ソードアート・オンライン ~反則の剣士~   作:にょぞ

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少し遅いかもしれませんが、あけましておめでとうございます。

前回からだいぶ空いて今いました。申し訳ありません。
年が明けばかりだと思っていたらもう二週間弱経っていました。
もうすでに仕事や学校は始まっていますね。時間が経つのが速くてびっくりです。

それでは26話です。どうぞ


休息

 

 

 『圏内事件』解決から三日経った。

 俺は朝まで剣を埋めたりとレッドと戦ったりして結構な一大事であったのだが、アインクラッド全体としては些細な事件に過ぎなかった。そのことについては俺も予想していた。そして、その後に控えているであろう大騒ぎも、薄々は感づいていた。

 『圏内事件』解決のために、血盟騎士団所属のアスナは団長であるヒースクリフを頼ったそうだ。また、聖生連合に所属していて攻略組のシュミットさんは一時期は怖がって攻略どころかギルドホームから一歩も出ずに引きこもっていた。そのため、些細な事件であったとしても、上に報告を要求された。ここまではいい。問題は、その時にシュミットさんが俺のシステム外スキルについて口を滑らせてしまった事だ。

 もちろん、聖生連合は躍起になって俺から話を聞き出そうとした。血盟騎士団はその話を耳にするや否やアスナに詳しい報告を求めた。結果、アスナは詳細は話さなかったものの、それがシステム外スキルだということがばれてしまった。

 そんな訳で朝起きてみると俺が寝泊まりしていた宿屋の前には大量の人だかりができていた。そこには聖生連合や血盟騎士団の服を着たプレイヤーもいた。どうやら攻略よりも新しい技を習得する方が優先度が高いらしい。

 しかし、だからと言ってこちらの貴重な手札を公開するわけにもいかず―――――

 

「……ここに逃げてきたってわけね」

 

 回転する大きな砥石に剣を当てなが、らため息交じりにリズことリズベットは俺を横目で見る。ここはあんたの隠れ家じゃないのよ、と訴えているように見えるが気のせいだろう。

 俺が今いる場所は48層《リンダース》にある《リズベット武具店》だ。何を隠そう、目の前にいるピンク髪の少女が経営する店だ。少女、と言っても俺よりは年上だろうが。

 

「逃げてきたんじゃなくて武器を返しに来たんだよ……」

 

 椅子を前後逆に座りながら背もたれに顎を乗せながら言う。

 

「そんな格好で言っても説得力ゼロよ」

 

 リズの言葉に少しだけムッとした表情になる。誰だって朝っぱらから大人数と追いかけっこをしたら疲れるだろうに。

 ため息を吐く。目の前の少女には何を言っても無駄だろう。より一層背もたれに体を預ける。

 しばらくの間、勢い良く剣を研ぐ音だけがこの空間を支配する。数十秒か数分か、数えてはいないがそのくらい経ったころ、急に音が止んだ。

 

「よし、全部終わり」

 

 リズが立ち上がって剣を鞘に納める。俺が貸してもらった武器の修繕は全て終ったようだ。

 

「ねぇリズー」

 

「何よ?」

 

 後片付けをしているリズの背中に声をかける。気軽そうに言ってはいるが実は言い出すタイミングをうかがっていた事を切り出す。

 

「剣作って欲しんだけど。オーダーメイドで」

 

 リズはそれを聞くと作業の手を止め、こちらに向き直った。

 

「あんたぇ……そういうことは最初に言いなさいよ」

 

 これまたため息交じりだ。ため息の数だけ幸せが逃げていくなら真っ先に不幸になるぞ。

 

「うっ……い、言い出すタイミングが無かったんだよ……」

 

 と言ってもリズの言い分が正しいのは否定できない。己の命を預ける物なのだから話題の優先度としては最高だろう。

 少しだけ気まずくなってしまい、目線を横にずらす。すると急にリズが笑い出した。

 

「な、何?」

 

「いや、そんな格好でそうしてるとあんたが新聞の一面を飾るような大物には見えないなーって思って、つい」

 

 チラリとすぐ傍にある作業台に置いてある新聞に目を向ける。そこには『攻略組・マキの秘密はシステム外スキル!?』と言う文字が大きく書かれていた。秘密は秘密のままにしとけっつーの。

 服装に関しては、まぁ仕方ないとして。今の服は長袖のTシャツに長ズボンと言うラフな格好だし。

 

