-ハワイ-
「アメリカは基地をまだ完全に修復できていないんだな。」
茂みに隠れている谷豊はアメリカのホイラー飛行場を見る。谷は日本の潜水艦でハワイに上陸した時からアメリカ軍基地を気づかれないように回り、現在の結論至った。
「これは、日本の中枢に知らせたほうが良いな。」
谷は林の中に入り、自らが設置した仮キャンプ場に到着する。ここには、わずか4名だが内地より派遣された情報機関Gのメンバーも居り、この4人と谷は生活を共にしている。
「それで、アメリカの連中は基地をまだ完全に復旧出来ていないんだな。」
「ああ。」
内地から送られて来たハワイ方面情報部隊隊長『長浜(ながはま)栄治(えいじ)』情報少佐は谷の報告を聞く。
「やはり、海軍のハワイ・合衆国本土間通商破壊作戦『F作戦』が成功していたんだな。
日本海軍は、ハワイ近海に出現する復旧資材を積んだ輸送船を徹底的に撃沈しており、これが原因でアメリカはハワイを思うように修復できなかった。航空機で運ぼうにも、ドレッドノートやノーチラスに発見されては対空ミサイルを放たれて悉く失敗している。最近、ようやく輸送船の安全(と、言うより日本軍潜水艦隊が後退した)確保がなされた為に復旧を大急ぎでさせていた。
「そこで、少し連中に度肝を抜いて貰いませんか?」
谷は長浜に提案した。
「具体的には?」
「夜間に陸軍基地に侵入し、戦車を奪って暴れてみるのはどうです?夜なら航空機も来ませんし、大乗でしょう。我々が死んでも十分な情報を内地に送ることも出来たんです。」
「確かに、十分な情報を集めて内地に送った。しかし、ここに居る者は死ぬために来たのではないぞ。」
「そんな事は百も承知です。しかし、今陸海軍で部隊を再編している最中です。この間にアメリカが攻撃を仕掛けてきたら、混乱して余計に損害が出ます。それよりも、その準備阻害の意味でもやりましょう。」
「分かった。元より帰還の意思は我々は持っていない。やってみよう。」
提案は行動に直ぐ移された。谷を先頭に、ベロース基地に侵入した。
-ベロース基地-
偵察基地だが、戦車は少数配備されている。そして、駐車されているシャーマンに基地衛兵に気づかれないように乗り込んだ。
「燃料と弾薬は十分。」
「戦車の操縦が出来るのかよ?」
操縦席に座った長浜少佐は任せろと手で合図する。
「分かった。行ける所まで真珠湾海軍基地に近づく。出来れば、砲撃する。」
「ああ。連中に度肝を抜かせてやるよ。」
そう言って、長浜はエンジンを掛ける。
「よっしゃ!!全速前進!!」
シャーマンは基地の出口に向かって走り出す。
「おい!!誰が戦車に乗っている!?」
衛兵等は気づいて走ってくるが、重い武装をしている為に追いつかない。辛うじてジープやハーフトラックに辿り着き、急いで戦車の後を追った。
「止まれ!!」
シャーマンに呼びかけるが、当然止まる筈は無い。そればかりか、76mmカノン砲を向ける。
「よけろ!!止めるんだ!!」
しかし、突然の事で運転手はパニクり、ハンドルを思いっきり切ってしまった。ジープは横転し、停車したハーフトラックにはカノン砲が命中し、炎上した。
「やったぜ。」
射撃手を務める谷は炎上するハーフトラックを見て喜ぶ。それと同時に、ハワイ全体に緊急警報が鳴り響き始めた。
『正体不明の者にM4中戦車を強奪され、ハーフトラックとジープを破壊された。各員、警戒を厳重にせよ。』
「騒がしくなりましたね。」
「ああ。」
シャーマンは山道を走り、真珠湾にあるハワイ方面海軍基地を目指して突き進んだ。
「止まれ!!止まらねば発砲する。」
途中、ジープと歩兵で構築した防御陣地があったが、
「喰らえ!!」
溜弾砲で歩兵を片付け、ジープはキャタピラで踏み潰して進んだ。
「もう少しだ。」
山道を抜けると思ったその時、側面からロケット弾を受ける。
「な!!何が起こった?」
突然、側面からの衝撃を感じ、停車してしまったのだ。
「くっそ。動け!!動け!!」
長浜はアクセルを踏むが、動かない。
「おいおい、いい子だから動いてくれよ。」
再びアクセルを踏むが、一向に動かない。キャタピラがロケット弾で破壊され、動けないのだ。
