異次元からの贈り物   作:橘花

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奇策の天才は健在なり

-連合軍上陸地点-

 

「敵襲に備えて警戒せよ。」

 

上陸した連合軍は日本軍の猛攻を前に引き下がり、一旦海岸線に陣を築いて増援部隊を待った。しかし、肝心の増援部隊を乗せた輸送船は日本軍の攻撃を前に惨敗し、一旦退避しているので来なかった。

 

「司令、我々は本当に占領できるのでしょうか?」

 

上陸した部隊はまともな反撃を出来ずに防衛陣地を築いて待っている状態なのだ。そんな事を口にする気持ちも理解できる。

 

「安心しろ、もうじき増援部隊が到着する。それまでの辛抱だ。」

 

補給物資は十分だった。食料に弾薬。3万の追加上陸部隊が4日間は戦えるに十分な量である。

 

「夜が明ける頃に到着すると言っていたが、それまでは耐えるしかないのだ。」

 

しかし、スクリューの音が聞こえてくる。不審に思い

 

「変だな、まだ夕方だと言うのに。」

 

振り向くと、そこに大量の潜水上陸艇が装備しているキャタピラで海岸線から上陸してきた。

 

「な、なんだ!?」

 

陸に乗り上げるなり、装備している12.7mm機銃で兵を撃ち、乗っている兵や戦車を吐き出し始める。

 

「じゃ、ジャップだ!!」

 

銃撃戦が始まったが、あまりの予期せぬ方角からの攻めに混乱が生じた。そして、反対側からも

 

「ジャップです!!。連中、俺達を挟み撃ちにしやがった!!。」

 

神の考えた急がば回れ作戦は、潜水上陸艇を使って反対側に兵を送り、奇襲をして混乱した所をセオリー通りに進んできた部隊と挟撃すると言う作戦だった。

 

 

-司令部-

 

「まんまと引っ掛かったな。」

 

司令部にて奇襲成功の報告を聞いた神は言った。これには、参謀等も唖然とするしか無かった。

 

「まさか、この様な奇策を通じようとは。」

 

反対していた辻も思わず賞賛してしまう。奇策の天才と謳われた頭脳は健在であった。

 

「これで、上陸した部隊の問題は無くなるでしょう。」

 

神は司令部にて落ち着きを持った声で言う。他の参謀は圧勝と言う戦果に喜ぶ者も居るのに。

 

「神大佐はあまり嬉しくない様なご様子ですね。自分の策が完璧に成功したと言うのに。」

 

「確かに成功しましたが、まだ連合軍には大量の上陸用部隊や補給物資が積まれた輸送船団は健在です。これらを使って再び上陸戦を挑まれたら、勝機は薄いです。」

 

まだ、残存部隊は30万人を超している。これらの輸送船も全滅させなくてはならないのだ。それが、アメリカから講和を引き出す為の条件の一つ。

 

「連合軍の輸送船団は所在は分かっておるのですが、攻撃部隊が敵艦隊攻撃の為に割いているので航空部隊では攻撃できないです。敵の輸送船には軽空母と護衛空母が居り、潜水艦による攻撃は相当きついです。」

 

大西は言う。軽空母は正規空母の補助的艦だが、護衛空母は対潜哨戒の任務も兼ねている。迂闊に近づいたら潜水艦は沈められてしまうのだ。

 

「どうするべきか?」

 

 

 

-秋島-

 

「輸送船団の攻撃には、我が主砲を持って敵を砲撃するのが一番効果が高いかと。」

 

秋島は長官室に居る山本に言う。確かに、暗闇に紛れて砲撃を行い、敵輸送船とついでに空母も沈める事が出来れば後の作戦に有利になるのだ。そして、敵艦隊攻撃用に温存しておきたい航空部隊をこんな所で消耗したくないと考えている。

 

「航空部隊を使わないとなると、やはり夜間砲撃しか無いな。」

 

ずっと、姿を隠し続けていた秋島は敵艦隊砲撃と言う初の敵艦隊攻撃命令を受領した。その為、サイパン南に退避した輸送船団を攻撃する為に進路を南に取る。

 

「両舷全速!!」

 

最高速力は15ノット。辛うじて輸送船に勝っている有様だった。しかし、圧倒的な攻撃力と防御力を持たせている為に速力など苦にならない。

 

「私は、遅いけど世界一の戦艦よ。」

 

