無害な蠱毒のリスタート   作:超高校級の警備員

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自己中な悪魔の破壊活動

 八岐大蛇さんに励ましの言葉をもらった次の日の夜。僕は自分の部屋にある鏡の前に座って笑顔を作っていた。

 

「……はぁ~」

 

 鏡の前で深いため息が出る。

 なぜこんなため息が出るかと言うと、今日の朝に一誠からグレモリー眷属全員のテレビの出演オファーが来たって話を聞いたからだ。これで再び冥界行きが決定、しかも今度は逃げ場のないテレビ出演。考えただけでも憂鬱な気分になるよ。

 なぜこんな時には僕の存在を忘れてくれないんだろうか。いつもみたいに僕だけ忘れて冥界のテレビに出演すればいいのに。ままならないものだね。

 だけどテレビ出演となればあまり無様な姿は見せられない。苦笑いでも笑顔はちゃんと作って愛想よくしないと。ここでバックレたりできる度胸があればとっくに退部届を提出できるからね。ああ、勇気が欲しい。

 この憂鬱な気分が表情に出ないように鏡の前で笑顔の練習をしているのだ。笑顔には自信があるけど悪魔に対してだけはものすごく疲れる。このことを考えながら笑顔を作っていると苦笑いですら崩れそうになる。

 

「ジージー」

「励ましてくれるの? ありがとう、ももたろう」

「ジー」

 

 僕の肩に乗って頬に頬ずりするももたろうの頭を人差し指で軽く撫でてあげる。鏡越しに幸せそうな表情で僕に頭を撫でられるももたろうの表情が可愛く映る。

 僕が日本勢力に受け入れてくれる前から僕の一番近くで愛してくれた家族、ももたろう。まだリアスさんに認めてもらおうと必死になっていた時代にどれだけ僕の心の支えになってくれたか。こうやってももたろうを撫でていると悪魔のことを考えていても自然と笑顔になれる。

 

「そうだよね、僕なんてリアスさんの眷属ってこと以外冥界での知名度なんてないもんね。知名度の高い一誠やリアスさんが一番インタビューを受けるだろうし」

 

 僕なんて前のレーティングゲームでは開始と同時に消えたし持ってる神器も失敗作と言われた物、木場さんやゼノヴィアさんのように目立った特技もないし搭城さんや朱乃さんやギャスパーくんのように珍しい種族でもなくただの人間。そもそも僕一人だけ圧倒的にリアスさんからの仲間意識が低い。

 前までなら自分で言ってて悲しくなっただろうけど、今はなぜか悲しくなってこない。また一歩踏ん切りがついて来たってことかな?

 

「別にリアス眷属の評価がどれだけ落ちようがどうでもいい。だけど、ディオドラさんについてはちょっと気がかりなんだよね」

 

 アーシアさんがディオドラさんを意識して、そのことで一誠がよりディオドラ意識してアーシアさんを心配しているのは別に気にならない。遠くの他人(悪魔)より近くの身内(日本)を取る。

 それより気になるのはあの時垣間見えたディオドラさんの本性。冥界での会合の時にもねっとりとした嫌な感覚を感じたけど、今回の事でその感覚がよりリアルに感じ取れた。これが冥界で収まる程度の事で済めばいいんだけど。

 

「ジジー?」

「ん? ああ、ももたろうは心配しなくていいよ。僕だって日本で強くなったんだから前のように簡単に殺されたりしない」

 

 心配そうな表情のももたろうを安心させようと自信満々の笑顔を向ける。

 藻女さんたちとの修行で僕は相当生き残る術を手に入れた。対人戦はもちろん多少過酷な環境への適応や状況や生き残る為のに逃げる手段も。いざとなったら禁手(バランスブレイク)だってある。

 もしも日本にまで危害が及ぶ場合は天照様に報告して日本側として力になるよ。

 

「だから安心して、僕はももたろうの傍からもう居なくなったりしないから」

「ジー!」

 

  ◆◇◆◇◆◇

 

 

 そんなこんなでテレビ収録の日。

 僕たち眷属悪魔は専用の魔方陣で冥界へジャンプした。

 この間行かされたばっかりなのに、こんなにも早くまた冥界に行くことになるなんてね。

 到着した場所は都市部にある大きなビルの地下。転移用魔方陣のスペースが設けられた場所で、そこへ着くと待機していたスタッフの皆さんに迎え入れてもらった。

 

「お待ちしておりました。リアス・グレモリー様。そして、眷属の皆様。さあ、こちらへどうぞ」

 

 プロデューサーの人に連れられて、エレベーターを使って上層階へ。

 上層階に着いて収録するスタジオに向かっていると―――廊下の先から見覚えのある人が十人ぐらいの人を引き連れて歩いてきていた。

 

「サイラオーグ。あなたも来ていたのね」

 

リアスさんが声をかけたのは、バアル家の次期当主サイラオーグさんだった。サイラオーグさんは貴族服を肩へ大胆に羽織りとてもワイルドな格好をしていた。

 それにしても、今はテレビ収録なのにこの人には隙が少ない。僕みたいに冥界を警戒してるわけでもないのに。だけどやっぱり僕が知ってる達人たちと違って全くないわけじゃない。だけど僕が見てきてどの悪魔よりも実戦に近い臨戦態勢を維持している。

