日本戦艦部隊は攻撃権を航空機に譲り、一旦燃料や弾薬補給の為にアナハタン島沖の補給艦待機場所へと向かった。
-エセックス-
「撃て撃て!!撃ちまくれ!!」
艦隊は輪形陣を整え直して迎撃を行うが、恐れを知らない無人機は悠々と輪形陣の内輪部目指して飛行する。
「敵雷撃機、高度20mを飛行中!!」
報告が届けられ、高角砲はその雷撃機に狙いを付ける。しかし、既に遅く、麗華は1tの酸素魚雷を投下した。
「敵、魚雷投下!!」
「雷跡が見えません!!」
エセックスの左舷に魚雷が命中する。船体は大きく右に傾いたかと思うと、今度は左に傾いた。
「日本もやるじゃない。」
左脇腹から血が出るも、平然と襲撃してくる日本軍機をエセックスは睨んだ。左舷は火災を起こし、浸水も始まっている。それでも、戦闘に支障無しの脅威の生存能力を持っていた。
「イギリスの増援はまだかしら?」
アメリカ艦隊はイギリス艦隊に航空機の増援を要求し、イギリス側も戦闘機を応援に向かわせているのだ。しかし、その肝心の応援機が来ない。
-アメリカ艦隊 北220km-
「ジャップの戦闘機が何でこんな所に!?」
応援に向かっていたシーファイアーはテニアンから飛び立った陸軍の極電に見つかり、迎撃を受けているのだ。
「敵機は化け物だ!!俺達の機銃が利かない!!」
神速と同じ二重装甲を施されている極電はシーファイアーの機銃を物ともせずに戦い、一機一機を確実に仕留めていった。
「集合。」
極電の隊長機は列機に集合命令を出す。
「黒江、敵機は全滅させたな。」
「はい、加藤さん。敵戦闘機は全滅させました。」
史実では死んでいる筈の加藤建夫中佐指揮の加藤隼戦闘機隊事『飛行隊第64戦隊』はテニアン島の航空隊配備を命じられ、集結したビルマ方面からマリアナ方面へと出っ張ってきたのだ。マリアナ諸島の空は正に日本を代表するエース級パイロットが守っていると言っても過言ではなかった。
「帰還するぞ。まだまだ先は長いのだ。」
加藤は列機を率いてテニアン島の飛行場へと向かった。
-エセックス-
未だに戦闘に支障無しという脅威の生存能力は失われず、火災は消し止め、浸水も収まってきた。
「合衆国の建造技術の粋を集めた空母だ。そう簡単に沈んで堪るかよ。」
だが、キンケイドは恐怖に駆られている。自分の策が全て日本軍に見破られ、自艦隊の損害が増え続ける戦いに正直うんざりしている。
「も、もう嫌だ。なぜ、なぜこんなにも日本軍は我々の手を読んでいるだ!?」
大和を夜明けと共に攻撃しようと準備していると夜明けと同時に日本の攻撃隊が現れ、増援のイギリス軍機も待ち伏せしていた日本軍機が全滅させ、全てが失敗に終わっているのだ。
「何としても、このマリアナ諸島を占領せねばならないのだ。上陸部隊はどうなったのだ?」
「はい・・・それが。サイパンに上陸した第2陣部隊まで全てが全滅した模様です。」
「ぜ・・・・全滅。」
キンケイドは落胆した。予定では、サイパン占領にはおよそ3千の損害で終わる筈だった。しかし、実際は2万人が戦死したのだ。この原因は、まだマリアナ諸島の制空権が獲れておらず、航空機の攻撃を受け続けているからだった。
「北方より、敵大編隊を捉えました。」
レーダーを見ていた兵が突然、北方に移る航空機の大編隊を捉えたのだ。
「迎撃隊を飛ばせ!!これ以上の損害を出させるな。」
命令を受け、ヘルキャット20機が発艦し、迎撃体制を整えた。
