、その穂先はあっさりと胴を切り裂き、《レッサートーラス・ストライカー》は怯んだように一歩下がる。

―――だがまあ、そんな隙を見逃すほど、俺はノロマではない。体重を乗せ、青いライトエフェクトを纏った神速の突きがトーラス族の胸をぶち抜き、その体をポリゴンへと還した。

 

「凄い......」

「ヒュゥ。やるネ、ハッチ」

「......早くしろ。戦闘はできるだけ回避するんだろうが」

 

短槍を引き戻してそう呟くが早いか、俺は《隠蔽》を発動し、先の通路向けて駆け出した。アルゴも《隠蔽》を発動し、《隠蔽》スキルをとってないナタク―――もといネズハは俺達を必死に追走する。

 

「―――チッ。右前方に1、このまま無視して突っ切るぞ」

 

俺の指示が伝わったのか、アルゴは軽く首肯して返してくる。―――あと何階登ればいいのだろうか。というか、まずどうしてこんな状況になったのか。

 

 

―――そう、思えばこの状況の原因は―――

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

「......ふぁ」

 

俺は思わず欠伸をし、眠気を振り払うようにぷるぷると首を振る。武器の強化―――《ブロードランス》の後継武器であり、この階層で入手できる準レア武器である《アイアンランス》を+6にまで強化したことだし、もうやることがほぼない。情報の整理は昨日アルゴと終えたし、レベリングしようにも今いる2層では、レベル17に達した俺にとっては雀の涙レベルの経験値である。それならば、今攻略組が必死こいてフロアボスを倒しているのを待って、3層に突入して悠々とレベリングしたほうが良い。......まあ、新しい層に入ったら情報収集だけで滅茶苦茶働くことになるんだが。

 

......よく考えたら、このSAOに入ってから―――約1ヶ月と一週間が経過したが、今ほどのんびりしていた時はなかった気がする。今までは良くも悪くも常にピリピリしており、一瞬たりとも気を抜いた時はなかった。

つまり、俺もこの異常な状況に慣れつつあるのだろう。人間は慣れる生き物だ。非日常が連続すれば、それはいつしか日常になる。俺もこのデスゲームに適合しつつある、ということだろうか。

 

......まあ、だからと言って、油断も慢心もする気は毛頭ない。気を緩めれば死ぬのだ。この状況では、いつ何が起きてもおかしくはない。あらゆる状況を想定しろ、とは言わないが―――最悪の事態に対する心構えはするべきだ。

現実はいつだって、最悪の想像のさらに下を行くのだから。

 

「............」

 

+6にまで強化し、美しい鉄の輝きを放つ穂先を指でなぞりながら、俺はそんなことを考える。

......+6の全てを正確さ(アキュラシー)に振ったこの短槍は、ほぼ毎回クリティカルを発生させる。両手武器でもあるが故にそもそもの攻撃力がそこらの片手剣より高いため、遠心力をかけた上でソードスキルを使用し、クリティカルが発生すれば、一撃でMobの体力を消し飛ばすことが可能だろう。

 

短槍は両手武器でありながら、ある程度の筋力値さえあれば片手でも振るうことができる、かなり利便性が高い武器だ。薙刀のように、遠心力を乗せて振るうだけでも十分に威力は出る。石突きも利用した打撃攻撃も加えればその攻撃速度は単純計算で二倍。

超至近距離においては手の打ちようがない、という弱点はあるものの―――そこはレベル20に達した時、エクストラスキルである《体術》を取得して熟練度を上げれば良い。そこまで隙のないスキル構成(ビルド)だ。

 

―――と。そこで、俺はスキルModのことを思い出した。そろそろ《索敵》スキルが熟練度100に達するため、次のModで何を取るか考えなければならない。

スキルMod、つまりスキルModify(派生機能)はあらゆるスキルに存在するものだ。スキルがある一定の熟練度―――つまり50や100といったキリの良い値に達した際に現れるのがスキルModであり、つまりスキルの強化オプションのようなものだ。