「やったか?」
ロケット弾を放った60mmバズーカはシャーマンの車体自体には効果が薄いが、キャタピラには十分な効果があった。シャーマンのキャタピラに命中した後、キャタピラが外れて移動できなくなったのだ。
「乗り込め!!」
周りに潜んでいた米兵が戦車に群がっていった。
「ここまでですね。」
車内では、長浜が椅子に座って一同を見る。そして、基地に侵入した時に戦車を奪うついでに持って来たC-4爆弾を10個取り出す。そして、起爆スイッチを押した。
「ぎゃあ!!」
一瞬、米軍側にも何が起きたのか分からなかった。突然、ハッチを開けて車内に入ろうとしていた者が吹っ飛んだかと思うと、戦車自体が吹っ飛び、周りにいた兵らも巻き込んで大爆発をした。
死者 日本側5名(全員戦死) アメリカ側30名
-軍令部-
「ハワイからの無線傍受で、長浜を含むハワイ情報機関全員の戦死が判明した。」
永野修身大将は、軍令部参謀の寺沢に言いに来た。
「谷さんもですか?」
「ああ。」
「そうですか。」
寺沢は俯いた。自分が死地に追いやったものだと責任を感じる。
「彼は、軍属のために戦史扱いとなる。だから、実家には戦死公報を送った。」
「そうですか。」
-ヴォルケンクラッツァー2 司令長官室-
「軍令部より、ハワイ基地は今だ修復不完全だと連絡を送ってきました。」
通信兵が艦橋にいる斉藤の許に報告に来る。
「分かった、ご苦労。」
斉藤は頷き、通信兵に退出を促した。
「斉藤さん、秋島から決戦が近いので準備をしておくよう伝えられました。」
ヴォルケ2は一応特別戦隊所属ながら連合艦隊に属している身である。だから、連合艦隊の艦魂達の会議にも出席している。そして、その連合艦隊旗艦である秋島の命令には逆らえないのだ。
「そうか。偵察機の報告では、マーシャル諸島に大型爆撃機が大量に配備されていると言う。間違いない、B-29がマーシャル諸島に配備されているんだよ。」
「では。」
「ああ、航続距離は十分、マリアナ諸島を狙える。上陸作戦を援護させる目的で配備したと考えるのが妥当だろう。」
「富嶽なら。」
「反撃できるが、富嶽の大半はソ連方面の作戦に当てるのだ。援護に来れるのは関東方面に配備した500機と、黎明島に配備している700機のみ。残る、5000機と、中国・ビルマやインド方面の3000機、中国の800機、ドイツの500機は全てを使ってソ連を爆撃し、スターリンを殺すのだ。」
「そうすれば、この大戦は終結するのね。」
「そうだ。その為に、今まで終戦後の準備をしてきたのだ。後は、ヒトラーとスターリンが死ねば全て終わる。」
「何で、そんな巧妙な作戦を立てれて、実行できるの?」
「言ったろ、私の時代の日本は腐っていると。汚れた政治家などが国のトップに居座り続け、国を私物化している。そんな国になって欲しくないから、あらゆる方面で考えて実行してきたんだよ。」
「そんなにまで、国を救おうと思っているの。」
「私は、国を救いたいんじゃなくて国民を救いたいと思っている方が正しいかな。大勢の国民を守ることで後世日本の復興を行ってもらう。恐らくは、私の国が経験したほどの驚異的な経済成長は遂げないだろうが、それでも国が豊かになってほしい。そして、国を豊かにするのは政治家ではなく、国民だよ。」
アメリカ加護の元で悠々と経済復興を遂げた日本と、斉藤の思い描く、独力だけで経済成長を遂げる日本。どちらが、国にとって重要かは人の判断にもよる。しかし、彼の思い描く日本は今まで日本人の誰もが経験しなかった新たな日本を想像していたのだ。
「早く、見てみたい。この国が、アメリカ加護の元での経済成長か。日本独自の力で経済成長する日本なのか。どちらが、今後の日本の為になるのか私は証明できる。戦後の日本を経験した唯一の日本人だからこそ分かる。史実の戦後が良かったのか、この世界の戦後が良いのか。」
ヴォルケ2は
「私はどっちでもいいな。ただ、貴方の思い描く日本がどんな国なのか見たいのは事実。世界は違えど、日本は私達超兵器にとって第2の祖国と言っても間違いではないからな。」
ヴォルケ2は日本の方を向いて言った。