-エセックス-
「司令、後方より敵の艦隊が接近している模様です。」
艦橋にいるキンケイドはその報告を聞いて
「後方だと?潜水艦の報告では後方に敵艦隊は居ない筈だが。」
「その潜水艦がここ暫く連絡を絶ってお下ります。恐らくは。」
それを聞いていたエセックスは
「日本には対潜能力の高い艦はいないと聞いていたが、見当違いのようね。」
と、司令部の人間に対して冷たく言ったのだった。
-大和-
「敵は真っ直ぐ航行しております。後、15分もしないうちに有効射程内に入ります。」
「分かった。・・・・いよいよ決戦の時か。開戦から、今まで大砲屋の本分を発揮できなかった者はようやく発揮できるな。」
「はい。兵らも早く撃ちたいと言っております。」
高須はそれを聞いて
「分かった。各主砲に5発だけ発砲を許可しよう。そしたら、有効射程内に入るまで発砲を禁じる。」
この命令は直ぐに届けられ、1、2番主砲は発射準備に入った。
「いよいよ戦艦大和の力を見せられるんだ。」
「初弾必中の覚悟で狙えよ。貴重な5発だ。」
そう言い、射撃管制所からの報告を元に狙いをつける。
「撃て!!」
前部主砲は1発目の砲撃を行った。その様子を甲板で見ている大和は。
「私の主砲も、最後の最後で決戦に投入されると思わなかったよ。てっきり大艦巨砲主義は時代遅れかと思っていたのだが。」
もちろん、初弾命中などしなかった。幾ら夜戦に強く、レーダーも持っている日本軍だが、距離がありすぎる事と、完全な闇の為に狙いはうまく付けられないのだ。それでも、最後の5発めで1発だけ命中弾を得た。
-エセックス-
「空母ヨークタウンに命中しました。」
「被害は?」
「甲板に命中し、火災を起こすも消火に支障無しだそうです。」
キンケイドは燃えているヨークタウンを見る。確かに火災が起こっているが、命中角度が浅く、弾速も遅かったことから致命傷は免れたのだ。
「しかし、兵らの消耗は激しいですよ。朝から一睡も出来ずに敵が攻めてきまして、士気の低下は止むを得ません。」
幾ら軍隊でも元は人間なのだ。どんなに屈強な兵士でも、眠らなければ戦い続けることなど出来ない。その睡眠ができない為に士気低下を起こしているのだ。そして、士気低下は主砲などの命中率にも影響し、戦闘行為そのものの影響も激しい。だから、士気の維持は戦場では最重要課題の一つと言っても過言では無いのだ。
「しかし、敵の主砲の射程距離は信じられません。あの距離で届くのですから。」
「アイオワでも応戦できないのか?」
「はい。あれは、40cm砲ではありません。もっと、大口径の物だと思われます。」
大和級の存在はかなりの秘匿性で、アメリカ・イギリス領事館の前で秘密裏に建造されていた武蔵ですらその存在は最後まで知られなかった程である。
「そんな大口径を日本が開発していたのか。世界に先駆けた大艦巨砲主義は伊達ではないな。」
戦前から、日本海軍の主砲開発は非常に熱心だった。軍縮条約の縛りが無ければ、大正期にでも大和が完成していたと言われるぐらいの物だった。各国が38cmやらも実用化しているときに日本はそのワンランク上の40cmを実用化し、40cm艦が外国で開発が始まると46センチ艦の開発に着手する程であった。
-大和-
「有効射程内に入りました。」
それを聞き、高須は
「面舵一杯!!全主砲発射用意。」
長門級も46センチ砲を装備しており、46センチ砲装備艦は全部で3隻居た。
「用意完了。」
「撃て!!」
大和の9発と長門、陸奥の計16発。合計25発が米艦隊に向けて放たれたのだ。
「弾着・・・・今!!」
米艦隊の方に水柱が昇る。だが、命中弾は無かった。
「各主砲。自らの判断で砲撃せよ!!」
各主砲は自らの判断で砲撃を続行し、高須は夜戦艦橋へと降りた。
-アイオワ-
「敵の主砲が飛んできます。」
現在、米艦隊は日本の戦艦からの弾雨に晒されていた。至る所で水柱が昇り、射程で劣るアメリカの戦艦はジグザグ航行で避けるしかできない。
「くっそ、主砲の射程が違いすぎて反撃できない。」
艦魂のアイオワは逃げる自艦に嫌気が指すが、どうすることも出来ない。反転して砲撃の為に直進すれば忽ち狙い撃ちにされる。かと言って、このままジグザグ航行を続けても的にされるだけである。
