運命の檻 作:我輩は猫ではない
アラームの音が鳴り響く中、僕は目を覚ました。体を起き上がらせ、顔に手を当てる。片方の手ではぎゅっとシーツを握りしめた。冷や汗が止まらない
とても、嫌な夢を見た。嫌な夢。震えが止まらない。なにをやってるんだろう、僕は。もう、大丈夫なのに、昔のあいつらはもういないのに、笑っちゃうよ…
僕が皮肉に笑った時、扉を叩く音が聞こえた
「…どうぞ」
入ってきたのは、小さい頃から僕の世話をよく妬いてくれいる執事の椿だった
「凪様!おはようございます!!朝食の準備が出来ましたので、お呼びにきました!」
椿は元気よく声を出しにっこりと笑った
「…相変わらず元気だね」
「元気だけが取り柄ですから!」
にこにこと僕を見ながら笑う椿に少し元気が出た。そうだ、もう僕には新しい生活があるじゃないか。なにを今更怯えているんだろう
「…ありがとう、椿。すぐに準備をして行くよ」
「了解しました!」
椿は扉から出て行った
「椿様、おはようございます」
「おはようございま…うわぁぁぁぁ!?」
廊下ではドンガラガッシャン!!と派手な音が聞こえた。恐らく椿がまたドジを働かせたのだろう。…まったくちらっと自分が写っている鏡を見ると、口元が緩んでいた。震えも止まっている。…さぁ、今日からまた"新しい平凡な生活"が待っている
僕はすぐに準備に取り掛かった
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新しい制服に手を通し、身だしなみを確認する。…大丈夫そうだ。自分の部屋から出て、食堂に向かうとトーストの芳ばしい匂いが漂っていた。
部屋に入ると長く白い大きな机に、ぽつんと今日の朝食が並べられている。席につき、それらを食べ始めた
周りを見ると父や母もいない。いつも自分の息子より仕事を優先する親。例えそれが自分の息子の入学式でも、だ。まぁ、あんなのいなくたって別にいいけど。まったく、前世からつくづく親とは縁がない。まぁ、あの人達がいきなり優しく接するのも気持ちが悪いけどね
朝食を食べ終わると、メイド達が食器をかたずける。僕も席を立ち玄関に向かう。玄関に向かうと既に他の執事やメイドが学校へ行く準備をしてくれていた。僕はブレザーを受け取り、鞄を持った
「凪様、行ってらっしゃいませ」
他の執事やメイド達も口々に『行ってらっしゃいませ』と頭を下げていた。
「あぁ…行ってきます」
僕は玄関を出て、新しい学校へと向かった
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僕の家から、徒歩15分くらいのところに白桜中学校はある。近いし、楽だし、何よりあいつらがいない。小学校の頃は友達も全然いなかったが、平凡で穏やかで幸せだった
嬉しくって、幸せな毎日。こんな日常をずっと待っていた。親が煩いのが欠点だったがそれでも幸せだった。
父は蒼夜財閥という企業の社長で…簡単にいえばエリート中のエリートが働く会社だ。そんなエリートな僕の親は僕に海外の学校へ行かせようとした。が、僕があの手この手で海外に行くこと阻止した。
確かに、海外へ行くのも悪くはないかと思ったが今いる親友と離れるのは嫌だったからだ。
親にも納得してもらえるような優秀な中学を選んだ結果、僕はこの白桜中学に入学することとなった。本当にラッキーだった。
白桜中学に近づくにつれて、桜が散り舞っていく。校門の前を通りすぎると、辺り一帯桜尽くしでまさに白桜という名にピッタリだった。
まずはクラスを確認して、あいつと一緒だったらラッキーだけど、無理だったら本を読んで…
「ふぐっ…!」
今後の予定を考えていた時だった。背中に衝撃が走った。誰かと思い後ろを振り返った。その正体を見て、僕は驚いて、目を見開く。
“そこには『私』そっくりの少女がいた。”
「ご、す、すみません…前を見ていなくっ…て…」
『私』が僕に向かって謝っていた。って、違う。彼女は『私』じゃない。でも…その姿を見た瞬間、僕の心の中は真っ白になった。え、なんで、僕は、ここにいて。もう、私は死んじゃって、違う。僕が殺して。だから、僕はもう私じゃなくって…え、嘘。なんで、どうして、なんで。なんで
僕が頭で葛藤としていたら、パシャッとフラッシュの音が聞こえた。その音を聞いて僕のこんがらがっていた頭がはっと目を覚ました
「す、すみませんでした。私、綺麗なものを見るとついて写真を撮ってしまう癖があるっていうか。いや、別に変態じゃありません。だからと言ってあなたが綺麗じゃないって訳じゃないんですけど…えっと、つまり…」
『私』は挙動不審に視線を泳がし、僕に向かって謝っている。彼女は色々となにかを言っているが今はどうでもいい。僕は彼女の容姿を見た。前髪は、『私』みたいな感じで髪も『私』と同じくらい長くて、髪の色も『私』や僕と同じ藍色で…でも、少し違うのはふんわりとした髪にポニーテールをした所だった。
彼女は一体なんなのか?僕の頭の中では疑問がつきない
「ほ、本当にすみませんでした…じゃあ、これで…」
考え事をしていたら、彼女はいつの間にか僕に謝ってそのまま歩いて行こうとした。
その背中は小さく、昔の『私』にそっくりだった。その姿を見たとき、なぜか無性に悲しく、切なく、小さく感じた。待ってっ!行かないでっ!!と心の中が響く
なんで、なんでっ…!僕は彼女の手を無我夢中に掴んだ
『…えっと、』
悲しい、切ない、悲しい、切ない…僕の心の中で悲しいと切ないが入り混じっている。けど、いまはそんな事関係ない。僕は…なんで…っ!
「ここに『私』がいるんだよっ…!」
無意識に、そんな言葉を口にしていた
…これが、僕と高宮律との出会いだった