ダンまち ~黒衣と煌めく刃~   作:凸凹凹凸

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『〝別世界の記憶〟を持つ黒衣の青年』

 一護(いちご)


『英雄を夢見る駆け出し冒険者』

 ベル・クラネル




『 新たな記憶 』

 

『 新たな記憶 』

 

 

 

 

『男ならハーレムを目指せ!』

 

 幼いころから祖父(じいさん)は二人の兄弟にそう言い聞かせていた。

 物心がついた頃には祖父は兄弟にいろいろな

英雄譚を聞かせては笑っていた。

 恐ろしい怪物を何千体も退治し、数多の人々を救い、囚われのお姫様を助けだすなど定番も定番の英雄譚。最高に憧れて毎日のように英雄達のように自分もなりたいと当時の兄弟の弟の方は本気で思っていた。兄の方は呆れていた感じだったが、

 だがそんなとき、祖父は教えてくれたのだ。

 英雄達の奇跡の中で最大の醍醐味は、『可愛い女の子との出会い』なのだ、と。

 小さかった兄弟(弟の方)は英雄に憧れる傍ら、異性との出会いに熱意を燃やし、祖父から日夜『男の浪漫』とはなんたるか教えてもらった。兄は呆れながらも笑いながら付き合い。祖父に度々勧められたことで、すっかり愛読書になった『迷宮神聖譚(ダンジョン・オラトリア)

 

 

 ──────迷宮都市オラリオで業績を残した様々な英雄の物語も、兄弟たちは興味が尽きることはなかった。そんな思い出が弟の冒険者に憧れるようになった形成の一役を買ったのかもしれない。

 だから、弟は───ベル・クラネルは英雄達が繰り広げたような冒険の舞台に身をおけば……オラリオに行けば、冒険者になれば、ダンジョンに潜れば。そんな思いがベルを動かしていた。

 

 

 英雄譚に出てくる、運命の出会いというやつに巡り会えるのではないかと。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 少年は傷だらけになって、倒れていた。

 荒い息を吐き、襲いかかる頭痛が頭蓋をひび割れるのではないかと思うほど衝撃が常に走り、何度胃液やらを吐き、最後には何も吐き出すことも無くなるくらいになった。

 皮膚は焼けてあったり切られてあったり、刺されてあったり削られてあったり、痺れていたり痙攣していたり、声がかすれて何も出ないまま倒れ伏して、地面に瞼がくっつくほど項垂れていた。

 

 

 そんな少年を、一人の老人が拾い上げた。

 

 

 別世界の記憶を持つ、その少年を、老人は育てていった。

 

 たとえ別世界で『死神』などと呼ばれる霊魂の調節者(バランサー)だったとしても、老人にとっては、やはり子供だったのだ。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 老人に救われた少年は、その『記憶』と共に育てられた。

 老人は女だのハーレムだのと言っていたが、少年はなんとも興味が惹かれなかった。それは『別世界の記憶』が勝っていたからだと後々気付いたが、当時は老人に『お前もしかして……男色か?』と疑ってきたが無視した。

 だが、少年が拾われてくる以前から、老人に育てられていた白髪深紅(ルベライト)の瞳を持つ小さな子供はどうやら違って聞こえたらしい。

 少年は老人に拾われてから、この白髪で紅い瞳が目立つ子供に大変懐かれてしまい、いつしか少年は『家族』に迎え入れられていたことに気付いたのだった。

 

 そして、老人に告白した中に、己の名前も思い出していた。

 それを聞いた老人は、あらかじめ知っていたかのように、再び、まるで父のように改めて言われた。

 

 

『何か()つのものを()り通せるように、()人でも多くを()れる男になれ』

 

 

 老人は優しく笑ってそう名付けた。最も強く、最も優しい《英雄》のような男になるようにと、極東の漢字(・ ・)で〝一護(いちご)〟と。

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 そんな昔のことを思い出しながら、青年は地毛でも珍し過ぎるオレンジ色に、天に(つんざ)くばかりに尖らせたような髪を揺らして、あるフエルフの少女と買い物にへと赴き、その途中で青年は空を仰ぎ見ていた。

 

「イチゴ? どうしたのですか、空なんか見上げて。黄昏るにはまだ日が高いかと」

 

「違ぇよ。それと〝一護(いちご)〟って言えよ。〝い()ご〟だぞ? 発言には気を付けるんだ」

 

