どうもこんばんは
突然ですがこれからの更新は不定期になります。
実は最近忙しくで執筆する時間が取れず、書き溜めてたストックが底をつきましたので周一更新は今後無理そうです。
いるかどうかわかりませんが、この作品の更新を待っていただける方は申し訳ありません。
それでは17話です。
どうぞ
とある秋の日の事だった。
その日はつい攻略に夢中になってしまい、気が付いたら視界端の時計は午前1時を表していた。
帰り道にいつもなら差し込む月の光も、今は上の層に遮られてフィールドを暗く染めている。狂暴化しているモンスターが徘徊する中、俺は≪隠密≫スキルを使いながら主街区へと向かっていた。
あと数分も歩けば街へとたどり着くというときに、俺は『そいつら』に出くわしてしまった。
全員が顔を隠し、闇に溶け込むような装備をいている5人組のプレイヤー達だった。
そして、その足元に
イマイチ状況が分からなかったが、もうすでに深夜だということもあって警告の意を込めて声をかけようとした。しかし、眠っている女性プレイヤーの胸に片手槍が突き刺さっていたため俺は驚いて声を出してしまい、それに気づいた男たちにたちまち
当然、男たちは俺のことを逃がすつもりはなく、全員が武器を構えて睨み合っているのが現状だ。
「どうした、早く助けなくていいのか?」
フードの男が言う。
槍が突き刺さっている女性プレイヤーは槍を抜こうとしているが力が入らないのか腕が動く気配はなく、どうやら麻痺状態にでもなっているらしかった。そして、槍のような貫通属性の武器は≪貫通持続ダメージ≫があり、微量だが確実にそのプレイヤーのHPを削っていく。
つまりは時間がない。
槍が刺さってどのくらい経っているかは分からないがHPの減り具合と残りのHPから見て残り時間はあと僅か。だが、一息で目の前全員を通り抜ければ装備からして中層プレイヤーであろう彼女を助けることは可能だ。数の不利は立ち回りに気を配れば何とかなる。するしかない。
俺から見て右から黒いマスクをつけている短槍使い、赤い目の髑髏の仮面をつけている
俺は目の前の短剣持ちの二人の間に向かって一息に駈け出す。すると横にいる刺突剣使いの男が前に出てきて、俺の眉間を正確に突いてくる。
頭を貫かれるのは言うまでもなく大ダメージである。しかし、頭というのは的としては小さく当てるのは難しい。そんな場所を正確に攻撃できるこの男の技量はすさまじいものなのだろうが、こちらもただ当たるだけの的ではない。俺は首を全力でひねって刺突剣による攻撃を頬をかすめる程度にすることができた。
だが、俺が剣で攻撃しようとしと時にはすでに右側から短剣使いの頭陀袋の男が短剣を振り下ろしていた。とっさに剣を掲げて防ぐも、同時に来る左側からのフードの男の下からの攻撃はくらってしまう。
そしてその時、一瞬だけ頭陀袋の短剣に緑色の粘液で濡れているのが見えた。間違いない、あれは麻痺毒だ。おそらく奥で倒れているプレイヤーもコイツの毒にやられたのだろう。さっきフードの男の攻撃を防いでコイツの攻撃を受けていたらその時点で俺は負けていただろう。
一旦距離を取るために肝を冷やしながらバックステップを踏むが、次の瞬間には赤目の髑髏の仮面が目の前にあった。高速で繰り出される突きを三回まで弾けたが四回目の突きは剣で追いきれずに左肩に赤いダメージエフェクトを残していく。
こちらもダメージ覚悟で剣を振るうが髑髏仮面は大きく後ろに跳び引くことで回避し、それに入れ替えるように短槍使いの黒マスクと片手棍使いの黒帽子が前に出る。
右側から来る短槍は剣で防ぎ、左側から来る片手棍はとっさに左手でつかんだ俺専用の世界に一つしかない俺だけの鞘を抜いて棍の柄に当てて防御する。
鞘を使ったことにその場にいる全員が驚いた表情をするが、その隙に槍と棍を弾いて駆け出す。
わずかに反応が遅れた髑髏仮面の突きを地面に接するくらい身を低くして飛び込み、髑髏仮面の足元を駆け抜ける。
頭陀袋はこれまた緑色に濡れている投げナイフを左手で同時に三つ投擲する。その瞬間、頭陀袋の奥にある眼球が、俺の右肩、左脇腹、右足を順に捉えているのが確かに見えた。俺は走りながら体をひねるだけで迫りくる三つの武器は俺の後ろへと飛んでいく。
