でも今考えてみると、当初の予定では一話に詰め込む情報量が多すぎて一話一話が散らかったものになっちゃったかもしれない。
これからも自分なりに書き方を練習して物語づくり事態も精進していきたいと思っています。
銃声と共に放たれた二機の白い巨大ロボット。一機はフリードを連れてどこかへ飛んで行き、もう一機は暴走する
巨大ロボットの見た目の頼もしさはあるが、リアスたちはそれでも一誠の相手が務まるか不安に思っていた。確かに聖なるオーラは凄まじいが、一誠は新たに得た白龍皇の力でシャルバの光の攻撃を弱々しいものに変えて見せた。そうなってしまえばロボットの聖なるオーラも意味を為さない。
今の一誠の膨大なオーラの質に巨大ロボットがどれだけ持ちこたえられるか。リアスたちはそう考えていたが――――。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
自分に近づく巨大ロボット発見すると、一誠はロボットに向かって咆哮を上げた。
向かって来る相手を敵と認識したのか、シャルバの肩に食らいついた時と同じようにその場で四つん這いになり、翼を羽ばたかせる。
ピュッ!
「ぎゅがぁぁぁッ!」
空を切る音と共に消えた一誠は、巨大ロボットに掴まれ聖なるオーラに苦しんでいる。
木場の目にも捉えられなかった一誠を、
ロボットは一誠を捕まえた手をすぐに放す。一誠は悪魔が光の波動に触れたように体から煙を出して降下していく。
シャルバの肉を食いちぎった時と高さは変わらないが、ダメージを負ったため綺麗に着地することはできなかった。
「ばぎゃぎゅがぁぁ、ぎゅはごはぁッ! ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
ダメージを受けて怒ったのか、一誠は全身の宝玉から生えた龍の腕と刃を向けて威嚇する。そんな一誠をロボットはただ見下ろすばかり。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
再び四つん這いになり翼を羽ばたかせ、猛スピードで巨大ロボットへ飛び出す。
ロボットは今度は動く素振りすら見せなかったため一誠の攻撃はロボットへ到達したが、その刃はロボットの装甲に通らない。それどころか逆にロボットが発する聖なるオーラに焼かれる始末。
それでもあきらめず何度も刃や龍の手を突き立てたる。
ロボットが一誠の近くに片手を近づけると、赤龍帝の翼を白龍皇のように輝かせて対抗。
「DividDividDividDividDivid!!」
音声が鳴り響き、ロボットを半減させようとする。が、何度音声が鳴り響いてもロボットのオーラの量、質、大きさに一ミリの変化も見られない。
白龍皇の輝きを全く意に介さず服に付いた虫を
「ぎゃばがぁ、ばぎゅがぁぁぁぁぁッ!」
聖なるオーラに触れられて体中から煙を放っているが、それ以外には目立った外傷はない。まだまだ戦う元気も十分に残っている。
赤龍帝の兜の口が開き、口奥のレーザーの発射口のようなものをロボットに向ける。
ピィィィィッ!
シャルバの左腕を吹き飛ばし、そのまま神殿内を貫通したレーザーがロボットを貫こうと一直線に伸びていく。が、先ほどの攻撃同様にただ直立するロボットの装甲に傷一つ付けることすら
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
自分の攻撃を
一誠は両翼を大きく横に広げ、顔を巨大ロボットにまっすぐ向けた。鎧の胸元と腹部を開き、シャルバを倒した大技の準備を整える。
ドゥゥゥゥゥ……。
赤いオーラをその発射口に集めていく。
シャルバを倒し神殿を崩壊させたその技を前にしても、ロボットは躱そうとも防ごうともせずに直立のまま一誠を見下ろすだけ。
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
