-軍令部-
「各方面での説得は完了しました。」
斉藤は軍令部に居る寺沢から報告を受ける。
「そうか。これで、心置きなく終戦への道を歩めるな。」
斉藤は安息の溜め息をもらす。彼の考えた戦後世界の下準備は殆ど完了したのだ。
「それと、情報機関Gがようやくアメリカの第二の原爆工場を発見しました。」
斉藤はそれを聞いて
「一体何処で造っているんだ?」
「はい。調査の結果、オークリッジ国立研究所で製造されているようです。」
「オークリッジだと。」
斉藤には思い当たる節がある。史実にてアメリカは第二の原爆である長崎型原始爆弾のプルトニウムの製造を任せた所だ。
「ファットマンを造っていると言う事は、アメリカはプルトニウム型原爆を日本に投下する気だ。」
「プルトニウム?」
「説明は後だ。とにかく、その研究所を破壊する。」
斉藤は北海道にある飛行場に連絡を入れた。現在、そこには50機の富嶽がこの原爆工場破壊の為に待機しており、その全てに出撃命令を下した。
-北海道 愛国飛行場-
「急げ急げ!!出撃命令は下っているぞ!!」
急いで富嶽に搭乗している陸軍重爆撃隊の隊員は祖国を救えると思い、息高揚している。しかし、彼らの戦隊司令官はこの原爆工場破壊とは別の任務も背負っていた。
愛国飛行場からは富嶽50機が緑ヶ丘飛行場からは羽島と風龍が合わせて50機飛び立った。
太平洋上にて編隊を組み、アメリカ本土目指して全速力にて飛行を開始する。
-ドイツ-
「それで、ヒトラーの今後の予定が判明したんだな。」
亀井はクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐にベルリン市内で会った。彼は斉藤から反ヒトラー派である事を聞いており、彼を使ってヒトラーの身辺調査や予定等を探っていた。
「それで、12月3日にヒトラーはフランスに装甲列車でゲッベルスを除く側近らと共に向かい、パリ市内の博物館を視察すると。」
「ああ。」
「全く、戦時下だと言うのに呑気な人だ。」
欧州で暗躍を続ける亀井は反ヒトラー派の人間を出来る限り味方に引入れ、ベルリン市内の制圧に当てようと考えていた。それに、彼にとってゲッベルスが一緒に行かないことは好都合であった。彼なら、プロパガンダの為にも必ず国民的英雄のロンメル元帥を総統に引き立ててくれる。そして、そのロンメルはこの大戦終結の鍵である。
「では、頼んでおいたものを。」
「これです。」
取り出したのは爆弾であった。」
「これを線路に仕掛け、奴の列車がこの上を通過する時を狙って爆破すれば、いくら奴でも生きていまい。たとえ生きていても重症を間違いなく負うだろう。その間にお前が銃で頭を撃ち抜けばいい。」
「分かっている。しかし、できればこの爆弾で殺したい。」
「お前の言う講和。その為に私はお前の計画に乗ったのだ。一介の少佐にしては大胆な計画だと思ったが、まあ上手くいきそうだから乗ったまでだ。」
亀井は少し上向きになり
「それは違いますよ大佐。私の計画ではなく、一人の海軍中将の計画です。」
「ほー。それは一体誰かね?」
「言えません。」
「そうか。まあ、上手く計画が成功すればどうでもいいがな。」
そう言ってシュタウフェンベルク大佐は出て行った。残された亀井は
「大佐、あなたの言う戦後と我々の戦後とは違うんですよ。」
と、一言言った。
半日を掛け、重爆隊はアメリカ本土を捉えた。
「見えてきたぞ。」
戦隊長の真田(さなだ)大佐は眼下に広がる広大なアメリカの海岸線を見て言う。カリフォルニア州ロサンゼルス上空を通過し、アリゾナ州に入ったところでアリゾナ基地から飛んできた超高高度戦闘改造型のP-38画12機、迎撃に昇ってきた。
「敵戦闘機接近!!全機、対空射撃用意!!」
全機の機銃が上昇してくるP-38に向けられた。幾ら超高高度戦闘型とは言え、無理な改造な為に動きは非常に鈍い。機銃は放たれ、6機は忽ち撃墜される。そこまで撃墜したところで風龍からは10機の先秦が切り離された。こちらは高高度でありながらも非常に俊敏で、P-38を一瞬で撃墜してしまったのだ。
「やはり、もう損害は無いな。」
最初は動揺したが、今では本土上空を飛行する重爆撃機にアメリカは打つ手が無かった。幾ら改造されたP-38が迎撃に来ようと、性能が発揮しきれていないのに富嶽を撃墜することは不可能であった。真田大佐は撃墜されたP-38の方を見て
(お前達は立派だ。祖国の空を守るために命を賭けてここまで来たんだ。それだけでも英雄的行動だよ。)
真田は今は大佐だの何だの、一切の軍事的用語を無視して男としての敬意を表して敬礼をした。
ニューメキシコ、テキサス、オクラホマ、アーカンソーと多少の抵抗を受けたが損害無しで無事に目的のテネシー州達した。
「全機へ、目標が見えたぞ。爆弾倉開け!!」
真田機が編隊の富嶽全機へ伝える。
「目標を捉えた、爆撃開始!!」
富嶽から全20トンの爆弾を投下し始める。その爆弾の量は半端じゃないくらい多く、B-29のおよそ2倍の搭載力を持っている富嶽だからこそ出来る芸当だった。
-オークリッジ国立研究所-
「た、退避!!」
研究員らは急いで退避を始めるが、製造している物までは持ち出せないのだ。結局、研究員の約半数と最後の原爆製造工場を破壊された。
そして、ウラン原子炉が暴走を始め、核エネルギーがテネシー州一帯に広がり、放射能汚染を受けたのだ。
富嶽とその護衛機は任務を終え、ノースカロライナ州の上空を通過してドイツへと飛行したのだった。