ソードアート・オンラインが開始してから一ヶ月で2000人近くが死んだ。
結局、外部からの助けはなかった。
あったのは、ゲームが始まってから数日後にプレイヤーが一時間ぐらい立て続けに回線が切れるというという事件がおきた。
おそらくは、一時的に回線を切断して生身のプレイヤーを病院へと収容したのだろう。
そしてアインクラッド第一層は、いまだ攻略されていない
そして今日、ようやく第一層攻略会議が開かれる。
これが早いのか遅いのかは正直俺には分からない。
だが、これがデスゲームが開始してから初めての大規模攻略になるだろう。
成功すればいまだ『始まりの町』で待つプレイヤーの希望になるだろう。
失敗は、できない。
なんて考えているプレイヤーはこの中に何人いるだろう。
少なくとも俺はそうではない。
ちなみに、俺の目標である『アインクラッド最強』は諦めた。
だって、無理だもん
俺はこの1ヶ月でそのことを思い知った。
そう思いながら≪トールバーナ≫の広場にいる42人のプレイヤーを見渡した。
俺がこの会議に来たのだってデスゲームの解放という大層な理由ではない。
ただ、自分より強いプレイヤーがどれほどいるのか確かめにきただけだ。
あと、ボスのレアドロップが欲しかったのもある。
俺が今いるのは第一層迷宮区から一番近い町、≪トールバーナ≫だ。
この町の噴水がある大きな広場で会議が開かれる。
今から、ここで
まぁ、今からと言っても開始時刻を過ぎてるんだが…
それから二人のプレイヤーが来てから、この会議の主催者と思われる男が手を大きく叩いて言った。
「はーい!それじゃ、5分遅れだけどそろそろ始めさせてもらいます!みんな、もうちょっと前に……そこ、あと3歩こっち来ようか!」
ふむ、なかなかいいプレイヤーだ。
これからはこんなプレイヤーが他の人たちを引っ張っていくのだろう。
ディアベルと名乗ったその男がユーモアを交えて自己紹介をした。
それから声のトーンを低くしていった。
「今日、俺たちのパーティが迷宮区の最前線でボス部屋を発見した。」
その声を聞いて、どよどよ、とプレイヤーたちがざわめく。
「1ヶ月…ここまで来るのに1ヶ月かかったけど、それでも俺たちは示さなきゃならない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームそのものもいつかきっとクリアできるんだってことを、始まりの町で待ってるみんなに伝えなきゃならない。それが俺たちトッププレイヤーの義務なんだ!そうだろ、みんな!」
喝采。
そりゃそうだろう。
非の打ちどころのない演説。
みんなをまとめ上げてくれるリーダーシップ。
どれもお俺にはできないことだ。
だからまぁ、俺も拍手の一つぐらい送っておくべきだろう。
と、手をたたきかけたその時、
「ちょお待ってんか、ナイトはん」
後ろから声が聞こえた。
その男は小柄にしては体格がよく、黄色いサボテンみたいなトゲトゲの頭をしていた。
ないわ~、あの頭はないわ~
「そん前に、こいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへんな」
ディアベルは表情変えず、むしろ笑顔で手招きしながら言った。
「こいつっていうのは何かな?まぁ、なんにせよ意見は大歓迎さ。でもその前に名乗ってもらってもいいかな?」
「…………フン」
サボテン頭は噴水の方に行き、こちらに振り向いた。
「ワイはキバオウってもんや」
それからキバオウは周囲をじっくり見まわしてからドスのきいた声で言った。
「こん中に、五人か十人、ワビぃ入れなああかん奴らがおるはずや」
「詫び?誰にだい?」
ディアベルが問う。
「はっ、決まっとるやろ。今まで死んでいった二千人にや!!」
なるほど。
彼が何を言いたいのか大体わかった。
「………キバオウさん。君のいう≪奴ら≫とはつまり……ベータテスターのことかい?」
キバオウは厳しい顔をして言った。
「決まっとるやろ」
おそらくキバオウは、ベータテスターを糾弾するつもりだろう。
お前らのせいで多くの人が死んだ。
お前らがもっとレクチャーなりをしてくれればこんなことにはならなかった。と
現に目の前ではそんなことをキバオウが言っている。
ふっ、甘いなキバオウ。俺なんかベータテスターに殺されかけたぞ。
そんなことを思っていると急に別の声が聞こえた。
「発言、いいか」
その男はチョコレート色をした肌に大柄のスキンヘッドだった。
「俺の名前はエギル。キバオウさん、あんたの言いたいことはつまり、元ベータテスターが面倒を見なかったからビギナーがたくさん死んだ。その責任をとって謝罪・賠償しろ、ということだな?」
「そ……そうや」
一瞬気圧されたかのように見えたがすぐさま前傾姿勢をとって叫んだ。
「アイツらが見捨てへんかったら、死なずに済んだ二千人や!もしアホテスターが情報やらアイテムやらを分け合ってたら、今頃二層やら三層までクリアしてたかもしれへんやで!」
馬鹿かコイツ。
今まで死んでいった二千人に中にはベータテスターだっていたんだぞ。
そんなこともわからずにこんなことを言っちゃて、ちゃんちゃらおかしい。笑ってしまいそうだ。
