穴熊寮からごきげんよう   作:秋津島

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「さすがに本物のネズミと猫になると、仲良く喧嘩するってわけにもいきませんよね」
「いやはや、現実は非情です」
「まあ、それはそれとして。そろそろ三巻も終盤に近づいてきましたね。果たしてあの局面はどうなるのか。エドガーが上手く動いてくれると良いのですけど」


ムーニー

 スキャバーズの一件で、ロンとハーマイオニーの仲は最悪なものになってしまった。お互いに相手に対して怒っていて、もう仲直りの見込みがないのではないかと誰もが心配するほどに。

 二人の仲をどうにか修復しようと、エドガーがそれとなくクルックシャンクスをフォローしたり、スキャバーズはどこかに隠れているだけかもしれないと校内を探し回ってみたが、そのどちらも実を結ばなかった。数日経っても二人は口を聞かず、顔を合わせようとしないし、スキャバーズも一向に見つからなかった。

 

 そんな中で行われたグリフィンドール対レイブンクロー戦。

 ハリーのファイアボルトの初披露ということもあって、生徒たちの熱気はいつにも増して凄まじかった。

 いつも試合の実況をするリー・ジョーダンなんて、試合よりもファイアボルトの解説を嬉々として行い、試合中に何度もマクゴナガル先生に注意を受けるほどだった。

 ハリーは絶好調だった。箒はしっかり馴染むし、思い通りの飛行ができる。それに、途中で現れた吸魂鬼もあっという間に守護霊の呪文で撃退してしまい、最終的にはスニッチを掴んでレイブンクローに勝利した。

 ちなみに吸魂鬼は後にスリザリンの生徒の仮装だったことが判明した。マクゴナガル先生に厳しいお叱りを受けるとともに、生徒たちの笑いものになっていたが、こればかりは自業自得だろう。

 

 

 そんなことよりも、今はもっと重大なニュースがあった。

 シリウス・ブラックが、ついにグリフィンドール塔――生徒に寝室に侵入したというのだ。被害に遭ったのはハリーだと誰もが思ったが、実際にはその隣のベッドにいたロンが襲われていた。カーテンをナイフで切り裂き、ロンに覆いかぶさるように立っていたという。

 これを聞いて、エドガーは当初からぼんやりと抱いていた考えを確信に変えた。

 ――シリウスが狙っているのは、やっぱりハリーではなく別のものなんだ。

 本当にハリーを狙っているのなら、寝室に侵入したとき、真っ先にハリーを襲っているはずだ。もしベッドを間違えたのだとしても、彼は力のある魔法使いだし、三年生の男子五人くらいなら全員黙らせることもできただろう。そもそも、せっかく忍び込んだのに何もせずに去っていくなんて。まるでそこでは、自分の目的が果たせないみたいじゃないか。

 

「……考えすぎだと思うが。あまり騒ぎを起こしては捕まると思って逃げただけなのかもしれないし」

「んー、でも何か引っかかって」

「厄介ごとに首を突っ込むのはほどほどにしておけ。でないと、また皆が心配する」

「……そのみんなが心配するってフレーズ、ルーピン先生にも言われたことがあるんだよね」

「君は危なっかしいからな」

 

 侵入事件の翌日、エドガーは自分の考えをぽつぽつとザカリアスに話しながら、廊下を歩いていた。

 フリットウィック先生によってあちこちのドアに貼られたシリウス・ブラックの顔や、フィルチさんが塞いだネズミの出入り口が、ホグワーツの警戒が厳しくなったことを如実に表している。

 今回の一件で、シリウスを通してしまったカドガン卿はクビになり、フィルチさんの見事な技術で修復された太った婦人がまたグリフィンドールの入り口に戻った。……無愛想な数人のトロールの護衛を引き連れて。

 それから、合言葉が書かれた紙をうっかり落としてしまったネビルの面目も丸つぶれだった。ホグズミードに行くことを禁じられ、罰を受け、マクゴナガル先生は彼には合言葉を教えてはならないと皆に言い渡した。それだけならまだネビルも耐えられただろうけど、決定的だったのは侵入の二日後に彼の祖母から届いた吼えメールだった。これでネビルはすっかり落ち込んでしまい、エドガーがいくらチョコレートをあげても沈んだ表情のまま治らなかった。

