-エセックス-
「敵航空隊接近!!制空隊は発艦せよ。」
米機動部隊は接近する日本航空隊を捉えた。甲板は慌しく、艦魂のエセックスは自分の居場所に困った。
「こんなに焦ってて、大丈夫なのだろうか?」
エセックスは不安がる。
「急げ!!ジャップの攻撃隊を歓迎してやらなきゃならん。」
パイロットは余裕な表情で乗機に乗り、発艦していった。
「敵はおよそ80機で高度3000mを飛行している。かなり速いから気をつけろ。」
「分かっていますよ。連中、俺達が高度まで読み取っているなんて思わないだろう。」
そう言って34機のヘルキャットは攻撃隊目指して飛行していった。一方、特別戦隊を飛び立った攻撃隊も連合軍機の接近を捉えた。
「連中、俺達にまともなレーダーが無いと油断しているな。」
「隊長、連中に思い知らせてやりましょう。」
神速は機体下部にアルミ製空き缶を吊るしている。これは、敵のレーダーを誤魔化して大編隊に見せかける為だった。実際は神速20機程度で飛行していた。
「敵は高度3400m程を飛行しているな。」
「完全にベストポジションですね。」
「ああ。」
20機の神速は空き缶を捨て、迎撃態勢に入った。
「敵はこの真下だ。一気に急降下するぞ。」
ヘルキャットは降下制限速度ギリギリで急降下を掛ける。しかし、
「な、何で敵はこちらを向いているんだ!?」
神速はヘルキャットと相対する形で接近していた。そして、完全に油断した米軍機を12機撃墜した。
「機銃弾は惜しみなく使え。弾なら売るほどある。」
神速は自由自在に飛行しては敵を翻弄し、ヘルキャットは少しずつ数を減らされていった。
「ジャップにまだ、こんなパイロットが。」
今まで撃墜してきたのは殆どが無人機なのだが、それには連合軍側は全く気づいていなかった。
「くそ。しかし、敵の攻撃隊は何処なんだ?」
米軍の迎撃隊はそんな疑問が浮かんだ。実際、攻撃隊は海面をスレスレで飛行しており、レーダーに捉まらなかった。
-エセックス-
「完全に不意を突かれました。迎撃隊は戦闘機だけと言っております。」
キンケイドは部下の報告を聞き
「戦闘機?では、敵の攻撃隊は一体何処に?」
「分かりませんが、もうじき日が暮れます。サイパン方面に向かった制空隊は帰還できませんね。」
「全く、貴重な搭載機を無駄にするとは。」
米軍だけでも総搭載機は2000機を越している。戦闘機はおよそ700機のため、貴重とも言える。
「攻撃隊の所在が不明なのは気がかりですが、迎撃に出た航空機は全滅するでしょうね。」
キンケイドは俯き
「だから、もっと敵の情報を集めておけば良かったんだよ。」
そこへ
「し、司令!!敵航空隊が海面スレスレで輪形陣を突破して来ます。目標は輪形陣中央の空母かと!!」
突然の攻撃隊発見の知らせに驚く。
「馬鹿な!!敵がこんな闇の中を海面スレスレだと。」
日は既に落ち、あたりは暗い。そんな中を海面スレスレ飛行はほぼ自殺行為とも言える。
「迎撃しろ!!何としても内周部には入れるな。」
キンケイドは対空戦闘を命じる。既に日は落ち、しかもそんなに接近されている状況下で直線進行を必要とする発艦を行えばたちまち狙い撃ちされる考え、回避行動を取ることにした。
「撃て撃て!!新型対空砲の力を見せてやれ。」
外周の重巡洋艦と駆逐艦が対空砲火を続ける。しかし、アンチ・レーダーシステム搭載の攻撃隊にVT信管は役に立たない。
「た、隊長。本当に新型対空砲弾は役に立つんですか?」
撃てば当たると言われている対空砲弾が当たらないのを見て対空要員は不審がる。その様子を見ているアイオワは