『Longinus Smasher!!!!!!』
赤龍帝の神器が発動する音声が開けた空間で鳴り響く。
チャージされた発射口から膨大な赤いオーラが照射された。
それは二発目であろうと、ダメージを負っていようと、シャルバの時と何の遜色もない量のオーラを発していた。巨大ロボットをターゲットにしている分、むしろ攻撃範囲はシャルバ以上。
赤い閃光がロボットの上半身を包み込む。光が晴れるとそこには―——————何一つ変化のない巨大ロボットが変わらず一誠を見下ろしていた。
「最弱と言われながらも数々の逆境を覆したと聞いて警戒していたが、最弱の赤龍帝の名に偽りなしか」
マルコは冷めた目で直立のロボットに苦戦する一誠の様子を眺めていた。実際のところそう言われても仕方のない程に一方的な戦いが行われていた。いや、もはや戦いと呼べるものではない。一方的にぶつかって勝手にダメージを受けているだけ。
シャルバを吹き飛ばしたレーザーも効かず、白龍皇の力も効いてる様子は一切ない。木場でも捉えられぬ速さは掴まれ、近づけばそれだけでダメージを受ける程の聖なるオーラ。一誠の全てがロボットには通じず、ロボットはただ存在するだけでいずれ一誠を消滅させることができる。
「所詮一般人、所詮悪魔、想いの力もこの程度か」
「ぐごぎゅばぁ……ぐぉぉおおおお!」
それでもなお一誠は立ち上がり、リアスたちに危険を抱かせる程のオーラと威圧を放つ。明らかに甚大なダメージを受けているのは明らかだが、それでもリアスたちが近づくには危険すぎる。
むしろ手負いになった分余計に余裕がなくなり危険になっているかもしれない。
「まだ吠える元気があるのか。本体が脆弱でも赤龍帝の鎧はそれなりに堅牢……と、言うには少し無理があるな。となると、彼自身の気力か……厄介だな」
今までの一誠の勝利の要因は赤龍帝の力にあると言っても過言ではない。しかし、一誠自身の動ける限り立ち上がる根性も無視できるものではない。
心の奥底で赤龍帝の倍加があればどんな相手にも大ダメージを与えられると依存している部分があったとしても、何度倒されても立ちあがろうとする根性は対面する相手にしてみれば厄介極まりない一誠の強みである。
「仕方ない。少々苦しむことになるが、助かりたくば耐えろ」
圧倒的力と相性の差を見せつけられてもなお一誠はロボットに喰いかかる。
一誠が向かってきたところを巨大ロボットは優しく両手で包み込んだ。
巨大ロボットの手に優しく包まれた一誠は今、人間に素手で触られている魚と同じ。
種類によっては比較的熱に強い魚も存在するが、魚は変温動物。低温で暮らしてる魚にとっては人間の体温は高熱。
堕天使総督の肌を焼く程の聖なるオーラを放つロボットの手の中、いかに赤龍帝とは言え本人は神器頼りの下級悪魔。覇龍となっても力の差から長時間耐えられる相手ではない。
しばらくして巨大ロボットは、捕まえた虫を放り投げるようにふわっと一誠を空中に放り投げた。
投げられた一誠は先ほどのように自分の足で着地せず、全身から煙を出して地面に転がった。一誠はぴくぴくとするだけで立ち上がらない。
「加減には困ったが誤差の範囲だ。リアス・グレモリー、今がチャンスだぞ」
「……はっ! イッセー!」
ちょっと前まで自分たちを圧倒させていた一誠がさらに次元の違う相手に圧倒された様子に少しばかり意識が飛んでいたリアス眷属たち。マルコの言葉を受けてアーシアを連れて一誠のもとへ駆け寄る。
「イッセー!」
まだまだ大きい龍のオーラを発してるため一誠が生きているのがわかる。リアスたちはある程度の距離まで近づき声をかける。
名を呼ばれてリアスたちの方へ顔を向ける一誠。その視界にはキッチリとリアスたちと共にアーシアが捉えられた。だが――—。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
