夜間攻撃を受けるイギリス海軍。迎撃を上げようにも夜間の為に上げられない。その為、艦艇の防御火器に頼っての迎撃しか出来ないのだ。
「VT信管が効果を発揮しません!!」
アメリカから提供されたVT信管は、日本攻撃機の搭載するアンチ・レーダーシステムの効果で目標を狙えないのだ。
「撃て撃て!!VT信管が無くても、我々にはジョンブル魂がある。」
しかし、流石は世界一の海軍国家。猛撃を続ける日本軍機を次々と迎撃し、投下された魚雷や爆弾も尽く回避する。
「淵田隊長。連中になかなか命中弾が出ませんよ。」
編隊を率いてきた淵田美津夫中佐は、魚雷や爆弾を回避し続けるイギリス軍艦艇を見る。
「奴等も相当な練度だな。出来れば、味方となってほしかったよ」
ようやく、ハウに命中弾を浴びせることが出来たが、ハウは何事も無かったかのように航行を続ける。
-ハウ 艦橋-
「被害は?」
「船体に特に異常はありません。」
「そうか。」
艦魂のハウも平気そうな顔だった。魚雷は船体に命中したが、突入角度が急だった為に被害は殆ど無かったのだ。
「日本も必死ね。」
ハウは飛び交う日本軍機を見て言う。辺りは暗闇で、既に目標識別も困難な状況だった。麗華には夜間攻撃の為のライトを持っているが、彗星は発光弾を放って目標を選別するしかないのだ。
「目標、敵爆撃機!!」
ハウの主砲は限界仰角で放たれ、飛行する彗星3機編隊の中央で爆発し、撃墜した。
-キングジョージ5世-
「魚雷投下!!」
「雷跡見えません!!」
航空酸素魚雷は航行時に水と二酸化炭素を出すのだ。水は勿論、二酸化炭素は水にある程度溶けるため、雷跡を視認するのは非常に困難なのだ。しかも、それが夜間なら尚更だ。
1本がキングジョージ5世の右舷に命中し、それだけで速力は19ノットまで低下。戦列を離脱し、サイパンの方角へと進路を変えた。
「撃ー!!」
その後も攻撃は続き、戦艦「ネルソン」は4本の命中弾を受けて撃沈。他の戦艦も大なり小なりの被害を被った。空母も「インドミタブル」は3本と2発の命中弾を受け、舵を破壊された為、自沈した。巡洋艦も6隻が沈没する。駆逐艦は3隻。その他、輸送艦等6隻が沈み、3隻は戦列を離脱した。
-秋島-
「航空部隊は着々と戦果を上げております。」
秋島は長官室にて、艦魂からの戦況報告を山本に伝えていた。
「戦果は大きいな。それに、イギリスの戦艦が戦列を離脱したとか。」
「ええ、今追跡艦隊を派遣し、撃沈命令が下りました。」
「追跡艦隊?」
「プリンス・オブ・ウェールズとレパルスです。」
「そうか。」
皮肉な物だ。まさか、祖国の艦艇を沈めることになるとは。
-プリンス・オブ・ウェールズ-
「皮肉ね。まさか、姉様をこの手で仕留めなくてはならないなんて。」
艦影を見たプリンス・オブ・ウェールズは言う。間違いなく、それは自分の姉であった。
「次女が長女を葬るのも、どうかと思うけどね。」
主砲は旋回を始め、キング・ジョージ5世に狙いを付ける。相手も気づいたのか、此方に主砲を向けてきた。
「さあ、姉様。これが私なりのけじめよ!!覚悟してください!!」
レパルスとプリンス・オブ・ウェールズは砲撃を開始する。火力ではこちらが勝っており、電子技術等でも此方に分がある。唯一無いのが経験だった。
「初弾、命中弾なし!!」
「敵発砲!!」
向こうも夜間砲撃戦は慣れていない。お互い、初弾命中は無かった。
-キングジョージ5世-
「まさか、妹が日本軍に居るとは。沈んだと思っていたが、ロイヤルネイビーの恥さらしめ。敵に寝返るとは我が栄光ある艦型に傷をつけたも同然。」
妹との直接対決。こんな事、一体誰が予測したものか。
「今ここに、妹の処刑を宣言する!!。」
