これは再投稿です
《侵入完了、ECMにより外部との通信が遮断されました》
Spiralで開けた穴に飛び込んだ瞬間、ボイスはそう告げる。
そこまで穴は深くないみたいだ、三秒ほど経つと着地が終わっていた
《ジェネレーターの反応、近。探し出して破壊してください》
抜けれる道は無いため、ブーストでその場に浮遊し再度Spiralで真下をくり抜くように丸い穴を開ける、空間は下に広がっているものの行く気にはなれず暫く立ち止まった。……流石に疲労が出てきたみたいだ
しかしジェネレーターを破壊しなければこの戦車は止まらない、敵だから壊すのは今までやってきた事じゃないか……。
ブーストを解除し、重力に任せて落下を続ける、この穴は深く、落下が終わらない。
ズシッと衝撃が伝わり周囲を見回す、かなり広い、明かりだって付いており、なにかの部屋である事は間違いなかった
《敵性反応確認、機数1。該当データが存在します》
敵性反応か、こんな所に敵が?
すぐに該当データの表示を頼んでレーダーを見る、……暇もなく、データが表示されていた。機械音声はその文を読み上げる
《敵「CB」グランメトル、主な戦闘スタイルが定まっておらず、任務により武装を変更する臨機応変なタイプです》
CBだと?何故ここに?
《通信がはいっています》
すぐに回線を繋ぐ、外部との通信は切れていても内部同士でなら通信できるみたいだ
『そのCB……ディマジオ社の物だな』
まるで感情がこもっていない男性の声が耳に入る。真正面の通路を壊してこの空間に入ってきたのは黒と緑をベースカラーに構成された重装甲タイプの機体。装甲はそのほとんどが四角いもので構成されており、ヘッドパーツのカメラは複眼、別々の動きをする目が白く光り、不気味さを増している
『我々クラフトラゼ社にとって貴様は邪魔だ、大人しくそのCBごと死ね』
クラフトラゼ社という言葉に耳を疑いつつSpiralを構える、敵はヘヴィマシンガンとグレネードを所持しているようだ、迂闊に近寄ると自機が一瞬で溶けるだろう、確実に。
先手はグランメトルからだ、響いた銃声が戦いの幕を開ける。ヘヴィマシンガンが繰り出す弾幕はとてもじゃないが全弾回避出来るものではない、ブーストを使って最低限の弾は回避したがそれでもかなりのダメージが入った、主に脚部の損傷が酷い、そろそろ運動性能が低下する頃か。
ふと弾幕が無くなったのに気付いてブーストを解除する、あれだけの弾を撃ったんだ、間違いなく「クールタイム」に入っているだろう……そう判断してグランメトルに向かい脚を動かす、グラジオラスはこれでも軽装機、重装甲機体に遅れをとるなんてことは絶対にありえない
『能無しが』
予想通りグレネードを構えてくる、銃口を向ければ怯むとでも思ったのか一向に撃つ気配は無い。そりゃそうだろう、不用意に撃ってクールタイムが発生したら近づいてきた相手に対して対処が不可能になるからだ、グレネードなんてのは特に数発撃っただけでクールタイムが必要になる。
正直かなり危険な賭けだった、相手が引き金を引いて2、3発グレネードを貰うと死んでいた事だろう
《Spiral射程距離内です》
グレネードを持っている腕に向けて、狂ったように熱くなった刃を振り落とす。が、どうも一筋縄では行かない、装甲を切り裂けても切断が出来ないのだ、かなり硬い
『見くびっていたな、そんな物で切断できるなどと』
グランメトルがヘヴィマシンガンの銃口を右腕に押し付けた、クールタイムはもう終わっていたか。
離れようにもSpiralが敵機にくい込んでいるため、少しも動く事ができない。ヘヴィマシンガンが薬莢を出して弾の存在を機体に伝える、6秒ほど立っただろうか、右腕と共にSpiralを失ったグラジオラスが敵機の目の前に立っていた
《右腕消滅、武装無し》
状況は絶望的、きっとこのままではヘヴィマシンガンとグレネードで溶ける……いや、させない。
切断された右腕は尚もSpiralと共に敵機の肩へくい込んでいた、痛々しい右腕を掴んで一瞬だけ最大ブーストを吹かす。よし、少し動いた
『正気か……?』
もちろん正気だ、何が何でもこの腕を引き抜く
『悪あがきか、すぐ楽にしてやる』
やってみろ。
と、意気込んだのはいいがかなりヤバイ、ついに銃口がメインカメラに向けられた。
これはどっちの銃口だ?グレネードか、ヘヴィマシンガンか……そういえば敵機はグレネードの方をなかなか使わない、Spiralで装甲は貫通した、もしかしたらグレネードを持っている左腕の内部は切断されているのでは?
