-ラバウル-
「今村さん、そろそろ撤退の容易は出来ておりますね?」
「もちろんです山本さん。部隊は既に再編され、マリアナ方面への引き上げは準備は完了しております。」
「では、輸送船へ分乗して撤退しますか。」
山本は長門とプリンス・オブ・ウェールズ、レパルスと共に南方方面最前線のラバウルへと来ていた。
「輸送船は全部で10隻。よくこれだけの輸送船を確保できましたね。」
今村はマリアナ要塞化の為に内地や各方面の輸送船を引き抜いていることを知っており、10隻も撤退の為に用意できるとは思っていなかった。
「航空機のほうは指示通りに置いておきましたか?」
「はい。昨日から故障機と無人機を指示通りに配置しましたが、一体?」
そこへ、空襲を知らせるサイレンが鳴り響いた。
「敵襲!!」
ガダルカナル方面からはB-25とP-38、トラック方面からはB-17が飛来してきた。
「敵さん、ガダルカナルをやはり航空基地に使っていたか。」
B-17は回り込んでトラック方面から飛来し、B-25とP-38は直進してラバウルまで飛来してきたのだ。
「無人機が迎撃に向かいます。」
見ると、烈風が30機上昇し、迎撃に向かった。
-港-
「輸送船を守れ!!。」
港では撤退のための輸送船を守ろうと各自対空機銃をに付いて応戦している。
「アメリカ軍は輸送船を狙ってきたのか。」
甲板にいる長門は自分に向かってくるB-25を見て言う。
「投下用意、目標は前方の戦艦!」
「き、機長、右を!!。」
「何!?」
だが、既に遅かった。プリンス・オブ・ウェールズの連発式対空砲に狙い撃ちにされて撃墜された。
「大丈夫ですか?長門先輩?」
ウェールズが瞬間移動してきた。
「ええ、ありがとう。」
「アメリカは二手に分かれてラバウルを空襲しているそうですよ。」
「丁度いいわ。新型対空砲の威力を試せるじゃない。」
新型対空砲。VT信管付き対空砲は十分な性能を発揮し、自艦に向かってくる敵機を見事に撃墜し続けている。
「斉藤さんの書いた設計図と、物理学者の石原純さんのお陰ね。」
結局、輸送船に至近弾が一発あったが被害は無し。飛行場機能も20%程度しか失わず、烈風も8機が撃墜されたに留まった。
逆にP-38を6機とB-17が3機、B-25は8機を撃墜した。
-アメリカ・サンフランシスコ沖-
「浮上!!」
浮上した大型潜水空母「伊5000」型は搭載機数60機の潜水艦である。そして、護衛してきた「伊2500」型は巡航ミサイル搭載の中型潜水艦である。
「まさか、見つからずにここまで来れるなんてね。」
伊5000の艦魂は目の前に広がるサンフランシスコの街並みを見て言う。
「搭載機上げ!!」
甲板の飛行甲板に備えられている2基のエレベーターは次々と搭載機を上げ、上がった艦載機は次々とカタパルトで打ち出されていく。
「巡航ミサイル、射出準備良し。」
伊2500級4隻はそれぞれ巡航ミサイルを射出座に乗せ、命令を待つ。
-サンフランシスコ海軍基地-
「敵だ!!」
飛来した彗星と烈風は片っ端から爆弾やロケット弾で攻撃を開始する。
「迎撃、迎撃!!」
基地内にある機銃や高射砲を使って迎撃を開始する。
-ロスアラモス原爆工場-
「敵爆撃機襲来!!」
内地を飛び立った富嶽重爆撃機はロスアラモス目指して飛行していた。
「電探に感あり。50機が向かってきます。」
「アメ公、今度はこの前みたいにいかんぞ。」
富嶽の中には空中戦艦「羽島」と空中空母「風龍」が混じっており、風龍から長距離戦闘機「先秦」が切り離され、迎撃に向かう。
「な、何故戦闘機が!?」
完全に油断した迎撃隊は次々と撃墜され、運よく防空陣を突破しても羽島の対空火器の餌食となり、一機も迎撃できなかった。
「原爆工場視認。爆弾投下!!」
突入した富嶽重爆撃機はロスアラモス原爆工場を完全破壊し、悠然とドイツ向かって飛行した。
-サンフランシスコ郊外-
「気を付けろ。」
烈風が無傷で墜落している言う情報を聞きつけ、陸軍が調査の為に派遣された。
「見つけたぞ。」
烈風は確かに無傷で置かれていた。置かれていただ。
「連中、破壊し忘れたな。」
