ソードアート・オンライン ~反則の剣士~   作:にょぞ

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みなさんおはようございます。

一ヶ月近く放置してしまい、申し訳ありません。
前回は二週間くらいのペースだったんだすが、これからは不定期になるかもしれません。
これからも定期更新を目指して頑張りますので、どうかよろしくお願いします。

それでは21話です。どうぞ




五十層攻略

「あんなのもう……ただのチートじゃねぇか!」

 

声が響く。それを口切りに次々と彼を非難していく。対象はプレイヤー・マキ。その場にいる者はマキの『ある行動』について言及するか、ただ黙っているかのどちらかだった。無論、マキも例外ではない。

 そもそも何故こうなったのか。理由は実にシンプルだ。先ほどの戦い、アインクラッド50層ボス攻略の最後にラストアタックでこそないがそれの隙を作った攻撃。それが原因だ。

 

 

50層ボス攻略は苛烈を極めた。

 金属性の仏像めいた多腕型のボスの猛攻に怯み、あろうことか勝手に転移結晶で戦線離脱するものが続出。それにより戦線が崩壊。結果として援軍が駆けつける前にボス撃退には成功したものの、攻略組には多大な被害が出た。

 その間に攻略メンバーがしていたことと言えば、ボスと戦っている二人のプレイヤーをただ見ているだけだった。呆気にとられていたとも言える。

 一人は名高い血盟騎士団団長、聖騎士とも呼ばれているアインクラッド唯一のユニークスキル持ちの凄腕人、ヒースクリフ。もう一人は最古参の攻略組だが同じく最古参のキリトやアスナと比べると些か以上に知名度の低いプレイヤー、マキだった。

 二人の取った戦法は単純。マキが攻撃し、それをヒースクリフが守る。確かにそこら辺にいる雑魚敵相手なら簡単だがこれがフロアボス、しかもクォーターポイントともなると話は変わってくる。

 ヒースクリフはマキの攻撃の邪魔にならないように立ち回りながらボスの行動を把握し、マキは高火力を出しながらヒースクリフが守れる範囲から出ないという超高難度なことなのだが、二人はまるで長年連れ添った相棒のように息を合わせてこれをやってのけた。余談だが後のマキ曰く「互いに最適解を取り続ければおのずと行動は一致する。まぁ、それだけじゃなかったと思うけど……詳しくは俺も分からん」とのこと。

 

ヒースクリフは持ち前の大盾で自身とマキを攻撃から防ぎ、マキはすでに持ち主のいなくなった武器を地面から拾い上げ、二つの武器でボスと戦った。ソードスキルを発動する際は片方の武器を空中に投げ、その間にソードスキルを発動。終了したらキャッチと言う離れ技だ。一見難しそうに見えるが、これならある程度腕の立つプレイヤーならかなりの時間を掛ければできないことはない。尤も、そんなことに時間をかけるなら少しでもレベルを上げる方が強くなる近道だが。

 しかし、なら何故マキはこうも糾弾されているのだろうか。それはマキが最後にとった行動が本来ならあり得ないことだからだ。

 控えていたメンバーが我に返って体勢を整え戦えるようになり二人は一旦下がり、状況を立て直そうと真っ先に出てきたキリトとマキがスイッチしようとした瞬間、あろうことかマキは左右に持った二本の剣で同時にソードスキルを発動させたのだ。

 この時、キリトは確信した。先日、クリスマスの夜にマキが最後に繰り出した攻撃―――連日の徹夜も原因の一つだろうが―――ソードスキル直後ということもあり一瞬だけ油断したキリトの意識を刈り取ったカラクリはあのソードスキルの同時、ないし連撃だったのだと。

 それと同時に見たメンバー全員に衝撃が走ったがすぐにアスナが的確な指示を出し、大きな混乱は起きずに何とかボスを撃破。しかし、その後はそうもいかない。

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

さっきのあれはいったい何だったのか。見間違いのはずがない。早く教えろ。

 最初はそんなに非難するような言葉ではなかったが、俺が何も言わずにいるとだんだんとエスカレートしていき、今では第一層ボス攻略の再現だ。

 しかし、ここには当時いなかった超カリスマ持ちのプレイヤーがいる。ヒースクリフだ。

 

「みんな、落ち着きたまえ」

 