オーラを強め立ち上がり咆哮を上げて威嚇した。
四肢に力を籠めて立ち上がり、敵意が籠った目をリアスたちに向け襲い掛かった。しかし、それは巨大ロボットの手のひらによって阻まれる。
巨大ロボットは一誠を掴まずに手のひらで優しく遠くへ弾いた。そしてリアスたちを守るように一誠とリアスたちの間に立ちふさがる
「どうやら彼の意思は赤龍帝の亡霊に勝てなかったようだな」
「そんな……イッセー……」
自分たちに敵意を向け襲い掛かって来たことにショックを受けたリアスたち。アーシアの無事な姿を見せても鎧は解除されなかった。それでも何とかしたいと考えるが、他にどうすればいいかわからない。
徹底的に無関心を貫いていたマルコの目に少しばかり哀れみの感情が籠る。
「これ以上は彼の体が持たんな。……仕方ない。龍の力を宿し悪魔に魅入られし哀れな少年よ、ちっぽけな世界で世界の真理を知った気でいる亡霊共々その苦しみから解放してあげよう」
巨大ロボットの両腕に光の粒子が発生し、形を成して右手に
「ッ!! 待って! 本当にもう手はないの!?」
マルコの言動にリアスは他に手段はないかと問いかける。
リアスの問いにマルコは首を横に振った。
「あの状態まで弱らせてなお仲間の問いかけで無理なら希望は薄い」
「……本当に、本当にもう何もないんですか」
小猫は最後の希望を振り絞るかのようにマルコに問いかける。
その問いに対しマルコは若干哀れみの表情をして黙って首を横に振るだけ。
マルコは一誠と剣を構える巨大ロボットの方を向く。
「彼の終幕に祝福を―――」
「まって――」
「まったぁぁぁぁっ!」
マルコを止める声を遮って、遠くから一誠にトドメを刺すのを止める声と共に白い翼の天使が飛んで来た。リアス・グレモリー眷属にとって面識深い天使、紫藤イリナ。
巨大天使の剣は振り上げたままの姿勢で停止した。
「はー、着いたー。って、あれが今のイッセーくん!? そしてあの巨大ロボットはなに!? ミカエル様やアザゼル様に聞いてはいたけど、すごいことになってるわね!」
驚いたり、はしゃいだり、激しい感情の起伏を見せるイリナ。
「イリナ、どうしてここに?」
ゼノヴィアが訊くと、イリナは手に持った立体映像機器を突き出した。
「イッセーくんが危険な状態になったのは観戦ルームやこのフィールドで戦っていたお偉い方にも把握されているの。で、このままではいけないと魔王ルシファー様とアザゼル様が秘密兵器を私に持たせてくれたのです! ちなみに転送してくれたのはオーディン様よ! すごいよね、北の神様! おひげたっぷり!
先ほどまでの深刻な空気を破壊する程、イリナのテンションは高い。
リアスは映像機器を受け取ると、さっそく下に置いた。
「よくわからないけど、お兄様とアザゼルが用意したのなら、効果が見込めるかもしれないわね。だから―――」
「私としては後は我が天使ミカエルによって少年に魂の安らぎを与えることしかできない。天使を名乗りし少女が持ってきたそれに希望が詰まってるなら、最後に開けてみるのも君たちの自由だ」
リアスは生唾を一度飲み込み、機械のボタンを押した。
すると、空中に大きく映像が映し出される。
映像が映し出されると、一誠もそちらに顔を向けた。
そして、映し出された映像は―――。
『おっぱいドラゴン! はっじまっるよー!』
禁手の鎧姿の一誠が声を出すと、子供たちが集まってくるシーンから始まった。
『おっぱい!』
映像の子供たちは一誠の周囲で大きな声で言った。
ダンスを始める一誠と子供たち。軽快な音楽も流れ出し、それに伴い一誠と子供たちも踊りだす。
既にこの時点でリアスたちは驚きを見せ、マルコに至っては絶対零度のしらけ顔。
温度差はあれど宙の文字に対しての感想は同じもの。
———なんだこれは。
『おっぱいドラゴンの歌』
歌が流れると全員が呆気に取られていた。どう反応したらいいのかわからないのだ。
