Fate/again night   作:神谷佑都

8 / 8
VSアーチャー

 早い。何でか分からないが、休みの日としてはいつもより早く目覚めてしまった。学校に行くための時間と変わらない。二度寝する気分じゃなかったし、そんなことしていたら確実に今度は寝坊してしまう。

 

 とりあえずはいつも通りだ。最低限自分を整えると、朝飯を作るために台所に向かった。

 

「……なっ!?」

「む……」

「何やってんだアーチャー」

 

 驚くことにアーチャーが飯を作っていた。その上から身に着けているエプロンは自前か。自前なのか。

 

「ああ。見てわからないか。朝食を作っている」

 

 そんなもんは一目瞭然だ。問題はそこじゃない。何でお前が人の台所を勝手に借りて飯を作っているかだ。そのことを主張すると、アーチャーは巧みに料理を作り続けながら答えた。

 

「なに。たまにはこうやって鍛錬しないと腕が鈍ってしまうからな。それに、もうこれだけ空が明るいと敵も来ないだろうし暇だった」

 

 鍛錬とか言ってるが、付け足しだ。どう考えても暇だったんだろうと推察出来る。

 

「しかしお前……」

「何だ?」

 

 言わなきゃ駄目なのか?

 いったい何時から作り始めたか知らないが、これは朝食のボリュームではない。何でこんな豪勢なステーキとかがあるんだ。

 

「気にするな」

 

 アーチャーは全く気にしていない。むしろ久々に腕を振るったからか満足気なほどだ。本当にこいつは見張りをしていたのかと疑問を抱く。

 

「さて朝食も出来たし、セイバーを起こしてこい」

「は?」

「せっかく作ったのだ。冷める前に食べてもらわないといけないだろう。何を驚いている?」

 

 そんなことは分かってる。いや合理的に言えば正論だ。だが、セイバーを起こしに行くだと。無理だ。

 

「ふむ。大方意識しすぎてるんだろうが、だから貴様は未熟なのだ。仕方ない。どれ、私が起こしに行こう」

「おっと、そうはいくか」

「何のまねだ?」

「お前には行かせないと言ってるんだ」

 

 何でセイバーの寝起き姿をこいつに見せなくてはならないんだ。ここは止めねばなるまい。

 

「止めるか? 私を」

 

 アーチャーはそう言って瞬時に投影した一刀を投擲した。

「うっ……」

 

 なんとか避けたものの、その隙にアーチャーはあっさりとすり抜けた。当てる気などさらさらなく、ただ隙を生じさせるためか。

 

「待てアーチャー」

 

 俺も慌てて後を追った。

 

 止まりそうにないアーチャーは、庭に面した縁側の廊下を駆ける。俺は弓と矢を投影してアーチャーに狙いを定めた。鍛錬は嘘をつかない。この程度の投影なら瞬時に成功は可能だ。アーチャー相手ならこれぐらいはしなくては止められない。

 

「ふん」

 

 だがアーチャーは一瞥しただけで止まる気配はない。

 

「後悔すんなよ」

 

 ならこっちも容赦はしない。俺は問答無用で射った。しかし、アーチャーは投影した夫婦剣であっさりと弾き飛ばした。

 

「ち……」

 

 甘かったか。何を考えてるのか分からないし、知りたくもないが、アーチャーは失笑した後、床を蹴ってセイバーの部屋へと駆けてゆく。

 

「投影開始(トレース・オン)」

 

 俺は先回りしてアーチャーの真ん前に出る。大したことはない。廊下を回るアーチャーに対し、俺が部屋を突っ切っただけの話だ。

 

「これが最後の忠告だアーチャー。これ以上進むというなら容赦はしない」

 

 俺も奴と同様、夫婦剣である干将・莫耶を手にした。次は斬り込んでいくという意思の表れだ。

 

「止める……? 私を? 貴様の投影でか?」

「……どういう意味だ」

 

 分かってる。これは奴の挑発に過ぎない。

 

「それすらも分からぬとはな。貴様の投影では、私を止めることはできないと言ったのだ。衛宮士郎」

「アーチャー!」

 

 挑発と分かっても、いや挑発だと分かるからこそ、向かわずにはいられない。

 

「ついてこれるか」

「てめぇの方こそついてきやがれ」

 

 まず右の斬撃。右から左へ、上から下へ振り下ろす。それをアーチャーは余裕で受け止める。そんなことは予想済みだ。左の斬撃を続けて繰り出す。

 

 速い。アーチャーも腕を振りかざしていた。俺の手腕より随分早く切り込んできた。攻撃のつもりが防御に回ることになる。一旦互いに距離を取り、再び打ち合う。左から右。下から上への斬撃を俺は避わし、後の先を取る。

 

「……!?」

 

 だが、同時にアーチャーは右腕の軌跡を辿るように、左の斬撃が攻め込む俺を襲う。

 

「ぐっ……」

 

 何とか防ぐに間にあったものの、その衝撃に腕が痺れた。かといってそんなことに構ってられない。俺はすぐさま反撃に出た。

 

「遅い」

「ち……」

 

 だが、アーチャーの奴は距離を取ってしまっていて届かない。さらには、その無防備となった剣を破壊された。投影の差を見せつけるかのように。俺はすぐさま次の剣を投影してアーチャーへ斬り込む。

 

「ふん」

 

 今度の投影はより完成に近付いたか、アーチャーの剣を破壊出来た。だがアーチャーもすぐ投影すると、剣を打ち合う結果になる。

 

「これに対処できるか?」

 

 アーチャーは投影した剣を投擲した。くるくると回転しながら俺に向かってくる。実に単純な手だ。

 簡単に飛んでくる剣を弾く。いや弾こうとした。その手前で、爆発した。

 

「ぐっ……」

 

 爆発は小さいもので問題はない。ただ視界が塞がってしまった。俺は庭に転がって回避した。予想通り、煙の向こうから矢が飛んできた。ここまでやるか。 だが、そっちがそのつもりならこっちも容赦はしない。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。