僕は、淡々と小道を往く。
竹林の中では霧が濃くてよくわからなかったけれど、まだ太陽は高いところにあるようだ。
周りの風景は、竹ではなく広葉樹に変わった。道はだんだんと広くなっている気がする。あながち僕の勘も捨てたものではないな。
歩きながら、ときおりふわふわと群がってくる毛玉を拳で散らす。色とりどりのまりものような姿は結構綺麗だ。
「一つ持って帰りたいなっと」
僕は手を伸ばすけれど、うまくつかむことができない。捕まえたと思ったときには、するりと拳の中から消えてしまう。
そもそも、僕はどこに持って帰るつもりなのだろう。
「迷子の迷子の子猫ちゃんー」
僕は人生の迷子だけれど。どちらかというと人生が迷子か……うーんテツガクー。
人気のない静けさの中に、むなしく声が響く。
順調に歩みを進めていると、
「いてっ」
何かが頭に当たった。後ろを振り返ってもなにもない。
気のせいか……と思い、再び歩みを進める。
「いてっ、いててっ」
今度は二度当たった。後ろを振り返っても誰もいない。
キョロキョロと辺りを見回していると、不意に空から笑い声がした。
見上げると、小さな女の子が僕を見て肩を震わせていた。
僕は少しむっとして手を伸ばそうと思ったけれど、行動に移す前にやめた。
言葉が通じそうな物体にやっと出会えたのだ。ちょっとばかり体が小さくて、薄い羽が背中からはえていて、空中に浮いているけれど。
そんなことよりも、女の子であることが重要だ。ワンピースで空を飛んでいるのもポイントが高い。具体的に言うと、
「パンツ見えないかな~」
姿勢を低くする。こうしていると、失われたエロ記憶が……。
「なにやってるのー? 」
僕が彼女に(物理的な)危害を加える気がないことを、本能で察知したのだろうか。女の子は無邪気に問いかける。
「うん。人生についてちょっと考えてたんだ」
嘘じゃない。
「うーん、よくわかんない」
僕も難しすぎてよくわかんない。
それにしても、妖精……だろうか。アッパー入ってるひとには妖精さんが見えるというけれど。幻覚で。妖精さんが幻でないことを祈ろう。
「ねーねーあそぼうよ! 」
いたいけな少女の誘いにはぜひとも乗りたいお年ごろの僕だけれども――妖精さんと追いかけっこをしていたら、深い森の奥で一人ぼっちなどという事態はご勘弁願いたい。
「それなら……人間のいるところの場所を教えてくれるのならいいよ」
我ながらナイスなアイディア。
「にんげん? むら? むら? 」
「そう村。この先にあるのかい? 」
指で道の先を示して言う。
それと、女の子がムラムラ言うもんじゃありません。
「あるよー……それじゃいくよー! 」
妖精の言ところの"遊び"なのだろうか。彼女の指先に光が集まる。
それを見た僕は、大慌てで道を駆け出した。
遊びの内容は、追いかけっこということで一つ。
「まてー! 」
可愛らしい声と、何らかの物体が地面にぶつかる音が聞こえてくる。大人は汚いのだよ。
さて、ようやく人心地つけそうだ。
村の人たちがまともならいーなぁ~……。
1話を投稿し、風呂の中で考えていたらプロットが完成しました。
取りあえず、続けてみようと思います。
1部では、"僕"の記憶が主題になりそうです。