イギリスに向かって飛行する富嶽は、北欧を越え、北海を通過してイギリス北部へ着陸体制に入った。
「機長、何だか凄いことになってますよ。」
見えてきたのは、軍楽隊やマスコミなどが大勢いる脇にいる滑走路だった。敵対国にも関わらず、これだけの盛大な出迎えは予想外だった。
「今朝入った情報によりますと、イギリスは日本と停戦。モスクワを爆撃した日本の重爆撃機を本土へ迎え入れました。一部では非難の声が上っていますが、これは本大戦終結の第一歩だと考える者も出て来ている模様です。」
英国放送協会(BBC)が報道している。これは、全世界に向けて発信され、大戦終結を願う者達はこれに乗じて世界で反戦運動を開始した。独逸ではロンメル指導の下、SSなどは解体され、ユダヤ人を含む収容所に居る者は全員が解放され、ユダヤ人には日本へ向かう事のできるビザが発行された。ソ連ではトロツキー氏がスターリン派勢力を一掃、人民委員会議議長就任して停戦を呼びかけた。
―ホワイトハウス―
「イギリスは日本との停戦に合意した模様です。これに、各国は動かされており、次々と停戦していきます。」
「分かっている。我が国にも、日本からの停戦要請が来ている。私は、これを受け、合衆国全軍の戦闘行為停止を命じた。」
トルーマンは閣僚等にそう伝える。閣僚等も、納得した。戦闘は、1943年12月20日をもって、全て終了した。
―独逸 首相官邸―
「では、全世界の戦闘行為が停止したのだな?」
「はい。」
ロンメルはシュタイナー大佐に確認し、世界放送用のマイクを持った。
「全世界政府に通告する。私は、ドイツ帝国総統のロンメルです。今日、ここに全ての戦闘行為停止を確認しました。これにより、本大戦は終了したのです。よってここに、講和会議開催を宣言します。場所は、スペイン・バルセロナ。日時は集まり次第執り行いと思います。なお、これに拒否する国家は平和の敵、人類の敵として殲滅するまで攻撃を行うことを念のため宣言しておきます。」
なお、ロンメルは講和会議参加国とその決まりは以下の通りにすると通告してきた。
・講和会議参加国は独・英・仏・蘭・米・日・伊・中・ソ、残るは任意参加。外務大臣、または全権代表が最低一人は来ること。
・講和意会議開催に当たり、艦艇で来る事は許可するが、来るのは3隻までで基準総排水量7万トンまで。空母の場合は搭載機65機まで。
・領有権については事前に決めておくこと。なお、占領した地域は占領国の任意で独立、もしくわ属国も許可する。
・軍縮条約については本会議では行わない。但し、国家の任意での軍縮は許可する。
・今後の同盟関係や地域グループ等は当事国と相手国の合意の上で許可する。
・本会議では全ての国家に平等に権利が与えられ、他国の圧力等に従う必要は無い。
世界中はこれに納得した。納得しなければ、国内にて再び反戦運動が起こりかねないからだ。起これば、国の権力は地に落ち、力の衰退も余儀なくされるからでもあった。
―黎明島―
「世界中の国が講和会議開催を承諾したそうよ。」
停泊する秋島の会議室で秋島が伝える。
「そうか、これで終わったんだな。戦争は。斉藤の言う悲劇の歴史はこれで回避されたのか。」
大和は戦争の終結を素直に喜んだ。味方の損害は驚くほど少なかったが、その分相手の損害は大きい。相手の多くの艦艇が沈んだ事は即ち、敵国だが多くの艦魂が死んだという事。大和はそんな悪夢が終わってくれて良かったと思っている。
「明日、全権代表の米内さんを乗せて出港するそうよ。アラビア海の泊地までは行ってもいいけど、そこからは大鳳が米内さんを連れて行くことになるのよ。」
「分かっていますよ秋島さん。」
全権代表の米内さんを乗せるのは初めから大鳳と決まっていた。既に戦艦の時代は終わり、時代は空母の航空主兵主義に変わっていったのだから。
「それと、護衛には最上と三隈が付く事になるわ。2艦とも対戦用のロ号ヘリを装備しているから大丈夫よ。」
秋島がそう補足した。ロ号ヘリの力は既にガトー級を多く沈めたことで十分な性能がある事は確証済みだったので特に心配していない。
「アラビア海までは大名行列か。そこからは私と最上、三隈で行くことになるのね。」
「そうよ。艦載機は合計65機までだから満載していても大丈夫よ。もし、攻撃されても装甲甲板だから弾き返してあげなさい。」
「飛龍さん、冗談言わないで下さいよ。私の装甲甲板って言ったてせいぜい500㎏を数発防げるだけよ。そんな弾き返せなんて無理よ。」
「冗談冗談。でも、日本初の装甲空母だから誇りを持っていなさい。」
確かに大鳳は日本初の装甲空母であり、近代的な空母だった。そして、日本が完成させた純粋な大型空母(信濃は戦艦改装だから除外)では最後の艦だった。しかし、沈没原因は呆気なく、その密閉された装甲が仇となって内部に気化した燃料が引火し、爆沈してしまった。
「明日は早いからそれぞれの艦に戻って寝なさい。」
秋島は連合艦隊旗艦であるため、日本の全艦魂を管理する立場にある。だから、全員の健康に気を使うことも必要なのだ。
「「はい。」」
他の艦魂も、秋島のそれを理解しているから、素直に従って自艦へと戻った。
「私も早く寝よう。」
そう言い、秋島も自室に戻って眠りについた。