 

「リアスか。そっちもインタビュー収録か?」

「ええ。サイラオーグはもう終わったの?」

「これからだ。おそらくリアスたちとは別のスタジオだろう。———試合、見たぞ」

 

 サイラオーグさんの一言に、リアスさんは顔を少ししかめた。

 

「お互い新人丸出しで、素人臭さが抜けないものだな」

 

 サイラオーグさんは苦笑する。お互いと言うことは自分のゲームのことも思い出しているのだろう。

 そしてその視線がリアスさんから一誠へと移る。

 

「特殊な手が無い限り、どれほどパワーが強大でもカタにハマれば負ける。相手は一瞬の隙を虎視眈々と狙ってくるからな。とりわけ、神器は未知の部分が多い。何が起こり、何を起こされるか分からない。ゲームは相性も大事だ。お前らとソーナ・シトリーの戦いは俺も改めて学ばせてもらった。———だが」

 

 ポンっとサイラオーグさんが一誠の肩に手を乗せる。

 

「お前とは、虚飾や見栄など一切取り払われた状態で勝負をしてみたいものだよ」

 

 サイラオーグさんは、それだけ言って去っていった。

 肩をポンと軽く叩かれた一誠は何か重いものを感じたような顔をしている。が、僕が気になるのはサイラオーグさんがチラッと僕を見た事。そう言えば会合の時に僕がうろたえてなかったのをサイラオーグさんの眷属の一人に見られたような。他にも握手を警戒されたりとか――――何か感づかれたってことはない……よね?

 サイラオーグさんとの挨拶後、一度楽屋に通されてそこに僕たちは荷物を置いた。

 荷物を置くと、スタッフの人にスタジオらしき場所に案内されて中へ通された。スタジオ内はまだ準備中みたいで、スタッフが色々と作業をしていた。

 先に来ていたであろうインタビュアーのお姉さんが、リアスさんに挨拶をする。

 

「お初にお目にかかります。冥界第一放送の局アナをしているものです」

「こちらこそ、よろしくお願いしますわ」

 

 そう言ってリアスさんとスタッフ、局アナのお姉さんを交えて打ち合わせを始めた。暇になった僕は周りの様子を見る。

 このスタジオには観客用の椅子も大量に用意されている。なるほど、お客さんありきの収録なのか。ま、このくらいの人数なら別に問題ないね。———いや待てよ、一つ問題があったよ。

 

「ぼ、ぼ、ぼ、ぼぼぼぼぼぼ、僕、帰りたいですぅぅぅぅ……」

 

 僕の背中でギャスパーくんが震えている。引きこもり気味のギャスパーくんにお客さんありきのテレビ出演はかなりハードルが高いだろうからね。ギャラリーが実際に入る本番では相当緊張してしまうだろう。

 

「眷属悪魔の皆さんにも、いくつかインタビューがいくと思いますが、あまり緊張せずに」

 

 スタッフの人が声をかけてくれる。

 

「えーっと……木場祐斗さんと姫島朱乃さんはいらっしゃいますか?」

「あ、僕です。僕が木場祐斗です」

「私が姫島朱乃ですわ」

 

 木場さんと朱乃さんが呼ばれて、二人とも手をあげた。

 

「お二人に質問がそこそこいくと思います。お二人とも、人気上昇中ですから」

「マジっスか!」

 

 一誠が驚きの声をあげると、スタッフは頷く。

 

「ええ、木場さんは女性ファンが。姫島さんには男性ファンが増えてきているのですよ」

 

 そりゃ木場さんと朱乃さんは誰もが認める美男美女なんだからね。ゲームには負けたけど映像を見る限り見せ場はちゃんとあったわけだし、人気が出てもおかしくはない。

 だけど自分たちの試合を見せられて見事に僕はいいとこナシだったよ。あれじゃ誰も気づかない間にリタイヤしたのと同じだ。だけどそのおかげで変な注目もされないからいいけど。

 

「心配しなくてもいいですわ。私はイッセーくんに夢中ですもの。他には行きませんわよ」

 

 朱乃さんがほほ笑んで一誠の手を握る。それで一誠の顔が緩むと、リアスさんが一誠と朱乃さんを睨む。もうお決まりのパターンだね。

 

「えっと、もう一方、兵藤一誠さんは?」

「あ、俺です」

 

 呼ばれた一誠が返事をする。だが、スタッフは首をかしげる。

 

「……えっと、あなたは……」

「あの俺が『兵士(ポーン)』の兵藤一誠です。一応、赤龍帝で……」

 

 一誠がおそるおそる言うと、スタッフの人がポンと手を叩いた。

 

「あっ! あなたが! いやー、鎧姿が印象的でしたので素の兵藤さんが分かりませんでした」

 

 まああんな印象的な鎧姿と一誠本人だとどうしても鎧の方が印象に残っちゃうよね。しかも短期決戦だったから鎧化の時間も長かったし。

 

