色々ありましたが、それではどうぞ!
「や・・・やっと・・・終わったニャ」
「疲れたニャ」
日が傾き、夕暮れ時となり、雨雲も雷雲も無くなり。
事態はようやく終息した。
作業を終えたアイルー達はヘトヘトになりながら、その場をあとにする。
へし折れたヤシの木、割れた窓ガラス、屋根が所々に外れかけ・・・もはや踏んだり蹴ったりな様子だった。
「実験を任せてやったのに、単純なミスをしたもんだニャ」
「あう〜・・・すみません・・・・」
フラスコを磨きながら、アインシュタインの厳しい言葉に、パピはガックリ項垂れた・・・。
彼女が着ている赤いネコのフードは先程の豪雨で濡れており、現在干している。
「でもま、これからの事を学ぶ、さっきの非日常的な体験は大切だ。災害を呼ぶ古龍に対しても、独創的な発想につながる可能性は、なきにしもならずだ。」
ションボリな様子のパピを励ましてるのか、それとも先程の事に対しての指摘なのか、ジェラードは彼女に対してそう言う。
「あ、ありがとうございます!」
「何を言ってるんだニャ!さっきの事がもっと大事になったら、最悪命に関わる事にも繋がるニャ!ダンナさんも、甘やかす様な発言は控えるべきニャ!!」
パピは少し元気を出したが、アインシュタインはその指摘に対して厳しく言う。
「運が悪い時にごめんな、ルナ」
「いいえ、おかげでいい経験になりそうよ」
「古龍の災害にあったら、きっとああ言う感じなのも納得できそうですね・・・・。」
謝るジェラードだが、インナー姿のルナは特に気にしていない様子だった。
同じくインナー姿であるミズチにしても、先程のがもしかしたら本当に起こり得るのではないかと、疲れていた。
彼女達の装備は雨でずぶ濡れになってしまい、暫く乾かしている。
「で、俺に相談というのは?」
「そうだったわ」
ルナは思い出したかのように顔を上げる。
「あなたに依頼の協力をしてほしいの」
「依頼の協力?」
その内容にパピはジェラード達に顔を向ける。
「一週間後、4ヶ国の皇女達が現れて、そのクエストに参加したハンター達に対してよ」
「へぇ、皇女達がね・・・」
興味津々ながらジェラードはルナの話を聞いてみた。
「それに成功すれば、恐らく莫大な報酬を貰えることもまず間違いないわ」
「すごいもんだ」
ここまでやるとは、よほどスゴい依頼なのだろう。
「ただ、その依頼にはちょっとした話があってね」
ルナは何かを思い詰めたかのように、詳しく説明する。
実はルナとミズチがここに訪れる以前に・・・・。
『ドンドルマ』
「待って」
「ん?何だ?」
ルナは、酒場に向かう教官二人を、止めた。
「金の像は紛れもなく純金で出来たものかもしれないけど・・・これをギルドが発見した後に私達に依頼するのね」
「先程からそう言ってるであろう」
教官はメンドクサイ様子で、話を流そうとする。
「金で作るなら、黄金石から作るのもありだし、何よりも新大陸には山程の金脈がある洞窟があるじゃない、その気になれば、今でも作れる、価値だってそんなに無いかもしれないし・・・。」
ルナの淡々とした言葉に、女教官はため息をつく・・・。
まるで、何かを諦めたかのように・・・。
「鋭い指摘だ・・・だが、その像に関しては続きがあってな・・・・。」
「・・・・?」
すると、女教官はあるものを取り出した。
「こいつもやる・・・貴様にだけは特別だ。」
「ありがとうございます」
手渡されたものは紙だった。
「これって・・・手紙ですよね?」
「これにも関係があるって話ね・・・・。」
そして・・・。
「へぇ・・・黄金で出来た奇妙な像だな・・・。」
ルナはバッグからドンドルマでの黄金像を取り出し、それをジェラードの前に出した。
「これはスゴい純金製だニャ」
「確かに・・・でもどことなく不気味なのです」
