マリアナ諸島に戻った斉藤は早速、艦隊の訓練に励んだ。
-秋島-
「撃て!!」
秋島の全門一斉掃射は凄まじい。左右別々に狙える上、多数の砲弾を一回で飛ばすために外す可能性は皆無だった。予想通り、目標に命中した。
「この艦じゃあ訓練にならないあな。」
山本は艦橋で目標を双眼鏡で見ていた。
「長官、今度は対空戦闘の訓練です。」
宇垣が山本に耳打ちした。山本は双眼鏡でサイパンの方を見ると、標的の凧を付けた99式艦爆や彗星が姿を現す。
「対空戦闘開始!!」
しかし、秋島は砲撃だけでなく対空戦闘も優れているのだ。機銃や高角砲が無数に装備されており、絶え間ない弾幕を張ることで航空機は近づけないのだ。
「標的凧は穴だらけですよ。」
双眼鏡で確認できるだけで相当数穴が開いている。秋島の艦魂は通り過ぎていく99式と彗星を見ながら
(これなら、いつ何時敵機が来ようと対応できるわね。)
そう思った。
一方、ヴォルケンクラッツァー姉妹は
「撃て!!」
80センチ砲の最大射程、53km先にある目標に向かって放っているが、こちらはなかなか当たらない。
「こりゃあ、訓練がもっと必要だな。」
斉藤は見張り艦から送られてくる成果を聞きながら言った。隣にいるヴォルケ2も
「全く、日本軍の砲術は世界一だって自負していたのに、当たらないじゃないの。」
撃ち続けているのに成果は一切無し。そこへ、ムスペルヘイムが瞬間移動してきて
「斉藤さん、砲角をもう少し下げてくれませんか?」
「どうしてだ?」
「あの角度じゃあ遠距離目標に対する砲弾の軌道が悪すぎます。もう少し砲角を下げ、風の力を利用して砲撃を届かせるのです。」
「分かった。」
斉藤は艦内マイクを砲撃指揮所に繋げ
「指揮長、砲角をもう少し下げるように言ってくれないか?」
「え?長官、丁度よい角度で砲撃を行っているのにいいんですか?」
「ああ。」
砲撃指揮長は主砲に砲角を少し下げさせ、一発放った。すると、
「司令、見張り艦から命中したと連絡が届きました。」
「そうか。」
斉藤はムスペルヘイムの方を向いて
「ありがとう。これで、勘がつかめただろう。」
「どういたしまして。」
そう言うなり、ムスペルヘイムは自艦に戻っていった。
-満州-
「寺沢、主戦派の連中を抑えるにはやはり殺すしかない。」
「そうか。」
満州にて寺沢は陸軍の友人である浜崎(はまざき)司(つとむ)陸軍大佐に会った。彼が、陸軍の主戦派の連中を止めるために動いている陸軍将校なのだ。
「やはり、言葉では理解できませんか?」
「言葉で分かれば最初からこんな戦争を始めないよ。」
浜崎は陸軍内では数少ない現実を見ている者の一人である。彼は元々開戦反対派で、現在の戦局も直に崩壊するとうすうす感じている。
「貴様の言う講和の為にも、やはり死んで貰うしかないのだ。」
「できれば、穏便に済ませたかった。同じ日本人を殺さなければならないなんて。」
「気持ちは分かるが、殺らねば国が滅びる。分かってくれ。」
「ああ。」
寺沢は覚悟を決めた。自分が説得する海軍は殆どが説得に成功したが、一部はまだ説得できていない。そして、陸軍では説得に応じる人間はあまりにも少ないことを悟った。
「仕方が無い。マリアナまで時間が無いのだ。どうか、陸軍の事を宜しく頼みます。」
「任せろ。そっちも海軍を任せたぞ。」
二人は握手を交わす。これが、最後の握手になるかどうかは分からないが、戦争終結後の平和な世界で会おうとの意思表示であった。
-ホワイトハウス-
「頼みの綱の原爆は無くなった。これで、日本を武力によって完全に屈服させる以外に方法が無くなったのだ。それが何を意味するか分かるんだろうな?マーシャル陸軍元帥?」
「はい、大統領。一ヵ月後にマリアナ方面に進出し、そこを占領した後に日本を戦略爆撃をする。そして、焼け野原になった日本本土に上陸し、軍事政権から国民を解放する。」
史実では日本の降伏で決行されなかったダウン・フォール作戦を陸軍内にて進めていたマーシャルはその足がかりにB-29の帝都爆撃機に必要なマリアナ諸島を如何しても手に入れたかった。その為、マリアナ諸島占領の為の準備を前々から進めていたのだ。
「B-29も1000機生産でき、続々と増産されております。これらを占領後のマリアナ諸島に配備し、日本本土を焼け野原に変えます。」
「これ以上、私を失望させないでくれよ。私の支持率はもはや無きに等しいのだ。ここで、大敗北なんて事になったらホワイトハウスにいる者全員のクビが本当に飛ぶぞ。」
「分かっております大統領閣下。我々の願う戦後世界は我がアメリカを中心とする世界なのですから。」
マーシャルはそう言って大統領執務室を後にする。