 

 ところで、エドガーにはスキャバーズの一件ですっかり忘れていたことがあった。

 それはボガートが変身した、自分とよく似た青年のこと。

 その青年について、ルーピン先生は「かつての友人」、「一人を敵に売り、一人を殺した」と言った。その人物こそが、かの脱獄犯シリウス・ブラックだ。これはハリーが『三本の箒』で聞いた証言と照らし合わせればすぐに導き出すことが出来る。

 根拠はもう一つある。ハリーが見せてくれた写真に写っていた若かりし頃のシリウスは、まるで親子か兄弟のように、自分とボガートによく似ていたのだ。これで、よもやボガートとシリウスが別人ということはあるまい。

 ここまで証拠が出そろっているのだ。もはやこれは疑いようのない事実だろう。

 

 この一連の考えは、エドガーの頭の中で特に過程を必要とせず自然に繋がったものだった。そのため意識して脳内に留めておいたわけではなかったので、他の重要な出来事によってずっと頭の隅に追いやられていた。

 それが、かの侵入事件以来シリウスを強く意識するようになって、ようやく「そういえば」と思い出したのだ。

 

 さて、ここでエドガーにはどうしても納得できないことがあった。

 それは、なぜ自分がシリウスに対する印象が当初からプラスなのか、ということだ。

 エドガーが知るシリウスの情報を簡潔にまとめると、ヴォルデモート卿の手下であり、無二の親友を裏切っただけではなく、自分を追い詰めた友人とその場に居合わせた十二人のマグルを殺害し、その罪でアズカバンに収容されるも脱獄した魔法使いだ。これだけを見るなら、十人中十人がシリウスを悪人だと思うだろう。というより、善人だと思える部分がこれっぽちも存在しない。彼が親友の子供を狙っていると聞いても、それに首を傾げる者などいないだろう。

 それにも関わらず、エドガーは汽車の中で「シリウスが狙っているのはハリーなのだろうか」、「シリウスが動いたのは別のきっかけがあるからではないか」と言い、彼を悪人と決めつけるなんてできないと思った。エドガーは動物のことになると目の色が変わる自覚があるが、いくら彼の名前が犬に関係が深いからと言っても、ここまでかばう理由がない。いつかエドガー自身が言ったように、彼とシリウスは赤の他人なのだから。

 

「……ザカリアスはさ、十人中十人が悪だと言う罪人を、何の根拠もなく悪じゃないって言える?」

「相手にもよるな。それが親しい者や家族だったら、あるいは……」

「あー、えっと、他人の場合で」

「それは……できないな」

「……だよねー」

 

 

 いつの間にかバックビークの裁判が間近に迫っていた。

 図書室で資料集めをしている最中に、次の金曜日にハグリッドがバックビークとロンドンに行くのだと、ハーマイオニーが教えてくれた。

 

「そっか、金曜日か」

「時間がないわ。あとは必要なことを全部メモに書いて――」

「ねえ、ハーマイオニー」

「日付順に並べておいた方がいいわね。それから――」

「ハーマイオニーってば」

「あ――なに、エドガー」

「大丈夫?」

 

 たくさんの本を広げ、羊皮紙にすらすらと字を書いていたハーマイオニーは、エドガーの問いで手を止めた。目元が赤くなって、瞳が潤みはじめる。

 ロンがシリウス・ブラックに襲われた。それはハーマイオニーの心をひどくかき乱す事件だった。喧嘩中とはいえロンは彼女にとって大切な友人の一人だから、もちろん心配しないはずがない。

 しかし、当のロンはそんなことは露知らず、相変わらずスキャバーズのことでハーマイオニーに対してカンカンだし、まともに口をきこうとしない。ハリーもまたクィディッチの練習で忙しく、彼女とまともに顔を合わせていない。

 いくらハッフルパフに話せる友人がいたとしても、同じ寮の親友から冷たい態度を取られ続けては気が滅入ってしまうだろう。

 それに、ただでさえハーマイオニーは人より多い選択科目に、バックビークの裁判も抱えている。色々なことを一人で溜め込んでしまっているので、動揺したり、焦ってしまうのも無理はない。

 ……と、そんな彼女の様子を読み取ったエドガーは、ポケットからチョコレートを取り出した。

 