アインシュタインとパピは、取り出した黄金像をまじまじと見る。
確かに幼さが残るパピにしてみれば、この金の像は不気味に感じる・・・。
「そして・・・この手紙よ。」
金の像と同時に、手紙をジェラードに渡すルナ。
それを受け取り広げた。
「ん~・・何々・・・『トレジィの依頼で、受け付けた私は・・・色んな仕事を請け負った』
・・・これはトレジャークエストのハンターからだな」
ジェラードは手紙の内容が、あのトレジィからの宝探しの以来だと分かった・・・。
トレジィとはフィールドに散らばるお宝を探す『トレジャーハンター』の第一人者。
若い頃は自らトレジャーハンターに赴き、数々の宝を探し当て、多くの人の尊敬を集めている。
また優れた地質学者であり、武具に使われるマカライト鉱石や
それを加工する為の燃石炭を発見したのも彼だと言われている。
現在は彼の下に集まってくる弟子達の育成に励んでいる(本人曰く「まだまだ現役」らしいが)。
「ええ、私達もここに訪れる以前に読みました・・・。」
「残念だけどその後がちんぷんかんぷんでね・・・。」
その手紙の内容は、どうやらルナとミズチも読んだようだ。
「『え〜・・・トレジャークエストをやり遂げた私は、あらゆる障害を乗り越えていくと、とある狩場で、砂地に埋もれた手掛かりを見つけた。それが最も謎に近い光り輝く金の世界への片道切符だ。
強大なる光り輝く太陽が、その豊かな都に光をもたらし、その民を護るであろう・・・。
これを誰にも見つからずに、私一人で達成する・・・ギルドへの報告も秘密だ・・・。』」
ジェラードは手紙の内容を淡々と読み終えようとする。
「と、言うわけで全く分けがわかりません・・・。」
ミズチは申し訳無さそうに、謝ると・・・。
「・・・あの」
するとパピが手を上げた。
「これってもしかして・・・あの『太陽を祀る黄金郷』の事ではないでしょうか?」
「その通りだ!」
パピの答えに、ジェラードも納得し、金の像をまじまじと見ると、裏返したりして、よくよく見ている。
「・・・ちょ、ちょっと待って下さい、一体全体どういう意味なんですか?」
「ミズチ・・・あなたは知らないの?黄金郷の事を」
「そ、それは知ってますけど、でも黄金郷の事は他にも耳にしますよ」
「ええ、だけどコレは私達がおとぎ話だと思っていた内容の黄金郷よ」
「ど、どう言うことなんですか?」
ミズチは目を丸くしながら、事の詳細を知りたかった。
黄金郷の話はいくらかあるが、その大半が作り話だと信じる人もかなり多い。
「トレジャーハンターは大昔、数人のリーダーと数十人のハンター達と共に、王の極秘任務により遠征に向かった。
食料、備品など・・・長い日にちを予測して、とにかくたくさんの必要物資を船にたくさん積み込んだんだ。
一年半経った頃、戻ってきたのはトレジャーハンターリーダーの一人だけだった。
彼は、旅の記録の詳細したなかには、他のチームはモンスターに襲われたものがいるのであれば、餓死、病死したものもあり、探検先には何もなかったと書かれていた。」
ジェラードは手紙の内容に書かれていたモノに関係してある話をした。
「つまり、この手紙に書かれているのは、遠征したトレジャーハンターの極秘任務を見つけたんですね。」
「そう、手紙の主はそれを狙って、誰にも言わずに自分だけをモノにしようと行動に移したんだ。」
ミズチの答えにジェラードは頷く。
「この金の像をよく見てみろ!古代の文字で書かれてある!大昔の部族が彫られた太陽を崇める聖なる像の一つだろう」
金の像を見てみると、確かに何か書かれていた。
「おそらくギルドはコレが真実ならば、この依頼を大勢で挑むべきだろうと確信したようだ・・・・」
となると、教官が言ってた依頼も納得できる。
大昔に遠征した何人かのチームが不運な事故などで死んだんだ。
