穴熊寮からごきげんよう   作:秋津島

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「雪やこんこ、あられやこんこ、なんて童謡が私のかつていた国にはありました」
「犬は喜び庭かけまわり、猫はこたつで丸くなる。なんとも微笑ましい光景ですよね」
「私は専らこたつで丸くなるほうでございましたが、今の『私』は庭かけまわる方が性に合っているのでしょうね。子供は風の子なんとやら、ですね」


クリスマス休暇の過ごし方

「かわいい孫のエディへ

 

ホグワーツでの生活はどうかしら。あなたはあまり手紙を送ってくれないから、私は少し寂しいのよ。あなたがネセレをかわいがって手元に置きたがるのはわかるけど、私はたった一人の家族であるかわいいあなたをホグワーツに送って一人で過ごしているのよ。だから、あなたもお祖母さんを大切に思ってくれているなら、もっとネセレを飛ばして手紙を送って頂戴ね。お願いよ。

 

ところで今年のクリスマスだけれど、私はお友達とルーマニアへ旅行に行くので、あなたは家に帰れないの。つまり、ホグワーツに残ってもらわないといけないのだけれど……いいかしら? せっかくの休暇なのにごめんなさいね。別に、手紙を送ってくれなかった腹いせじゃないのよ。本当に。おわびにクリスマスプレゼントにはたくさんのチョコレートを送るから、許してね。

 

あなたのお祖母さんのドリスより」

 

「親愛なるお祖母さまへ

 

まずは手紙を送る頻度が低かったことを謝ります。確かにネセレにはいつもそばにいてほしいという気持ちもありますが、おれが手紙を送らなかった理由はもっと別にあります。それは単純なことで、手紙を書くのが少し苦手なんです。でも、そのせいでお祖母さまを寂しがらせているのなら、もうそんなことも言っていられませんね。これからはもっとネセレに飛んでもらいますので、ご容赦ください。

 

ルーマニアへの旅行、ぜひ楽しんでくださいね。吸血鬼とドラゴンにはくれぐれもお気をつけて。おれはホグワーツで十分楽しんでいるので、クリスマス休暇をこっちで過ごせるのは、お祖母さまには申し訳ないのですがとても嬉しいです。クリスマスプレゼントのチョコレートは期待しますが、それ以上に旅行の話を聞かせてくだされば嬉しいです。では、良いクリスマスを。

追伸 手紙だけでは味気ないので、写真を同封します。ハッフルパフの友達です。みんな優しくて面白い人たちなんですよ。

 

あなたの孫のエドガーより」

 

 

クリスマス休暇を目前に控えたこの日、おれのホグワーツ居残りが決定した。手紙に書いたことは嘘ではないが、ハッフルパフ生のほとんどは実家に帰ることになっていたので、がらんとした寮に残されるのは少し寂しかった。

そんな気持ちを紛らわせるために、休暇の前日に勝手に広間の飾りつけをしたり、ハグリッドが運んできた樅の木に何百という蝋燭の装飾を付けて輝かせていたら、マクゴナガル先生とフリットウィック先生に捕まってしまった。怒られるのかと思ったら、「猫の手ならぬ、生徒の手も借りたいところだったのです」と他の飾りつけも手伝わされることになった。あとで十点とチョコレートをもらった。最近フリットウィック先生にはチョコレートで餌付けされているような気がする。

ところで広間のツリーの一つをハッフルパフ仕様に飾ろうとしたらさすがに止められたので、代わりに寮の談話室にあった小さなツリーに装飾を施しておいた。満足。自分でも会心の作だと思う一番上に飾ったアナグマと星の飾りは、セドリックにもその出来を褒められて、褒美とばかりに蛙チョコレートをもらった。おれはセドリックにもよく餌付けされているような気がする。

 

 

なんだかんだで、おれは閑散としたホグワーツでの休暇を楽しんで過ごした。

ハッフルパフの友達がいない分グリフィンドールに入り浸るようになり、双子のフレッドとジョージと他愛もないいたずらを計画したり、ロンとハリーとはチェスで勝負をして楽しんだ。ちなみにおれのチェスの腕は中の上くらいなので、ハリーには勝てるがロンにはほとんど歯が立たなかった。ロンは少し誇ったような顔をしていた。