「一人で抱え込んだらだめだよ。無理はよくない」

「でも……」

「――きみの欠点はね、一人で完結してしまうこと。もっと周りをよく見て。きみの力になりたいって、きみを支えたいって思っている人は、決して少なくはないよ」

 

 ハーマイオニーは目元をぬぐった。

 そうして差し出されたチョコレートを受け取って、微笑んだ。エドガーも柔らかく笑う。

 

「あの――ありがとう。その、私は少し休もうと思うのだけど、資料のまとめ、任せてもいいかしら?」

「ん、お安い御用だよ。任された」

 

 

 日が暮れてから談話室に戻ると、掲示板の前にかなりの人垣ができていた。

 今度の週末に、またホグズミード訪問があるようだ。

 エドガーには関係ない貼り紙だったのでその場から去ろうとしたが、数歩も立たないうちにその足がぴたりと止まった。ああ、そういえば。

 

(ハリー、また行くんだろうなあ)

 

 忍びの地図なる便利な逸品を手に入れたハリーが、このホグズミード週末を無視するとは考えられない。それも、前回で少しばかりその楽しみを味わってしまったから、今度はもっと満喫したいと考えるだろう。彼はシリウスへの危機感も薄いし(それは少なからずエドガーのせいでもあるのだが)、同じく危機感の薄いロンが誘えば二つ返事で了承してしまうはずだ。

 と、するならば。エドガーがやるべきことは一つ。

 

(そろそろボロが出るころだろうし、フォローしておかないと)

 

 どうせ行くのをやめるように説得したところで、彼らが素直に頷くとは思えない。そもそも同じことはとっくにハーマイオニーが何度か言っているはずだし、今さら言っても効果は薄いだろう。それに……あんなに楽しみにしているものをおいそれと奪うことにも抵抗があった。だからエドガーは、今回も黙認することにしたのだ。

 こういう「甘い」部分が、組み分け帽子に「どこへ行っても中途半端」になると評されたんだろうな、とエドガーはぼんやり考えた。本当に友達を想う「優しさ」を持つなら、根拠のない考えを理由にホグズミードに送り出すことはしないだろう。

 

 

 土曜日のホグズミード訪問日。

 エドガーが予想した通り、ハリーはとうとうやらかしてしまったらしい。

 図書室でちょっとした勉強をしていたところをスネイプ先生に呼び出され、連れていかれた先はいつか来た研究室。きまり悪そうな顔をしたハリーが、部屋に入ってきたエドガーを見てほっと息をはいたのもつかの間、スネイプ先生が冷たい声で「それで」と呟いた。

 

「君の言う証人を連れてきたが」

「そうです。僕はエドガーとずっと一緒にいました」

「……と、君のご学友は主張しているが。クロックフォード、君は確かにポッターと一緒だったのかね? 詳しく聞かせてもらおう」

 

 エドガーはなんとなく理解した。

 おそらくハリーはホグズミードで誰かに姿を見られてしまったのだろう。こうしてスネイプ先生に尋問されているということは、目撃したのはスリザリン生のようだ。

 事前の打ち合わせで“一緒に図書室で勉強していた”ことになっていた自分が、ハリーが校内にいたことを証明する証人として呼ばれた。大方そんなところか。ようしハリー、その弁護引き受けた。きみの無罪(ほんとは有罪だけど)を勝ち取って見せるよ。

 

「ハリーなら、ずっと一緒でした。図書館で吸血鬼のレポートを書いていたんです」

「ほう。しかし、それならおかしいですな。我輩がポッターを見つけたのは四階の銅像の近く。図書館からは遠いし、その周辺には娯楽に使える部屋などないはずだが」

 

 ホグズミードから帰ってきたところを捕まったわけか。

 ピンポイントでその銅像の近くにスネイプ先生が来たのは、きっと事前にその近くをうろうろしているところを見られていたに違いない。……ホグズミードに行こうとしたら予期せぬ邪魔が入った。どうにかして撒こうとしている間に見られた、とかそんな具合だろう。

 さてさて、どう言い訳したものか。

 

「もちろん、わかっています。……おれたち、ルーピン先生から吸魂鬼防衛術の訓練を受けているんです。今日は訓練がない日だけど、自主的に練習したくて。あそこには空き教室があるから、そこを使おうと思ったんです。呪文の練習だけなら、杖があれば十分ですから」

