Silent Gear(完結)   作:貧弱モノサシ

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短くなっております


?日目「オープニングの終了」

目を閉じて記憶を走馬灯のように蘇らせる。

死んでも構わないように今思い出すのだ、……そういえば自分には弟がいたな、結局生き分かれてしまって思い出も何一つないが……あと残っているのは短い間だが任務をともに果たした戦友とSKの仲間たちとの記憶、短かったなぁ……、ああ、短かった。できることなら絶対に生き残れるという自信が欲しい、でももういい、こんなに恵まれた戦場なんて他にはない、これで満足だ

 

《ARND、起動します》

 

『……何を?』

 

無言でエアとの通信を切る、あと数分もすればルドアのもとにたどり着く……戦闘となれば人間のサポートなんて期待できなかった。戦闘する場所は恐らくビルもたくさん立っている場所、尚更的確な指示を出せる気もしない

 

《接近中、接近中、あなたは味方機を攻撃対象にしようとしています、よろしいですか?》

 

構わない、レーダー上の白い機体を攻撃対象に設定しブースト速度を上げた、ルドアの機体はもう目の前にある、難しいことは考えず距離を詰める

 

『まさか突っ込んでくるなんてな』

 

案の定飛んでくる弾丸、サブマシンガンを撃ち弾と弾を相殺し、構えたまま「敵機」へと威嚇射撃をした

 

『ほっといてくれりゃよかったのに、お前も鉛玉で挨拶されるのは嫌だろ?帰れよ、まだ間に合う』

 

誰が帰るか、もう決めたことだ。銃身を下ろさずにジリジリ近づく、敵機もライフルを構えてジッとこちらを睨んだ、静寂とも言える感覚がその場を支配した頃……

2機のブースターは同時に起動した。こちらが近づくと敵機は離れ、こちらが後退すると敵機は追ってくる、引き金を引き続けたままそんなことを幾度か繰り返した、迫るライフルの弾をARNDの自動ロックで撃ち落としてはひたすらに弾をばらまく。……自機にも当たらないが敵機にも一発だって当たらない、瞬間的に撃ち出せる弾の数はこっちのサブマシンガンの方が多い、断然ライフルとは発射速度が違うため「すべて撃ち落とす」なんてことは無理なはずだ。

この数を防ぎきれるとすれば着弾して爆発する「榴弾」を使っているか。

 

『ちっ……!』

 

やがて撃ち合いは減速、弾を消費し続けたサブマシンガンを肩部に収納し各部に設置されているナイフを一本引き抜く。同時に敵機もライフルをしまって透き通るような刃を持つ武器を腰の鞘から抜いた、太刀だ、本来人殺しの兵器にはあるまじき美しさをその刃だけで補っているように見える。

太刀はリーチがあるため迂闊に接近できない、非実用的に見えて接近戦ではかなりの力を発揮するだろう。サブマシンガンを使うことも考えたが弾がなくなっては終わりだ、消費しない手があるならそちらを使う

 

《ブースター破損》

 

……なんだと?

 

『流石に一撃で全部は潰せないか……』

 

ARNDに機体の状態を表示させる、……右脚部に針のようなものが深々と刺さっているのがひと目で確認できた、敵機を見据えたまま針の解析を進ませるが、当然待ってなどくれない。太刀を構えた機体は飛ぶようにこちらへと接近して刃を振り下ろす、体を逸らして回避するも2撃目は必ず来るはずだ

 

《解析完了、「超振動ブレード」です、機体部位をランダムで破壊します》

 

機械音は早口にそう言う、なるほど、これが正体だったのか。

ではどこから攻撃した?ライフルに混ざっていた……なんていうのは考えにくい、しかしブレードなんて太刀以外出していない。予備動作の時に撃った可能性が高い、予備動作の時に使った箇所……腕か。

 

《敵機の腕にロックオンしました》

 

解析に時間がかかったため2撃目を避けるのは無理だ、ならば危険を冒してでも捨て身で部位を破壊する。

自機は敵機の間合いに入っているが敵機もこちらの間合いに入っている、ロックしている右腕に向けてナイフを突き出した

 

『当ててくるのか!』

 

こちらの左腕が切り落とされた、が、ナイフは痛々しく敵機の右肩に深々と突き刺さっている。

まだ突き刺さっているだけだ、抉るように刃を回し、硬いものでも叩くかのように装甲も力尽くで切り裂く。切り落とせてはいない、しかし内部から抉った以上使い物にならないはずだ。

ルドアは右腕を自ら引きちぎり太刀を鞘に戻す、戦意喪失……なわけがない。突然敵機の装甲はそのほとんどが崩れ落ちて内部に搭載されていたであろう装甲が空気に晒された、内部装甲はすべて青く光っており、その光は光沢によるものではなく「熱」で発生したものに酷似している

 

『侮っていた、ここまでなんてな。お前とは戦いたくなかったよ、ずっとメンバーを支えていてほしかった』

 

引きちぎった右腕からはだらんとコードが垂れて力強さなんて無い。要するに、悲しそうに見えた

 

『CBやシレクタは短期間で決着を付ける兵器だって知ってるだろ?どう転んでも戦いはもうすぐ終わる、お別れだ』

 