これは只事ではない・・・。
「引き受けるのでありますか?」
パピはこの不安そうな依頼をどうするか訊いてみた。
「・・・・留守番よろしくな」
「・・・・・なのであります」
ジェラードは行く気満々な様子に、パピはため息を吐きながら肩を落とし、了承した。
「オトモも連れて行く、アインシュタイン全員呼んでくれ」
「了解ニャ!」
アインシュタインは急いで穴を掘り、そこから去った。
「私達も準備しないといけないわね」
「あ、はい・・・・」
ルナは早速、準備をしないとと思い、その場で立ち去る。
しかし、ミズチだけは何やら、俯いた様子。
「私、不安なんです・・・高難度だと特に・・・」
ミズチの不安がる様子に、ジェラードが近づき、彼女の頭に手をポンっと置く。
「これも、ハンターとしての経験だと思え、いつまでも平凡なのがハンターの世界じゃない、過酷な世界を生き抜き、自分よりも強大な相手を乗り越えるからこそ、素晴らしい栄光が待ってるんだ」
「あ・・・はい・・・」
そう言いながら、ジェラードは去ってゆく。
突然、頭を優しく置かれて、こうもハンターの有り様を語るとは、このジェラードと言う男は一体何者なのだろう・・・。
「社長はいつだってああなのです」
「え?」
そこへ、パピが話しかけた。
「狩猟や探索の低い難易度から高い難易度まで、どんな依頼でも引き受けては、ハンターとしての生き様を経験してるのですよ。」
「スゴいんですね」
この眼の前にいるジェラードと呼ばれるハンターがそんなことまでするとは・・・もしかしたら憧れのルナ以上にスゴい人物なのかと考えると、ルナがバッグから回復薬や解毒薬などを取り出しながら、ジェラードと何やら話していた。
どうやら、依頼先に行くにあたって、何が必要なのかという相談だろう・・・・。
その様子はなにやら楽しそうだ・・・・。
久しぶりの友との再会だ、あんな顔をするのも当然であろう・・・・。
「私も少し昔、この島とは別に大陸の村の出身なのですが、とあるモンスターに滅ぼされてしまって、独りぼっちなのです」
「そうだったんですか・・・」
パピは自分の昔を思い出すと、ミズチはこの小さな少女にそんな過去があるとはと驚いた。
「そこへ、依頼を引き受けたジェラード社長が現れて、そのモンスターの討伐へ赴き、無事完了してくれたのです。
ですが一方の私は、行く宛がなくて困っていると、ジェラード社長が引き取ってくれたのです。
もしこちらの仕事を手伝ってくれたら、衣食住を約束しようって言われたのです。
そして現在となって、他のアイルー達と一緒に働いているのです。」
「何だか素敵ですね、独りぼっちの女の子を引き取って、ちゃんとした衣食住を約束してくれるだなんて」
ジェラードと言う人間性には、ミズチも感心せざるおえない。
モンスターを討伐するだけでなく、滅ぼされた村で行く宛もない、引き取ってくれるヒトもいない孤独な少女を、まさか引き取ってくれるとは・・・・。
「社長の事をよろしくお願いしますなのです。」
「あ、は、はい、お任せください!」
パピは改めて、ミズチに顔を向けると、ペコリとお辞儀をする。
頼まれたからには断るわけにはいかないと、ミズチは敬礼ポーズで対応した。
それから一日が過ぎ、準備が完了したところで、ジェラードもパピや他のアイルー達に顔を向けた。
ジェラードが同行するオトモのアイルーはアインシュタインだ。
「それじゃあパピ、ニュートン、引き続き実験を頼んだぞ」
「はいニャ!」
「なのです!」
「エジソン、テスラ、採掘の方も頼んだ。
ダーウィン、アルキメデス、虫や魚の件も頼んだ。
キュリー、ノグチ、畑仕事よろしくな」
ジェラードに頼まれたアイルー達は、任せてと言わんばかりに意気揚々と返事をする。
ボートに乗り込み、三人と一匹は出発した。
早速ドンドルマに戻ろう!