「新型対空砲弾も噂ほどじゃあ無いわね。」
「敵さん、新型対空砲とやらに頼りきって訓練を怠ったな。」
攻撃隊の彗星は輪形陣を次々と突破し、目の前に捉えたアイオワ目指して飛行した。
「機長、2番機が遣られました。」
見ると、対空砲弾の直撃を受けて、バラバラになって海面に落ちるのが見えた。
「このまま行く。敵の弾幕は思ったほど濃密ではない。」
対空砲火の中を彗星は迷わず突き進む。そして、アイオワを捉えた。
「喰らいやがれ。」
彗星は爆弾を切り離し、急上昇を始める。爆弾は、落下角度が浅いことと、速度が付いている為に海面を跳ね、アイオワの横腹に命中した。
「きゃああ!!」
アイオワの左脇腹から血が噴出し、甲板を紅く染めた。続き、1番主砲付近にも爆弾が命中し、今度は右腕から血が出た。
-エセックス-
「アイオワに命中弾あり。中破し、1番主砲は旋回不能。」
キンケイドが送られてくる被害報告を聞く。
「で、敵の攻撃隊は?」
「は、爆弾投弾後に引き返しました。」
「そうか。」
しかし、ここで予期せぬ事態が起こった。
「し、司令官!!敵雷撃機が輪形陣を突破しました。」
「またかね?それで、何処を突破されたんだ?」
すると、報告に来た兵は直ぐ傍を指し
「あそこです!!」
キンケイドは慌てて艦橋から外を見る。すると、もう目前まで迫った雷撃機3機が見えた。
「な!?」
攻撃機の麗華は、1t魚雷を投下してエセックスの右舷に3本とも命中した。
「きゃ!!」
エセックスは左脇腹から血を出し、口からも血を吐き出す。
「ゲホッ!日本軍め、小細工を使うじゃない。」
炎上しているが、ダメージコントロールで修復できる。航空隊も発艦にも支障が無いし、1隻でも戦闘艦艇が欲しい連合軍はエセックスとアイオワを撤退させなかった。
-サイパン島-
「真っ暗で何も見えないな。」
攻撃を終了した攻撃隊の一部はサイパン島目指して飛行していた。真っ暗の為に高度計等を読み違えると海水浴を楽しむか、迷子になる。だから、技量の高い者を夕暮れ攻撃に向かわせたのだ。
「そろそろ見えてもいい頃だが。」
サイパン島は航法士の話ではそろそろ見える頃だと言っている。ようやく、サイパン島の明かりが見えてきた。
「機長、サイパン島の明かりです。」
攻撃隊の偵察員席に居る搭乗員が見えてきた滑走路の明かりを指差す。しかし、
「機長、電探に敵機の反応!!」
「何!?」
待ち伏せしていたヘルキャットが明かりを見つけて着陸態勢に入った麗華を攻撃し、撃墜した。
「だ、脱出だ!!」
搭乗員は落下傘で脱出に成功したが、機体は燃えながら海に突っ込んだ。
「我らの母艦を攻撃した代償は大きいぞジャップ。」
ヘルキャットのパイロットもこんな夜で、しかも航法士が居ない戦闘機での帰還は絶望的だった。だから、少しでも敵を撃墜しようとサイパン上空にて待ち伏せしていたのだ。
「いいか!!よく目を凝らして敵機を探せ。」
米軍のパイロットは辺りをよく目を凝らして探した。すると、単独飛行をする1機の飛行機に気づいた。
「よっしゃ!!頂だ。」
米パイロットは操縦桿を倒してその飛行機の真後ろに着いた。そして、機銃を放とうとしたその時、
「な!?」
突然、後ろに目が付いているかの如く旋回したかと思いきや、目の前から姿を消した。
「ど、何処へ!?」
「真下だ!!」
「え?」
突然、僚機からの無線で探していたパイロットは我に返る。
「ま、まさか、この技量。辛うじて帰還したパイロットが話していたエース集団。笹井中隊なのか?」
パイロットの考えは当たった。そして、ご褒美の銃弾を受けて絶命した。