「兵藤さんには別スタジオで収録もあります。何せ、『乳龍帝』として一部では有名になってますから」

「乳龍帝ぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

 ……何それ? 一誠は悪ふざけの入ったような二つ名に驚愕の声を出す。

 スタッフは嬉々として話を続ける。

 

「子供にすごく人気になっているんですよ。子供たちからは『おっぱいドラゴン』と呼ばれているそうですよ。シトリー戦でおっぱいおっぱい叫んでいたでしょう? あれが冥界の全お茶の間に流れまして。それを見た子供たちに大ヒットしているんですよ」

 

 そう言えば映像でも一誠はやたらおっぽいとか叫んでたような気がする。そっか……あれが原因で流行っちゃったのか……。

 子供って、そういう単純なワードにやたら反応を示しちゃうもんね。願わくばどこかで沈静化して一誠みたいな大人には育たないでほしいな。

 

「では、兵藤さんは別のスタジオへ。ご案内します」

 

 一誠はスタッフの人に専用の台本を渡され別のスタジオに。そしてしばらくして一誠が戻って来て僕たちも軽い打ち合わせ後に収録が開始された。

 

 

 

 

 

 

「んー、終わった終わった!」

 

 収録後、僕たちは楽屋でぐったりとしていた。

 皆、緊張していたらしく楽屋に着くなり壁にもたれかかったり、テーブルに突っ伏していたりしていた。

 番組は終始部長への質問だった。シトリー戦はどうだったか? これからどうするのか? 注目している若手はいるのか? といった質問が多かった。

 シトリー戦のことを聞かれた時は何か鋭いものがリアスさんに突き刺さるのが見えたけど、リアスさんは笑顔で淡々と答えて、高貴な振る舞いを続けていた。

 その後、木場さんに質問がいくと、会場は女性のお客さんからの黄色い歓声が飛び交う。同様に朱乃さんの時も男性ファンが『朱乃さま!』と叫んだ。

 そして――一誠の時は子供のお客さんから「ちちりゅーてー!」「おっぱいドラゴン」って声がかけられた。間違っても日本で流行って欲しくないと本気で思ったよ。

 まあ一誠の鎧姿が悪魔の子供からすれば着ぐるみ的なものに見えたみたいだね。そこにさらに一誠がおっぱいとか言いまくったせいで、変な方向に人気が出てしまった、と。

 もしもこれでリアス眷属が勝ってしまったなら、『乳龍帝』として一部では有名の❝一部❞が消えていたんだろうね。ソーナさんが勝って本当によかったよ。

 

「ところでイッセー、別スタジオで何を撮ったの?」

「内緒です。スタッフの人にも、本放送まではできるだけ身内にも教えないでくださいって言われたんで

 

 一誠はニヒヒと悪戯っぽく笑いながら言う。

 

「分かったわ。放送されるのを楽しみに待ちましょう」

 

 リアスさんも楽しげに期待してる様子。僕はものすごく嫌な予感がするよ。

 そろそろ帰ろうと皆が席を立とうとした時、楽屋のドアがノックされ誰かが入って来た。

 

「あの、誇銅さんはいらっしゃいますか?」

「あっレイヴェルさん。どうしたんですか?」

 

 入ってきたのは金髪の縦ロールが特徴のレイヴェル・フェニックスさんだった。

 レイヴェルさんは僕と視線が合うと、一瞬パァっと顔が輝いたけど、すぐに不機嫌そうな表情に変わってしまう。

 手に持っていたバスケットをこちらへ突き出す。

 

「こ、これ!ケーキですわ!この局に次兄の番組があるものでしたから、ついでです!」

「え……ありがとう、レイヴェルさん」

 

 いきなり突き出されたバスケットに少し戸惑ったけど、僕は微笑みながら受け取る。そしてどうするかちょっと迷ったけど、その場で中身を確認してみた。

 そこにはとても美味しそうなチョコレートケーキが入っていた。とても見事な出来でお店に並んでても不思議じゃない程凝っている。

 

「これ、レイヴェルさんが作ってくれたんですか?」

「え、ええ! 当然ですわ! ケーキだけは自信がありますのよ! そ、それにケーキをご馳走すると約束しましたし!」

「ありがとうございます。わざわざ持ってきてくださって」

「ぶ、無粋なことはしませんわ。アスタロト家との一戦が控えているのでしょう? お時間は取らせませんわよ。ただ……ケーキだけでも、と思っただけですから!」

 

 ちょっとツンツンしてるけど、その中身には確かな気遣いが感じられる。さらにこんなおいしそうな差し入れまでしてくれて、すごくうれしいな。

 

「で、では、私はこれで―――」

 

 レイヴェルさんは用事は終わったと言わんばかりにそそくさと帰ろうとするけど―――。

 

「ありがとうございます、レイヴェルさん。ケーキの感想は手紙で送らせてもらいます。お茶のお約束もまたお互い都合のいい日に」

 

 僕は心からの笑みを浮かべてレイヴェルさんに感謝の言葉を伝える。すると―――レイヴェルさんは顔を真っ赤にさせて照れている様子。

 

「こ……誇銅さん。今度の試合、応援してます!」

 

 レイヴェルさんは僕たちに一礼した後、足早に去っていった。

 ———今のレイヴェルさんの反応はやっぱり……やっぱりそうなのかな?