実はこれは完全な罠だった。この烈風はわざとここに降ろした。しかも、性能や弱点もゼロ戦と同じにして油断させるための罠であった。
「これで、開戦から無敵とされていた敵機の性能が分かるな。」
「搭乗員は?」
「さあな。とにかく、これは回収しよう。」
そこに、大きな音が突然響いた。
「な、何だ!!」
見ると、ゴールデン・ゲート・ブリッジが沈み始めていた。
「橋が。」
巡航ミサイル4発はサンフランシスコの象徴である橋に命中し、完全に破壊することが出来た。
-石原莞爾の自宅-
「それで、私に再び軍務に復帰して中国共産党指導者の「毛沢東」と講和、国民党を中国大陸から一掃しろと。」
「はい。国民党政権を討伐することでアメリカの中国での覇権を崩し、アメリカ国民に一気に厭戦気分になってもらいます。そして、その厭戦気分の中で我々海軍がマリアナに接近した艦艇を完膚なきまでに叩きのめし、上陸した連合軍兵も要塞化した島の前に屈して貰います。」
「しかし、太平洋のほうはそれでいいかもしれんが、欧州は?」
「既に手は打ってあります。」
「ふむ、確かに面白い作戦だな。確かに、これを成功させれば太平洋での戦争は終わる。なかなか考えたな。」
「いえ閣下。太平洋だけでなく、本大戦自体を終結させます。」
-近衛文麿邸-
「私は三度首相の座に就き、経験と人脈、民心と主上の覚えも少しはあるやもしれぬ。軍部政治を倒すために担ぐ神輿としてはこれ以上無い人材だろうね。」
「あなたは1940年7月に内閣決定がした『基本国策要綱』に対する松岡洋右外務大臣との対談で使って流行語化した『大東亜共栄圏』。これを私が初めて聞いたとき、アジア解放を目指して戦おうと考えていました。しかし、現実には難しく、軍部の独裁による圧政が一部の島で起きていると聞いています。このままでは、日本は本当に世界の孤児となってしまいます。」
斉藤の指示を受け近衛邸を訪れていた寺沢は自分の意思をハッキリと近衛公爵に伝える。
「思い出したくもないあの晩・・・・ここで対米英開戦が決定したこの部屋で、私に再び第4次近衛内閣を組織せよと、そう仰るのですか?」
「あなたはあの時、東條英機・・・いえ、彼を後押しする陸軍に開戦へと踏み切られてしまった。」
「貴方の言う講和の時期、それが一番最適な時ですか?」
「はい。マリアナでの勝利を機に講和。これしか日本には残されておりません。これ以上続けますと多方面での不利が生じます。何とか、ここで終えたいのです。」
「講和などと勝手に動けば、陸軍の連中に暗殺されかねない。犬死は御免だね。」
「名前は明かせませんが、陸軍の主戦派を抑える陸軍将校が極秘裏に動いております。彼ならやってくれるでしょう。それに、いざとなれば我が海軍も。」
すると、近衛の側近は
「馬鹿な、一介の中佐が海軍全てを動かせるはずがない。」
「山本長官では、どうですか?」
「ぐっ。」
「山本長官が元々この計画をお立てになったのです。私はその許で動いている海軍中将の指令でここに来たのです。」
「しかし、陸海軍の大臣は誰が遣れば?」
「海軍は米内光政、陸軍は今村均が行います。」
「今村さんはともかく、米内さんは。」
「二人とも了解を得ております。貴方の手で講和内閣を作り、本大戦の幕引きに尽力して貰いたい。」
-ドイツ ミュンヘン-
「遅いな。」
亀井はミュンヘンにあるホテルの中であるドイツ軍将校を待っていた。
「あなたが、亀井さんですか?」
現れたのは大佐の階級章を付けた人物だった。
「お会いできて光栄です。SS第101重戦車大隊のシュタイナーです。」
史実よりも早く創設された重戦車大隊所属の将校が亀井の会う人物だった。
「貴方はSSに所属していながらも反ヒトラー派の人間と伺っております。」
「全くそのとおりです。それで、私にどうしろと?ヒトラーを暗殺しろなどと仰るんじゃないないですよね。」
「その通りです。しかし、直接手を下すのは私です。貴方は、ベルリンにいる親衛隊を抑えることをやって貰います。貴方はドイツ各軍に顔のきくお方だ。仲間を大勢いるんでしょう?」
「まあ、確かにそれなりの者はおりますが、ヒトラーを殺すのは危険ですよ。」
「ご心配なく。方法は考えていますので。」