 

「いやあ、エドにはなかなか見どころがあるな!」

「グリフィンドールじゃないのが残念だぜ!」

「今からでもこっちに来るかい?」

「素敵な誘いだけど、おれはハッフルパフが好きだから受けられないかな」

「そう言うと思ったぜ。もっとも、途中で寮を変えることなんてできないんだけどな!」

 

ところで、特にやることもなかったので休暇中ずっと双子のいたずらに加担していたら、よくわからないうちに気に入られた。校庭に五メートルを超す巨大な雪だるまを作ったことが一番のきっかけのような気がするが、どうだろう。ちなみにその雪だるまは翌日には跡形もなく消えていた。儚い。

 

「それにしても、エドはどうしてハッフルパフに入ったんだ?」

「アナグマがかわいかったから。というのは冗談で、実はおれもよくわからないんだ。組み分けのときにはどこでもやっていけるって言われたし。まあ、その代わりどこに行っても中途半端とも言われたけどね」

「へえ。そんなことがあったのか」

「それで、最終的にどこがいいかって聞かれたから『シンボルの動物が一番かわいいところがいい』って言ったら、ハッフルパフになったんだ」

「おいおい、アナグマのくだりは冗談じゃなかったのか?」

「もちろん。でもライオン、鷲、アナグマ、蛇の中だと、やっぱりアナグマが一番かわいいよね」

「……君はたまに何を考えているかわからないことがあるが、まあ、そういうところもなかなかユニークでいいと思うぜ」

 

クリスマスの朝、ベッドの足元にはプレゼントの山が置かれていた。一番上の包みがお祖母さまからで、ハニーデュークス菓子店の最高級のチョコレートとルーマニア旅行の手紙と写真が入っていた。他の包みにはチョコレート菓子がたくさん入っていたから、後でグリフィンドールの面々と分け合って食べた。おいしかったです。

そういえば、昼過ぎにグリフィンドールの監督生であるパーシーを含めたウィーズリー四兄弟とハリーが猛烈な雪合戦を繰り広げている間、先日のリベンジとして今度は八メートルくらいの雪だるまを作ろうとしていたら、雪合戦が終わった後に双子が来てあれよあれよと手を加えて、最終的に十メートルの雪だるまが完成した。おれたち三人は「いい仕事したぜ」といった感じに清々しい顔をしていたが、パーシーには複雑そうな顔で双子もろとも怒られた。

 

「君は真面目そうな子だと思っていたんだけどな。ロンから聞く限り成績も良いみたいだし。一体なぜこんなことを?」

「……楽しそうだったから」

「どうだパーシー。なかなか将来に期待できるやつだろう!」

「楽しそうだからって理由でこんな巨大な雪だるまを作るやつなんて、ホグワーツ中を探しても滅多にいないぜ!」

 

その日から、おれはグリフィンドールの監督生に目を付けられることになった。フレッドとジョージはなぜか嬉しそうだった。雪だるまは翌日こそ無事だったが、次の日には足元が崩れ始めていて、三日目にはやはり跡形もなく消えていた。栄枯盛衰、諸行無常である。

雪だるまを失った悲しみ(自信作だったのに)に暮れていると、珍しくロンが一人でやってきた。

 

「少し話したいことがあって。……いいかい?」

 

おれはもちろんだと答えた。ハリーがいないことから、きっと彼に関することなのだなと察し、それならばとハッフルパフ寮に招くことにした。今はほとんど生徒がいないし、話をするにはちょうどいいと思ったのだ。

ロンはハッフルパフ寮に来るのは初めてだったようで(場所すらも知らなかった)、談話室に入ると珍しそうに内装を眺めてから、落ち着かないように黄色と黒の布張りのソファに身を沈めた。

 

「それで、話したいことって?」

「その、ハリーのことなんだけど」

 

予想どおりだった。

ロンが言うには、クリスマスにハリーに誰かから透明マントが送られて、それを使って夜中に校内を探索していたら、偶然にも不思議な鏡を見つけたのだという。その鏡を覗くと、ハリーには亡くなった彼の家族が見えて、ロンには監督生になり最優秀寮杯とクィディッチ優勝カップを持った自分の姿が見えたそうだ。おれはなんとなく、その鏡の正体を知っているような気がした。そう、いつか夢で見たような……。