「見えたぞ。!!・・・4発機だと!?」
見えたのは双発機に護衛されている4発の爆撃機だった。それは、高度8000mまで降下すると、輸送船団へ攻撃を開始した。
「まずい、燃料や弾薬を積んだ輸送船が攻撃されてる。」
輸送船は必死に落ちてくる爆弾を避けるのに必死だった。しかし、全弾は回避し切れず、4隻が沈み、5隻が至近弾で浸水という形になった。
「野郎!!」
ヘルキャットは攻撃を仕掛けようとするが、目の前に現れた双発の飛行機を見る。
「な、なんだあの機体は?双発の戦闘機?」
機首には4門の機銃が見受けられる。しかし、空母艦載機パイロットの彼らは見たことが無かったのだ。何度もアメリカ本土を爆撃した富嶽の護衛についている風龍にはこの双発機が搭載されているが、彼らは見たことが無い。先秦は本土から飛来した天極(キ91)を護衛する為にググアン島から離陸したのだ。
「は、速い!!」
先秦は旋回したかと思うと、日本軍機伝統の格闘戦を挑んできた。しかし、米パイロットも双発機と舐めて掛かり、性能差は歴然だと知ったのだ。
「な、なんで双発機なのに格闘戦が出来る!?」
完全に舐めて掛かったパイロットは、次々とやられて落ちて行った。ヘルキャットは、何とか体制を立て直して迎撃する。損害はアメリカが多少多いという形になったが、艦艇の損害はあまりにも痛かった。
-エセックス-
「司令、もはや我々は戦う力が残されておりません。」
「弾薬を積んだ輸送船は沈められ、上陸部隊は多大なる被害を受けました。ここは、一旦引いて体制を立て直すべきかと。」
「諸君、世界の頂点は何処の国かな?」
キンケイドは突然、参謀達に聞いた。
「え?」
「私はアメリカだと思っている。」
「し、しかし提督。」
「私は悔しい。」
キンケイドは窓の外を見る。
「見たまえ、我が合衆国の偉大なる艦艇は尽く遣られ、傷ついてしまっている。この海軍力の再建に一体どれだけの月日を費やしたのか。約一年半前、我々の主力艦は日本海軍に全滅させられ、海軍力再建は一時不可能とまでなった。しかし、あれから一年半でこれだけの艦艇を揃え、ここまで来たのだ。撤退は有り得ない。最後まで戦う覚悟を持って決戦を挑む。」
キンケイドは先程の弱気な考えを捨て、再び日本海軍へ決戦を挑むことを決意したのだ。
-キングジョージ5世-
「アメリカさんもこっ酷くやられたようだな。」
ラムゼイ大将は、旗艦のキングジョージ5世の艦橋で優雅に紅茶を飲んでいる。
「て、提督。そんな呑気に紅茶を飲んでいる場合じゃあ在りません。」
参謀は半分呆れ顔だった。これには、艦魂のジョージ5世も呆れてしまった。戦闘中に紅茶を飲む司令官を珍しいものだ。
「参謀長、我々はあくまでもアメリカにとっては補助に過ぎないのだ。作戦失敗もアメリカの責任になるのだ。だから、我々は与えられた仕事をしていればいいのだ。」
そう言ってラムゼイは再び紅茶を啜る。
「そのアメリカから支援要請です。上陸した部隊が航空支援を求めておりますが。」
「分かった。攻撃隊を飛ばして遣れ。」
しかし、キングジョージ5世のレーダーに航空機の編隊が探知された。
「やれやれ。日本軍はこっちにも攻撃機を差し向けたのか。」
ジョージ5世は立ち上がり、編隊の接近する方角を見る。時間は既に18時を切っているし、完全な夜間攻撃だ。
「いい度胸だ。この暗闇の中を、勝負してやろうじゃないか。」
ジョージ5世はサーベルを抜き、日本軍機の編隊を待つのだった。