「この果物と一緒の名前がそれほど嫌なのですか? 《豊饒の女主人》の店員全員が好んで名で呼んでいるのに、そんは難癖ばかり言っていてはいけませんよ」

 

 そう言いながら、女性給仕(ウ エ イ ト レ ス)姿の美少女が無表情のまま、青年に向けて赤く実った瑞々しい()を翳してそう言ってくる。

 そういった動作一つだけで、耳が少しだけ長くも、その神すら嫉妬させると言わせる『エルフ』特有の美貌に、歩く道すがら異性同性から視線を奪っていった。本人の意思関係無しに。

 青年は一護という発言に妙に力説してくるが、エルフの少女は始終無表情。それに対してどんどんと弱々しく発言していってることに気付き、青年は立ち上がった。

 

「おい、リオン。そろそろ行かねぇと女将さんにどやされるぞ」

 

「………………」

 

「……?……どうした」

 

「……いえ、やはりあなたにそんな風に呼ばれて、少しこそばゆく感じてしまい……」

 

 無表情な顔を少しだけ微々たる感情の起伏が見えたが、すぐに凛とした顔に戻る。

 一護は『なんだ?』と首を少し傾げるが、大胆にもリオンと呼ばれたエルフの少女は、一護の腕を引いて『行きますよ』と連れて行かれた。

 リオンと呼ばれたエルフの美少女の買い物の手伝いを終えた一護は、ここ『迷宮都市・オラリオ』の街中を歩いていた。

 

 迷宮都市と言うのも、ここオラリオには〝ダンジョン〟と呼ばれる地下迷宮が存在し、そこからモンスターが生まれ落ちると言われ、モンスターは例外なく人間を襲った。人類はあらゆる亜人(デミヒューマン)そこから地上に漏れ出ぬよう、天界から〝神〟が降臨してくるというのだから、一護的に死ぬほど驚いたものだった。

 〝別世界の知識〟を持つ一護にとって、神という存在はまさに神話の話を聞くぐらいしか縁がなかったくらいだし、主だって知ってる神は『七福神』くらいなものだった。

 

(ま、弟と一緒に〝ファミリア〟に入れたのは良かったな)

 

 一護はいつもひょこひょこと走ったり歩いていたりして、慌ただしい弟のことを思い浮かべては笑みも一緒に浮かべせて、ある目的場所にへと向かおう歩いていると、前方から真っ赤な液体を頭から被ったよう〝冒険者〟が全力疾走してきたかと思うと、一護を見つけた途端に方向転換し、物凄い勢いで一護目掛けて飛び込んできた。

 

「イチ(にい)ィィィィっっ!!!」

 

「ぐはああああああぁぁぁぁっっ!??」

 

 『神の恩恵(ファルナ)』によって強化された身体能力で一護の鳩尾に容赦なく頭から突っ込んできた赤い液体まみれの少年に、一護も負けまいと突っ込んできた少年の襟首を掴んで、持ち上げる。

 

「ベルか!?」

 

「イチ兄! アイズ・ヴァレンシュタインさんの情報が欲しいんだ!」

 

「はぁっ!?」

 

 まずまんべんなくかかっている血のことを聞きたかったが、突っ込んだら突っ込んだで満足したのか。興奮気味のベルは血を浴びたままギルドの方面にへと猛ダッシュしていた。

 あれではダンジョン攻略のアドバイザー、ベルの担当をしているハーフエルフのエイナ・チュールに相当叱られるだろうと安易に想像できた。

 追ってやりたかったが、一護にも用事がある。

 彼の有名な鍛冶(スミス)系ファミリア【ヘファイストス・ファミリア】に席を置く通称〝霊魂の刀鍛冶師(ソウル・ブラックスミス)〟の男に依頼した『(カタナ)』を返してもらう約束をしていた。

 

(……エイナさんなら大丈夫だろう。なんか文句あったら俺に言ってくるだろうしな)

 

 一護がそう判断し、駆けていった(ベル)の背中を眺めながらも進んでいった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

「……すみません、きつく言っておきますので! あの馬鹿にはきつくキック食らわせるのでッ! 言っておきますのでッ! あのクソヤロゥ……!」

 

「い、いや、いいって。また来るからさ」

 