 

夢と言えば、ハロウィーン以来おれはぱったりとあの夢を見なくなった。

それだけではなく、特定の相手を見るとその未来がわかる、ということも少なくなった。これまでは色々な人の未来が無作為に見えていたのに対し、今は例えば目の前にいるロンとか、ハリーとか、ごく僅かな人にしか効果を見せなくなっていた。その代わり、見える未来は今までよりもはっきりしていて、なおかつ近いうちに起こる重要な出来事に限られるようになった。

これは未来予知の精度が上がっていると考えるべきなのか。そもそもあの夢は一体何なのだろうか。

ぼんやりとそんなことを考えていたら、ロンに心配そうに声を掛けられた。

 

「あ、ごめん。それで、ハリーがその鏡に夢中で様子がおかしいって話だよね」

「そう。僕、何かした方がいいのかなあ。このままだと、ハリーが二度とあの鏡から離れられなくなっちゃうんじゃないかって心配なんだ」

「……そうだなあ。じゃあ、明日以降もおかしいようだったら、ダンブルドア先生にご相談しようか。先生なら、なんとかしてくださると思うし」

「そっか、そうだね。ダンブルドアならなんとかしてくれるよね!」

 

ロンはその言葉で安心したようだった。

ところで、一つ気になることがある。

 

「まさかとは思うけど、それで図書室の閲覧禁止の棚に入ったりしてないよね?」

 

話を聞く限り、その鏡があった場所は図書室の近くだ。校内を探索していたと言うけど、図書室なら昼間に入れるから、わざわざ夜中に姿を隠してまで行くことはないだろう。それに、図書室付近には他に目ぼしい教室もない。これらのことから、おれにはハリーが閲覧禁止の棚に入ろうとしたようにしか思えなかった。

否定してほしいと思いながらロンを見つめると……あ、これは黒だ。気づかれてしまった、先生に報告される、どうしよう、何とかしないと――等々、せわしなく百面相をしている。

 

「えっと、うん、そのまさかだよ。調べ物があって……。お願いエドガー、このことは先生には言わないでほしいんだ!」

「いいよ。その代わり、何を調べていたか教えてくれる?」

「……ニコラス・フラメルって人のことを調べていたんだ」

 

ロンはぽつりぽつりと語り出した。自分とハリー、ハーマイオニー、ネビルの四人で四階の『禁じられた廊下』に入ったこと、そこで三つの頭を持つ巨大な怪物犬を見たこと、その犬が何かを守っているらしいこと、その何かをスネイプ先生が狙っていること、そしてその『何か』がニコラス・フラメルという人物に関係していることなどを、誰かに聞こえることを恐れるように小声で告げた。三つの頭の犬、そういえばそんなのも夢に出てきたような……。

 

「そんなことがあったんだ」

「うん。図書室も結構調べたけど手がかりがなくて、それで閲覧禁止の棚にならあるんじゃないかって」

「……おれは、そんな危険なことをしなくてもよかったと思うんだけどな」

 

言いながら、「少し待ってて」と寝室に行き、トランクからカードの束を持ってくる。蛙チョコレートのおまけについている有名魔法使いカードだ。不思議そうな顔を見つめるロンにその中の一枚、アルバス・ダンブルドアのカードを差し出し、裏を見るように促す。

 

「どこかで聞いたことがある名前だと思ったんだ。錬金術師のニコラス・フラメル、その人で間違いない?」

 

ロンは飛び上がって、何度かお礼を言ってから風のように去っていった。

その翌日にはロン曰く、元通りになったハリーがやってきてお礼を言い、更に休暇が終わるとハーマイオニーも「助かったわ」と蛙チョコレートを持ってきてくれた。力になれたようで何よりである。




ストックが切れたら不定期更新になりますが、少なくとも賢者の石は6月中に終わらせます(フラグ)
あと、不定期とは言うものの、週に一度の更新は心がけるようにします(フラグ)
ウィーズリー兄弟は癒されますね。

ここまで読んでくださりありがとうございます。
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