さて、一ヶ月弱放置してしまい、申し訳ありません。近頃は何かと忙しかったもので……
こんな作品ですが、これからも読んでいただけると幸いです。
それと、サブタイトルに圏内事件と書かれていますが圏内事件と言う単語は一切出てきません。ご了承を。
なかなか良いサブタイトルが思いつきません……。良いサブタイトルを付けるコツとかあるのでしょうか……?
それでは22話です。どうぞ
アインクラッド第57層主街区《マーテン》は良い街だと思う。
人が多いのはあまり好きではないが、それを差し置いてもここには生活を楽しむためのものがたくさんある。その最たるものが料理だろう。この街にあるNPCレストランンは他の層と比較して、かなりおいしい方だ。元々アインクラッドのは変な味のと言うか、微妙な味の料理がたくさんある。キリトから聞いたエギルから聞いて言ってみた50層のラーメンの様なものはその部類の中でも記憶に新しい。ちなみにエギルとは50層《アルゲート》で雑貨屋を営んでいるスキンヘッドの厳つい斧戦士だ。
それはともかく、そう言った理由の他にも最前線がわずか2層上と言うこともあり、俺はこの《マーテン》を仮のホームとしている。と言っても、町中を歩くのは主にほとんど人のいない時間帯だが。
しかし、今日は天気と言うか、気候がいつもより段違いに良いこともあって、迷宮区ではなくフィールドで適当に狩りをしていると眠くなってきたので帰ってきた。そのため、時刻は六時過ぎと少し早めだ。
なかなか人が多いため、晩飯は適当に買って帰るかどうするか悩んでいる時、広場から急に悲鳴が聞こえた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
今の悲鳴は只事ではない。俺はすぐさま悲鳴が聞こえた方向へと走り出した。……どこかで聞いたことのある声だったのは気のせいか?
広場に着くと驚くべきものが目に飛び込んできた。協会らしき建物の二階の窓からロープが垂れていた。そしてその先端は輪になっていて、そこにはフルプレート・アーマーを着た男性プレイヤーが首を吊っていた。それだけではなく、男の胸には一本の短槍が突き刺さっていた。
すぐに協会の中に入ろうとしたが、広場に見知った人を見かけて慌てて立ち止まる。おそらく先ほど悲鳴を上げたであろう人物、ヨルコさんだ。彼女とは以前関わったことがあり、今でも覚えている。と言うより忘れられる訳がない。そして、俺は彼女の顔を見て気づいた。もう一度吊るされている男―――兜をかぶって顔があまり見えないせいで先ほどは気づかなかったが、あれは間違いない。カインズさんだ。
「早く抜け!」
これまた聞き覚えのある声がした。キリトだ。カインズさんは槍を抜こうとするが、返しがついているせいかなかなか抜けない。
「きみは下で受け止めて!」
ほんの少し立ち止まっている間に先を越されてしまったらしい。おそらく近くにいたのだろうアスナの声が聞こえた。人込みで見えなかった。続いてキリトの声。どうやら二人は一緒にいたらしい。珍しいこともあるものだ。
そんな悠長な事を考えている場合じゃない。人が死ぬかもしれないのだ。現にカインズさんは死の恐怖に顔を歪ませながらある一点を見つめている。おそらくHPバーだろう。そして、カインズさんの口が何かを発した―――いや、発しようとした瞬間、カインズさんはガラスが砕け散るような音とともにいなくなり、そこには青いポリゴン片が散らばっていた。ワンテンポ遅れて落下してきた短槍が金属音を響かせながら地面に突き刺さる。
無数のプレイヤー達が悲鳴を上げる。無理もない。圏内で人が死んだのだ。俺だって驚いている。だがしかし、今はそれ以上に―――
「みんな!デュエルのウィナー表示を探してくれ!」
キリトの声が響く。他のプレイヤーは言われたとおりにしているが、俺は指の一本も動かすことができなかった。
カインズさんは死因はおそらく貫通持続ダメージ。そして彼の所属していたギルドのリーダーもまた、貫通持続ダメージが原因で死んだ、殺されたのだ。
ギルド名《黄金林檎》。広場にいるヨルコさんと、先ほど死んだカインズさんが昔所属していたギルドだ。そのリーダーの名前が《グリセルダ》。秋に俺の前でレッドプレイヤーに殺されたプレイヤーだ。