マルコは急いで巨大ロボットを呼び戻し、メイデンの入っているアイアンメイデンだけをしっかりと握って上空へ退避させる。
「……うぅ、おっぱい」
『!?』
一誠は頭を抱え、まともに人間の言葉を発した。発した言葉自体は馬鹿げてるが、ちゃんとした言葉を発したことに意味がある。
「反応したわ!」
リアスは歓喜の声を上げ涙を流す一方で。
「……そんな、この歌に反応するなんて」
「……」
小猫は猫耳をしおらせ、マルコは何とも言えない顔で絶句した。
「紫藤さん、もう一度流してちょうだい!」
「はいな! 任されて!」
リアスの言葉に応じてイリナが再生ボタンを押す。
すると、先ほどの歌の続きが流れてくる。
「うぅ、おっぱい……もみもみ、ちゅーちゅー……」
再び歌が流れると、一誠は頭を抱えながら苦しみ出す。
軽快な子供向けの音楽に乗せて流れてくる品のない歌詞。呆気にとられながらも一誠の変化に注目するリアスたち、何とも言えない顔からもううんざりした表情に変わっているマルコ。時折心配した表情で上空のメイデンを包んだ巨大ロボットを見上げている。
「……ず、ず、ずむずむ……いやーん……ポチッと」
一誠の指が何かを求めて押す仕草をする。指の鋭い爪も消失していた。
ロボットの攻撃によりボロボロにされた一誠が意識を取り戻しつつある。先ほどまでの危険さは既にだいぶ薄れていた。
「いまよ、リアス! あなたの乳首が求められているわ!」
「ええっ!?」
朱乃の言葉に目が飛び出るほど驚くリアス。
「イッセーくんはあなたの乳首を押して禁手に至った。なら、逆のこともできるはず。さっきまでは危険な雰囲気が漂って近寄れなかったけど、歌で正気を取り戻しつつある今なら話は別だわ!」
「で、でも、私の乳首でイッセーの『覇龍』を解除できるのかしら……」
「できるわ! 私では無理……。ふふふ、やっぱり、こういう役目はあなたの方がお似合いなのね……それがちょっと悔しいわ」
朱乃は悲哀に満ちた瞳を浮かべるが、言っていることは何とも言えないもの。マルコも冷ややかな目でそれを見ている。
リアスはチラリとマルコの方へ視線を移すが、苛立った視線で返した。そろそろこの茶番劇の苦痛が怒りに変わって来たのだ。
リアスは一度大きく深呼吸をした後、決意を現した。
「わかったわ」
一誠の方へ足を進める。一切のよどみなく。
歌が何度もループする中、リアスは一誠と距離を詰めた。眼前に立つと、制服のボタンをはずし、ブラを外す。角度的にリアスの開けた胸は一誠にしか見えない。
「お、俺の……お、おっぱい……」
一誠は求めるものを発見し、震える指をリアスの胸へ。
ちょうど歌のサビに入った所で一誠はリアスの胸を押した。すると、一誠の鎧が解除され、解放された。
「……女性の胸で解除とは、先ほどまでの哀しみが酷く上っ面なものと疑ってしまう」
ため息と共に誰にも聞こえない声量でマルコはつぶやく。
それと同時にやっと合流した誇銅も一言。
「……なにこれ?」
◆◇◆◇◆◇
罪千さんと別れてディオドラのいる場所へ歩いていると、急に一誠の魔力が不安定になるのを感じた。僕は急いで向かったけど、辿り着く前に神殿がいきなり崩壊してしまった。神殿の崩壊事態は炎目で身を包んで無傷なんだけどね。
炎目を使ったままで外に出るのはまずいと思ったから、見つからない場所へ瓦礫の中に身を隠しながら進んだよ。
迂回してリアスさんたちに合流しようとしたら暴走した一誠らしきものが巨大ロボットにボコボコにされたり。かと思ったらリアスさんたちに合流した頃には変な歌が流れて一誠の気配が沈静し、リアスさんが胸を突かせたら一誠の鎧が解除。わけがわからないよ。
「……まあ、一件落着と言うわけか」
前に部室で会った捜査官がそう言うと、上空の巨大ロボットが降りて来て光の粒子となって消えた。ロボットが消えた後には、アイアンメイデンが一つぽつんと置かれている。この感じ―――メイデンさん?
