異次元からの贈り物   作:橘花

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秘密工作員

-軍令部-

 

「お待たせしてすみません。谷豊さん。」

 

軍令部にて待っていた、史実では死んでいるはずの人間。谷豊。史実ではマレー半島で活動した盗賊であり、日本陸軍の諜報員として働いた経歴もあり、マレー電撃戦の影の立役者とも言われている人物である。

 

「それで、私を呼び出して一体なんです?」

 

「実は、貴方にある所に潜入していただきたい。」

 

「一体どこです?」

 

「ハワイ。この場所がいまどんな状況なのか正確な情報がほしいのです。そして、必要なら破壊工作もお願いしたい。」

 

「それで、私の利益は?」

 

「成功した暁には時価200億の金塊を提供します。一生遊んで暮らして生けるほどの額です。」

 

「悪くない条件だが、もうひとつ。」

 

「なんです?」

 

「潜水艦がほしい。それを使って世界中の深海を見てみたい。」

 

「非武装なら提供できますが。」

 

「できれば深度500まで潜れるのを頼む。」

 

「分かりました。では、行きましょう。横須賀へ。」

 

 

 

-横須賀-

 

「では、先ほど伝えておいた場所に頼む。」

 

伊169潜水艦の艦長に事情を話してあり、その潜水艦でハワイに上陸する計画だった。

 

「お任せ下さい、寺沢中佐。では、谷豊さん。こちらへどうぞ。」

 

艦長が谷豊を艦内に入れ、出航を命じて横須賀を出撃した。

 

 

 

-ガダルカナル-

 

「まだ動いちゃいけないのかしら。」

 

サンガモンの艦魂「サンガモン」は退屈そうに飛行甲板から漆黒の海を見ていた。時間は午後10時。すっかり暗くなり、哨戒任務も夜間の為に行われていない。

 

「もう、日本軍も攻撃してこないんだし移動してもいいと思うだけど。」

 

 

 

「浮上!!」

 

ガダルカナルから西へ30kmほど行ったところに4隻の潜水艦が浮上した。それは、先のサンフランシスコ空襲で巡航ミサイルを放った2500級潜水艦である。

 

「巡航ミサイルを射出座に装着し、命令あるまで待機せよ。」

 

 

そして、ガダルカナルに島影に隠れてレーダー探知を免れながら接近する日本艦隊が居た。

 

「三川長官、敵はまだこちらの存在に気づいてはおりません。夜間奇襲成功です。」

 

「全く、山本長官も私にガダルカナルにいる敵輸送船団を撃滅して来いと言った時には驚いたが、まさかこんなにうまくいくとは。」

 

「また、得意の大博打ですかね。」

 

「ああ、あの人に博打で勝てる人なんかこの世界に存在しないよ。」

 

実際、山本長官の博打の腕前は世界中に知れ渡っており、モナコのカジノでは出入り禁止が喰らうほどである。

 

 

 

「発射!!」

 

巡航ミサイルが勢いよく飛び出し、ロケット推進でガダルカナルの飛行場目指して飛行を開始する。

 

 

 

「何かしらあれ?」

 

サンガモンは西から飛行してくる巡航ミサイルに気づいた。

 

「まさか、あれがドイツや日本が開発したって言う噴進弾?」

 

巡航ミサイル4本は飛行場へ命中し、ガダルカナルのヘンダーソン飛行場に駐機されている全ての航空機は破壊された。

 

「敵襲!!」

 

それと同時に艦隊のサイレンが鳴り響き、戦闘態勢に入る。

 

「輸送船団に近づけ。輸送船を一隻も沈めさせるな。」

 

現在、輸送船には弾薬や食料など、兵が1ヶ月間戦えるだけの補給物資を満載していた。

 

 

 

「敵の飛行場から火災発生中。」

 

伝令兵が艦橋にいる三川軍一中将に報告する。

 

「山本長官、食えないお方だ。」

 

三川はパラオの方角を見て言う。そして、

 

「島影から出る。敵艦隊に夜襲を仕掛け、輸送船団もろとも駐留艦隊を撃滅する。」

 

夜戦の鬼と言われた名に恥じぬ顔つきになり攻撃命令を下した。

 

「砲撃開始。」

 

三川艦隊の旗艦重巡洋艦「鳥海」を先頭に、重巡2隻、軽巡4隻、駆逐艦8隻の夜間水雷戦隊である。

 

艦橋には鳥海の艦魂『鳥海』が敵艦隊を見据える。

 

「アメリカとは直接撃ち合うのは初めてだな。」

 

鳥海は刀を抜き

 

「今こそ、我が皇国の力を思い知らせてやる。」

 

 

 

「敵艦隊出現!!」

 

駐留艦隊旗艦のサンガモンのレーダーが島影から現れた三川艦隊を捉える。

 

「急げ!!早く輸送船団に近づけ。」

 

油断していた。輸送船からかなり離れた所に停泊していた為、向かうのには時間がかかった。

 

 

 

 

「三川艦隊が突入した模様。」

 

伊2500潜は再び巡航ミサイルを射出座に乗せて待機していた。

 

「分かった。三川さんの援護も我々の仕事だ。発射!!」

 

再び巡航ミサイルは放たれ、敵艦隊目指して飛行を開始する。

 

 

 

「撃ち方はじめ!。」

 

鳥海を旗艦とする三川艦隊は単縦陣になって輸送船団の側面に進出。そこから主砲と魚雷を撃ち分けて次々と輸送船を海に沈めていく。

 

「長官、敵艦隊が接近してきます。」

 