「それで、作れる?」

 

 リズは金庫をタップして中を確認する。いいやつあったかなー、などと呟きながらウインドウ下へ下へスクロールしていく。そして、不意に扉の向こう、つまり店側からチリンチリンとベルの音がした。

 

「リズ―?いるー?」

 

 客はどうやらアスナらしい。さて、ここは逃げるべきかな。

 そう思って立ち上がろうとした所をリズに押さえつけられる。実はリズは俺がなるべくアスナと顔を合わせないようにしていることを知っているというか、アスナに相談されたことがあるそうだ。

 

「リズ―?」

 

 そうこうしている内にアスナが作業場の方に入ってきた。ノックぐらいしたらどうですかね。女の子同士は平気なんですか。

 

「あれ?マキ君も居たんだ。どうしたの?」

 

 俺は傍らにある新聞を掴むとアスナに見せつけながら睨む。誰のせいだと思ってるんだ、という事を言外に伝える。

 

「あ、あはー……リズ、剣のメンテお願いできる?」

 

 見ましたか、無視しましたよこの人。

 

「はいはい、そこ置いといて」

 

 リズはそれだけ言ってまた金庫の中身を確認しだした。アスナはそんなリズを見て不思議そうに言った。

 

「何してるの?」

 

「マキが新しい剣が欲しいんだって」

 

「へぇー……実は私も新しい武器について相談しに来たんだけど……」

 

 どうやらアスナも要件は同じのようだ。と言っても、俺みたいに剣が壊れたという訳ではないが。

 

「アスナも?まぁかまわないけど……お、あったあった」

 

 リズはウインドウをタップして淡く黄色に輝くインゴットを実体化させ、それを作業台に乗せる。光がこんなに薄いのにも関わらず明るい場所でもわかるってのはゲームだからだろうか。

 俺もアスナも顔を近づけて見入ってしまう。見た感じかなりのレアアイテムっぽいけど……

 

「いいの?こんなの使っちゃって」

 

「あのねぇ、インゴットってのは武器を作るためのにあるんだから使わなかったら本末転倒じゃない」

 

 確かにそうだが、何だかもったいない気がしてしまうのは日本人だからだろうか。

 そうは言ってもこれはかなりの物。しかし、一つだけ問題がある。

 

「……一個だけ?」

 

 アスナと俺。二人ともオーダーメイドを頼みたいと言っているのだ。つまり、インゴットも二つ必要なはず。

 

「あ、それなら私もインゴット持ってるから大丈夫だよ」

 

 そう言ってアスナが取り出した物も相当な物だと一目でわかった。白銀に輝き、映ったものをすべて反射する姿はさながら鏡のようで、これが一級品じゃないはずがない。

 

「ちょっと!こんなレアものどっから取ってきたのよ!?」

 

 リズがアスナに詰め寄る。アスナは身を反らして苦笑いをしながら答えた。

 

「ギルドの倉庫にあったから貰って来たのよ」

 

 さて、驚くべきはこんな物を持っていた血盟騎士団か、それを貰えるアスナか。とりあえず、これでインゴットの問題はなくなった。後は作るだけだ。俺はリズを見る。

 

「よし、こんなに良いもの使うんだから気合い入れなきゃね!」

 

 リズは作業台に置いてあった剣を片付けようとして、何かに気付いたように声を上げた。

 不思議に思っていると、リズは良からぬことを思いついたのが丸分かりな笑みを浮かべて俺を見た。

 

「この子たちのレンタル代。どーしよーかしらね?」

 

 くっ、気づいたか。このまま有耶無耶になる流れだったのに。

 しかし、問題はそこじゃない。あのリズの表情だ。いかにも悪だくみを思いついた子供の顔だ。と言っても、俺に拒否する権利もなく、

 

「……お手柔らかにお願いします」

 

 リズは俺の持っている新聞を奪い取ると、それを俺に見せつけた。さながら俺がさっきアスナにしたように。そして、左手は腰に当て、新聞を持った右手はそのままで言った。

 

「あんたのシステム外スキルについて教えなさいよ」

 

 沈黙。静寂。数秒後。

 

「……はぁ!?」

 

「あ、それ私も知りたい」

 

「いいじゃない。実質タダだし」

 

 こいつは情報の持つ価値を理解していないようだ。ここはアインクラッドに住むプレイヤーとして一から説明する必要があるだろう。

 俺は背もたれを両手でつかんで体を引き剥がし、後ろに体重をかけながら言う。

 

