フーリッシュ・ソウル~FS~ 作:ガン☆ガン
ISが嫌いだ。大嫌いだ。
あんなものがあるから、俺は一人になった。
壊したい。すべて、完全に。そのために、すべてを犠牲にして強くなった。
……だから許せなかった。
なぜだ!?なぜお前は動かせる!?俺は動かせなかったのに、だから努力したのに。ただ不満不平を垂れていただけなんだろう?何も行動などしなかったのだろう?
俺は血反吐を吐いた。お前はどうだ?俺は体にナノマシンまで入れた。お前はどうだ?俺は友の体が朽ちていくのを見た。お前はどうだ?
俺はお前は俺はお前は俺はお前は俺はお前は俺はお前は俺はお前は俺はお前は俺はお前は俺はお前は俺はお前は俺はお前は俺はお前は俺はお前は俺はお前は俺はお前はッ!!!
お前がなぜ、そこにいるッ!!!
目が、覚めた。
何処だろうか。辺りを見回す。医務室だということはすぐに分かった。だが同時に見たくなかった顔が飛び込んでくる。
「あ、起きた」
槇部 太一。二人目の男性IS操縦者。先ほどまで殺すつもりで攻撃していた男。
「大丈夫か?目、赤いけど」
言われてとっさに腕で顔を覆った。
泣いていたのだろうか、頬が冷たい。
俺の心の中に一挙に感情があふれてくる。怒り、虚しさ、悲しみ、絶望、そして悔しさ。
――俺は負けた。ISに負けた。
最初から本気で戦えば、勝てただろう。油断しなければ、怒りに身を任せなければやっぱり勝てただろうし、同じようにまた戦えばそれでも勝てるだろう。
だが負けた。俺の努力は無駄だった。俺のすべては……
「――――――――オラァッ!!!」
「ぐがッ!!」
頭に衝撃が走る。かなり強い。頭を押さえながら顔を上げると、そこには槇部がしてやったりといった表情で立ち上っていた。
「なにしやがるてめぇ!!!」
「うるせえ!!うじうじした顔しやがって!!!第一さっきてめぇ俺のこと殺す気で攻撃してたろ!!!お返しじゃボケェ!!!」
「ッ!!!」
「どうせ、ISに負けちまったーとか、俺の努力はーとか考えてたんだろ!!バレバレだこら!!!」
自分でもわかるくらい顔が歪んでいる。完全に図星だった。
「……テメェに何がわかる!!ぽっと出のくせに!!何の努力もしてこなかったくせに!!!」
「知るかぁ!!お前のことなんざ!!!こちとらお前の名前だってさっき知ったところだぞ!!……だいたいお前だって俺の何を知っている!!?」
「知らねえよ!!!だが認めねぇ、お前なんて認めねぇ!!!」
「ふざけろッ!!!!」
それから論理とか正論とかそんなもの全くないような言い合いをした。ただ感情を拙く伝えるだけのような、そんな言い合いを。
そんな中、ふと感じる。
同じだ。こいつも俺たちと同じ。同じ志を持っている。何も違いなんてしない。
現状を変えたくてもがいてる。そんな気がした。
「――――それでも、俺たちは同志だ!!!」
「ッ!!!」
言い合いが終わる。もう頭では理解していた。いや、最初から疑う余地などありはしなかった。
苦し紛れに言う。
「……俺はISが嫌いだ。大嫌いだ」
「…奇遇だな、俺もだ」
「お前も嫌いだ…認めたくない」
「そう言うやつもいるだろうとは、覚悟してたよ」
「お前はよわっちい!!」
「知ってる」
「足手まといだ!!」
「知ってる」
「ただのお飾りだ!!これっぽっちも期待なんかされてない!!」
「そうかもな」
「お前は……お前は……!」
なんて、羨ましんだろう。
もはや涙は止まらなかった。
「それでも俺は……ここにいたいんだ」
「……………くそッ……ずるいじゃねぇかよ……」
「……そうだな」
少しだけ会話が途切れて、俺の鼻をすする音だけが響いた。
沈黙を破ったのは俺から。
「…なんでここに来た?」
「……そりゃISを「違うッ!!」
「どうして医務室に来たかって聞いてんだよ!?」
「ああ、幸助さんに言われたんだよ『君に似て、負けず嫌いで気難しい子だから、励ましてあげて』、てよ」