 レイヴェルさんが去った後、みんなが僕に向けてくる生暖かい視線に僕は妙に苛立ちを感じたよ。

 苛立ちを張り付けた作り笑いで必死に隠し、取材は無事に終わることができた。だけど同時にディオドラさんとの一戦も間近に迫っている。

 

 後日。

 ギャスパーくんからレイヴェルさんの家の住所を訊き、ギャスパーくん経由で手紙を出してもらった。あまりリアスさんと関わりたくなかったからギャスパーくんが知っててよかったよ。

 

 

   ◆◇◆◇◆◇

 

 

 決戦日―――。

 

「そろそろ時間ね」

 

 リアスさんはそう言って立ち上がる。僕たちは深夜にオカルト研究部の部室に集まっていた。服装はアーシアさんがシスター服、ゼノヴィアさんは最初に着ていた黒の戦闘服。他の人は駒王学園の夏制服。

 中央の魔方陣に集まって、転送の時を待つ。

 今回の相手はディオドラ・アスタロト。なんか現魔王のベルゼブブを出した御家の次期当主とか聞いたけど、だからって僕には関係ないけどね。僕は適当に戦って逃げ回るかワザとリタイヤさせられればいい。

 だけど、レイヴェルさんに応援してるなんて言われちゃったからな。無茶しない程度に盾にくらいはなろう。まっ、技は使わず戦車(ルーク)としての耐久力のみだけどね。

 そんなことを考えていると、ギャスパーくんが不安気な顔で僕の服の裾を掴んでくる。

 ……そっか、ギャスパーくんも不安なんだね。前のレーティングゲームでも試合前からあんなに不安がってたのに実戦じゃ何もできなかったことを何度も悔やんでいたしね。さらに今回はアーシアさんが掛かっている、ギャスパーくんの不安も相当なものだろうね。

 僕は裾を掴む手を離させて代わりに手を握る。

 そうだ! 今回のレーティングゲームではギャスパーくんの盾になろう。リアスさんたちの為なら御免被るけど、ギャスパーくんの為なら少しくらい技を使ってもいいかもね。

 そして魔方陣に光が走り、僕たちは今回の戦場に転移された―――。

 

 

 

 

「……着いたのか?」

 

 魔方陣から発するまばゆい光から視力が回復して、目を開けると――――そこはまるでギリシャ神話に出てきそうな神殿だった。

 ここが今回のバトルフィールド? それにしてはなんだか空気が妙だ。まるで暗闇で知らず知らずのうちに周りを囲まれてしまったような感覚。

 周りに警戒をしながら試合開始の合図を待つけど、前のような審判役の人の声が聞こえない。

 

「……おかしいわね」

 

 いつまで経っても聞こえない試合の合図にリアスさんは怪訝そうな表情で言う。それは他のメンバーも同じだ。

 僕はすぐさまさりげなくギャスパーくんを僕の後ろに隠す。こうしていればギャスパーくんへの攻撃でも僕への攻撃としてギリギリ気づける。手に届く範囲にいてくれれば守りやすい。

 神殿とは逆方向に魔方陣が出現する。それも一つなんかではなく辺り一面、僕たちを書く無用に展開されていく。

 

「……アスタロトの紋様じゃない!」

 

 木場さんとゼノヴィアさんは剣を構え、朱乃さんは手に雷を走らせながら言う。

 

「魔方陣に共通性はありませんわね。ただ―――」

「全部、悪魔。しかも記憶が確かなら――」

 

 リアスさんは紅いオーラを纏いながら、厳しい目線を辺りに配らせる。

 魔方陣から現れたのは大勢の悪魔。しかも全員が敵意、殺意をこちらに向けている。

 出現した悪魔を気配で数えてみると約千人ってとこかな。実力も悪魔としてそこそこ高いように感じられる。僕一人なら大丈夫だけど、ギャスパーくんを護りながらになると……。最悪、リアスさんたちを囮にして炎目を使って逃げるしかないね。

 

「魔方陣から察するに『禍の団(カオブ・ブリゲード)』の旧魔王派に傾倒した者たちよ」

 

 まあ、そうだろうね。あ~あ、早くリアスさんの眷属を抜けたい。

 リアスさんの眷属には魔王の妹、伝説の赤龍帝、聖剣に聖魔剣などなど影響力の強い人たちが集まってる。特に前者二つだけでも積極的に狙らわれる理由がある。

 

「忌々しき偽りの魔王の血縁者、グレモリーよ。今ここで散ってもらおう」

 

 僕たちを囲む悪魔の一人がリアスさんに向かって挑戦的な物言いで言う。まあ、本物を超えると言っても、贋作が本物を名乗ったらそりゃ本物は面白くないよね。なんで身内のこういう問題を解決せずに他の種族にまで手を出すんだろうか?

