翠星のアイドル   作:神谷佑都

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8話

 気付けばミクは何処か分からない場所に来ていた。マスターといた憶えのある自然はなくなり、瓦礫の山と砂地が広がる。一目散に逃げてきたため、何処をどう、どれくらい走って来たかも分からない。

 でも今更戻りづらいし仕方がないかと思う。

 

「はははははは……」

「……!?」

 

 突如起こる笑い声にミクは驚いた。いったい何だろうと見回してみる。それはすぐに分かった。蒼い雷が走っていたためだ。

 

「ぐっ、く……」

 

 シュウウゥゥと焼け焦げになった影がいくつかと、立ち据える影がいくつもあった。

 

「人間が粋がるなよ。なぁ?」

「……っ……」

 

 人間とアンドロイドだ。焼け焦げにされた方がが人間で、殺されそうになっていた。

 

「もう一回言えるか?アンドロイド風情が何だって?」

「……っ……ぁ」

「今は休戦状態か知らねぇけどな。俺たちが虐げられたことは変わらねぇ。いつでも仕掛けてやるぞ。はははははは……」

 

 軍隊のように数いる者は全てアンドロイドだった。盗賊まがいのことをやっている連中だ。ちょうど乗り物が破壊されてあるところを見ると、通りすがったところを狙われたのだろう。

 

「あ、シュプール様誰かいますよ」

「……っ」

 

 瓦礫の影に隠れてうかがっていたミクが見付かった。トップらしきアンドロイド、シュプールは、蒼い雷を掌から撃って瓦礫を消し飛ばす。

 

「……んん? 何だアンドロイドか。別にコソコソする必要はないぞ。人間だったなら別だったがな」

「……」

 

 シュプールは同じアンドロイドは敵とみなす気はない。それは部下の者にもその方針を義務付けている。つまり、ミクが襲われることはなかった。ミクが、人間たちの前に立たなかった限りは。

 

「んん? それはいったい何の真似だ?」

 

 シュプールは不思議でならない。何故自分と同じアンドロイドがあそこに立っているのか。何故人間の前に立っているのか。まるで、自分たちに立ちはだかり、あろうことか人間を守るような位置に。

 同時にミクにも不思議だった。何故私は此処に立ったのだろうか。気付けば体が動いていたのだ。

 

「それは俺たちに盾つくってことでいいのか?」

 

 自分でもよく分からないミクは答えることが出来ない。

 

「おい貴様、質問に答えろ」

「くくく、まぁ待て待て。ちゃんと選択の余地は与える。それが俺たちのやり方だろうが」

 

 宥めるようにシュプールが諭すと、部下はそれ以上何も言わない。

 

「さて、お前は俺たちの敵なのかどうか。答えろ。分かりやすくイエスかノーだ。無回答はイエスととる。さぁ、答えは?」

「……」

「だんまりか。悲しいねぇ。共食いは、あまり好きじゃないんだがな」

 

 

§

 

 

 

 本当にこっちで合っているのか、俺は半信半疑になりつつあった。

 

「今度こそちゃんと合ってるんすか」

「え~と、ちょっと待ってね。何だか反応がいっぱいあって」

「はぁ?」

 

 反応がいっぱいって。ミクがいっぱいなのか。ミクが増殖でもしたのだろうか。とりあえずこれしか当てがないのでスピードを上げていく。

 

「うおっ!」

 

 突然、目の前の遥か向こうで爆発が起きたのでびっくりした。いったい何事なのか。もしかしたら急いだほうがいいのかもしれない。

 

「あ、バチ君。いたよミクちゃん」

 

 電子ゴーグルをつけている俺には、エレナさんよりも早くミクを発見した。どうしてこんな展開になっているのか分からないが、早く着いたほうがいいのは確実だ。

俺たちが到着出来た頃、立っているのはミクと、蒼いたてがみをした長身のアンドロイドだ。

 

「……シュプール……様……」

「ハァ……ハァ……」

 

 パンパンと手を叩き、アンドロイドはミクを賞賛した。

 

「いやいやお見事。うちの連中も中々な屈強揃いのはずなんだが、それを全部倒すとは」

 

 シュプールが右手で頭を抱えるように抑える。バチッと何かが弾けた。蒼い雷だ。

 

「だがな、少し調子に乗りすぎだ」

「……!?」

 

 一気に距離の差を縮めるシュプール。消えたようにも見えるスピードはバイクの速さを遥かに越える。それに対応するミクも、やはりアンドロイドだと思わせる。

 

「……凄い」

 

 エレナさんがぽつりと漏らす。俺もそう思った。目で追うのがやっとだ。一連の動きを詳細に掴むのは難しかった。

 

「それで避けてるつもりかぁ!」

「っ……」

 

 前と思えば右。左と思えば上。後ろと思えば左。両者は互いにフルスピードで駆け抜け、飛び上がり、立体的に動き回る。

 

「ふっ」

「ちっ……」

 

 頭上をとったミクが両手でハンマーのように、シュプールの頭を打ち抜く。そのまま地上に叩きつけられる刹那、シュプールは受け身をとって瞬時返しに入る。

 

「ぐっ」

 

 肘打ちを受けて怯んだ隙をついて、シュプールはオウム返しのように頭上をとって打ち抜いた。

 

「なっ」

「きゃ」

 

 ミクが落下した衝撃が、俺たちにその攻防の凄まじさを教えた。

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