幻実都市幻想郷   作:com3

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気がつくと竹林。


第1層 「逢」
第001記「思い信じて」


 目が覚めると、僕は地面に寝ていた。

 どこだろうかこの薄暗く竹が生い茂り深い霧が立ち込める場所は。

 僕はここがどこなのかを思い出そうとする。でも、なぜ僕がここにいるのか。そもそも僕が何者なのかも思い出せない。

 記憶喪失のようなものに罹っているらしい。

 何か手がかりを探すように、あたりを見回しても霧が立ちふさがり1m先を見ることも難しい。

 邪魔だな、と思ったとき、僕は思わず右腕を振っていた。

 「――――――」

 だが殴ったくらいで霧がなくなるはずもない。

 自分でも何でそんなことをしたのかわからず、そこにおかしみを感じて僕は小さく笑う。

 ただ何となく、霧が殴られて薄れたように思えたんだが、錯覚だろうと僕は思い直す。

 とりあえず、歩いてみようか。

 「山……、かな」

 緩やかな傾斜。もし僕の推測が正しければ、降りるのが正解だろう。なにもわからずに遭難するのは勘弁願いたい。もうすでに手遅れかもしれなけど。

 30分ほど歩いたのだろうか。いや1時間ほど。実際には5分も歩いていないのかもしれない。濃い霧のせいで、時間感覚がおかしくなっている。これは迷ったなと僕は思うが、そういえば最初から迷っていた。

 そんなとき、視界の端にすばやく動く物体が。

 「うわ」

 イノシシだったりしたらどーしようか、と軽く身構えて視線で追っかけてみる。すると、霧のなかから溶け出すように、これまた真っ白なうさぎが姿をあらわした。

 吐息一つ。体を戻す。僕は武術でもやっていたのかもしれない。

 兎にも角にも、第一町民発見。

 身体をしゃがませ、地面に敷き詰められた笹の葉を一枚拾い、僕は極めて友好的に捕獲にのりだす。

 「ほーれ、餌だぞ~」

 当のうさぎは、知るかこのアホンダラ、とでもいうかのような目をして、背を向けたあと僕をちらりと見返した。

 ついてこい。ということだろうか。

 ついてってやるぞコノヤロウ。

 ……声に出ていた。

 ヤツは、もう知らん、とでも言うように、一目散に駆け出す。

 「悪い、すまん、ごめんっ、もうしません――」

 竹やぶを走りつつ、謝りつづける。20くらい言葉をつづけたところで、ようやくヤツは止まった。

 いつの間にか、霧がかなり薄くなっている。近くの地面には道のようなものがあった。舗装はされていない。

 「案内してくれたのか。ありがとな~」

 僕が感謝を述べると、ヤツは、世話かけさせんなクズ、とでも言いたげな目をして竹林奥へと消えていった。

 近頃のうさぎは人を蔑むことを覚えたんだなー、と思いつつ僕は道をたどりはじめる。

 言葉が通じる人に出会えればいいけれど。

 僕はとりあえず進める道を進む。

 僕はなぜここにいるのかがわからない。帰るべき場所も見失った。

 でも誰かが待っている。そんな気がする。

 だから今は進もう。

 「君よ――――」

 見知らぬ誰かを僕は呼ぶ。

 「君を知らぬ僕の名を、君は応援してくれるのだろうか」

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