集落にたどり着いたとき、すでにお日様は傾いていた。
クワを持ったおじさんが僕を訝しげに見る。男に見つめられてもうれしくないね。
「ハロー、ハロー。こんにちわわー」
「はろー? そのかっこ……外来人かね? 」
どうやら、全力で間違えている僕の日本語は通じるようだ。だが、僕が友好的に挨拶しているというのに、返さないとは失礼なおやじである。
「外来人が何を指すのかわかりませんけど……どうして自分がここにいるのか、はわかりません」
「んなら、やっぱり外来人だ。ちょっとまっとくんれ、先生呼んでくる」
止める間もなく、クワを投げ捨てて駆け出すおやじ。僕のような存在に、手馴れている感じがする。
先生とかいう人が来るのか。先生お願いします。とか、よそもんだ身ぐるみ剥げー、とかだったらいやだなぁ。
そんなことを考えている間に、遠方に2人分の人影。良かった、集団で囲まれるようなことはなさそうだ。
ゆっくりと近づく姿は、腰まで届きそうな長い銀髪。頭の上には奇妙な方形の青い帽子をちょこんとのせている。やさしげな目元。細い線の身には、制服の夏服を、ワンピースに改造したようなデザインの、これまた青い洋服。
そして、なによりも自己主張をする胸。胸。胸。
後ろにいるむさ苦しいおやじなんてもう目に入らない。うわぁ、予想外だ。むさ苦しいおやじ2ndが来ると思ったのに。
花も嫉妬するほどの柔らかな笑顔で、彼女が口を開いた。僕が想像したよりも、低く落ち着いた声。
「こんにちは。聞きたいことが沢山あるだろうが、まずは自己紹介としよう。上白沢慧音だ。この人間の里で歴史の編纂と寺子屋をやっている」
「こんにちは」
彼女は笑顔。
ほらみろ、挨拶は返すのが礼儀だ、と思いつつ僕はおやじをチラと見る。
さて問題はこの次だ。
なるべく軽く……
「えーと……僕は…………少し記憶なくしちゃってて」
「それは大変だ! 」
おおう、良い人だ、と僕は少しのけぞった。
「そうだ! それならば次の満…………」
勢いが消えて、言葉尻が小さくなる。まん……なんだ?。
「いやいやいや、なんでもないぞっ! 」
じー。
僕の訝しげな視線に気がついたのだろうか。
彼女は咳払いをひとつ。
それにしても、最初の落ち着いた印象と違って、ずいぶんとアグレッシブな人のようだ。
「そうか、そうなると博麗の巫女のところに連れて行っても意味はない……か。そもそも当代が誰なのか……。まぁいい。ここは人間の里。君が問題をおこさない限りは歓迎をしよう。外来人の知識は貴重なのでな。とはいえ、君は記憶喪失か」
苦笑とともに言われる。懸案は、彼女の中で自己完結したようだ。
彼女は僕についてくるように言い、僕はそれに従う。
道を歩きながらも会話は続く。僕が、竹林からここまで歩いてきたことを伝えると、彼女は僕が人里までこれたことに驚いていた。どうやら、毛玉みたいなものは精霊だったらしい。夜には悪い妖怪も多く出るのだという。途中妖精に襲われたことを話すと彼女は、
「昼間とはいえ、危ないところだ。君はある程度自分の身を守れるのだな……無理はせずともよいが、里のみなを守ってくれると助かる」
と言った。
先生と言われるあたり、彼女は里の偉い立場にいるのかもしれない。
外来人について聞くと、この地域は外界から結界で隔絶されており――幻想郷という名らしい――、時折結界の外の人間が、神隠しというかたちで入ってくるそうだ。
情報のやりとり……主に僕が受け取る側だったが……をしていると、彼女は一軒の広い建物の前にとまった。足並みを揃えていた僕もとまる。おやじの姿はいつの間にかなくなっていた。僕の前にあるのは、お寺のような和風建築。入り口らしき引き戸の横には寺子屋の文字がある。
「しばらくは、ここで寝泊まりして欲しい。必要な物があったら言ってくれ。となりの建物にいるから」
彼女はがらがらと戸を開けた。
ここでようやく原作キャラクターが登場。
"僕"のキャラが不安定ですね。
記憶を取り戻すのはまだまだ先です。
外来人は、博麗神社から外界に帰れるようですが、慧音は永夜抄で霊夢の存在を知らなかったのでこのようなかたちにしました。
歴史編纂者がそれでいいのか……。
実はタイトル適当です。
本家のように最初から考えているわけではありません。
いつか無理がきそう。
ちなみに、ハーレムにはしないつもりです。
君一筋で。