僕がアイアンメイデンを見ていると、ふと捜査官と目が合った。なので無言で軽く
「最後何が起きたかわかりませんが、平和に終わったようですね」
「はい、メイデン様」
捜査官はアイアンメイデンに向かってメイデン様と言った。理由はわからないけど、あの中に入ってるのはメイデン・アインさんで間違いなさそうだね。
「しかし、あのような歌が何かの間違いで流行ってしまったら……。すぐにでも悪魔を名乗りし者たちを滅する必要があるな」
「歌? それはどのような歌ですか?」
歌と聞いて疑問を含んだ声色を発するメイデンさん。歌ってさっきの変な歌の事だよね。
捜査官は額から汗を流して慌てる。
「メイデン様! あれはメイデン様のお耳に入れてよいものではありません!」
「しかし、知らなければ判断はできません。無知なる裁きは悪です」
「先ほどは私の失言でした! 少々品のない歌詞に我を失っていただけです! たかが悪魔を名乗りし者が悪ふざけに作った歌です、裁く程の事ではありません!」
「?」
どうやらメイデンさんはあの歌を聞いていないようだ。メイデンさんのような純粋で幼い子にあんな変な歌が聞かれてなかったことにちょっと安心したよ。
「あの、すいません。一体何があったんですか?」
「何を言ってるの誇銅。私たちはずっと見ていたじゃないの」
「いや、僕今来たところですよ?」
『え?』
眷属の皆さんが声を揃えて小さな驚きを見せる。やっぱり僕の不在には気づいてなかったようだね。もうここまで来るとショックでもなんでもないや。
「誇銅先輩!」
「あはは、よしよし」
ギャスパーくんが僕に勢いよく抱き着いてくれる。若干涙目———心配させちゃったね。
「うーん、あれ? 何がどうなったんだ?」
一誠が目を覚ました。それに伴いリアスさんや朱乃さんが号泣しながら一誠に抱き着く。
事態をわかっていなさそうな一誠に木場さんが事の
一誠の視線がゼノヴィアさんに抱きかかえられてるアーシアさんに移る。
「フリードが助けてくれたんだ」
フリードが? でもなんで? 疑問に思いながらもこの場にフリードはいない。
木場さんが理由を話すと、フリードはどうやらメイデンさんの仲間だったらしく偶然アーシアさんを助けてくれたらしい。
まあ、アーシアさんが無事でよかったと思うことにしよう。
「アーシア! アーシア!」
一誠がアーシアさんの名前を呼び続けると、アーシアさんの瞼が静かに開いていく。
「……あれ? イッセーさん?」
ドン!
目を覚ましたアーシアさんに抱き着こうとした一誠だが、ゼノヴィアさんに弾き飛ばされてしまう。
「アーシア!」
「ゼ、ゼノヴィアさん。どうしたんですか? く、苦しいです……」
「アーシア!アーシアアーシアアーシアアーシア! 私とおまえは友達だ! ずっとずっと友達だ! だから、もう私を置いて行かないでくれ!」
アーシアさんに抱き着き号泣するゼノヴィアさん。そんなゼノヴィアさんの頭を優しく撫でるアーシアさん。
「……はい、ずっとお友達です」
「よかったわぁ」
横でイリナさんもうんうんとうなずきながら泣いていた。
安堵のため息をついていると、この場の誰でもない第三者の声がする。
「どうやら、最悪の展開は避けられたようだな」
すると、空間に裂け目が生まれる。人が潜れるだけの裂け目から現れたのは――――えっと……誰だっけ? とにかく若干悪魔の気配がする銀髪の男性と、古代中国風の鎧を着た男性と、背広を着た男性だった。
「ヴァーリ」
一誠やリアスさんはそのヴァーリと言う人の登場に驚いていた。が、すぐに攻撃の姿勢を作りだす。他の眷属の皆さんも戦闘の構えを取っていた。あっ、敵なのね。だけど、この人たちから敵意は感じられないけどね。
「やるつもりはない。見に来ただけだ。———赤龍帝の『覇龍』を歯牙にもかけぬ強大な聖なる力を」
ヴァーリと呼ばれた銀髪の人はメイデンさんたちに視線を送る。
「本当はもっと早く赤龍帝の『覇龍』を見に来る予定だったんですがね。『覇龍』と戦っていたものとは別の規格外の聖なる力に阻まれて空間を切り裂けなかった。正直、かなり自信を失いましたよ」
背広着た男性が
「まっ、まだまだ俺たちの知らぬ上がいると言うことだな。それよりもそろそろだ。空中を見ていろ」
「?」
銀髪の男性に言われ一誠は何もない白い空を見上げる。すると―――。
バチッ! バチッ!