 

「キャッ!」

 

 そんなことを考えていると、突然アーシアさんの足元辺りからディオドラ・アスタロトの気配を感じた。そしてその気配はアーシアさんを捕らえて上空へと逃げていく。

 一応止めようと思えば止められたけど、ギャスパーくん以外を助ける気はないよ。

 

「イッセーさん!」

 

 空からの声に皆が気づいた時には既に、アーシアさんはディオドラ・アスタロトと一緒に上空へ。なるほど、僕たちの足元から転移して来てアーシアさんを攫ったのか。確かにそうすれば相当気配を探知することに長けてないと察知できないし、護られるアーシアさんを確実に攫える。

 

「やあ、リアス・グレモリー。そして赤龍帝。アーシア・アルジェントはいただくよ」

 

 この期に及んでまだ爽やかな雰囲気を壊さずに言う。その余裕の雰囲気に一誠は怒りを上げていく。

 

「アーシアを離せ、このクソ野郎! 卑怯だぞ! つーか、どういうこった! ゲームをするんじゃないのかよ!?」

「馬鹿じゃないの? ゲームなんてしないさ。キミたちはここで彼ら―――『禍の団(カオブ・ブリゲード)』のエージェントたちに殺されるんだよ。いくら力のあるキミたちでもこの数の上級悪魔と中級悪魔を相手にできやしないだろう? ハハハハ、死んでくれ。速やかに散ってくれ」

 

 醜悪な笑みを浮かべるディオドラ・アスタロトに対してリアスさんはすごい剣幕で睨む。

 

「あなた、『禍の団(カオブ・ブリゲード)』と通じていたというの? 最低だわ。しかもゲームまで汚すなんて万死に値する! そして、何よりも私のかわいいアーシアを奪い去ろうとするなんて……ッ!」

 

 リアスさんのオーラが巨大なまで膨れ上がり、空気を震わせる。どれだけ怒ってるのかよくわかるね。

 

「彼らと一緒に行動した方が、僕の好きなことを好きなだけ出来そうだと思ったものだからね。赤龍帝、僕はアーシアを自分のものにするよ。追って来たかったら、神殿の奥まで来てごらん。素敵なものが見られるはずだよ」

 

 ディオドラ・アスタロトが嘲笑するなか、ゼノヴィアさんが一誠に叫ぶ。

 

「イッセー、アスカロンを!」

「おう!」

 

 一誠はすぐさま籠手を出現させ、先端から剣を取り出した。そしてそれをゼノヴィアさんに手渡す。

 

「アーシアは私の友達だ! おまえの好きにはさせん!」

 

 ゼノヴィアさんもリアスさん同様に怒りを瞳に映し燃え上っている。

 しかし、宙に浮かぶディオドラに斬りかかろうとするが、ディオドラの放つ魔力にあっさり体勢を崩されてしまう。剣は空振りに終わったが、刃から放たれた聖なるオーラがディオドラへと向かう。あのスピードと直線的な動きではまず躱されるだろうけどね。

 僕の予想通り聖なるオーラはあっさりと躱されてしまった。

 

「イッセーさん! ゼノヴィアさん! イッ――—」

 

 助けを請うアーシアさん。こうして見ると助けられたのに助けなかったことに心が痛む。だけどその間に空気が打ち震え、空間が歪んでいく。

 ディオドラとアーシアさんの体がぶれていき、次第に消えてしまった。

 

「アーシアァァアアアアアアアアッ!」

 

 一誠は消えてしまったアーシアさんの名前を叫ぶも、返事なんて帰ってくるはずがない。

 

「イッセーくん! 冷静に! いまは目の前の敵を薙ぎ払うのが先だ! そのあとにアーシアさんを助けに行こう!」

 

 くずおれる一誠に木場さんが激を入れる。

 嘆いてるだけじゃ、祈るだけじゃ誰も助けられない。どんなに可能性が低くても、行動しなければ可能性はない。

 僕たちを囲む悪魔たちの手元に魔力が集まっていく。魔力弾での一斉攻撃かな? 

 確かにこのレベルの悪魔、位置取り、対象が一か所に固まってることを考慮すればその方法が一番効率がいいかもしれない。

 僕の炎で防ぎきれるかどうかちょっと怪しいな。この数ならチマチマ削るよりも一点突破して一度囲まれてる状況を打開した方がいい。その前にどさくさに紛れてはぐれたフリして逃げるか?