「アイテムはともかく、情報ならあったと思うぞ」
そう言いながらエギルは一冊の本を取り出した。
「このガイドブック、あんたももらっただろう。道具屋で無料配布しているからな」
エギルが持っているのは≪鼠マーク≫のはいったガイドブックだ。
もちろん俺ももらった。
「もろたで。それがなんや!」
「この本を作ったのは、元ベータテスターだ」
周囲がざわついた。
「いいか、情報はあったんだ。なのにたくさんのプレイヤーが死んだ。その理由は、彼らがベテランのMMOプレイヤーだったからだとオレは考えている。このSAOを他のタイトルと同じ物差しで計り、引くべきポイントを見誤った。だが今は、その責任を追及してる場合じゃないだろ。オレ達自身がそうなるかどうか、それがこの会議で左右されると、オレは思っているんだがな」
悔しげに睨むキバオウにディアベルは言った。
「キバオウさん、君のいうことも理解はできるよ。でも今はエギルさんの言うとうり前を見るべきだろ。…元ベータテスターを排除して、結果攻略が失敗したら元も子もないじゃないか」
さすがナイトさん
うまくこの場のふいんきを丸くしやがったな
「みんな!この攻略本だけど、ついさっき最新版が出た!」
おお、という声が聞こえた。
そこには第一層のフロアボスについて色々と書いてあった。
そして最後には真っ赤なフォントで『情報はSAOベータテスト時のものです。現行版では変更されている可能性があります。』と書いてあった。
「……みんな、今は、この情報に感謝しよう!」
聴衆が揺れる。
「なんせ、こいつのおかげで一番危険だった偵察戦をやらなくて済むんだから。正直、一番死人が出ると思るのは偵察戦なんだ」
周りのプレイヤーは賛同の声を上げる。
お前ら意見変えすぎだろ。もっと自分というものを持てよ……
そして俺は、ディアベルの次の言葉に息を詰まらせた。
「それじゃあさっそくだけど、近くにいる人でパーティーを組んでくれ」
まずい。まずいまずいまずい
周りを見ると、もともと知り合いなのか、すぐにパーティを組んでしまう。
知り合いのいない俺は誰ともパーティーを組めなくってしまう。
いや!待て!落ち着け!何か解決策があるはずだ!
必死に周囲へ目を向ける。
あれは、キリト!
おそらくキリトも一人のはずだ。ならばキリトと組めば…
そうこうしていいると、キリトは他のプレイヤーと組んでしまう。
なにぃぃぃ!キリトが一人じゃないだとぉ!
くっ、終わった、、、
どうやら俺はボス攻略に参加できないらしい
「なに世界が終わったみたいな顔してんだよ」
顔を上げるとそこにはキリトがいた。
「おぉ、キリト…俺は信じていたぞ!」
やばい。キリトが光って見える。
「なんだよいきなり……」
キリトがつぶやく。
「それよりパーティー組まないか?どうせ一人だろ」
言うようになったな。キリト
まぁ事実だから言い返せない。
「あぁ、そうだな。頼む。」
そういうと、キリトはパーティー申請を送ってきた。
俺は迷わずYESのボタンを押す。
すると視界の左上に自分のものではないHPバーが二つ表示された。
「もう一人のパーティーメンバーは?」
俺が聞くとキリトは向こうで座っているプレイヤーを指さした。
「あのフェンサーだ」
どうやらレイピア使いらしい
「そうか」
「声、かけていくか?」
はっ、そんなことする訳ないだろ
と、言いたいところだが、パーティー間での交流も大切だろうと思い、
「あぁ、そうだな」
するとキリトは驚いたような顔をした。
「なに?」
「いや、意外だと思ってさ。断るもんだと思ってたから…」
そうか。
まぁ、そうだろう。
昔の俺ならそうしてた。
「別にいいだろ。ほら、行こうぜ」
「あ、あぁ…そうだな」
俺たちはフェンサーさんの元へ歩いていく。
「ええと…よろしく」
俺がフェンサーさん、名前はアスナというらしい、の前に立って言ったが、
「えぇ……」
反応はそれだけだった。
いや、もうちょっと何かあってもいいでしょ。名前言うとかさぁ
まぁいい。そっちがそういう反応するならこっちだってそうしてやる。
と思ったところでディアベルがこちらにやってきた。
しばし考える様子を見せてからこう言った。
「君たちは取り巻きのコボルトの潰し残りが出ないように、E隊のサポートをお願いしてもいいかな」
まぁ、少人数グループは大人しくしてろってことか
「了解。重要な役目だな、任せておいてくれ」
キリトがにこやかに返すとディアベルは噴水の方へ戻っていった。
「……どこが重要な役目なのよ。ボスに一回も攻撃できないまま終わっちゃうじゃない」
「し、仕方ないだろ、三人しかいないんだから。スイッチでPOTローテするのにも時間が足りない」
「……スイッチ?ポット……?」
ふむ、どうやら本当にニュービーらしい
となると誰かが説明しなければならない訳だ
…おいキリト、こっち見てんじゃねぇ
「じゃ、あとよろしく」
こういう時は即時撤退に限る
「あ、おい!」
キリトの声が聞こえたがもちろん無視する
そのまま≪トールバーナ≫の町を歩く。
あ、そういえば明日の集合時間聞いてねぇや……
あとでキリトか情報屋にでも聞くか…
何か指摘や質問等があったら気軽に言ってください。
感想、待ってます!