ヒースクリフの声が響く。その声は喧騒の中でもしかっりと聞こえた。

 

「しかし団長!」

 

血盟騎士団の一人が食って掛かる。ヒースクリフは意に介さずに続けた。

 

「そう一斉に聞かれたらマキ君だって答えにくいだろう」

 

それだけで回りが静まる。さすがは団長。アインクラッド一の名は伊達じゃないってか。

 

「私は直接見ていないのだが、二本の剣で同時にソードスキルを発動させたというのは本当かね」

 

こう一対一で、しかも名高いヒースクリフに聞かれたら答えない訳にはいかないのだが、本当のことを言うつもりもない。

 

「……まぁ、みんなが見たっていうならそうなんじゃない」

 

そんな訳で適当にはぐらかす。ヒースクリフはこれを肯定と取ったらしく話を続ける。

 

「そのようなエクストラスキルは聞いたことがない。もしかして私の様なユニークスキルかな?」

 

ヒースクリフは口元に笑みを浮かべながら聞いてくる。なんというか、その態度が嬉しがっているようで癇に障る。

 

「さぁ?どうだろうな……そもそも他人のスキルの詮索はマナー違反じゃなかった?」

 

ついついきつい態度をとってしまった。案の定、血盟騎士団のメンバーに睨まれる。

 

「そんな事をいえる状況でもなかろう」

 

ヒースクリフは一息ついてから、

 

「ユニークスキルではないとすればエクストラスキルかな…だとしたらぜひ習得方法を教えてほしいものだな。情報の独占はいけないよ」

 

そうだそうだ!なんて声が聞こえてくる。少し周りを見回しみると、アスナ、キリト、エギル、クライン以外は心配するような顔をし、それ以外はみんな睨んでいる。

 

「さぁマキ君。ユニークスキルならばその力をゲーム攻略にために尽くしてくれ。エクストラスキルならばその詳細を教えてくれ」

 

二つに一つ。それでも答えるつもりはないんだけど。

ため息を吐いて51層へと続く階段に向かう。

 

「まだ答えを聞いていないのだが」

 

後ろからヒースクリフの声が聞こえる。俺は足を止めずに言う。

 

「ユニークなら尽力、エクストラなら情報公開。答えは出てんだろうが」

 

「なるほど。行動で示す、と言うことか」

 

「解釈はご自由に」

 

扉を開けて階段に足を掛ける。一層の時よりは悪い空気にならなくてよかったと思う。

 

 

 

  *  *  *

 

 

 

翌日、アインクラッド新聞は俺のことで持ち切りだった。

 『新たなユニークスキル発見か!?』と言う見出しとともに俺の写真と基本的な情報が書かれている。

 まぁこのくらいなら簡単に集まる情報だから何も言わないけどさ。本人に許可取ってから乗せようぜ。

 幸い俺はホームを持たないので家の前に大人数が押し掛けてくると言ったこともなかった。尤も、最前線の宿屋の前には少なくない人数が待ち構えているようだが。

 俺が今いる場所は22層だ。昨日51層のアクティベートを済ませたらすぐにこの層に転移してきた。おかげで誰にも見つからずにこうしてゆっくりと休日を満喫できている。

 主街区のコラルはさほど大きくはないがプレイヤーの姿も少なく、いたとしても世情には興味がなくこうしてベンチでお日様に当たりながら新聞を読むことだってできる。

 こうして見つかって騒ぎを起こさないようにしているとちょっとした有名人になった気分だ。

 今日は冬にしては日差しが温かいせいか、時間が経つにつれだんだん瞼が重くなってくる。本来なら町中で眠るなんて自殺行為だが、ここなら襲われる心配もないし少しくらいなら大丈夫だろう。

 俺は瞼を閉じ、浮遊する意識に身を任せようとした時、不意に日光が遮られた。

 何事かと思って目を開けてみると、そこには呆れたと言わんばかりの顔をして見下ろしているアスナの姿があった。

沈黙すること十数秒。

 何を隠そう、今の俺はアスナと顔を合わせられない状態なのだ。より正確に言うならば合わせる顔がないというか、ぶっちゃけ超気まずい。

 あの秋の日以来、気まずくてずっと避けてきたのだ。

いつかは感謝と謝罪の意を見せたいところだが、如何せんタイミングがつかめない。と言うのも、アスナは血盟騎士団副団長なので常に周りに誰かいるので声をかけづらいのだ。

 そんな感じでダラダラと時間だけが過ぎていき、それは切り出すタイミングを失う訳だ。

という訳で、俺はあまりアスナとは顔を合わせたくなかった。

と言っても目の前にいるならば仕方ない。ここは意を決して声をかけるべ気だろう。

 