 一護が向かったのはモンスターが唯一産まれるであろう(ダンジョン)を埋めるように建てられた塔だった。

 迷宮の真上にそびえ立つ五十階建ての摩天楼施設で、迷宮の監視と管理を行うギルド保有の施設であり、二十階までは公共施設や換金所、各ファミリアの商業施設が軒を構えている。さらにその上からはオラリオでも有数のファミリアの神々が住み着いている《神様達の領域(プライベートルーム)》となっており、三十階は神会を行う会場となっている。

 天を衝かんとばかり雲の上まで伸びた『バベルの塔』の中にある、【ヘファイストス・ファミリア】が運営しているバベル支店にへと来ていた一護は、頼んでいた〝霊魂の刀鍛冶師〟の男が返却日だというのにバベル支店に居なかったという。

 有名な【ヘファイストス・ファミリア】が団長、椿(つばき)・コルブランドが持つ高名な『最上級鍛冶師(マスター・スミス)』と並ぶ『霊魂の刀鍛冶師(ソウル・ブラックスミス)』の男は、その実力もあってか常に気分屋で、様々な【鍛冶大派閥(ヘファイストス・ファミリア)】が構えている各お店に遊びに行っているのだ。下手をすると迷宮都市(オラリオ)にさえ居ないかもしれない男なのだ。

 同じ【ヘファイストス・ファミリア】だからなんだろうか、赤い髪と男前でしっかりとした顔立ちで整っており、それなのに何処か意思の強い、頑固そうな面持ちだった。

 前に【ヘファイストス・ファミリア】の主神であるヘファイストスからも『似た者同士だな』とからかわれた時もあったが、確かに言われてみればそんな感じがする。意思を余り曲げないというか、

 

「相変わらずの仲だな、ヴェルフ」

 

「まぁ、アレでも師匠ですからね、アレでも」

 

 ヴェルフと呼ばれた赤毛の青年は、一護に苦笑いを浮かべながらも、師である男を敬う気ゼロで散々文句を垂れているが、愚痴を聞く辺り、師もそれなりに最悪な感じだったので何も言えない。

 

「あぁ……じゃ変わりの刀を借りてっていいか? 木刀でもいいけど」

 

魔窟(ダンジョン)に木刀って……マジっすか?」

 

「あぁ、ダンジョン潜るつっても深くは潜んねぇと思うからな。それまでにあの人に刀鍛えて貰えば何も言わねぇし、元々言うつもりなんかねぇよ」

 

 前に、荒い使い方をした時、結構強烈(ヘビー)な言葉と試験みたいなことをやらされた記憶がある一護。普段はぶらりぶらりと一ヶ所に留まらない男だが、【ヘファイストス・ファミリア】の席に起き、異名さえ団長の椿と並ぶ天下の鍛冶師(スミス)

 あの人は一年間もの鍛冶の予約が埋まっているほどだ。

 

「じゃ、この黒木で作った木刀〝黒羽(くれは)〟を上げます(・ ・ ・ ・)

 

「うん?」

 

「実は、あのヤロ…………師匠(アノヤロウ)が絶対に見越して置いていった一品で、『チャンイチが来たら渡しておけYo()!』とか抜かして、あのやろう」

 

「言ってる、もうはっきり言ってる、もう隠す気ねぇだろお前の苛立ち」

 

 ヴェルフはすぐに持ち直して笑顔になろうにも、やはり思い出しては顳顬(こめかみ)をピクピク動かしている辺り、やはり怒っている。

 一護はゆっくりと、柄も鍔も無い。持ち手だけしっかりと区切られ、刀状に削り取られた漆黒の木刀を掴むと、手から脳内にまで雷が走ったかと思うと、笑みを浮かべた。

 

「ほんと、あの人は〝刀神(とうしん)〟とまで呼ばれただけあるな……なんで、こんな、すげぇものを……。木刀だけど」

 

「本人は鍛冶神(ヘファイストス)が居るからってその『刀神()』を嫌ってますけどね。それでもあの人から渡された(モノ)は全部が最上級……いや神級品とまでヘファイストスに言われたほどです」

 

 渡された黒い木刀〝黒羽(くれは)〟は名のごとく示し、羽根のように軽い木刀だった。

 それでいて、振った感触だとしっかりと物量を感じさせる。まるで原理が分からない一護だったが、一振り二振りしたことで、もうこの木刀に手が馴染んできた。

 

「いやぁ随分、懐かれるのが早い」

 

「……へっ、違ぇよ。木刀(コッチ)から懐いてきた」

 

 そう言って、一護が木刀を腰に()き、代金を払おうとするが、ヴェルフは首を横に振る。

 

