ミクは無事なのか。凄まじい風が起こり、砂を舞い上がらせ目を開けてられなかったために分からない。
「……!?」
ミクは視線を反らすことなく、上空にいるシュプールを視界に留め続けた。多分そうしないと、ミクでもすぐ見失うんだろう。
「なるほど。思ったより頑丈らしいな。仕方ない。レベルを上げるか」
バチチッ……と、両の手から生むのはさっきも溢れた殺気の象徴である蒼い雷。これから戦闘に使用するという宣告だ。
「……」
ミクは何も言わずに見定めるだけだ。何を考えているのか。どうしたいのか。今は訊くことが出来ないのが歯がゆい。
「行くぞっ!」
手に集中的に雷が纏う。俺もあいつが何をしようとしているのか気付いた。
「逃げろミク!」
俺が叫ばなくてもミクは予測して回避していたようにも思える。実際、俺が叫ぶ頃にはもう飛び上がっていた。
「外したか」
「……!?」
いや、ミクはそれ以上を予測した。地に堕ちた雷は、そこから派生するように周囲を襲った。当然近くにいた俺たちは巻き添えを喰らうハメになる。はずだった。
「……!?」
「ハァ……ハァ……」
「ミク……お前……」
「……早く、避難してください……マスター……」
ミクは第二撃が来ないように、すぐさま敵のもとへ向かった。ミクは戻ってきていた。俺たちを助けるために。エレナさんは気絶しているが、たいした損傷はない。俺も同様だった。それと同等以上に気になることがある。
「マスター……って……」
ミクは俺をマスターだと思ったんだろうか。だからわざわざ助けたのか。
あんなにボロボロになって?
マスターじゃない俺のために?
くそ、何なんだよ俺は。
「ははっ。まさか人間がいたとは気付かなかった。しかし、わざわざ身を呈して守るとは……何を、考えてやがるんだ!?」
「う……ぐっ……」
先程の雷撃がミクの機動力を大幅に削っていた。もう互角なんかじゃない。圧倒的に不利だ。
「だが、お前が最初守ろうとした人間たちはもう死んだな」
ミクはまだ余力を振り絞り、シュプールの背後に回り込む。
「こざかしいわ」
「……っ」
それを予測していたのか、ミクが回り込んだ瞬間に雷が姿を見せる。いや、予測しようがしまいが関係ない。シュプールの回りにはクモの巣のようにあらかじめ張り巡らせていた。
「もう力は残っていないようだな」
落下していくミクに、追い撃ちをかけるように一撃分雷を撃つ。ミクは地上に叩き付けられた。
「ここまで戦ったお前に敬意を評して、一撃でバラバラにしてやろう」
シュプールが構えた両の手の中心に、一つの光る球体が生まれる。その球体は徐徐に大きさを増やし、激しさを増していく。
「さらばだ……同胞よ」
球体は瞬間最高潮で輝き、最大級の稲妻を落とした。ミクの頭上に。
「……なにっ!?」
まさかと驚いたのはシュプールだ。予定外なことで表情を崩している。
「……ハァ、ハァ、ったく、マジで死ぬかと思った」
ちゃんとミクを抱きかかえているのを確認すると安心した。呼び掛けてみるが返事はない。ただ気絶しているようだ。これだけ激しい戦いをして気絶しても、綺麗な顔で眠っていた。
§
「……マス……ター……?」
ミクが目を覚ましたとき、ミクは同時に恐怖を覚えた。
「くそっ……駄目だな……一分も、もたねぇ」
マスターが自分をかばって倒れた。ミクにはそう映ったらしい。
「四十二秒。よく持ったほうだ。人間にしてはな」
倒れた先に見えたのは、人間を攻撃していたアンドロイドだ。いやミクの中ではそれは上塗りされた。マスターを傷付けた敵であると。
「退いて。マスターを、連れて帰るから」
「俺がそれを承知するとでも?」
「なら、力付くで」
ミクは右手を広げて振るった。瞬時、右手に持っているのは……。
「何で、ネギ……?」
突っ込むバチ。思ったよりまだ余裕があるかもしれない。
「ふざけてるのか」
ミクは答えない。そんな暇もないかのように、ミクは攻撃を開始する。
「ぐ、ぁ」
まるで見えない。その神速の如き速さは、今、シュプールの目にも映ってはいなかった。
「ちっ……」
体勢を立て直すため、後退して距離をとるシュプール。が、それより早くミクが差を詰めていた。
「なっ……にぃ……!?」
見た目はネギそのものだが、切味は抜群だった。何故切れるのかは分からない。その秘密が分からない限り、シュプールが勝つのは難しい。