サーベルを抜き、それをプリンス・オブ・ウェールズに向けた。
「砲撃続行!!」
お互いが有効射程ギリギリで撃ち合う。レパルスは艦首に1発を受け、一旦砲撃戦から離脱するように離れ、体勢を立て直して戻ってくる。
-レパルス-
「私も、最後まで戦う。何としても、勝利する。」
改装を受けている為、第一世界大戦にて露呈した巡洋戦艦の脆さはある程度まで直してあるが、所詮は気休めである。1発だけでもかなりの致命傷なのだ。
「面舵一杯!!」
夜間戦の必殺の一撃。レパルスの両舷には5連装酸素魚雷発射管が2基ずつ装備されている。それを、砲撃戦の最中に放った。
-キングジョージ5世-
「やるわね二人とも。でも、これで最後。」
と、サーベルを振りかざそうとしたその時、先程放った酸素魚雷が10本全弾命中してしまった。
「しまった!!」
この攻撃で艦は完全に停船する。そして、左に傾き始める。
「止(とど)めよ、姉様!!」
プリンス・オブ・ウェールズは全門一斉射撃を行う。電探連動に切り替えられており、こちらも8発命中した。キングジョージ5世は、静かに沈み始める。
「姉様。」
最後と思い、プリンス・オブ・ウェールズはキング・ジョージ5世の艦橋に瞬間移動する。
-キング・ジョージ5世-
「姉様、何処?」
艦橋内を必死に探すが、煙と傾き始めていることから探すのは困難だった。しかし、羅針盤の近くに横たわっている姉を見つける。
「姉様!!」
ウェールズは姉を抱き起こす。まだ、死んでいなかった。ジョージ5世は目を覚まし、妹を見る。
「ウェールズ。あなたは、よく、やったわ。まさか、敵に寝返っているとは思わなかったけど。生きていて良かったと今で、は、思う。」
「姉様!!」
既に、言葉を発する気力も無い筈だった。しかし、ジョージ5世は最後に妹を見れてホッとしているのも事実である。
「姉様、今から曳航の要請をします。だから、死なないで。」
「も、いいの。自分で分かる。既に、私の機関は停止し、傾斜も修復できない。」
「そんなこと無い。斉藤さんに頼んで、何とかしてもらう。」
「さ、いと、うさん?」
「私を日本海軍に引入れ、この決戦を考えた人よ。そして、私の標的艦としての最後を止めた人よ。」
レパルスとプリンス・オブ・ウェールズは、鹵獲したはいいが使い道は考え付かなかった。その為、軍令部は2艦を標的艦として沈めようと考えたが、それを斉藤は止め、改装したのだ。仲間になるとは予想外だったが。
「そう。その人に、出来れば会いたかったわ。」
傾斜角は20度を越す。もはや、曳航も不可能だ。
「最後の頼み、聞いてくれる?」
「何でも言って姉様。」
「あなたは、この戦争が終わるまで死なないで。絶対に。その斉藤って人に救われたのなら、命は、大事にして。」
それだけ言い、ジョージ5世は目を閉じ、静かに深い眠りに着いた。
「ね、姉様!!」
ウェールズは、ただ、ただ、泣くことしか出来なかった。最初は味方で最後は敵。なんとも、皮肉な、波乱の人生なのだろうとウェールズは思う。
-ヴォルケンクラッツァー2-
「そうか。」
秋島から届けられた報告を聞き、斉藤は溜め息を付く。
「まさか、自分の姉を葬ることになるとは。」
隣にヴォルケ2が来て
「せめて、この戦争が終わったらこの海域に花を落とさなきゃね。」
「勿論だ。」
既に、本土では大量の花を用意してある。戦後、それを富嶽から投下する為に用意したのだ。
「では、最後の仕上げの為の準備と行こうか。」
「ええ。」
斉藤は長官室から出て
「最後の作戦を行う準備をする。総員、心して掛かれ!!」
最後の作戦。それは、連合艦隊ほぼ全戦力を持って敵をこの海域から駆逐する水上殲滅作戦だった。その前に、この海域に居る全敵性潜水艦を排除する水中殲滅作戦に取り掛かった。