「代金は要らないらしいです」

 

「なに?」

 

「出世したら返せと」

 

「随分な博打だな。今俺が所属しているファミリア知ってて言ってんのか?」

 

「……多分、本当に今回のは手にかかる鍛冶作業かもしれないすね。誤魔化してはいますけど、恐らく」

 

「…………あの人には頭が上がらねぇな」

 

 最上級鍛冶師(マスター・スミス)並の職人をそこまで時間を費やして鍛えて貰ってる上に、代わりの最上級の武器まで用意してもらったのだ。

 ふざけた印象が沢山上がるが、深い感謝事が多いのも事実。

 

 その後、一護はヴェルフに挨拶して、また来ると言ってバベルから降りてきた。

 

「…………さて……」

 

 用件を済ませた一護は、自分が所属しているファミリアの拠点(ホーム)にへと帰路についた。

 帰る途中で色々と夕餉(ゆうげ)にと食べ物を買い、ギルドに向かったであろう弟のことを考えながらも、ホームに居る主神とのやり取りさえ安易に想像出来るので、早めに戻ることにした。きっと大変なことになっているだろうから、

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

「ただい…………」

 

「ぬわぁー! 帰ってきたかいイチ君!」

 

「ぶぐぅふぉ!?」

 

 古くボロボロになっている教会の、奥にある祭壇の先にある小部屋にへと身を進め、更に地下にへと伸びる階段を降りていった一護は、生活感漂う小部屋に入った瞬間に、幼女と少女の境界線を揺れ動くような感じの、妹のような雰囲気を放つ小さな女の子に突っ込まれれた。

 本日二度目だがまたもいきなりだったので、完全に鳩尾に頭突き(ロケット)&抱き付き(シメアゲ)に視界がボヤけてきた。

 

「聞いてくれよイチ君! ベル君ったらまた危険なことをしてきて、神であるボクの心臓を縮ませてきてさぁー! …………ぐふ、ぐふふふ♡ 相変わらずなんてムキッムキな胸板なんだ君はぁ!! スリスリ♡」

 

「ベルの話どうした!?」

 

 頭突きして一護に抱きついたまま放れない主神、ヘスティア。紛れもない美少女で、艶のある漆黒の髪が耳を隠すほど伸びており、更には横からはツインテールが作られ腰まで届いている。髪を結わえているリボンには銀色の鐘。丸い顔と丸い頬は幼い容貌を形作り、そのせいもあってか、服の上からでも分かるくらい豊かに成熟している胸元が強烈だと一護は感じていた。

 つぶらな瞳には透き通るような青みがかかっていて、その整い過ぎた容姿の中でも幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 

(このまま成長すれば間違いなく絶世の美女になるんだろうが、成長しないんだもんな)

 

 一護はよじ登ろうとしているヘスティアをボロいソファーに猫をはさんで離すように、放り投げる。

 一護が思った通り、ヘスティアは人類(ヒューマン)亜人(デミ・ヒューマン)、ダンジョンに出現するモンスター達とも異なる次元を越える『超越存在(デウスデア)』。不老を既に保持していると言っても過言ではない。

 

(人知を越えてる、か)

 

 ほらよ、と一護はその超越存在(デウスデア)であるヘスティアに気軽に買ってきた食べ物を放り投げる。今は人間サイズとはいえ《神》なのである。そんなヘスティアに向かって不敬極まりないことなのだが、

 

「かぁぁーー!? み、見るんだベル君! やっぱりボクらの〝アニキ〟のイチ君が食べ物を買ってきてくれたよー! もぅ本当大助かりだよー! うひょ~♡」

 

「本当だ! さすがイチ兄だ!」

 

「なにがさすがなのか分かんねぇけど、まぁ早く晩飯にしようぜ」

 

 わー! とはしゃぐ主神(ヘスティア)(ベル)に、一護の癖になってしまった眉間のシワもゆっくりとほぐれていく。

 新しく出来た家族(ファミリア)に、一護は暖かい『帰る場所』を強く感じられていた。

 

 




BLEACHとダンまちのクロス小説です。
感想やコメントお待ちしています。



※注意※
・ダンまちの世界に既に一護は生を受けた設定です。
・そして、今まで戦ってきた経験が既に一護も夢の中で体験しています。
・これから登場してくる他キャラも、同様に記憶を持っていて、実力も能力もそのままです。



他にも質問などあったら答えていけたら、と考えてます(;´д`)
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