 そんなことを考えていると、突然大きな気配がしたと同時に朱乃さんが「キャッ!」と悲鳴を上げた。

 どうしたのかなとチラっと見てみると、ローブ姿の隻眼(せきがん)のおじいさんが朱乃さんのスカートをめくってパンツを覗いていた。

 

「うーむ、なかなか良い尻じゃな。何よりも若さゆえの張りがたまらんわい」

 

 それを見た一誠は朱乃さんからおじいさんを引き離した。

 

「このクソジジイ! どっから出てきやがった! って、あんたは!」

 

 ん? 知ってる人? 一誠は知ってるようだったけど僕は一切見覚えがない。

 

「オーディンさま! どうしてここへ?」

 

 オーディンって確か北欧神話に出てくる神様だよね? アザゼル総督にオーディン様って、案外トップの人って一誠みたいなのが多いんじゃないかと思ってしまうよ。

 オーディン様は長くて白いあごひげをさすりながら言う。

 

「うむ。話すと長くなるがのぅ。簡単に言うと、『禍の団(カオブ・ブリゲード)』にゲームを乗っ取られたんじゃよ」

 

 試合前から感じていた嫌な予感はバッチリ的中してしまったか。———せめてゲームが中止になっただけよかったと思おう。

 

「今、運営側と各勢力の面々が協力態勢で迎え撃っとる。ま、ディオドラ・アスタロトが裏で旧魔王派の手を引いていたのまでは判明しとる。先日の試合での急激なパワー向上もオーフィスに『蛇』でももらい受けたのじゃろう。たがの、このままじゃとお主らが危険じゃろ? 救援が必要だったわけじゃ。しかしの、このゲームフィールドごと、強力な結界に覆われていてのぅ、そんじゃそこらの力の持ち主では突破も破壊も難しい。特に破壊は厳しいのぅ。内部で結界を張ってるものを停止させんとどうにもならんのじゃよ」

「じゃあ、爺さんはどうやって入ってきたんだよ?」

「ミーミルの泉に片方の目を差し出した時に、わしはこの手の魔術、魔力、その他の術式に関して詳しくなってのぅ。結界に関しても同様」

 

 オーディン様は左の隻眼の方を見せてくれた。そこには水晶のようなものが埋め込まれ、眼の奥に輝く魔術文字を浮かび上がらせている。

 …………。

 その水晶の義眼の文字を見た時、膨大な知識を感じさせる何かを確かに感じた。だけど、なぜかとてもちっぽけなものに感じる。なんて言うか……全然ピースが足りてないパズルを見ているかのようだ。

 前にデパートの見本で見た、大きな一枚も近くで見ると小さな絵がいくつも集まって、全体を見ると大きな絵になっているパズル。僕が今感じているのはまさにその小さな絵の一つ、近くで見ると完成された絵に見えるけど、全体を見ると額縁にはスペースがあり余ってる。なんだろうこの感覚は?

 

「相手は北欧の主神だ! 討ち取れば名があがるぞ!」

 

 相手の悪魔が一斉に魔力弾を撃ってくる。この数は―――流石に捌ききれない。

 炎目(えんもく)を使うかどうか迷っていると、オーディン様が杖を一度だけトンと地に突いた。

 その瞬間、こっちに向かっていた無数の魔力弾が宙で弾けて消滅した。

 お爺さんは「ホッホッホッ」と髭をさすりながら笑っている。

 流石北欧神話の主神、神の名は伊達ではないね。

 

「本来ならばわしの力があれば結界も打ち破れるはずなんじゃが、ここに入るだけで精一杯とは……。はてさて、相手はどれほどの使い手か」

 

 オーディン様から人数分の小型通信機を渡された。僕の分は―――――あっ、あった。

 

「ほれ、ここはジジイに任せて神殿の方まで走れ。ジジイが戦場に立ってお主らを援護すると言っておるのじゃ。めっけもんだと思え」

 

 オーディン様が杖をこちらに向けると、僕たちの体を薄く輝くオーラが覆った。

 

「それが神殿までお主らを守ってくれる。ほれほれ、走った走った」

「でも、爺さん! 一人で大丈夫なのかよ!」

 

 一誠が心配そうに口にしても、オーディン様は愉快そうに笑うだけ。

 確かにちょっと心配な所もあるけど、神様なんだから大丈夫だろう。

 

「まだ十数年しか生きていない赤ん坊が、わしを心配するなぞ――――グングニル」

 

 オーディン様は左手に槍のようなものを出現させると、それを悪魔たちの方へ一撃繰り出す。刹那―――。

 

 ブゥゥゥウウウウウウウンッ!

 

 槍から極太のオーラが放出されて、空気を貫くような鋭い音が辺り一面に響き渡る!

 極太の一撃が作り出した痕跡は、遥か先まで一直線に伸びて地を深く抉っていた! 悪魔たちはその一撃で消し飛ばされ、数十人ぐらいいなくなった。

 す、凄まじい威力だ……。僕たちが心配するなんておこがましいことだったね。

 

「なーに、ジジイもたまには運動しないと体が鈍るんでな。さーて、テロリストの悪魔ども。全力でかかってくるんじゃな。この老いぼれは想像を絶するほど強いぞい」

 

 これが運動か。やっぱり神々の戦いは凄まじい。

 たった一度だけどスサノオさんと無影こころさんの戦いを見たことがあるけど、あの時もここまで派手ではないけど同じくらい凄まじかったよ。高天原の専用のフィールドだからよかったけど、まさかただの蹴りや咆哮で山が斬られたり海が割れたりなんて……。

 残った悪魔たちは一層緊張の色を濃くする。先ほどのように名があがるとばかりに安易な攻めをする者はいなくなった。

 リアスさんはオーディン様に一礼すると僕たちに言う。

 

「神殿まで走るわよ!」

 

 僕たちもリアスさんの言葉に応じ、神殿の方へと走り出す。

 確かにオーディン様も強い気配を感じるし実際強かった。だけど、僕が感じた気配はオーディン様よりもずっと大きかった。

 どことなく安心するようなあの大きな気配はなんだったのだろうか?