* * *
ここにいるプレイヤー達も事の異常さを感じ、ざわめきは一向に止まる様子を見せない。
「すまない、さっきの一件を最初から見ていた人、いたら話を聞かせてほしい!」
協会から出てきた二人の内の一人、キリトが呼びかける。数秒の後に、おずおずと言った感じでヨルコさんが前に出て行った。
女性プレイヤーだったからだろう、アスナが優しく問いかけた。
ヨルコさん曰く、一緒にご飯を食べに来たらはぐれてしまい、いきなりカインズさんが協会の窓から落ちてきて、その時には槍が刺さりロープが首に括ってあったらしい。そのほかにも、昔同じギルドにいたとか、今でも一緒に食事をする仲だと。そして、カインズさんの後ろに誰か立っていたと。
その後、キリトが一つ二つ質問をして話は終ったようだ。
俺は帰ってアルゴあたりから今回の件の情報を買おうかと考えて宿屋に向けて足を進み始めた時、
「あれ?マキ君?」
アスナの声が聞こえた。
見つかってしまったか。こちらもやることができだので、できる事ならあまり巻き込まれたくなかったのだが仕方ない。あとでヨルコさんには話を聞こうと思っていたから結果オーライだ。
振り返っるとアスナはもちろん、キリトとヨルコさんも驚いた顔をしていた。俺がここにいるなんて思いもしなかったんだろう。
「あ、うん。それじゃ」
と言っても、ヨルコさんが俺が見ていたことを知れば話す機会なんていくらでも作れるのでこの場は帰らせてもらう。
足を動かして宿屋に向かう。次は振り返らないと決めた。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
が、今度は腕を掴まれた。さすがに女性の手を振りほどくことはできない。この年で女性とは言えないかもしれないが、俺くらいの年代にとっては1,2歳ちがうだけで別世界の住人みたいな感じがするのだ。
「………なにか?」
目を逸らしながら言う。アスナとはこの間のこともあってより一層話しづらくなったのだ。
しかし、アスナはそんな俺をみてため息を一つ吐き、言った。
「入団を断ったことなら気にしてないから……」
そっちはそうでもこっちは気にするんですよ。大体、俺が一番気にしてるのはそっちじゃないっつーの。
「マキもいたのか。偶然だな」
キリトが近づいて声をかけてくる。というか、そんなに気軽に声を掛け合うほど俺達って仲良かったっけ?
「マキさん……ご無沙汰しています」
ヨルコさんはこちらに頭を下げてくる。こういった態度はあまりなれないが俺も頭を下げる。
「えっと……こちらこそ」
「あれ?マキ君とヨルコさんって知り合いだったの?」
驚いたようにアスナが聞いてくる。まぁ当然だろう。攻略組の俺と中層プレイヤーのヨルコさん。リアルでの知り合いでもなければまず関わらないいだろう。それもさっきの態度を見ればそうでないのも明らかだ。
「あー……昔ちょとね」
前にグリセルダさんの死を伝えに《黄金林檎》に行ったことがあり、ヨルコさんやカインズさんとはそこで知り合ったのだ。そのため、明るい話をするような仲ではない。
しかし、そんなんで伝わるわけもなく、二人ともクエスチョンマークを頭の上に出して首をかしげている。
「まぁいいわ。これからヨルコさんを宿屋に案内するから話し合いはそのあとで」
アスナは言いながら歩き出しながら言った。言及しないでくれるのはありがたいし、ヨルコさんを送っていくのは賛成だけどその言い方ではまるで……
「あのー……俺も帰りたいんだけど……」
アスナは一旦足を止めると、振り返って笑顔で言った。
「もちろん、手伝ってくれるよね?」
どうやら俺に拒否権はないようです。
補足です。
細かいところですが、キリトがマキに気軽に声をかけているのは、キリトがシリカにマキの話を聞いたからです。……誰も不思議に思わなかったですかね?
実は今回の話は3000文字ピッタリなんです!
どうでもいいことですが、書き終えた後に少し感動しました。
それでは、
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