空間に巨大な穴が開いていく。そして、そこから何かが姿を現した。
「あれは―――」
穴中出現したものを見て、僕たちは驚いた。リアスさんたちも同様に驚いてる様子だ。
「よく見ておけ、兵藤一誠。あれが俺が見たかったものだ」
目の前の空中を、とてつもなく巨大な真紅のドラゴンが雄大に泳いでいく。
ものすごく大きい! アクシオさんよりも大きい! 最大サイズ時の雷影、
「『赤い龍』と呼ばれるドラゴンは二種類いる。ひとつはキミに宿るウェールズの古のドラゴン―――ウェルシュ・ドラゴン、赤龍帝だ。白龍皇もその伝承に出てくる同じ出自のもの。だがもうひとつの『赤い龍』は―――『黙示録』に記されし赤いドラゴンだ」
「『黙示録』……?」
「『
「でも、どうしてこんなところを飛んでいるんだ?」
「さあね。いろいろ説はあるが……。あれがオーフィスの目的であり、俺が倒したい目標だ」
銀髪の男性はまっすぐな瞳で言った。
「俺が最も戦いたい相手——『
なるほど、そんな夢があるんですね。
テロリスト集団に身を置いてるのは置いとくとして、そういう大きな目標があるのは羨ましくもある。
僕も強くなることを目指してはいるけど、特に誰を超えるくらいとかは考えていない。ただ、戦えなくなるまでにあの人たちのいる強さまで届かせたいと思っているくらい。圧倒的年季は一体どれだけの時間をかければ追いつくのだろうか。
そんなことを考えていると、悪魔なんかとは比べ物にならない気配が近づくのを感じた。
視線をそこへ移すと、その約一秒後にその気配の正体が現れた。
「グレートレッド、久しい」
僕たちのすぐ近くに黒髪に黒ワンピースの少女が立っている。
「誰だ、あの娘……? さっきまではいなかったぞ」
銀髪の男性がそれを確認して苦笑する。
「オーフィス。ウロボロスだ。『
この子がテロリストたちの大将なんですね。でも確かに、ちょっと前に感じた大きな気配にはこの子と似た気配が混じってるのを感じたよ。力を分け与えるとかそんな力かな?
その子はグレートレッドに向かって指鉄砲の構えでバンッと撃ち出す格好をした。
「我は、いつか必ず静寂を手に入れる」
バサッ。
今度は羽ばたき。嫌いな気配を感じる……間違いなくこれは―――。
ドスンッ!
巨大なものが降って来た。それは――—アザゼル総督と一誠の修行相手をしていたドラゴン。
「先生、おっさん!」
「おー、イッセー。元に戻ったようだな。俺もどうなるか怖かったが、おまえならあの歌や女の胸で『覇龍』から戻るかなんて思っていた。乳をついて禁手に至った大馬鹿野郎だからな。あの歌の作詞をした甲斐があったぜ」
ええ、聞いちゃいられない程に酷い歌詞でしたよ。絶対に人間界に持ち込まないで欲しいですね。て言うかお蔵入りにしてほしい。
「ちなみにサーゼクスからオファーが来たんだからな。あいつもセラフォルーもノリノリで作曲とダンスの振り付けしやがったし」
冥界のトップ公認の悪ふざけなんですね。こりゃダメだ。せめてこの歌が原因で一誠みたいなのが量産、もしくは子供たちに悪影響がないことを祈るばかりだよ……。
「ハハハハ、さすがは乳の好きな赤龍帝だ! と、オーフィスを追ってきたらとんでもないものが出て来てるな」
ドラゴンとアザゼル総督は空を飛ぶ巨大ドラゴンに視線を向ける。
「懐かしいな、グレートレッドか」
「タンニーンも戦ったことあるのか?」
アザゼル総督の問いにドラゴンは首を横に振る。
「いや、俺なぞ歯牙にもかけてくれなかったさ」
まあ、そうだろうね。
こっちのドラゴンと空の巨大ドラゴンでは見た目以上に包容する力の差を感じる。いかにドラゴンがすごいと言われてもそれは大抵の種族では太刀打ちできない純粋な力があるから。それを崩されればこれほど脆いものはないだろう。
力に頼る者はそれを超えられれば、技に頼る者はそれを見切られれば、策に頼る者はそれを見破られればどうすることもできない。まあ、時として技も策も無に帰す程の暴力もあるけれどね。
「オーフィス。各地で暴れまわった旧魔王派の連中は退却、及び降伏した。———事実上、まとめていた末裔どもを失った旧魔王派は壊滅状態だ」
「そう。それもまた、ひとつの結末」
少女は全く驚く様子はない。派閥が一つ消えても痛くもかゆくもない証拠だね。
それを聞いたアザゼル総督は半眼で肩をすくめた。
「お前らの中で、あとヴァーリ以外に大きな勢力は人間の英雄や勇者の末裔、神器所有者で集まった『英雄派』だけか」
人間までテロ組織に荷担してるの!? ……ああ、嫌な世界だね。だけど、人間に積極的に関わる三大勢力から組織的に身を守る為には仕方なかったりもするのかな? 強い神器を持っていたりして非協力的な態度を見せると危険分子とか言われたりとか。
「さーて、オーフィス。やるか?」
アザゼル総督が光の槍の矛先を少女に向ける。少女に敵意を向けるアザゼル総督だが―――。
「我、帰る」
少女の敵意はゼロ。だけどあっちは納得した様子はなく、ドラゴンが翼を広げて呼び止める。
「待て! オーフィス!」
ドラゴンが呼び止めるも少女は不気味な笑顔を浮かべるだけ。
「タンニーン。龍王が再び集まりつつある」
ヒュッ!
