―フィリピン―
「もうじき、建設が完了します。」
フィリピンでは日本主導の下に、大東亜本部を独立承認時から建設している。それが、もうじき完了する事となった。
「エミリオ氏の協力で、早期建設が実現したんです。感謝いたします。」
大東亜本部建設の中心を担い、国内講和政策を行っていた寺沢は革命家のエミリオ・アギナルドに言う。
「いえ、日本の協力でフィリピンは独立できたのです。その事には大変感謝しております。思えば長い事です。アメリカに騙され、スペインに対する独立戦争を始め、勝利した後に初代大統領となったが、パリ講和条約でアメリカの植民地になってしまった。その後は必死に国民と共に抵抗したが、主権を認めざるを得ない状況へとなってしまったんです。」
「だが、今は解放されたフィリピンを指導していかなければならない立場。一度経験がある事と、国民からの人気が高いので、大丈夫だとは思いますよ。」
「感謝します、寺沢さん。」
フィリピンは完全独立を果たし、フィリピンの義勇軍はフィリピン軍と改名して少数ながらも本格的に軍備を整えている。戦闘機は日本製の物から、鹵獲した連合軍製の物まで様々だが、空軍力は充実している。陸軍も日本から戦車を輸出してもらい、装備を整えている。海軍も砲艦などを購入して海上防衛にも重点を置いている。
「軍備は完璧です。大国にはやはり敵いませんが、それでもフィリピンを守るには十分な戦力です。」
「今後、日本がアジアを導くことになるでしょう。その時は、宜しくお願いします。」
―日本―
「フィリピンには計画通りに大東亜本部を建てることが出来ました。講和会議も終了し、我が国も新憲法を作り終えました。」
内務大臣の大達茂雄は御前会議の場にて言う。
「斉藤さんの考えに基づく憲法ですが、これが真の日本の姿と言えるでしょう。」
大日本帝国憲法と現在の日本国憲法を併せ持った憲法を創設し、新国家憲法として公布が成された。半年後、施行されることも決定された。
「明日は講和使節団が横須賀に到着されます。国民は彼らに多大な歓迎をするでしょう。」
「そうだな。」
全員が陛下の方を見る。この会議で、一度も言葉を発せず、ただ重臣達の話を聞いている。
「陛下、宜しいですかな?」
近衛は陛下へと質問する。
「うむ、朕は満足している。この戦争、ごく少数の犠牲のみで早期講和が実現したことを。斉藤中将には大勲位菊花章頸飾(だいくんいきっかしょうけいしょく)を授与する事に決定した。」
大勲位菊花賞頸飾。日本の勲章の一つで、最高位の勲章である。本来は大勲位菊花大綬章を授与していないと与えられないが、今回は特例で認められる事となった。
―南シナ海―
「海風はやっぱり最高だよ。」
防空指揮所にて風に当たる斉藤は講和使節団を乗せた大鳳からアラビア海で降り、護衛艦のとなっているヴォルケ2に乗艦した。
「やっぱり、ここに居たんだ。」
「ヴォルケ2か。」
瞬間移動してきたヴォルケ2が斉藤の近くに歩み寄る。
「戦時じゃないから、誰も防空指揮所に居ないわね。」
「ああ。突然、航空機で奇襲なんて事も無いしね。」
「それで、戦後に私たちはどうなるの?」
ヴォルケ2は斉藤を見つめる。無論、彼女も艦魂。解体される覚悟は出来ている。
「君とヴォルケ以外の解体は既に決まってしまっている。彼女らにも話したが、全員覚悟していたようだ。」
「私と、妹以外?」
「そうだ。」
「どうして?」
「この後、恐らくは再び戦争が起こるだろう。そして、それは陸上戦が主となる。そして、日本は島国。介入するには上陸戦が不可欠になってくる。その時の艦砲射撃艦として、本艦とヴォルケには残っていてもらいたいんだ。」
「でも、航空機が主流になるんでしょう?」
「空母は、あのドックで幾らでも量産できる。だが、戦艦は。本艦とヴォルケを除き、すべて解体されるんだよ。」
「な!?」
「全員、納得してくれた。恐らく、嫌々の納得をした者も居るかもしれない。でも、彼女等は戦争でしか生きられないんだよ。」
「だったら。」
「分かっている。解体をやめて、保存艦として残しておけと言いたいんだろう?。でも、現実的に、これからは空母の時代が来る。そして、中途半端な抑止力でしかない大和を始めとする戦艦は既に時代の無用な長物と化してしまった。唯一、航空機に対応できる戦艦として本艦とヴォルケを残すことにしたんだよ。」
「でも。」
そこへ、後ろにヨグ=ソトースが現れた。
「終わったかい?」
「ああ、ヨグ=ソトース。」
「では、戻そう。変わった日本を見るがいい。そして、変わったアジアを、見るがいい!!」
突然、斉藤は光に包まれる。
「斉藤さん?」
「すまないなヴォルケ2。君とは、ここでお別れの様だ。ま、未来で会えれば。また会おう。」
「斉藤さあぁぁん!!」
斉藤は目の前から消え、ヴォルケ2はただその場に立ち尽くした。
「さい、とうさん?嫌だよ。そんな。ここで、お別れなんて。そんなのいややああぁぁぁ!!」
ただ、南シナ海の海に。艦魂とそれを見える者しか聞こえない絶叫が響いただけだった。