その日、斉藤は山本の言葉を思い浮かべながら長門の寝室に就いていた。
-数時間前-
「君が私の部下と言う事で作戦に協力してほしい。」
「へ?」
「私は君の言うとおり航空機の真価を理解しているつもりだ。だが、先程も言ったとおり軍令部や大艦巨砲主義を固める旧勢力は私の説得など一切応じようともしない。」
「はあ。」
「そこで、君を新第一機動部隊司令長官に私自らが任命する。すなわち、君の言う真珠湾攻撃を君自身で完遂してほしい。」
「え?」
来て間もない人物に世界最強の機動部隊指揮官に任命するのもどうかと思うが、山本自身は本気であった。それは、この作戦で新たに航空機の時代が来る事を旧勢力の連中に見せ付けるのが狙いである。
「しかし、私は艦隊指揮どころか艦隊勤務自体無いのですよ。そんな私を艦隊指揮官に任命するのはどうかと。」
「心配は無い。山口君は話が分かる人間だ。南雲君は分からないが、君なら十分やれると私は思う。」
「しかし、司令長官を勝手に決めるのはあまりよろしくないかと。」
「なら君を航空参謀に任命するかね?」
「いえ、海軍に籍を置かない私を艦隊勤務にさせるのがどうかと。」
「そうかね?君は艦隊勤務の経験があるように見えるが、その潮の香り、それにこの艦に乗ってから一度も潮臭いと言っていない。」
「!。」
実は斉藤は海上自衛隊で4年間洋上勤務をしており、全く経験の無い訳ではなかった。
「分かりました。第一機動部隊を預からせて頂きます。」
斉藤は観念して山本の命令を聞く、丁度その時に長官室の扉が叩かれる。
「入っていいぞ。」
山本がそう言うと、扉が開き、先程出て行った長門とその他艦魂らしき少女が入ってきた。
「貴様が長門の言う斉藤か?確かに変わった服装だな。」
「あっ、あのう、君は?」
「おお、すまない、私は戦艦金剛の艦魂「金剛」だ。よろしく。」
「ああ、よろしく。」
金剛と握手をする斉藤は
(なるほど、やはり英国生まれだけあって目は日本の目ではないな。)
金剛の目の色は青であり、英国で生まれた事をあらわしている。
「ん?長門。そちらの艦魂は誰かね?」
扉の近くにいた数名の艦魂はこれまで山本が見た事もない艦魂であった。
「ああ、彼女等はあの島に停泊している艦の艦魂だそうよ。ええと、名前は。」
長門は名前を思い出そうと考えるが、扉の近くにいた中の1人が前に出て
「私はウィルキア帝国本国艦隊のヴォルケンクラッツァー2よ。」
「ウィルキア帝国?そんな国名は知らないぞ。」
「私達も大日本帝国なんて知らないわよ。尤も、私達は戦争するなら何処へでも協力するしね。」
「戦争しかする事が無いのかよ?」
「私達は兵器よ。兵器は戦争以外で存在意義があるわけ無いじゃない。」
「君は可哀想だよ。戦争でしか自分を表現できないなんて。」
「なっ、なんですって!!」
ヴォルケ2は怒った表情で殴りかかろうとするが、手を止められる。
「落ち着いてくださいお姉様。確かにこの者の言う事にも一理あります。」
「なっ、ヴォルケ。あなた、姉の私に逆らうの?」
「だから落ち着いてくださいと言っているのです。ここでいがみ合っても仕方がありません。」
「それはそうと、君は?」
ヴォルケと呼ばれる艦魂はヴォルケ2の手を止めながら。
「私はウィルキア帝国本国艦隊のヴォルケンクラッツァーです。今貴方に殴りかかろうとした人の妹です。」
(なんで冷静な方が妹なんだ?生まれてくる順番間違えたとか?)
斉藤はそう思う始末である。
他の艦魂も止めに入って、何とか事無きを得た。そして、各艦魂の簡単な自己紹介をして自艦へと戻った。
「では長門。斉藤君を寝室に案内してあげなさい。」
「分かりました長官。斉藤さん、此方へどうぞ。」
そう言って長門の案内を受けて、今に至るわけである。
-最初の時系列に戻る-
「明日から大変だな。まあ、楽しい時間を過ごせるのも今だけだろう。」
9月6日。運命の開戦まで残り三ヶ月と二日である(日本時間で)