「じゃあ何か?てめぇは励ましで俺を殴ったのか?」
「効いただろ?」
「テメェ……!」
奴はそのまま笑顔で右手を差し出してくる。
そしてこう言った。
「俺は槇部 太一。IS操縦者で、ISをぶっ壊すためにここに来た」
俺は奴の手を握って、言った。
「俺は
そう言いつつ俺はかなり強めに奴の手を握る。
「いてててててててッ!!」
俺が手を離すと奴は赤くなった手を押さえる。
「なんつー力してんだテメェ!」
「……効いただろ?」
やられたことは、やり返す主義なのだ。
◆ ◆ ◆
「和解できたみたいだね。よかったよかった」
「よかったてお前な、蓮はけっこーなけがだぞ」
「あんなもん俺のナノマシンがパーッと治してくれるよ」
幸助は満足そうな表情でそう言った。
「まあ、確かに最高に近い終わりではあるな」
「でしょー?やっぱり二人は歳近いしさあ。お友達になってほしかったんだよねえ」
「……まさかお前、そのために蓮を戦わせたのか?」
「割と」
俺はかなり強めに幸助の頭を殴った。
「ぎゃう!!」
「あほかてめえ」
「……でもさあ、やっぱり戦場で友達は必要だと思うんだよ俺は。二人ともうちには必要な人材だし、切磋琢磨してくれたら最高だろ?」
「…まあ一理あるな」
盛大なため息をつきながら俺は立ち上がる。
「……?どこ行くの、勉?」
「医務室だ。……あんな負け方した蓮の野郎には説教が必要だ」
「ほどほどにねー」っという幸助の声に背中を押されて、部屋を後にする。
「友達……か」
俺の声は誰にも届かず消えていった。
◆ ◆ ◆
「いよいよだね」
幸助さんは真面目な顔でそう言った。
その言葉に俺は頷く。
今からIS学園へと向かう俺を、職員のほとんどが見送りに来てくれていた。
「いいかい、太一君。前にも言った通り君は下手に演技する必要はない。今まで見たいに女性の顔色をうかがう必要もないし、女性やISへの嫌悪を隠す必要性もない。その態度こそがISに乗れるようになったIS至上主義者嫌いの男の子を演出できるからね」
「そうそう。どうせテメェの演技なんて底が知れてるからな」
「蓮、テメェ……!」
だが言い返さない。蓮の言い分はもっともだからだ。
「君のするべきことはいずれ連絡する。それまではIS学園で精いっぱい頑張ってきてくれ」
「…了解です」
「なに、心配するな太一。俺のトレーニングに比べたらIS学園の授業なんて簡単簡単」
「……うっぷ」
途端に口の中がすっぱくなる。トレーニングを思い出したからだ。
ISを受け取ったあとからの一週間ほど、勉さんのトレーニングはさらに厳しくなった。メグさんや光山さんとの繰り返される模擬戦や、厳しすぎるロードワーク、徹底したライフルの訓練に、格闘技の指導。正直、よく生き残れたと思う。
ふと、肩に蓮の手が置かれた。俺に負けたペナルティーで俺以上のトレーニングを課せられていた蓮は俺の内心を読み取ったのだろう。ものすごく柔和な表情だ。
「頑張れよー、太一。あそこの女子どもは我が強いぞー」
光山さんが笑顔でそう言った。貴女みたいにですか?という質問を何とか飲み込んだ。
唯一のIS学園体験者である彼女にはずいぶんと世話になった。……あれ、よくよく思い出すと、からかわれてた時の方が多い気がする。
「大変でしょうが頑張ってください」
メグさんがいつも通りの無表情で言う。表情がないので分かりずらいが、たぶんメグさんは面白がってる。男が女の園に放り込まれるという現実に。
これ以上は遅刻しそうな時間なので、幸助さんが皆を制するように言った。
「まあ、幸いここはIS学園からさほど離れてないし、休日に気が向いたら帰っておいで」
「わかりました」
「あ、あと装備変えたいときは連絡してね」
「了解です」
俺が出発しようとしたとき、蓮に引き止められる。
「太一」
「……おう」
「かましてこい」
「おう!」
俺と蓮は静かに拳を合わせた。
俺の本当の戦いが始まろうとしていた。