実を言えばこのスキルModの選択肢は無数にあり、俺が《索敵》の熟練度が50に達した時には滅茶苦茶悩んだものだ。結局は《索敵距離ボーナス》というパッシブModを選択したのだが―――中には《応用能力・追跡》という非常に便利そうなアクティブModもあった。今回はどうするのかをそろそろ決めなければならない。

ソロでやっていく以上はやはりまた《索敵距離ボーナス》が良いのではないか―――いやMobをソロ狩りするには《同時索敵数ボーナス》が良いのではないか、など非常に悩むことになりそうなのだが......まあ、そうやって『自分だけのスキル』を作っていくのが楽しいのかもしれない。

 

「......はぁ」

 

これがデスゲームじゃなくて普通のゲームだったら、楽しめたのかもしれないけどなあ......と、俺は溜め息を吐く。本当に、茅場は何が目的なのか。

 

―――そんなことを考えていると、突如として部屋のドアが開け放たれる。俺は思わず目をぱちくりさせた。目の前にいたのは、ぜいぜいと肩で息をするアルゴだった。

 

「......いや、ノックくらいはしようぜ」

「そんな場合じゃないんだヨ!」

 

何やら尋常でない様子でアルゴが怒鳴り、一枚のスクロールを投げつけてくる。反射的にそれを掴み取った俺は、するするとそれを開いた。

 

「......?」

 

そこに書いてあったのは、とあるクエストとそれによって得られる情報。だが、これは―――

 

「......載せてねえぞ、こんな情報」

「だからヤバいんだヨ、さっさと行くぞハッチ!」

 

―――それは、フロアボスである......いや、であったはずの《バラン・ザ・ジェネラルトーラス》ではなく。真のボスが、トーラス族の王である《アステリオス・ザ・トーラスキング》であるというものだった。つまり、βテスト時のフロアボスはただの雑魚Mobに過ぎない、ということだ。

 

......成る程、これはヤバい。油断し、消耗したプレイヤー達が蹂躙されるのが想像出来てしまった。

 

「おま、なんでこんな大事なクエストほったらかしにしてたんだよ?」

「知らねえヨ!あんな山奥のババアがクエストNPCだなんて、オイラだってわからないに決まってんだロ!」

 

とりあえず、どうにかしてプレイヤー達にこれを伝えなければならない。

俺達は怒鳴りあいながら、宿屋を飛び出して《迷宮区》へと走り出すのだった。

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

......あの後、俺達は迷宮区の前で立ち往生していたネズハを発見し、なんやかんやでネズハも一緒についてきていた。なんでもキリト達に諭され、《投剣》と《体術》を取得したことでチャクラムを用いた後衛職になるつもりらしい。なんともお涙頂戴な話である。

そして現在、俺達はボス部屋を目指して《迷宮区》を爆走しているところだった。

幸いにもボス部屋の位置はわかっているため、後は最速で迷宮区を突っ走るだけだ。......だけなのだが。

 

「......くそ」

 

俺は悪態を吐き、ネズハ目掛けて襲いかからんとしているトーラス族の脛を、《アイアンランス+6》で貫く。ミノタウロスもどきは短く悲鳴を発し、その隙にネズハは離脱。上階へと繋がる階段へと走っていく。

 

―――鍛冶屋(マスタースミス)だから、というのもあるんだろうが、ネズハが遅いのだ。レベルは10あるが、敏捷値では俺達と大きく差がある。仕方ないと言えば仕方ないのだろうが、俺とアルゴだけのほうが速いであろうことは間違いない。

 

「......あと少しダ!この上で右に行った突き当たりがボス部屋だヨ!」

「ああ、わかってる」

「......すいません」

 

謝ってくるネズハ。俺はふり下ろされる大斧を回避しながら舌打ちする。ちくしょう、戦闘音に引かれて他の牛野郎まで来やがった。

 

「......くそ。おいアルゴ、ネズハ。ここは俺に任せて先に行け」

「ハッチ、それ死亡フラグ」

「うるせえ、すぐに追い付くから早く行け!」

 

アルゴに怒鳴って返し、俺はこれも死亡フラグだったことに気付く。ネズハが息を飲む音が聞こえてきたが、知ったことではない。

 