「そ、そうです。レポートがひと段落したときに、偶然その話になって。エドガーがもう少しだけ図書室に残ると言ったから、僕は先に空き教室に行ったんです」

 

 ハリーが上手くついてきた。これなら。

 

「……君たちの厚い友情には泣かされますな。これでは埒が明かない。ポッター、ポケットを引っくり返したまえ!」

「……っ」

「聞こえなかったか? 今すぐポケットを裏返すんだ!」

 

 ハリーは諦めたように、のろのろとゾンコ店の悪戯グッズの買い物袋と忍びの地図を引っ張り出した。エドガーは頭を抱えたくなった。さすがにブツが出てきては、弁護するのも一苦労だ。

 

「……ロンにもらいました。この前ホグズミードから持ってきてくれました」

「ほう? それ以来ずっと持ち歩いたというわけだ。……それで、こっちは?」

 

 スネイプ先生はゾンコ店の袋もそこそこに、地図の方を取り上げた。すでに呪文は解除してあるようで、今はただの羊皮紙でしかないが……それだと逆に怪しすぎる。余った羊皮紙の切れっぱしなんて言おうものなら、なぜこんな古ぼけた切れっぱしを持っているのか、なんてことにもなりかねない。

 

「余った羊皮紙の――」

「それもゾンコの店のものです。ロンが随分前に、自分じゃ使い方がわからないと言うのを譲ってもらって、二人で謎を解こうとしていたんです。それで、突然使い方が閃くことがあるだろうから、ハリーに持ち歩くようにお願いしたんです。柔軟な発想は彼の方が得意ですから」

「なるほど、なるほど……君はどうしてもポッターをかばいたいわけか」

 

 ぶつぶつ言いながら、スネイプ先生は杖を取り出し、地図を机の上に広げた。

 

「望み通り、使い方を調べてやろう。汝の秘密を顕せ!」

 

 杖で羊皮紙に触れながら唱えるも、地図に変化は起こらない。

 ハリーとエドガーは固唾をのんで見守った。どうか、地図が出ませんように。

 

「ホグワーツ校教師、セブルス・スネイプ教授が汝に命ず。汝の隠せし情報を差し出すべし!」

 

 杖で地図を強く叩くと、今度は変化が起きた。

 いつもとは違って、インクは蜘蛛の巣のように広がらず、まるで見えない手が書いているかのように、羊皮紙の表面に文字が現れた。

 

『私、ミスター・ムーニーからスネイプ教授にご挨拶申し上げる。他人事に対する異常なお節介はお控えくださるよう、切にお願いいたす次第』

『私、ミスター・プロングズもミスター・ムーニーに同意し、さらに申し上げる。スネイプ教授はろくでもない、いやなやつだ』

『私、ミスター・パッドフットは、かくも愚かしき者が教授になれたことに、驚きの意を記すものである』

『私、ミスター・ワームテールがスネイプ教授にお別れを申し上げ、その薄汚いドロドロ頭を洗うようご忠告申し上げる』

 

「ふむ……片をつけよう……」

 

 地図の製作者たちの言葉を見たスネイプ先生は、静かに言った。

 暖炉に向かって大股に歩き、暖炉の上の瓶からキラキラする粉を一握り掴み取り、炎の中に投げ入れた。

 

「ルーピン! 話がある!」

 

 スネイプ先生が炎に向かって叫ぶと、何か大きな姿が、急回転しながら炎の中に現れた。やがて、ルーピン先生がくたびれたローブから灰を落としながら、暖炉から這い出してきた。

 

「セブルス、呼んだかい?」

「いかにも。いましがた、ポッターにポケットの中身を出すように言ったところ、こんなものを持っていた」

 

 スネイプ先生は怒りに顔を歪め、机の上の羊皮紙を指差した。四人の言葉がまだ光っていて、それを見たルーピン先生は、奇妙な、窺い知れない表情を浮かべた。

 

「この羊皮紙にはまさに『闇の魔術』が詰め込まれている。ルーピン、君の専門分野だと拝察するが。ポッターがどこでこんなものを手に入れたと思うかね?」

「『闇の魔術』が詰まっている? セブルス、ほんとうにそう思うのかい? わたしが見るところ、無理に読もうとする者を侮辱するだけの羊皮紙にすぎないように見えるが。子供だましだが、決して危険じゃないだろう? ハリーは悪戯専門店で手に入れたのだと思うよ」