「なッ………!!」
頭陀袋が驚愕の声を上げる。
茅場晶彦のこだわりか、この世界において投擲武器を投げる際にプレイヤー、モンスター関わらず狙った場所に寸分たがわず視線を向ける。
このことに気づいているプレイヤーはごく僅かだが、それを発見した俺にとっては投擲武器ほど躱しやすい攻撃はない。
スピードを緩めることなく頭陀袋までたどり着いた俺は苦し紛れに突き出される短剣を難無く躱し、すれ違いざまに一閃。
余裕をもって短剣を構えるフードの男に鞘を右から叩きつけるが男はそれを左手で掴み、短剣を振り下ろしてくる。鞘を叩きつけた勢いを殺さずに体を左に向けながら右側に重心を移動し、振り下ろされる短剣に俺の剣を重ねて起動を逸らすと同時に鞘から手を離す。
そのまま駆け抜けようとするが同じく鞘から手を離したフードの男が俺の進路を遮るように立ちふさがる。俺は足を止め剣を振るが、同時に斬り上げたことで互いの攻撃が相殺される。
そのまま次の攻撃に移ろうと剣を振り下ろそうとした瞬間、首筋に静電気が流れた―――ような気がした。
咄嗟に身を屈めるのと後ろから刺突剣が突き出されるのは同時だった。
頭の上の切先を肌で感じながら身を転がし距離を取る。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
体勢を整えて荒い息を出す。
息が切れるのは仕方がないことだと割り切れるが休んでいる暇はない。一秒でも早く奥のプレイヤーを助けなくてはならないのだ。そんな俺の意思とは反対に向こうはこちらに話しかけてくる。
「Wow…今のを躱すか……だがいいのか?これで振り出しだぞ」
その通りだ。一息で全員を突破しないと意味がない。そもそも5体1という状況がすでに絶望的なのだ。
一つ舌打ちをして剣を構え直す。こうなったら取れる手段は一つ!
駆け出して一瞬でトップスピードにたどり着く。こういった物理法則を無視できるのは仮想世界ならではだ。
それを迎えるのは当然一番素早い動きができる髑髏仮面。剣を引き絞っていつでも攻撃できる体勢を整えている。
間合いに入った瞬間、相手は剣を突き出してくる。同時に俺は左手をまっすぐ伸ばして相手の剣線に合わせる。刺突剣が突き刺さる。痛みはないが体の中に異物が入ったという不快感で顔をしかめる。
スピードを殺さずにそのまま左ひじで胸を打って相手の体を少し浮かせて、右手を弓矢のように引き絞る。瞬間、剣は血色のライトエフェクトを纏う。
片手剣重単発突進型ソードスキル《ヴォーパルストライク》
ジェットエンジンの様な低い音を響かせながら髑髏仮面の胸を貫き、その突進力で四人を通り抜ける。
奴らからは髑髏仮面の影になって俺がソードスキルを発動させたのに気づかずいきなりの加速に対する驚きと、俺を止めるために剣を振るおうとするが一緒に味方を切ることになってしまうために一瞬だけ躊躇ってしまったようだ。
髑髏仮面はそのまま吹き飛ばされ、俺は一瞬でも早くあの槍を抜こうとソードスキルが終るや否やソードスキルの硬直も意に介さず必死に手を伸ばす。
だが俺がやっとの思いで槍の柄に触れた瞬間、ガラスが割れるような音とともに槍は地面に倒れた。
目を見開く。そこにいた女性はおらず、散っていく青い欠片とわずかばかりの装飾品だけがあった。
……嘘……だろ……
あとほんの少しだけ早かったら、助けられたのに。
一瞬。たったそれだけで間に合わなかった。俺は、彼女を見殺しにしてしまった。
―――脳裏によぎる青い髪の少女
何がいけなかったんだろうか。あと一秒早く見つけていれば、あと一歩遠くまで踏み込んでいたら、俺は助けられたのだろうか。
―――脳裏を駆ける黒い姿の少年
俺はなんでこんなにも助けたかったのだろうか。コぺルが茂みに隠れに行った時も、ディアベルが単身で走って行った時も、こんな気持ちにならなかったのに……どうして
「クヒャッヒャッヒャ!間に合わなかったなぁー!」