一瞬空気が振動し、少女の姿が消えた。
アザゼル総督もドラゴンも嘆息している。
「俺たちも撤退しよう」
銀髪の男性が言う。背広の男性が作りだした次元の裂け目に足を踏み入れる寸前、こちらを向く。
「兵藤一誠。俺を倒したいか?」
「……倒したいさ。けど、俺が超えたいのはお前だけじゃない。同じ眷属の木場も超えたいし、ダチの匙も超えたい。俺には超えたいものがたくさんあるんだよ」
「俺もだよ。俺もキミ以外に倒したいものがいる。おかしいな。現赤龍帝と現白龍皇は宿命の対決よりも大切な目標が存在している。きっと、今回の俺とキミはおかしな赤白ドラゴンなのだろう。そういうのもたまにはいいはずだ。———だが、いずれは」
一誠は銀髪の男性に拳を向ける。
「ああ、決着つけようぜ。部長や朱乃さんのおっぱいを半分にされたらことだからな」
「やっぱり、キミは面白い。———強くなれよ、兵藤一誠」
……う、う~ん。二人の世界がわからない。たぶん、根本的に価値観が違うんだろうね。
「じゃあな、おっぱいドラゴン! それとスイッチ姫!」
古代中国風の鎧を着た男性がそう言うと、リアスさんの顔が真っ赤っかになる。スイッチ姫って……もしかして一誠の鎧が解除された時のあれのこと?
「木場祐斗くん、ゼノヴィアさん」
背広の男性が木場さんとゼノヴィアさんに向けて言う。
「私は聖王剣の所持者であり、アーサー・ペンドラゴンの末裔。どうぞ、アーサーと呼んでください。いつか聖剣を巡る戦いをしましょう。では」
背広の男性がそう言うと捜査官は突然小さく鼻で笑った。
銀髪の男性とその仲間たちは次元の裂け目へと消えていった。
「それでは、私たちもそろそろ戻りましょう」
テロリストの少女、銀髪の男性と続きメイデンさんも帰る意思を示す。
「フリードがまだ戻ってませんがいかがなさいましょう?」
「かまいません。何かあれば今のフリードならガギエルが導いてくれるでしょう。もうここに用はありません、
「はい」
捜査官が宙に銃口を向けると、銃声と共にさっき見た巨大ロボットが空中に出現した。
ロボットは二人を手のひらに乗せて飛び上がる。
「天使を名乗りし少女よ、ミカエルを名乗りし者に伝えてくれ。時として許すことは害悪となり、罰することが救いになると」
「え、それってどういう――」
去り際に捜査官はイリナさんに向かって言った。イリナさんの質問も聞かずに遥か彼方へ飛び去ってしまう。
罪千さんにメイデンさん、『
このテロの裏で何が起こったのか僕にはさっぱりわからない。
だけど、今は大切は人が一人も欠けることなく終わったことに満足することにしよう。
若干のモヤモヤは残ったけど、今はそれでいいや。
「今度こそ帰ろう、アーシア。俺たちの家へ」
「はい。お父さんとお母さんが待つ家に帰ります」
なんだか一誠とアーシアさんの間でいい雰囲気が作られている。一誠はアーシアさんの手を取り、笑顔で言う。そしてアーシアさんも笑顔で返す。
例え好きになれない相手でも、こういうのっていいなって思っちゃうよ。よかったね一誠、アーシアさん。
そのまま一誠は眠るように意識を失った。リアスさんたちが確認したところちゃんと息をしてたから大丈夫だろう。たぶん、暴走したことによる疲労とかだろうね。
こうしてテロに利用され巻き込まれた僕たちの受難は一旦幕を閉じた。
『