異次元からの贈り物   作:橘花

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終結

―パリ―

 

「そろそろ、スペインに戻らないとな。」

 

斉藤は荷物を纏め、講和会議が開催されているスペイン・バルセロナに戻る用意を始める。講和会議は最終段階に入っており、日本の言い分の大半は承認される形となっていた。アメリカでは約束通りにニミッツが国民に各地で演説をして日本人がどうしたいのかを語りかけ、アメリカ国内情勢は日本の言い分を容認する動きが大きかった。

 

「えっへへ、パリって街もいいものだね。」

 

「わ!?」

 

突然、アラビア海の軍港に停泊しているはずのヴォルケ2が現れた。

 

「お、お前、どうして?」

 

「帰りが遅いからね。心配で見に来たの。ここに来る前に大鳳に瞬間移動して会議が順調だと言う事も聞いている。」

 

「そうじゃない。どうしてここまで来れる?そして、その服装は何だ?」

 

見ると、ヴォルケ2はフランスがまだ華やかで、華の都と言われていた時代の1920年代の中で最も高級そうな服装をしている。

 

「フランスに来るならこれぐらいの格好をしなさいって。大鳳の艦内会議室で一緒に話したベアルンさんが。」

 

「ベアルンって、フランス初の航空母艦の?」

 

ベアルン。ワシントン海軍軍縮条約でノルマンディー級戦艦5番艦が改装された。その為、純粋な航空母艦ではない。艦速が遅く(当時は複葉機が主流だから仕方がない。)武装も貧弱でまともな戦闘は経験しなかったが、フランス初の空母として今でも評価されている。

 

「ええ。」

 

「で、それを出してもらったと?」

 

「似合うでしょう?」

 

「似合うには似合うが、それで、どうやってここまで?」

 

「動かないで。」

 

そう言ってヴォルケ2は斉藤の背中に付いている小さな機械を取り外す。

 

「これは私たちが瞬間移動するときに目印としているの。これがある所ならどんなに離れていても瞬間移動が出来るのよ。」

 

今でいう発信機みたいな装置だった。

 

「分かった。それで、他の艦艇は?」

 

「アラビア海の軍港にのんびり停泊しているわよ。来たのは私だけ。」

 

 

―アラビア海 軍港―

 

「お姉さま!!、お姉さま!!」

 

ここではヴォルケが姉のヴォルケ2を探していた。

 

「どこに行ってしまったのやら。」

 

探しても見つけられない。まあ、パリに居るから見つけられないのも当然だが。

 

 

 

―パリ―

 

「せっかく来てくれたところすまないが、もう帰るんだぞ。」

 

「別にいいわよ。」

 

そう言って斉藤に笑顔を見せる。

 

「私は一部の人間にしかその姿を見ることは出来ないんだから・・・。」

 

「ちょっと待て。いやな予感がするぞ。」

 

 

数時間後

 

「ルン、ルン♪」

 

現在夜行列車の中。斉藤は一人なのだが二人部屋を取っている。その理由は、ヴォルケ2が同じ列車に乗ると言ったからだ。

 

「夜の街並みも最高。正に、華の都ね。」

 

「まだ復興途中だ。」

 

過ぎていくパリの夜景を見ているヴォルケ2は切なさを覚える。

 

「早く、復興して欲しいな。」

 

「日本は明日、復興支援部隊を現地に派遣する事になっている。アメリカはハワイに世界政府の建てている。これからが大変になっていくだろう。」

 

「貴方の目指す世界は、少なくとも、貴方の世界より良い世界だと思ってる?」

 

「できれば、そう願いたい。」

 

斉藤もだんだん不安になっているのは事実だった。予想以上に日本は強硬策に出ており、下手をすれば戦後に各国へ横暴な要求をするのではないかと。そんな事になればアメリカよりも酷い国になる事は目に見えている。アメリカみたいに、他国の政治に口出しし、変えようとする事は彼が望まない。国には、その国のやり方がある。日本が古来より天皇陛下を国家元首(武士や貴族中心の時期もあったが)として栄えていた様に。それが、敗戦で天皇陛下は象徴とされ、日本は栄える所か衰退の道を辿っている様に、国家を他国が無理やり変えようとするとその国の崩壊を招くのだ。

 

「まあ、近衛さんをはじめとする講和内閣はそんな事無いが。」

 

(寺沢は近衛文麿との会談で横暴な政治を行う様な人物には見えなかったと語っているし、歴史上を見る限りでも大丈夫だろう。)

 

斉藤はそんな事を考え、自分を落ち着かせた。

 

 

―バルセロナ―

 

講和会議も事態は終わり、あとは各国の個人的な会談が行われているぐらいだった。

 

「ボースさん、今回の証言。ありがとうございました。」

 

米内は欧州植民地代表として参加したスバス・チャンドラ・ボースにお礼を言う。

 

「いえ、礼には及びませんよ。日本のお蔭でアジアは独立を果たし、欧州植民地時代を終焉してくれたのですから。」

 

戦前のアジアには白人は無敗とみなされ、横暴の限りを尽くした。現地住民を奴隷の様な扱いをする事だってあった。そんな中で突然現れた有色人種の日本人はこれまで無敵と考えられていた白人を各地で撃破し、アジアから追い出したのだ。これは全世界が驚愕し、戦後にアジア・アフリカ独立を早める要因となった。

 

「解散後、フィリピンに大アジア総督府を設立して大東亜共栄同盟が成立します。東南アジア、東アジア、南アジア。それに、中央と西アジアの国の一部がこの大東亜共栄同盟に加盟することになっています。その度には、どうぞ宜しくおねがいします。」

 

「こちらこそ、アジア人によるアジア国家。実現して頂き、感謝の言葉も無い位です。」

 

インドの独立を夢見て自由インド仮政府を樹立し、祖国へ解放戦争を挑む機会を窺っていた彼。アジア人主導のもとのアジアを夢見た彼。どちらも、後世に大きな名を残すことになる事はまだ、誰も知らない。

 

 

この後、講和会議は無事に終結した。決まったのは主なものは

 

・大東亜共栄同盟の承認。

 

・日本による朝鮮半島の統治と満州国の独立

 

・世界政府樹立と常任理事国の決定

 

・軍縮条約の締結(但し、日本は拒否。自主規制を始める。)

 

・戦争犯罪人は裁かない(捕虜となっている者は早急に本国への送還)

 

・外国への駐留と派兵は両国との対等なる話し合いで決定

 

という事だった。

 

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