黒いマスクを付けた短槍使いが声を上げている。何を言っているか分からない。ただ茫然として顔を向ける。
「ボスぅー、こいつどーしますー?やっちゃっていいッスかー?」
あぁ……こんな風に生きられたらどんなに楽だろうか。いっそこのままこいつらの仲間に入れてもらうのはどうだろうか。
「………好きにしろ」
そっか……俺がこんなにも必死だったのは、きっとキリトみたいにはなりたくなかったからだったんだ。平気で他人を見捨てられるような人に。
分かってる。キリトはそんな奴じゃないって。じゃなきゃ、デスゲーム初日にレクチャーなんてしてくれなかっただろうし、嘘をついていることを知ったサチがあんなにも懐く筈がないって。
「そんじゃぁ…言葉通りに……!」
槍が振り下ろされる。その瞬間、俺は剣で切り上げて黒マスクの右腕を切断する。
切れた右手の上から槍の柄を左手で強く握る―――と同時に切断された右腕がポリゴン片となり、そのまま黒マスクの心臓へと突き立てる。
完全に貫通した槍を掴んでいた左手を開き、右手の片手剣で《ホリゾンタル》を起動させて首を刈り取る。
黒いマスクの着いた頭はくるくると回り、地面に落ちる前にポリゴン片になって砕けちった。
残された身体も同様にポリゴン片となり、胸に突き刺さっていた槍を落ちる前に掴み取る。
青い光の欠片が視界を埋め尽くす。その向こう側にいる男たちは全員驚きに満ちた顔でこちらを見ている。
「ハハハッ…こりゃあ傑作だ……どうだ?テメェ、俺の仲間になんねぇか?」
無感情な声でフードの男が言う。本気で言っていないことは明白だ。それでも、その言葉は俺にとってはそう聞こえなかった。
仲間?こいつの?誰が?俺が?
仲間…同じ…そう、俺はもうこいつらと同じヒトゴロ……
「………ちがう…」
必死に否定の言葉を口にする。そうでもしなくちゃ自分で認めてしまいそうだから
そんな俺の気持ちを知ってかフードの男は話を続ける。
「違わねぇさ。お前は俺の大切な仲間を殺した。何も変わらねぇじゃねぇか」
「ちがう!」
違う。俺はそんなんじゃない。お前たちの様なレッドプレイヤーじゃない。好きで殺したんじゃない。あのままだと俺が殺されてたから……。そうだよ、正当防衛だよ、こんなの。
「認めちまえよ、楽になるぜ。第一、この世界で人殺しが悪って認識が間違ってるんだ。考えてもみろ、殺人にはなんもシステム的制限がかけられていない。つまり殺人を認めてるんだ、この世界は」
認めている?殺人を?
そっか、それが本当なら俺が取る道は一つだ……
「なら……」
顔を向ける。目は逸らさない。俺の考えは間違ってるはずがないから…
「俺はお前らの仲間にはなれない」
睨みつけて言う。
しばしの沈黙。それを破ったのは当然、フードの男だった。
「……理由は?」
「茅場が殺人を認めてるんなら、俺はそれを否定する。俺はあいつに、この世界なんかに屈しない」
フードの男はため息一つ吐いて身をひるがえした。
俺に背を向けながら言った。
「つまんねぇなぁ…少しは期待したが、所詮はただのガキか」
去っていくフードの男に黒い帽子の片手棍使いの男が声をかけた。
「コイツ……どうします…?」
フードの男は短く
「好きにしろ」
とだけ呟いた。
それを聞いた彼らの反応はそれぞれだった。
短剣使いの頭陀袋は
「なーんか白けちまったしー、俺も帰るかなー」
と言ってフードの男の後を追い、赤目の髑髏は無言でその二人の後に付いて行き、黒い帽子の棍使いはその場に立ち尽くしている。
去って行った三人が完全に見えなくなった後も身じろぎひとつしない。
普段なら軽愚痴の一つも言うところだが、生憎そんな心の余裕はない。
合図はなく、突然走り出して棍を振り上げてくる。
この場で死んでいった三人の名前すら知らないけど、俺はたぶん今日のことを忘れることはできないだろう。
しばらくは、安眠とは程遠い夜を過ごすことになりそうだ。
それでは次回がいつになるか分かりませんがまた会いましょう。
誤字脱字があったら報告していただけると幸いです。
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