秋島は得意げに言う。普段の冷静な判断力を持っている為、笑顔も殆ど見せないのに、この時ばかりは笑った。

 

 

-ヴォルケンクラッツァー2-

 

「秋島が出撃したか。」

 

旗艦から届いた電報を読んで、斉藤は言った。その隣にヴォルケ2が来て

 

「あんな戦艦なんか見たら、私達も震え上がるわよ。」

 

船体はヴォルケンクラッツァーよりも巨大で、武装はレベルが違うから比較できないが、この時代では最高の武装をしている。秋島と真っ向から撃ちあえる戦艦はこの世界の何処を探しても存在しないのだ。

 

「しかし、今思えば秋島って金田秀太郎の提唱した超巨大戦艦の更に巨大版じゃないかな。」

 

金田秀太郎、当時は海軍中佐だが、彼の提唱した超巨大戦艦建造計画『五十万トン戦艦』を八八艦隊の代替案としてもあった。しかし、あまりの巨大さと軍縮条約、技術の限界から建造できなかった。

 

「そんな戦艦建造計画もあったのね。」

 

「ああ、しかし、皮肉な事に技術の限界だよ。それに、もうそんな巨大軍艦を必要としないからな。」

 

そんな巨大な軍艦は史実の太平洋戦争には必要無かった。こんな奇想天外な世界の太平洋戦争なら未だしも、航空主兵時代の太平洋戦争にそんな巨大戦艦など維持費の金喰い虫でもある。(五十万トン級戦艦が出てくる小説は子竜蛍作の『不沈要塞播磨』くらいだと思う)

 

「じゃあ、そんな戦艦が現実に存在していて、それが敵艦隊を砲撃したらどうなるんだろうね?」

 

「知らないよ。第一、我々は艦載機の準備に忙しいんだ。そんな余裕は無い。」

 

艦載機総数1500機を一回で出撃させるのだ。1500機分の装備を整えるのはそう早々に出来るものでもない。

 

「分かったわよ。私達は準備している間、敵の警戒をしていればいいの。」

 

「分かっているじゃないか。」

 

斉藤はヴォルケ2の頭を撫でる。すると、ヴォルケ2は顔を真っ赤にしてしまった。

 

「ちょ、斉藤さん。何するの!?」

 

しかし、斉藤は無視し、艦橋に上がって

 

「山口機動部隊に繋げ。」

 

 

-山口機動部隊 旗艦 飛龍-

 

「山口司令、斉藤中将より連絡です。」

 

山口機動部隊、空母『飛龍』を旗艦に、蒼龍、天城、関鶴、加賀の5隻の空母を持つ機動部隊である。

 

「斉藤さんから?一体なんだろう?」

 

艦魂の飛龍は疑問に思いながら無線に耳を傾ける。艦魂とは便利なものだ。自分の艦ある全ての電子機器等が自分とリンクしているのだから。

 

「はい?」

 

『山口司令。偵察機を3機、それぞれ北と南、東へ飛ばしてくれませんか?敵の正確な布陣を知りたいのです。』

 

「別に構わないが、そっちでは飛ばせれないのかね?」

 

『ええ、申し訳ありませんが。』

 

「分かった。至急、用意させて発艦させる。」

 

そう言って山口は無線を切った。

 

「斉藤さんも必死だな。」

 

飛龍はもう少し精神的余裕を持っておけばいいのにと思う。そこへ、艦長の加来は飛龍の許にやって来て

 

「飛龍も少しは斉藤さんが恋しくなったか?」

 

「そ、そんな事はありません。私はただ、心に余裕の無い斉藤さんを心配しているのです。」

 

「そうか。しかし、蒼龍は恋しがっていたぞ。」

 

自分の義妹の蒼龍が斉藤を恋しがっている聞いて、何とかこの思いを斉藤中将に理解して貰おうと考える。

 

「まあ、彼女も積極性は無いからな。今頃は自室の部屋に篭って恋愛系の本でも読んでいるんだろう。」

 

加来はそう言って離れる。蒼龍の自室は小さな図書館みたいな状態になっているのは事実だ。本は棚を埋め尽くさんばかりにあり、床にも散らばっている。その殆どは戦略系の本などだが、一部は恋愛系も混じっている。

 

「義妹(そうりゅう)も大変だな。」

 

そう苦笑した飛龍であった。

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