報告を聞き、三川は敵艦隊のいる方角を見る。すると、その敵艦隊の空母に向かって飛行する巡航ミサイルを見つける。

 

「あれは?」

 

 

 

「噴進弾接近!!」

 

輪形陣を突破し、巡航ミサイルはサンガモン目指して飛行してくる。

 

「いやああぁぁぁ!!」

 

その瞬間、巡航ミサイルはサンガモンの飛行甲板と左舷に命中する。

 

「がはぁ!」

 

艦魂のサンガモンは背中と左脇腹から血が出て、続いて吐血をする。サンガモンは飛行甲板から大火災が発生し、舵が右に切れていく。

 

 

 

「長官、輸送船団は全滅しました。敵の空母も炎上中。」

 

「丁度良い。あの空母の火災を松明代わりに攻撃を開始せよ。」

 

火災が発生しているサンガモンを松明代わりに付近にいる駆逐艦と重巡目掛けて砲撃と雷撃を開始する。

 

「面舵一杯!!右舷水雷戦始め!!」

 

反転しながら右舷に向いている魚雷発射管から魚雷が放たれる。

 

「敵重巡洋艦に命中。撃沈しました。」

 

「砲撃、駆逐艦に命中。大破!!」

 

艦橋には次々報告が舞い込んで来る。

 

「敵、魚雷を発射!!」

 

「面舵一杯!!」

 

鳥海に向かってくる魚雷を難なく回避する。アメリカ海軍の魚雷は二酸化炭素を排出して進むため、日本の酸素魚雷と違って航跡がよく見えるのだ。その為、回避は容易であり、夜戦になれないアメリカは一方的に遣られていく。

 

「敵駆逐艦撃沈!!重巡大破!!」

 

「愛宕より、『我魚雷使い果たした、撤退を開始する。』と発光信号」

 

「分かった。許可しろ。」

 

夜戦では砲撃よりも魚雷がカギを握り、それを使い果たしたら満足な戦果は期待できない。その為、魚雷を使い果たした艦艇から逐一撤退を開始する。

 

「敵、重巡1隻撤退したのみ。他は全滅です。」

 

中破した重巡洋艦『ボルチモア』は攻撃が激しくなる前に撤退しており、何とか難を逃れた。

 

 

-ボルチモア-

 

「覚えておきなさいよ日本軍。必ずこの恨みは晴らすわ。」

 

ボルチモアの艦魂『ボルチモア』はガダルカナルの方角を見て言う。背中や足からは血がにじみ出ており、正直立っているのがやっとだが、それよりも突然の奇襲による味方艦隊全滅の方が腹が立ち、その怒りで立っているようなものだった。

 

 

 

 

-パラオ-

 

「鳥海から、敵のガダルカナル駐留艦隊の壊滅報告が届いたわ。」

 

秋島が会議室にいる艦魂に報告する。

 

「敵護衛空母1隻撃沈。重巡洋艦5隻沈没、1隻中破。駆逐艦6隻沈没。」

 

「こちらの損害は?」

 

「愛宕が艦首に20センチ砲を2発喰らったぐらいで、後は大なり小なりよ。」

 

「沈没艦なしか。さすがは斉藤中将の推薦した人だね。」

 

金剛が言う。

 

「では、そろそろ我々の方の撤退を開始しなければいけないな。アメリカの反攻もそろそろ情報機関Gの報告にあった日に近づいているし。」

 

大和は秋島の方を見て言う。

 

「ええ、そうね。明日から少しずつ撤退が始まるわ。マリアナ決戦も近づいているし、斉藤中将の講和計画実現も近づいているわ。」

 

「早く平和な戦後世界になってほしいよ。そうすれば、我々は悠々と停泊していられるんだから。」

 

「ああ、最低限独立させたかった地域は独立したし。あとは決戦を挑んで講和が一番だな。」

 

「マリアナとトラックは日本の領土になるんでしょう。」

 

「ええ、斉藤中将の計画にはそうなっているわ。」

 

「でも、彼の言う戦後ではマリアナやトラックは独立しているはずだよ。」

 

「ええ。でも、グアムを除く全ての島が今だアメリカ合衆国の統治領でもあるの。それに、戦後暫くはトラック諸島もアメリカ領だったの。」

 

「そ、それじゃあ独立できなかったの?」

 

全艦魂達が秋島を見る。

 

「ええ、私達の戦いが史実では無駄に終わったそうよ。」

 

「そ、そんな。」

 

「でも、私達は予定通りそれぞれの島を手に入れ、日本軍と現地政治の独立を行い、基本的には現地政治に任せる方針を採る。それが、斉藤中将の望んだ戦後世界よ。」

 

「彼は思想家としても高い才能を持っているな。」

 

加賀は冗談半分で言う。

 

「そんな彼の計画に乗った私達も十分な思想家よ。」

 

長門が答える。

 

「そうだ。我々は彼の言う戦後世界をよりよいものにする為に戦っている。それが、計画の途中で命を絶った赤城を含む全艦魂に対する我々の使命なのだ。」

 

大和が立ち上がって言う。

 

「そうよ。全ては平和たる戦後のため。」

 

金剛も同意する。

 

「ああ、勝とう。マリアナ決戦に。」

 

加賀も同意する。それと同時に、会議室にいる全艦魂が立ち上がり、

 

「全ては戦後世界の為に。」

 

全員で言い、壁に掛けられている艦魂『赤城』の絵と時の『昭和天皇』、海軍旗の『旭日旗』に酒を掲げ、一気に飲み干した。

 

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