 

 

 

 

 

 神殿の入り口に入るなり、僕たちはオーディン様から譲り受けた通信機器を取り付けた。すると通信機器から聞きたくないが聞き覚えある声が聞こえてきた。

 

『無事か? こちらはアザゼルだ。オーディンのお爺さんから渡されたみたいだな』

 

 ———アザゼル総督だ。

 

『言いたいこともあるだろうが、まずは聞いてくれ。このレーティングゲームは「禍の団(カオス・ブリゲード)」旧魔王派に襲撃を受けている。そのフィールドも、近くの空間領域であるVIPルーム付近も、旧魔王派の悪魔だらけだ。だがこれは事前に予測されていたことだ。現在、各勢力が協力して旧魔王派の連中を撃退している』

「予測していたですって?」

『最近、現魔王に関与する者たちが不審死するのが多発していた。裏で動いていたのは、「禍の団(カオス・ブリゲード)」旧魔王派。グラシャラボラス家の次期当主が不慮の事故死をしていたのも実際は旧魔王派の連中が手にかけてたってわけだ』

 

 アザゼル総督から告げられた事実に、僕以外の皆が息を呑んでいた。

 そのグラシャラボス家ってのも魔王の血筋だから狙われたりとか? まあどれだけ悪魔が危機に陥ろうがどうでもいいけどね。

 

『首謀者として挙がっているのは、旧ベルゼブブと旧アスモデウスの子孫だ。俺が倒したカテレア・レヴィアタンといい、旧魔王派の連中が抱く現魔王政府への憎悪は相当大きいみたいだな。このゲームにテロを仕掛けることで、世界転覆への前哨戦として現魔王の関係者を血祭りにあげるつもりだったんだろう。ここにはちょうど、現魔王や各勢力の幹部クラスがいるからな。襲撃するのにこれほど好都合なものはない。先日のアスタロト対大公アガレスの一戦からも今回の件は予見できる疑惑は生じていたんだよ』

 

 なるほど、つまり三大勢力の人たちはこうなる危険性を承知の上でレーティングゲームを続行したってことか。つまり――――

 

『だが、俺たちはこれを好機だと睨んだ。今後の世界に悪影響を出しそうな旧魔王派を潰すにはちょうどいい。現魔王、天界のセラフ、オーディンのジジイ、ギリシャの神、帝釈天なんかも出張ってテロリストどもを一網打尽にする。実は事前にテロの可能性を各勢力のボスに極秘裏に示唆してこの作戦に参加するかどうか聞いたのさ。そしたらどいつもこいつも意気揚々に応じやがった。どこの勢力も、勝ち気でいやがるから頼もしいぜ』

 

 ———僕たちは餌にされたってわけか。

 まあ、確かに僕たちは危険な場所に放り出された。だけど、このまま助けず放置ってことはないだろう。何せここに居るのは、魔王の妹と伝説の赤龍帝なんだから。無残に捨てられるわけがない、僕みたいにね。

 

『悪かったな、リアス。戦争なんてそう起こらないと言っておいて、こんなことになっちまっている。今回、おまえたちを危険な目に遭わせた。一応、ゲームが開始する寸前までには事を進めておきたかったんだ。奴らもそこで仕掛けてくるだろうと踏んでいたからな。案の定、その通りになった。だが、お前たちを危ないところに転送して危険な目にあわせたのは確かだ。この作戦もサーゼクスを説得して、俺が立案した。どうしても旧魔王派の連中をいぶり出したかったからな』

「もし、俺たちが万が一死んじゃったらどうしたんですか?」

『俺もそれ相応の責任を取るつもりだった。俺の首でことが済むならそうした』

 

 一誠が何気なく訊いた思い言葉に、アザゼル総督は真剣な声音で答えた。

 ————そっか、この人も一応上に立つ人ではあるんだね。

 リアスさんたちの成長を見て僕たちなら大丈夫と判断し、騙す形になったことに負い目も感じている。さらにすぐオーディン様を救援に送ってくれた。餌にされたのは許しがたいけど、その後の処置はしっかりされてると思うよ。

 不本意だけど、アザゼル総督の覚悟と愛情は伝わったよ。—————まあ、個人的な信用については話が別だけどね。

 

「先生、アーシアがディオドラに連れ去られたんです!」

『———っ。そうか、どちらにしてもおまえたちをこれ以上危険な所に置いておくわけにはいかない。アーシアは俺たちに任せておけ。そこは戦場になる。どんどん旧魔王派の連中が魔方陣で転送されてきているからな。その神殿には隠し地下室が設けられている。かなり丈夫な造りだ。戦闘が鎮まるまでそこに隠れていてくれ。あとは俺たちがテロリストを始末する』