期待するだけ無駄かもしれないが頭に入れておく、撃たれるのならどちらでも同じだ
《脚部、運動性能低下》
こんな時に面倒な。
しかしあと少しだ、ブースターが焼け付いているのだろうか、焦げた匂いがしてきた。
低い金属音が耳に入り、機体が後方に倒れる。
左手にはグラジオラスの腕とSpiralが握られており、カメラは右半分が見えない。おそらくカメラを撃たれたのだろう
《敵機グランメトル、ロックオン完了》
右腕の手首を握りつぶしてSpiralの刃部だけを左手に持つ
こちらは機体が仰向けになっている状態、相手はこちらに銃口を向けてきている。1秒以内に行動しないとグラジオラスの装甲は貫通され、数秒もしないうちに死んでしまうだろう、だから今この一瞬のうちに仕留める
ロックオンしているのは頭部、動力を左手に集中し。
Spiralを全力で投げた
『ぐあっ!?』
ヒット、複眼の全てを潰せたわけではないが怯んだのなら上々、自機をすぐに起き上がらせて姿勢を崩したグランメトルに蹴りを入れる、転倒したグランメトルからSpiralを引き抜き、グレネードを奪って追撃をかます。
まずは頭部に4発、これで複眼は全て潰せたがグレネードはオーバーヒートしてしまう……が、間髪入れずにSpiralを胴体に突き刺した
『チッ…!やりやがった……!』
もはや双方満身創痍だ、何も見えない敵と武器の無い兵器、短時間ここまでボロボロになれるのか。
すぐに距離を取って様子見をしようとするもグラジオラスの脚は力なく崩れ、尻もちをつく形になってしまう。運動性能低下がまともに歩けないレベルまで酷かったらしい
《巨大な熱源を確認、非常に危険な電磁波が検出されました、1分後に至急CBの全機能を停止します》
『なんだと?』
危険な電磁波とは一体……?それに敵機も何も知らない様子だ、意を決してこの現象が何かを尋ねるが
『俺が知るわけ無いだろう』
と、即答される。
しかし数秒置いた後、彼の方から口を開いた
『gearによってこの現象は起きている、詳細は知らんが……。とにかくこの状況ではお前も俺も動けない、CBから降りるのも手だが、ここには非常口はもちろん出口は用意されていない……死を覚悟しろ、電磁波の影響でもうすぐこの戦車のジェネレーターが急速冷却され、爆発する、そうなればもう助かる見込みは無い』
たしかに爆発音が聞こえてくる、こんな訳の分からないところで死んでしまうのか。
流石にもう手が無い、ブースター動力は無に等しく、運動性能は著しく低下、……終わったな
機体が激しく揺れ、爆発音が近づいているのに気づいた。揺れは激しくなり、自分はコックピットに頭をぶつける。じわじわと意識を蝕む「無意識」と爆発音が死を予感させて恐怖を与えた、やがて意識は薄く、薄く………
……………………
~~2日目「Bell・Wolf」~~
先日、gearから重大な発表を受けた。「フラタニティ化計画」、自分は研究者でも上層部の人間でもないため作戦の全貌を知ることは出来なかったが、なんでもフラタニティと化した日本列島を再生するための実験らしい。
「おーい、そろそろ起きろよアーレス」
やる気のなさそうな男性の声とノックの音が聞こえる、急いでスーツを着て玄関へと飛び出ると帽子をかぶった若い男が立っていた
「っとと、すまん、少し遅れた」
そう返すと
「問題無いって、今日は昼からディマジオから依頼が入ってるんだろ?朝くらい休んどけよ」
こう返ってきた、まぁ休むと言っても起こしに来たのはこいつだが
「ああ、新兵器の相手になってくれっていう依頼だ、フラタニティで行うらしい」
昨日詳しい依頼内容を読み終えた、「CB」なる兵器の相手をシレクタでやってくれとのことだ。
「何」が相手なのかではなく「誰」が相手なのかは大体検討が付いている
「新兵器ってどんなのなんだ?」
そう聞かれて少し戸惑う、口外するなとは言われていないが言っていいのだろうか?
……いや、もっといい言い方があった、gearならほぼ全員が知っている機体。
「グラジオラスだよ」