Venomを構える、対するルドアは先程とは銃を、ライフルというカテゴリーを無視した巨大な銃を崩れ落ちた自らの装甲が構成してゆく。

 

『俺はこうなるんだろうなって事を知ってたさ、その上で望んでSKに入った、目的はお前らの監視と出生、その他の情報収集……まぁ結局集まった情報はくだらなくて俺には必要ないものだったけどな、ミヤシは案外甘いものを食べるとかリーダーはカメラオタクとかさ』

 

ルドアはそれを言い終えていつものように笑う、なんだかおかしくなってこっちまで釣られてしまうそうになる

 

『こういうのも悪くなかった、いや、案外良かった。……これで終わりなんだ、お前からは何か言うことは?』

 

向こうから会話を提案されるとは。

こっちから言うことはない、気が変わる前に戦うことが今出来る精一杯のことだ。だから、短く「無い」と返した

 

『ははは!そうか、お前らしくて良かった。じゃあやるか……恨むなら未熟な自分の腕を恨むんだなッ!』

 

《データが改ざんされました、あなたはARNDの機体動作に関するサポートを受けることができません》

 

周囲の景色を見回す、どうやら敵機を中心に様々な機器が壊れているようだった。何かを繋ぎ止めるようにチカチカと点滅していた電灯も、無人の都市で自らをアピールする巨大モニターも、奪われるようにふっと消えた。ARNDが使えなくなったのも十中八九これが原因だろう、外部との連絡は無線以外では取れないがCB自体は動く、十分だ。

使えないブーストを何回も起動しブースターを爆発させる。大した推進力は得られないが爆発のおかげで加速した、Venomを突き刺す体制に入った頃、敵機は巨大なライフルの銃口を前に向ける、そこからの行動は早かった

 

《全装甲損傷、危険です》

 

一撃、たった一撃被弾しただけでグラジオラスが持つ装甲のほとんどが剥がれてしまった。

衝撃で後方に吹き飛び、起き上がるも追撃は止まない、といってもあれほどの威力の銃をリロードなしで撃てるはずもなく、ライフルを捨てて太刀を構えた敵機はブーストで接近しグラジオラスの後ろを取る。

 

《右足破損、機体のバランスを保てません》

 

足を斬られた、もう為すすべはないのか?すぐ横にあるビルへ身を傾け、片足で立つ

 

『終わりだ』

 

終わってたまるか、Venomを使えるような動力源さえあれば……。

……あった、この際自分の機体でもいい、動力がなくて野垂れ死んでもいい、道連れにしてやる。

腹部にVenomを突き立てて一気に押し込む、擦れる金属音が「ギィギィ」と鳴いてか細い断末魔を上げているようだ、でもこれでいい

 

《Venomによってジェネレーターが破壊されました》

 

一瞬ためらって、引き金を引いた

 

『短かった、短かったなぁ、SKでの生活は』

 

ルドアがそう言った、通信機能が生き返ったのだろうか

 

『そうだ、言い忘れてた。帰ったらホットケーキ焼いてやってくれ……メルの好物なんだ、……最期まで、本当に俺には必要のない情報だったな……』

 

やがてノイズがその声を蝕んで何も聞こえなくなる、簡単で単純でなんの面白みも無かった、残ったのは苦痛とルドアに頼まれたことだけで、頭が破裂しそうだった

 

 

~~~

 

 

 

 

後方で崩れたような音が聞こえてからVenomを抜く、残った1%の力でエアとの通信を試みた

 

『勝ちましたか?』

 

第一声がこれだ、もう少し褒めてもばちは当たらないと思うが。勝ったことを報告して飲み込んでいた息を吐き出す

 

『そうでしたか、では上を見てください。……お仲間ですよ、あなたを追ってきたみたいです』

 

カメラを上へ向けると見覚えのある輸送機が浮いている、グラジオラスを見下ろしている。

 

『……ルドアは?』

 

メルの声だ。

何も答えることができない、殺したなんて言えるだろうか

 

『分かってる、もう、いいよ』

 

通信が切れる、きっと怒っているだろう、別れの言葉も言えなかったのだから

 

『こちらエアです、グラジオラスに伝達』

 

半分自暴自棄になって適当に返事をした、自分も最期だ、少しくらい気を抜いてもいいだろう?

 

『───あなたは包囲されています、抵抗せずに武装を解除してください』

 

その通信が入った途端に物陰から大量のシレクタが姿を現し、全員がこちらに銃口を向ける。メル達はもう指名手配者ではない、gearにだって狙われないが自分は違う。正真正銘の犯罪者でgearの敵なのだ、消耗しているところを叩くのはある意味当然で、危険因子を排除した危険因子はさらに危険で……用済みだ、使い捨ての駒とはこういうことなんだろう

 

『では、さようなら』

 

《エネルギー残量が0になりました、機体の全機能を停止します》

 

ふと聞こえた1発の銃声。その音で張り詰めた糸が切れるように大量の銃声が際限なく耳に残る

 

ホットケーキは作れそうにないや。

 




「鈴の狼」に続きます
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