「もうじき夜明けです。そうすれば、航空部隊が反撃してくれます。」
しかし、アイオワのサーチライトに信じられない物が飛び込んできた。
「んな!?」
「見つけたぜアメ公。」
前代未聞。闇の中を、しかも砲撃で水柱が昇る戦闘海域を超低空で高速で接近した零式水上観測機は急上昇して
「少し早いが、クリスマスプレゼントだ。」
零観から照明弾が投下される。そして、それは米艦隊の真上で炸裂した。艦隊は、まるで真昼のような明かりに照らし出され、闇の中に居る日本艦隊にとって射撃の丁度良い的であった。
「全艦一斉射撃!!」
射程関係無しに戦艦全隻が一斉に主砲を放つ。もちろん、伊勢や日向は届かなかったが、大和と長門に陸奥は十分届いた。
「盛大に照らし出されているな。」
命中弾を見た大和は甲板から沈んでいくニュージャージを眺める。艦首を主砲弾によって切断され、重心が突然変化したニュージャージは耐え切れず、マリアナの海に没した。
「あんな様になった艦魂は見たくないわね。」
大和の上甲板に長門が瞬間移動してきた。
「そうだな。」
恐らくは首が吹っ飛んだだろうと大和は想像する。そんな光景、国は違えど同じ艦魂の大和は想像できても見たくは無かった。
-サイパン 米上陸地点-
「急げ!!ジャップの居る塹壕までもう少しだ。」
上陸した部隊は戦車を先頭に進軍を開始する。しかし、上陸地点で待っていたのは
「砲撃だ!!」
サイパン島の山の頂上には武蔵に使われるはずだった主砲5門が陸上砲座として機能している。砲撃監視所からの報告を受けて砲撃を開始したのだ。
「うわあ!!」
46センチの主砲を受けたら人体など一溜まりも無い。砲撃の中心地に居た者は骨すら残らず、周囲50メートルでも影響が出るほどだった。
「敵戦車だ!!」
砲撃が止んだかと思いきや、2式重戦車と3式中戦車、3式駆逐戦車が姿を現した。
「目標、敵シャーマン。」
2式重戦車は進軍するシャーマンに向かって主砲を放った。88ミリ砲にシャーマンは耐え切れず、砲塔が吹っ飛んで、炎上した。
「に、逃げろ!!」
シャーマンが遣られたのを見て、上陸した兵らは後退を始める。しかし、3式駆逐戦車は88ミリバルカン砲を使って逃げる兵を片っ端から撃ち殺す。もはや、地獄だった。至る所で血が飛び、人が飛びの状態だった。内陸に運よく入れた兵も。
「喰らえ!!」
塹壕を縦横無尽に移動する日本兵は、巧みに相手に背後に回りこんでは倒していった。これも、史実で栗林中将が硫黄島の戦いで見せた塹壕十字戦法は早期からの準備で史実の硫黄島の戦いでは間に合わなかった塹壕計画も壮大な計画にも係わらず完成していた。
「撃て!!」
海岸線に設置されている機銃座も威力を発揮。第1陣をやり過ごし、増援に来た第2陣を海岸線で徹底的に銃撃を加える。機銃座で海岸線を狙えるのは全部で48基。それら全てで上陸する連合軍を片っ端からなぎ倒していった。
「斉藤中将の言うノルマンディー上陸作戦とやらよりも酷いんじゃないか?」
司令部にて報告を聞いた栗林は言う。栗林はマリアナ諸島守備隊総指揮官になる時に斉藤と会い、そこで彼の知る真実を聞かされた。栗林も旧勢力とは違い、論理的な思考等も持っている。だから、直ぐに理解することが出来たのだ。
-エセックス-
「上陸部隊は苦戦しているそうですよ。」
旗艦のエセックスには上陸部隊の報告まで届けられた。
「分かった、もうじき夜が明ける。そうすれば、あそこで砲撃している日本の艦隊に航空機を差し向け、攻撃する。イギリスも朝になれば航空支援を出来るし、占領は容易いと思うぞ。」
-大和-
「長官、本気で当ててはならないのですか?」
「そうだ。」
高須はニュージャージを沈めてから敵に当てるなの命令を下したのだ。それは、こんな真意があったからだ。
「夜が明けます。」
エセックスの艦橋では水平線から上る太陽が見えた。しかし、
「あの黒い点は・・・・!!、敵機接近!!」
直ぐに艦隊に警報がなる。夜明けと同時に攻撃できるよう、特別戦隊から無人攻撃機が飛び立っていたのだ。短い距離ならともかく、長い距離を夜間に低空侵入は神経を使い、敵艦隊到達時には参ってしまうのだ。それを防ぐ為に無人機による夜間発艦を行い、攻撃に向かわせたんだった。