......トーラス族が3体。体力もなかなか多いこいつらを3体同時に相手取るにはなかなか辛いものがあるが、今の状況で四の五の言ってる場合ではない。

 

「......はっ。死亡フラグは、あえて建てて生存フラグだろうが」

 

―――もとより、死ぬ気など毛頭ない。3体同時はかなりリスキーだが、離脱することもできない今は戦闘は不可避。闘うしかない。

......だが、これはむしろ良い機会ではないか。俺自身の性能を確かめるチャンスだ。

 

「ブルモォオオ!」

 

―――感覚よ、尖れ。

 

先手を取るのは此方だ。レベル17の敏捷値を生かし、牛3体が連携を取る前に踏み込む。同時に左下から右上へ一閃。腕の筋繊維を切り裂く。

 

「シッ―――」

 

怒号と共に振り下ろされた斧をステップで回避。衝撃で体が揺れるが、無視して跳躍。伸びきった腕を足場にして俺はさらに跳躍し―――そして空中で短槍スキル基本技《ストライク》を放つ。基本技故に単純な突きは、空を裂いて突き進み、正確さ(アキュラシー)に+6振られた強靭な鉄の槍は、その性能に違わず正確にレッサートーラスの眼球を穿ち、眼窩を貫いて脳へと到達。的確に弱点を貫かれたトーラスは、断末魔の声すらなく爆発。ポリゴンの嵐の中、俺は迷宮区の床に着地。

 

「ブモォオオオォオオ!」

 

そのタイミングを待っていたのか、横からスイングするように斧が振るわれる。賢いAIだな―――と思いながらも、俺は再跳躍。そしてそれすらも見越していたかのように、三匹目のトーラス族が、空中の俺向けて斧を振り下ろし―――

 

「まあ、そう来るのはわかってたさ」

「ブモォ!?」

 

空中で再び放たれた《ストライク》が、斧の刃と持ち手の間の部位に衝突し、斧が砕け散った。半人半牛のモンスターは驚愕の声を漏らす。

 

―――武器破壊(アームズブレイク)。本来は滅多におこらない現象だが、トーラス族の持つ斧が揃って粗雑なものであり、この短槍が正確さ(アキュラシー)に+6も振ってあったが故に起こせたものだ。いちかばちかの賭けに等しいが、どちらにせよあれを回避する方法などなかったのだから仕方がない。

 

「フッ―――!」

 

二度目の着地を果たし、俺は先程横に斧をスイングしてきたミノタウロスへと突進する。虚を突かれて一瞬硬直した隙を見逃さず、短槍二連撃ソードスキル《ストライク・ダブル》で腹を貫く。がくっと四割削れたトーラスの体力見ながら俺はステップでトーラスの攻撃を回避していく。

 

「......チッ」

 

と、そこに武器をなくしたトーラスが突っ込んでくる。武器を失ってもなお、トーラス族には「角」という武器がある。多くの牛モンスターと同じように、その突進技はかなり厄介だ。

―――だが、その突進技の性質上、今の状況で可能なことがある。

それは―――

 

「ブモォオオ!?」

「ブモォ!?」

 

『同士討ち』。素手のトーラスがもう一匹のトーラスに突っ込むのを見ながら、俺は薄く笑う。所詮は家畜、というわけか。

 

「......そのまま牛同士仲良くしとけ」

 

斧を持つトーラスの影で、俺はそう呟いて槍を構える。使用するのは短槍上方向突進技《チャージランス》。仲間同士で組み合っている背後から斧持ちのトーラスの心臓を貫き、運が良かったのかさらに―――突進で頭を突っ込んでいたトーラスの頭蓋を貫通した。

 

「「ブモォ......」」

 

同じような断末魔の声を漏らし、トーラス達がポリゴンに還る。俺はパンパンと防具を払うが、無傷。ほぼノーダメージでトーラス族3体をほふることが出来ていた。

......これはパーティーならばごく普通にできることなのかもしれない。だが、ソロでここまでやれたことは大きな自信になる。この自信が過信にならないといいが、ある程度なら戦えることは確認できた。

 

「......よし、行くか」

 

そうして俺はアルゴ達を追うべく、急ぎ走り出すのだった。

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