 

 やっぱりね、そういう処置はしてあると思ったよ。

 僕は全面的に三大勢力を信用してないけど、リアスさんたちに関することは大いに信用できる。そのついでなら見捨てられることはないだろう。

 

『このフィールドは『禍の団(カオス・ブリゲード)』所属の神滅具所持者が作った結界に覆われているために、入るのはなんとかできるが、出るのは不可能に近いんだよ』

「先生も戦場に来ているんですか?」

『ああ、同じフィールドにいる。場所はだいぶ離れてるがな』

「アーシアは俺たちが救います」

 

 一誠がそう言うと、アザゼル総督は怒気を含んだ言葉で返した。

 

『おまえ、今がどういう状況かわかっているのか?』

 

 アザゼル総督の言うとおりだ。確かに一誠の気持ちもわかる、だけど今はそんな我儘を通せる状況じゃない。

 僕たちは現在、外から分離された場所で敵陣地のど真ん中にいるんだ。僕たちも動かざる得なかった三大勢力会談の時とは訳が違う。

 大切な人を自分の力で取り戻したい気持ちはよくわかる。だけど、素人の僕たちが勝手に動くことは味方にとって不利益、敵にとって利益しかない。ここは確実に助ける為に最低でもアザゼル総督の到着を待つべきだと思うよ。僕たちが大怪我をしたり死んでしまえばアーシアさんを助けられない所かより悲しませることになる。

 

「難しいことはわかりません! でも、アーシアは俺の仲間です! 家族です! 助けたいんです! 俺はもう二度とアーシアを失いたくない!」

 

 その気持ちは痛いほどよくわかる。だけど敵の数は未知数、こちらは人質を取られ9人だけ。多勢に無勢だよ!

 しかしリアスさんは不敵な笑みでこう言う。

 

「アザゼル先生、悪いけれど私たちはこのまま神殿に入ってアーシアを救うわ。ゲームはダメになったけれど、ディオドラとは決着をつけなきゃ納得できない。———私の大事な眷属を奪う事がどれほど愚かで無謀で無知だったのかを、教え込まないといけないのよ!」

「アザゼル先生、私たちは三大勢力で不審な行動を行う者に実力行使をする権限を持っているのでしょう? なら、今がそれを使う時では? ディオドラは現悪魔勢力に反政府的な行動を取っていますわよ」

 

 リアスさんに続いて朱乃さんまでも一誠の意見に同調してアザゼル総督を説得する。

 通信機の先でアザゼル総督は嘆息していた。

 

『ったく、頑固なガキどもだ……。ま、いい。今回は限定条件なんて一切ない。だからこそ、おまえたちのパワーを抑えるものなんて何もない。存分に暴れてこい! 特にイッセー! 赤龍帝の力を裏切り小僧のディオドラに見せつけてこいッ!」

「オッス!」

 

 ついにアザゼル総督の方が折れてしまった。なんてこった……。

 だけどもしかしたらそこまで見込みの低いことではないかもしれない。僕の考え方は日本妖怪式だ、日本妖怪は純粋なパワーが弱いから技や術などの技術でかく乱する。真正面から力比べをするなんて一部の上級妖怪くらいだ。中級以下は例え実戦でなくても純粋な力比べをすることは少ない。

 一方で悪魔は(パワー)押しが多い。だから少し型に嵌めるだけで瓦解させることができる。映像で見たリアス眷属VSシトリー眷属みたいにね。

 だからこそ直接的なパワーではそうそう後れを取ることのないリアス眷属なら、圧倒的力を見せつけることを好む悪魔を打ち破れるかもしれない。むしろ今までの実績から考えてその成功率は高い。

 例え失敗しても日本には何の損もないし、ギャスパーくん一人くらいなら護り切れるだろう。

 

『最後にこれだけは聞いておけ。大事なことだからな。奴らはこちらに予見されている可能性を視野に入れておきながら事を起こした。つまり、多少敵に勘付かれても問題のない作戦でもあるということだ』

「相手が、隠し球を持ってテロを実行したってこと?」

『ああ。それが何かはまだ分からないがこのフィールドが危険な事には変わりない。ゲームは停止しているから、リタイヤ転送は無い。危なくなっても助ける手段は無い。その事を肝に銘じ十分に気をつけてくれ』

 

 そこでアザゼル総督は通信を切った。

 今回は観客の目がない代わりに逃げる手段もない。非常事態とは言えこれからのことを考えると力を悟られるわけにもいかない。別行動をするわけにもいかないし――――さて、どうしようか?

 

「小猫、アーシアは?」

 

 リアスさんが搭城さんに気配を探るように促した。搭城さんは猫耳を頭部にぴょこりと出すと、神殿の奥を指で示す。間違いなくアーシアさんとディオドラの気配がする所だ。

 

「……あちらからアーシア先輩と、ディオドラ・アスタロトの気配を感じます」

 

 搭城さんの結果を聞くと、リアスさんたちは全員無言で頷きあう。そして神殿の奥へと走り出した。




 
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