「いい?情報っていうのは場合によってはステータスよりも重要で……」

 

「いいじゃない。教えてよ、マキ君」

 

 アスナまで何を言い出すのだろうか。と言うかそもそも、

 

「アスナにはこの間教えたじゃん」

 

「えー。だってあの時は『こういうのがある』ってだけで詳しいとこまでは教えてくれなかったじゃない」

 

 まぁ、そうやすやすと手札を見せるわけにもいかないし、何よりキリトあたりなら話聞いただけで出来そうだったりするし。

 が、俺のことを凝視する二人を見ると、どうやらこっちが折れるしかなさそうだ。

 

「はぁ……他言無用だからね」

 

 すると二人は子供みたいに顔を輝かせて首を縦に振る。少し意外だった。リズはともかく、アスナもこういうのに興味があったなんて。

 

「剣貸して」

 

 アス作業台の上にある自分のレイピアを鞘ごと渡して来た。羽のように軽いものだと思っていたが、握ってみると確かにここにあることを感じられる重さがあった。

 

「ええと……今、俺はこの件を装備しているんだけど……」

 

 レイピアを鞘から抜いて言う。次に切先を作業台の上にのせて掌を開く。剣はさながら橋のように二点で支えられる。

 

「この状態じゃ装備はしていない」

 

 それを見たアスナは手を顎に当てて少し考えるしぐさをした後に言った。

 

「つまり、剣を装備せずに持つことで、両手に武器を持ったままソードスキルが使えるって訳ね」

 

「そういうこと」

 

「でも、そんな事できんの?そうやって持ってるのと戦うのじゃかなり違うでしょ」

 

 俺はレイピアを左手に持ち替えてシステムウインドウを開く。可視化状態にして装備フィギュアを二人に見せる。

 

「別にこのまま戦う必要はないんだ。逆の手でソードスキルを使っている時にどっかにいかないで、かつシステムには装備していないって認識する程度で」

 

 俺の装備フィギュアの左手の項目は空欄になっているが、確かに俺は今左手で剣を握っている。

 ここまで説明しても二人はまだ信じられないと言った表情だ。まぁ、俺もあんまり説明得意じゃないからなぁ。

 

「何て言うかな……指で摘まむのの延長で……」

 

 俺が言いあぐねていると急にリズが大きなため息を吐いた。そんなに分かりにくかったか?

 

「ま、こうして目の前でやられてるんだから信じない訳にはいかないか」

 

 どうやら俺の心配は杞憂のようだ。いや、安心するのはまだ早い。

 俺は次にアスナに目を向ける。アスナはさっきと同じポーズのままで固まっていた。そして息を一つ吐いてから呟いた。

 

「私には無理そうかな………ね、これどのくらい練習したの?」

 

 アスナが俺に聞いてきた。心の中でホッと一息つく。二人とも納得してくれたみたいだ。これでレンタル代がタダになったぞー!

 

「うーんと……一年くらいかな」

 

「うひゃー。よく続けられたわね」

 

 と言っても、本気で練習し始めたのは去年の11月からだけど。

 

「それで?話したんだからちゃんと剣作ってくれるんだよね?」

 

 レンタル代だけでなくオーダーメイド代すらもタダになればいいなー、とか思いつつリズに言うと、

 

「しょーがないわね。次はちゃんと金取るからね」

 

 俺の思惑はバレていたようだ。少しだけ椅子の座り心地が悪くなった。

 リズが武器作成の準備をしていると、暇を持て余したアスナが俺に言った。

 

「ねぇマキ君、さっきのシステム外スキルって名前とかあるの?」

 

 あるにはあるのだが……。自分で付けた名前を他人に言うのは少し恥ずかしい。ただ、隠していると思われるのもめんどくさい。という訳で、俺はアスナと目線を合わせないようにして答えた。

 

「………で、《多重武器装備(デュアルアーム)》」

 






「ご都合主義だ!」とか「無茶苦茶だ!」とか言わないでください……
作者の無い頭を捻ってこれなんです。どうかご勘弁を……

《剣技連結》についてはみなさん知っていると思うので説明は省かせていただきました。
聞かれれば応えますが、ネットで検索すればすぐに出てくると思いますよ。

それでは、誤字脱字があったら報告していただけると幸いです。

質問等があったら気軽に言ってください。

感想、待ってます!

今年も本作をよろしくお願いします。

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