れているシスターを見て俺と一誠はしばらく固まっていたが一誠は倒れているシスターに対して
「だ、大丈夫ですか?」
と言いながら、シスターに手を差し出す。
「Mi incontro.Perche cadra?」(あうぅ。なんで転んでしまうんでしょうか?)
そこでシスターは一誠の手に気がついたのか一誠の手を取り
「Oh,mi dispiace.Grazie」(ああ、すいません。ありがとうございます)
「Di niente」(どういたしまして)
これはイタリア語か、どうして一誠がイタリア語を理解しているんだ?…そう言えば悪魔になれば様々な言語が分かるようになると部長が言っていたような気がする。
一誠が手を引き起き上がらせようとすると、そこに風が吹きシスターのヴェールが飛んでいく。ヴェールが飛んでいったので隠れていたシスターの顔が見える。キラキラと光る金色の長髪にまるで宝石のような緑色の瞳に俺と一誠は一瞬心を奪われる。
俺達が固まっているのを不思議に思ったのかシスターは
「Oh,e……Che e awenuto?」(あ、あの……どうしたんですか?)
俺はいい加減言葉が通じないと不便なので翻訳の魔法を発動する。この魔法はすでに存在するので創造するひつようはない。
「Translation」(翻訳)
一誠はまだ固まっているのでここは俺がシスターに聞く
「あなたのようなシスターがこの町に何の用でしょう?……もしかしてご旅行かなにかでしょうか?」
俺が出来るだけ丁寧に聞くとシスターは
「いえ、違います。実は今日からこの町の教会に赴任する事になりました。これからよろしくお願いします」
そう言い、頭を下げるシスターを見ながら俺は考える。この町に教会は一カ所しかない。しかもその教会もすでにつぶれている。ならなぜシスターをそんな所に派遣したんだ?
「それにしても良かったです。私日本語があまり喋れないので道に迷っても、皆さんに言葉が通じなくて」
当然日本でイタリア語を使っても通じるのはほんのごく一部の人間だけだろう。
「あの、教会の場所知りませんか?」
「知ってるぜ」
俺が答える前にようやく動けるようになった一誠がこたえる。
「ほ、本当ですか!……これも主のお導きの御陰ですね!!」
一誠の発言にシスターは俺達に微笑む。しかし、シスターの胸元に光るロザリオを見て一誠は辛そうな顔をする。……悪魔にとって聖なるものは天敵なので下級悪魔の一誠では聖なるものを見るだけでも辛いようだ。
俺は一誠をシスターから離れた所に連れてくると、気になることを聞く。
「一誠、お前あのシスター教会まで連れて行く気か?」
「困ってんだから当然だろ」
確かにその考えは立派だがこいつ忘れてねぇーか?
「なぁ、一誠お前自分が悪魔だってこと忘れてねぇよな」
俺がそう言うと一誠はまるで雷に当たったような反応をする。この反応こいつ忘れてやがったな。
「で、でもちょっと案内してすぐ帰れば大丈夫だろ」
なんでこいつはこんなに能天気なんだよ
「一応忠告はしたからな、あとで部長に怒られても知んねえぞ」
そういい残し俺と一誠はシスターを教会に案内する。
教会へ向かう途中、公園の前を横切ろうとすると
「うわぁぁぁぁん」
子供の泣き声が聞こえてくる。
「だいじょうぶ、よしくん」
どうやら、転んで足を怪我したようだ。しかし、俺達の後ろにいたシスターはよしくんと呼ばれていた子供の所に近寄り
「大丈夫?男の子ならこんなに簡単に泣いてはダメですよ」
と言いながら、優しく子供の頭を撫でる。シスターは自分の手を怪我した所に当てると、次の瞬間シスターの手から淡い緑色の光が発せられるとどんどん子供の怪我が塞がっていく。
「はい、傷はもう塞がりましたよ」
「ありがとう。お姉ちゃん」
子供はそう言うと親に連れられ帰っていった。
「すいません。怪我しているのを見るとつい」
シスターは俺達の所に戻ってくると舌を出しながらそう言う。
「今の力は」
俺が聞こうとすると先に一誠がシスターにそう聞く。
「治癒の力です。神様から頂いた大切な力です」
彼女は微笑みながらそう言うがその表情はどこか寂しげだった。俺がその理由を知るのはもうちょっと先の話。
彼女が寂しげにしてるのに気がついたのか一誠は空気を和らげようと
「実は俺も力を持っててさぁ」
一誠は頑張るが空気は変わらず会話がないまま教会近くまできてしまう、隣の一誠を見ると具合が悪そうだ。
「あ、ここです!よかったぁ」
シスターは自分の持っている地図と照らし合わせながらここだと分かったようで安堵の息を吐く。
どうやら一誠の為にもあまりここに長居は出来そうにないようだ。そう思った俺は
「じゃあ、俺達はそろそろ帰ります」
「待って下さい」
俺達が帰ろうとするとシスターが俺達を呼び止める。
「ここまで案内してくれたお礼に中でお茶でもいかがですか?」
「すいません。俺達この後学校何ですよ」
そう言うと、シスターは悲しそうな顔をする。どうやらここまで案内してもらったのに自分は何も返せていないのが不満のようだ。
「俺は天空寺輪廻。気軽に輪廻と呼んでくれ」
「俺は兵藤一誠。周りからはイッセーって呼ばれてるからそう呼んでくれ。それでキミは?」
俺と一誠がシスターに名乗るとシスターも笑顔で
「アーシア・アルジェントと言います。アーシアと呼んでください」
「それじゃあ、アーシアまた会おう」
「はい!輪廻さん、イッセーさん、必ずまた会いましょう」
そう言い、アーシアは帰る俺達に深々と頭を下げる。
これが俺達と彼女の初めての出会いである。
その日の夜。
「二度と教会に近付いちゃダメよ!」
俺と輪廻は部室で怒られていた。部長の顔はいつもの優しな顔ではなく顔を見るだけで怒ってると分かるほど険しい顔をしていた。
「教会は私達悪魔にとって敵地。侵入するだけで悪魔と神の間で問題になるの今回はシスターを送り届けたから何も起こらなかったけどもしかしたら光の槍で貫かれていたかもしれないのよ」
「でも、俺は悪魔じゃありませんよ」
輪廻は部長にそう言う。
「輪廻あなたは確かに人間だけど悪魔と一緒にいるだけで向こうからすれば討伐対象なの。だから、あなたも気をつけて頂戴」
「はい」
部長の迫力に輪廻は素直に頷く。
「悪魔が光の力を受ければ完全に消滅するの。つまり無に帰すの」
反応に困る俺たちを見て部長は首を横に振り
「ごめんなさい。少し熱くなりすぎたわ。とにかく、これからは教会には近づかないでね」
「「はい」」
「あらあら、お説教は終わりましたか?」
俺達と部長の会話が終わるタイミングを見計らったように背後から朱乃さんの声がきこえる。
「朱乃、どうしたの?」
部長が朱乃さんに聞くと朱乃さんは少し顔を曇らせ
「大公からはぐれ悪魔の討伐依頼が届きました」