「あー……」

 

目線をずらしながら頬を掻く。

そりゃそうだ。いきなり話せと言われて何を話せばいいんだ。

 アスナはそんな俺を見てため息を一つ吐くと真剣な表情をした。どうやら仕事で来たらしい。

 

「血盟騎士団団長があなたをギルドホームに招待しています。案内をしますのでついて来てください」

 

まぁ、仕事と割り切れば確かに話すのは気まずくないだろう。おそらく、それは俺に気を使ってのことだ。

 

「あー…えっと……なんで?」

 

が、そもそも俺にはこの世界で仕事と言う概念が無い。つまりはどんなことをしたって気まずいものは気まずいと言うことだ。

それでも何もないよりはずいぶんと楽なのは確かだ。

 

「あなたね……今の自分の立場が分かってないの?」

 

「あ、はい。すいません。すぐ行きます。」

 

相手にとっては何気ない一言でも言われた当人はそうではない。つまりは、明らかに年上の女の人に上から言われて萎縮してしまうのも仕方のないことだろう。それに加えて俺はアスナに頭が上がらない。

 急いでベンチから立ち上がり転移門へ向かう。転移門は目の前にあるのだ。

俺がアインクラッド39層の主街区を唱えると青い光に包まれる。すると目の前には田舎町が広がっていた。俺も攻略以外でこの層に来たのは初めてだが、こんなところにアインクラッド二大ギルドが一つ、血盟騎士団のギルドホームがあるなんて信じられない。もっと鉄でできた街とかにあるようなイメージだ。

 

「ちょっと……先いかないでよ」

 

転移してきたアスナに言われてしまった。確かにおいて行くべきではなかっただろう。

 

「あ……ゴメン」

 

そんなこんなで歩き出す。そういえば、アスナはどうやって俺の居場所を突き止めたのだろうか。そのことをアスナに聞いてみると「アルゴさんから聞いた」だそうだ。

 まぁ、あいつにとってはそれが商売だから仕方ないと言えば仕方ないんだが………後でなんか仕返ししてやろ。

 そんなことを考えているとギルドホームに到着する。もしかしたら場違いな空気を出しているのではと思っていたがそんなことはなく、いたって普通、と言うよりも思っていたより小さいくらいだ。

 アスナとともに中に入り、一番奥の―――おそらく幹部たちが控えているであろう部屋にノックをしてから入る。

 そこには案の定、ヒースクリフ以下数名が大きな円卓を囲んで椅子に座っていた。てかなんで円卓?アーサー王?

 

「よく来てくれた。マキ君」

 

ヒースクリフが口を開く。深紅のローブを纏ったその姿は、なぜかデスゲーム初日のあの赤いアバターを訪仏させる。

 

「まずは先日の戦いはお疲れさまと言っておくべきかな。我々の恥ずかしい姿を晒してしまったことを謝罪しよう。これからは―――」

 

「能書きはいいです。さっさと本題に入ってください」

 

ボス攻略時と違って、自然と敬語になってしまう。やはり、こうも年上の相手にため口で話すのは気が引ける。

 しかし、それでも俺の言葉を聞いて椅子に座っている大半はこちらを睨んでくる。もちろん、そこにヒースクリフは入っていない。

 

「ならば単刀直入に。マキ君、君は血盟騎士団に入る気はないかね」

 

もちろん断った。

 

 

 





あれ、切悪くね?と思った人。申し訳ない。五十層攻略(と言いつつ後日談)の話はここで終わりです。
と言うのも、今回の話はなかなか落ちが思いつかず、そのせいで更新が遅れてしまい、このままじゃやばい!と言うことで何とか更新できるようにしたので……
そ、その代りに次回は圏内事件をやるので許してください!(いつになるかは不明ですけど……

誤字脱字があったら報告していただけると幸いです。

質問等があったら気軽に言ってください。

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