「そうかね? 悪戯専門店でこんなものをポッターに売ると、そう言うのか? むしろ、直接に制作者から入手した可能性が高いとは思わんのか?」

「ミスター・ワームテールとか、この連中の誰かから、という意味かい? ハリー、この中に誰か知っている人はいるかい? エドガーも」

 

 ハリーとエドガーは急いで「いいえ」と答えた。

 答えながら、エドガーの方は何かが引っかかるような、もう少しで何かに気づけそうな、そんなもやもやした表情を浮かべていた。

 ――ムーニー……月の……月……まさか?

 

「セブルス、聞いただろう? わたしにはゾンコの商品のように見えるがね――」

 

 合図を待っていたかのように、ロンが研究室に息せき切って飛び込んできた。スネイプ先生の机の前で止まり、胸を押さえながら、途切れ途切れに喋った。

 

「それ、僕がハリーとエドガーにあげたんです――ゾンコで随分前にそれを買いました……」

「ほら! どうやらこれではっきりした!」

 

 ルーピン先生はポンと手を叩き、機嫌よく周りを見回した。

 

「これはわたしが引き取ろう。いいね?」

 

 先生は地図を丸めてローブの中にしまい込んだ。

 

「三人はついておいで。吸血鬼のレポートについて話があるんだ。セブルス、失礼するよ」

 

 ルーピン先生の後に続いて、三人は研究室を後にした。

 がらんとした玄関ホールまで辿り着くと、先生は忍びの地図が「地図」であることを知っていると言い、製作者にも会ったことがあるとぶっきらぼうに答えた。

 それから、ハリーは両親が繋いでくれた命をみすみす危険にさらしたことを、ロンは危険だとわかっていてハリーを誘ったこと、そしてエドガーは彼らの行動を黙認し、あまつさえ偽装工作を行ったことを、それぞれ静かな声で怒られた。

 これはマクゴナガル先生やフィルチさんに厳しく叱られるよりも、ずっと深い影響を三人に及ぼした。普段から温厚な人に怒られることは、一層罪悪感が増すものなのだ。

 

「さあ、もう寮に戻るんだ。ホグワーツももう、絶対安全というわけではないからね」

 

 話が終わって、四人は解散した。

 ハリーとロンは階段を上がってグリフィンドール塔へ、ルーピン先生は自分の事務所へ。エドガーは――。

 

「……先生、あの、少しよろしいですか?」

 

 自分の寮には戻らず、ルーピン先生の後を追ってきていた。

 ――エドガーは一つ確かめたいことがあった。忍びの地図に関する、ルーピン先生とスネイプ先生の言動と、自分の憶測と勘で辿り着いた、ある一つの考え。

 

「どうしたんだい?」

「根拠のない推測ですし、聞かれても問題ない内容だとは思うのですが、念のため。……少し、屈んでいただいても?」

 

 ルーピン先生が身を屈める。

 エドガーはその両肩に自分の手を置いて、僅かに背伸びをし、ルーピン先生の耳元に口を寄せた。

 

「――ムーニーって、先生のことですか?」

 

 先生は何も答えなかった。ただ、穏やかな瞳でエドガーを見つめた。

 その瞳の中に「肯定」の色があったことを、エドガーはしっかり読み取っていた。

 

 

 後日、ハグリッドが敗訴したことがハーマイオニーより告げられた。




・裁判前日 ハグリッドの小屋
ハーマイオニー「いい? ハグリッド。相手の証言を徹底的にゆさぶって、多くの情報を引き出すの。そうして、矛盾を見つけたら決定的な証拠を突きつけるのよ。バックビークの無罪を信じて諦めなければ、必ず無罪判決が勝ち取れるわ」
エドガー「あ、あと『待った』とか『異議あり』ってやるときは、机を思い切り叩くのがお約束だよ。たまにうるさいって言われることもあるから、そこは時と場合によって調整してね」

・翌日 裁判終了後
ハグリッド「すまねえ……あんなに手伝ってもらったのに、『つきつける』を五回間違っちまった……」

動物タイトル、今回はとうとう万策尽きました。
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