「坂井、流石だな。」
現れた残る笹井中隊の面々を見て米軍パイロットは恐怖した。
「んじゃ、俺達も遣りますか。」
笹井中隊のパイロットはサイパン上空で日本軍機を牽制しているヘルキャットを次々と撃墜した。
「俺達が給油している間に、随分と勝手なことをしてくれたなあ。」
神速を自分の手足の様に操り、性能で劣るヘルキャットを全滅させた。
「さーて、戻って飯でも食うか。」
笹井中隊のパイロットは自分の飛行場へと帰還した。
-ヴォルケンクラッツァー2-
「それで、艦船攻撃は成功したのか。」
「はい。戦艦1隻中破、空母1隻火災発生と山口機動部隊から連絡がありました。」
斉藤はヴォルケンクラッツァー2の艦橋で今日の戦果を聞いていた。
「それで、こちら側の損害は?」
「戦闘機は損害なし、爆撃機は23機、攻撃機は30機です。」
「やはり、二重装甲は成功のようだな。」
神速には翼と胴体の重要な部分は二重装甲になっており、米軍の使用するブローニング機銃で撃墜など出来ないのだ。
「それで、イギリスの方は?」
「それが、上陸部隊の支援に当たっているらしく、迂闊に攻撃できません。」
「では、上陸されたのだな?」
「はい。まだ上陸していない輸送船もあるそうですが、一部の部隊は上陸したと。」
斉藤は地図を敷いている机の所に行き、
「サイパンのここに上陸したのなら、戦艦部隊の出番だな。」
「戦艦部隊ですか?」
「ああ、米機動部隊はゆっくりと上陸地点に向かっているんだろう?だったら、機動部隊の真後ろに回りこんだ大和を旗艦とする戦艦部隊がやってくれるよ。」
-大和-
「祭りには丁度良い満月じゃ。」
高須四郎中将座上の大和は戦艦7隻を率いて機動部隊の後方に回り込み、全速力で機動部隊に同行戦を挑もうと突き進んでいた。そして、もう一つの目的は、敵に休みを与えずに疲れさせるという目的もあった。
「司令、連合艦隊旗艦より突撃命令を受信しました。」
高須四郎はそれを聞くなり、
「突撃、ここで勝たねば講和何時ぞや?勝てばもうじき直ぐ傍だ!!」
この号令と共に、戦艦部隊は敵機動部隊をレーダーに捉えた。
-軍令部-
「それで、私に何の用かね?」
軍令部次長の伊藤整一の許を訪れた寺沢は、
「伊藤中将、マリアナ沖で戦闘が勃発しているのはご存知ですね?」
「当たり前だ。戦闘が起こっておることを軍令部が知らんでどうする? 」
伊藤は寺沢を見る。
「その戦闘終了後、我が国は講和へ踏み切ります。」
「気持ちは分かる。しかし、一体どうやって講和すると言うのだ?東條内閣健在の今、講和など持っての他だ。」
「ええ、なのでこの戦いが終わったら海軍と陸軍の説得の応じた者だけでクーデターを起こします。」
寺沢はいきなりとんでもない事を言った。
「な!?貴様は正気か?聞いているのが私だから良いものを、憲兵とかが聞いていたらただでは済まんぞ。」
「分かっています。しかし、マリアナでの勝利以外で連合国との講和時期はありません。そこを逃せば、日本は焦土になるまで戦い続けるでしょう。」
「確かに、その時期以外で講和のタイミングは無かろう。しかし、クーデターが成功するとも思えん。第一、内地の者は説得できても関東軍の方はどうするのだ?」
「関東軍はある人物が説得しております。中国での戦争も片付きましたし、以外に説得に成功するかも知れませんよ。」
「何か、隠しているな?」
寺沢は惚けたような顔になる。
「で、私にどうしろと?」
「軍令部での説得は貴方にお任せします。私は、日本の各鎮守府を回って説得せねばいけませんので。」
そう言って、寺沢は軍令部を出て行った。